進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

031 最新話からの考察 107話② 秘策

みなさんこんにちは。

 

※11/25 追記:この記事は107話読了時点での記事で、ジークの真の狙いは別のところにあると今は考えています。ただし、ここで”ネタバレ”として記している事柄にはほぼ確信がありまして、ジークの1枚目の裏の顔だと思います。そんな感じですのでご参考までにどうぞ。

 

 

!!閲覧注意!!
この記事は深読みしすぎか妄想の類かもしれませんが、もしかしたら今後作品内でタネ明かしされることのネタバレになる可能性もあるため、閲覧注意とさせていただきました。どうぞネタバレの可能性にご留意の上で、最新話の107話までお読みになってからご覧いただけますようお願い申し上げます。

 

 

この記事は最新話である107話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。

 

 

 

 

 

 


[秘策]

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以前の考察で、マーレ軍のカルヴィ元帥はエルディア復権派と繋がっているのではないかと考察しました。003 マーレ軍元帥カルヴィ ←こちらがその記事ですが、初期に書いたものであまり読みやすいとも言い難く感じるので、要点だけ書いておきます。

 

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25巻99話にて、ヴィリー・タイバーの演説中に何やら耳打ちをされる姿が描かれています。そしてそのタイミングは、ちょうどピークポッコが落とし穴に落とされた少し後、というものでした。未だこのシーンの意味は明かされていませんが、カルヴィ元帥があの作戦行動を把握していた可能性があるかもしれない、すなわちエルディア復権派(あるいは義勇兵)と繋がっていた可能性があるかもしれない、くらいの認識を持っていただければ充分だと思います。

 

 

 

 

さて・・

 


ジークには秘策があり、それは「エルディア人の問題を一挙に解決」し、「世界は救われる」ものであるとされています。もともと106話では”条件が揃うまでは明かせない”とされていましたが、「始祖の巨人」と「王家の血を引く巨人」というキーワードからエレンが地鳴らしを結び付け、それが兵団内での共通認識となります。これが3年前のことです。

 

そして107話にて、キヨミさんは「ジークとの取り計らい」としてこう言っています。

 

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-ご存知の通り ジーク・イェーガーは「秘策」があると主張しています
-エルディア人と世界を救う「秘策」にはヒィズルの介入が不可欠とのことです
-それは「地鳴らし」でこの島を守るために必要な三つの過程の一つです

以降、その三つの過程が説明され、第2の過程にヒィズルが必要ということになっています。これが2年前のことになります。

 

この頃のジークは中東戦争での任務から離れられない時ですから、3年前のイェレナたちの件と合わせ、パラディ島に事前に準備を済ませておいて欲しいことが、これらのことであると言えると思います。

そして約2か月前、中東戦争がようやく終わった時、ジークとしては早く動きたくて仕方がなかったのでしょう。さっそくジークの提案によってパラディ島への作戦が早まることになりました。

 

 

 

 

ここからネタバレになる”かもしれない”事柄を説明していきます。

 

 

 

 


その中東戦争後のジークの提案内容を、107話を読んだ今読み返してみると、奇妙な一致が見受けられるのです(以下、特に但書が無いものは23巻93話から引用)

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-しかしマーレの科学力が十分な水準に達するまで
-マーレに仇なす国々は黙っているでしょうか?
-今我々に必要なのは軍備再編までの空白を埋める時間

これらは、今回明らかになった”三つの過程”と全く同じ考え方なのが分かると思います。もちろん、同じ人が考えてるんだから~とも言えるわけですが・・

 

あれほどの大国であるマーレが少し遅れた科学力を追いつかせるのに、それほど時間が必要なものでしょうか。対巨人野戦砲が良い例だと思いますが、奪う、盗む、外交で得る、もともと少し遅れている程度なら、近い水準まで持っていくのはあっという間に思えます。