071 物語の考察 お算数のお時間
みなさんこんにちは。
たまには数字をこねまわしたテクニカルな考察、あるいは思考実験のようなものをしてみたいと思います。
!!閲覧注意!!
現時点では妄想に過ぎませんが、かなり踏み込んだ予想を書いてますので念のため閲覧注意とさせていただきます。自己責任でのご閲覧をお願い申し上げます。
この記事は最新話である115話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
[お算数のお時間]
まずお詫びをしなければならないのですが、前々回の記事末にて「二千」にルビが振られていないことについて書きましたが、原作を読み返したところルビが振られていない漢数字がいくつかありました(27巻109話)
これらの場面は一例にすぎず、他にも同様のケースがたまに見つかります。その全てが伏線だとは到底思えませんので、「二千」の読み方に仕掛けがある可能性はかなり低いように思います。やはり出版社のルビ振りの約束事かもしれません。たいして確認もせずに適当なことを書いてしまい失礼しました。
申し訳ない半分、せっかくの機会なので「二千年後」に関して少し考えてみたいと思います。ただし、現状では答えの出ない問題ですのでそのつもりでご覧ください。
さて、二千年問題について語る時、これを避けて通ることはできないでしょう。
145×13+102+13=2000
ずいぶん初期の頃から言われているらしい、この計算式。おそらくどなたもご存知かと思います。確かに綺麗に2000という数字にまとまることから、現状最も有力な説のように思えます。
ただ、この解釈にはあるツッコミどころが存在しています。
まずはこの計算式の意味するところを、蛇足ながら改めて確認してみます。
145×13 - 壁内開始までに145代まで、各13年ずつで1885年間
+102 - 壁内開始から102年後の845年にエレンが始祖を継承
+13 - 13年後、エレンの寿命が切れる858年が契約から2000年にあたる
ということになっています。毎度雑ですみませんが、図示するとこんな感じです。
壁内の始まりである743年が145代の寿命の最後の年になりますから、ギリギリで記憶改竄して2代目壁の王に継承したという時点で少しモヤっとするのですが、それはまあ置いておきます。
それよりも最初の1885年間、145代目まで、始祖はきっちり13年おきに継承されてきたことになっています。これも多少疑問が残りはしますが、ライナーが何度となく見せた生命力、ヴィリーの言っていたような「絶対的な力」、クサヴァーさんの言っていた病気にかからなくできることなどを考慮すれば、あり得なくはないと考えられます。ただ、ここが重要になってきますので、もう一度書いておきます。
始祖はおよそ1900年間、13年おきに継承されてきました。
ここで今度は現代から遡ってみましょう。
フリーダが始祖を継承したのは850年の8年前、842年のことです(16巻64話)
-今から8年前のこの場所で…
ということは、ウーリが継承したのはさらに13年前の829年と推測できます。同様にして壁の王の継承年を遡ってみると・・
816、803、790、777、764、751、738
あれ? 743年と合いません。
計算式によれば743年に145代から2代目壁の王に受け継がれているはずが、壁内の継承から逆算すると合致しないのです。再び雑図をご覧ください。
ご覧の通りです。これを合わせるには、壁の王の誰かが13年に満たずに継承をしたと考えるしかありません。でも約1900年の間、他国と戦争しようが、内輪もめがあろうが、疫病があろうが、一度も任期途中で死ぬことの無かった始祖が、壁内のわずか100年8世代ほどの継承において死んだというのはどうなんでしょうか。もちろん今後そういう事実が出てくればそれでいいですが、現状では壁内に始祖を打倒するような敵がいたとは考えにくいですし、ロッドの話からはレイス家内に争いがあった雰囲気は微塵も感じられません。
1900年間はちゃんと継承できましたが、100年間では失敗しちゃいました
あの計算式は、実はこんな苦しい理屈の上に成り立っています。どうも疑ってかかった方が良いように思います。
さて、先にぶっちゃけてしまうと、個人的には「”約”二千年後の君へ」でも全く問題ないような気はしてます。そもそもこの作品では歴史や伝承の曖昧さが散々描かれていますから、正確なことなんて知り得ない可能性が高いです(21巻86話)
-今から1820年前
-我々の祖先「ユミル・フリッツ」は
イェーガー翁の話からすると、契約から二千年後とはちょうど1,000年頃となり、作中の登場人物がみんな死んでさらに100年くらい後の未来になります(28巻114話)
-私達が生まれるより二千年も前から
-存在したとされる九つの巨人だが
クサヴァーさんの話では生まれるより二千年前と言っていますから、とっくに二千年後は過ぎ去っていることになります。
こんな具合なわけです。現実の私たちだって二千年前のことなんて全く知りません。紀元1年にイエス・キリストが生まれたって信じ込んでる人が世界中にごまんといたりするわけです。なぜならそれが事実だと、為政者に都合の良い歴史を教えられてきたからです。
そんな前提ではありますが、思考停止していても仕方が無いのでもう少し掘り下げてみたいと思います。
まず、巨人には記憶の継承システムがあるため、私たち人間より正確な歴史を知る余地はあります。そしてちょっとメタ的な話になりますが、エレンたちが104期という中途半端な年度であった意味を考えると、やはり何らかの数字合わせがある可能性は捨てきれません(100年ぴったりだとわざとらしすぎるので適当に、という可能性もありますが。)145代というのも同様に意味深ではあります。やはりあの計算式のような何かが成り立つ可能性は残っているかもしれません(21巻86話)
-そもそも「巨人大戦」とは145代目の王が
-「始祖の巨人」を継承したことが始まりですが
ダイナによれば、145代の継承から巨人大戦は始まったとあります。始祖は基本的に死なないものとして、先ほどの表から738年が145代の継承年であると仮定してみます。145代(=初代壁の王)の任期は738年から751年となり、巨人大戦は738年に始まって743年までの5年間で戦争と移住を完了した感じです。751年以降は平和な壁内で13年ごとに継承すればきちんとフリーダまで繋がることになります。
裏付けのために他の知性巨人も参照してみましょう。まずはマーレの5体(24巻96話)
-私達に残された時間は残り10年…
-壁を破壊して2年経つが…
これは845年から2年後、847年のことです。その時点で残り10年と言ってますから、任期は844年~857年と考えられます。ただし・・(23巻93話)
-あなたの「任期」はあと2年ですから
ファルコは854年の時点であと2年と言ってますから、843年~856年かもしれません。1年前後するのですが、「あと何年」という言い方はそれを言う時期や年の変わり目なんかの影響を受けますから、とりあえず843年(+1かも)くらいで考えておきます。始祖同様に遡っていくと・・
843 830 817 804 791 778 765 752 739
あるいはこれに+1をした年数が、継承年と考えられます。
獣は、ジークの任期が来年855年までとすると、
842 829 816 803 790 777 764 751 738
進撃はちゃんと継承されてきたか不明ですが、一応遡ってみると、
845 832 819 806 793 780 767 754 741
戦鎚は継承年が不明なので触りません。
以上を雑にまとめるとこうなります。
各知性巨人がきれいに738年~743年の間に継承されている、または死んでいることになります。巨人大戦でマーレが奪った事実とは合致している感じになりました。
では、それを踏まえて145代の継承を738年とすると、こんな感じになります。
144×13+5+102+13=1992
今度は8年足りなくなってしまいましたが、なんにせよ2000は13で割り切れませんので、どこかで継承年がずれないとつじつまは合わないのです。
ダイナやヴィリーの話から、巨人大戦というのは今までにない大きな出来事であったと考えられます。しかも、145代の継承が原因でその大きな戦争が起こったということは、継承自体に問題があった可能性があると思います。今までもこれからもあり得なかった”始祖の死”があるとすれば、ここではないでしょうか。
つまり、144代の任期満了より前に、145代が始祖を奪った可能性を仮定してみます。ただそうすると、さらに2,000年に足りなくなってしまうのでもう一つ仮説を重ねる必要があります。
今のところ作中では、誰一人として始祖ユミルのことを”初代フリッツ王”あるいは”王”と呼んだ人はいません。そもそも少女だったのかどうか分かりませんが、それが「巨人の力を得ました、ハイ、今日から王です」なんてのもちょっと安易な感じですよね。むしろ死後に「九つの巨人」が出来てからが始まりと考えたほうが自然かもしれません。もし始祖ユミルを初代ではないとするなら、こんな風につじつまを合わせることができます。
これでちょうど2,000年になります。もはやほとんど妄想でしかありませんが、もともとの計算式の強引な理屈よりはマシなんじゃないかと思わなくもありません。
145代が144代を殺したということは、そこで一種の”父殺し”のようなものがあったんじゃないかと推測します。そしておそらく壁内はその罪を背負っている感じかもしれません。
というのも、毎度のことながらアニメを根拠にするのはアレなのですが、2期でさりげなく意味深な改変がなされていました。「ひどい改変」のように言われていたようなので、覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
それはウトガルド城でナナバさんが喰われる寸前のこと。彼女はこう叫んでいます。
お父さん、ごめんなさい、もうしません
ナナバさんに親との確執があったのかもしれません。でも、そのバックストーリーを描くわけでもなく、わざわざ改変してこのセリフだけ入れるのって、なんか不自然ですよね。
私はこれを、壁の民の心の奥深くに眠っている罪悪感の発露ではないかと推測しています。父に反抗して始祖を奪い、壁という部屋の中に引きこもった子供から見れば、外から巨人が攻めてくるのは怒った父のお仕置きのようなものかもしれません。ウーリも力ではなく、謝ることで分かり合えないかと夢見ていました。もしかしたら壁の王は、父であるエルディア王に謝って欲しかったのかもしれません。力のある者が謝れば分かり合えるかもしれない、それでも力で仕返しにくるなら滅びるのもやむなし、と。
そんなこんなを考えていると、ジークは壁内に制裁、または許しを与えるような立場と言えるのかもしれません。そしてそのジーク自身も、もしもグリシャの謝罪があったらどうなるのか、なんて考えてしまうのです。
ちなみに「二千年後の君へ」は、クリスタから未来の始祖ユミルへのメッセージじゃないかと思っていますが、それはまた別の記事にて。
-進撃の足跡に関する小考察(妄想)-
ところで先ほどの継承年表ですが、
もしもこの通りだったとすると、なんとなく面白い点が2つあります。
まず、獣が始祖と一致している点です。獣だけは145代の継承と同時、または真っ先に殺されたのでしょうか。
獣というのは哺乳類、すなわち人間の象徴でもありますから、巨人を利用した人間の側と関係が深いかもしれません。壁内でレイス家が裏王家のような立場にありましたが、エルディア帝国も似たような形だった可能性があると思います。獣のフリッツ家と始祖のレイス家(あるいはフリッツ分家とか。)フリッツはレイスに指針を示し、レイスはそれを基に国民を操る、いわば主と”奴隷の長”のような関係。だとすれば、それをぶっ壊す理由は自ずと生まれてきます。
もう一点、進撃は一番最後に継承を迎えています。巨人大戦での進撃の動向は不明なのですが、マーレに奪われなかったことを考えると、進撃はレイス家側についていた可能性が高いのではないかと思っています。もしも上記のようにレイス家が奴隷のようであったなら、進撃がその解放を助けようとすることは誰もが納得いくのではないでしょうか。
そしてフリッツ王家と他の知性巨人たちが倒されてレイス家の解放が成されたとします。ところがご存知の通り、レイス家は罪の意識かみんなのためか、民衆の記憶を奪って引きこもる選択に至ります。将軍家やアッカーマン家が壁内に同行した上で、その仕組みが出来た後に反発を始めていることから、彼らも進撃と同じようにレイス家の解放に同調していた可能性もあると思います(将軍家は元からパラディにいたらしいので巻き込まれの可能性もありますが。)
自由になったレイス家が今度は民衆を縛るようなことをする、当然進撃は反発することでしょう。でもすでに人々は記憶を奪われ、壁は閉ざされています。記憶を保っていた将軍家がなんとかその状況を打開しようと外界に助けを求めるとしたら、壁の外の無垢巨人たちを突破できるのは進撃だけです。そこに一縷の望みを託して(1巻1話)
-いってらっしゃい
外の世界に辿り着いた進撃は秘密裡のうちに継承されていき、やがてクルーガーに受け継がれ、グリシャが再び壁の中へ飛び込んでいったのかもしれません。始祖を奪還して民を解放するために。だとすれば、進撃(エレン)がアッカーマン(リヴァイ)にとって、壁の民の希望であることは、現在に始まったことではないということになります。
・・というわけで、あれはミカサの先祖である将軍家の子女が、進撃を壁の外へ送り出す際に言ったんじゃないかと考えています。おそらく、全く同じ場所で。
-進撃(以下略)おわり-
※注 算数でもテクニカルでも無かったという苦情は受け付けておりません。
本日もご覧いただきありがとうございました。
written: 27th Mar 2019
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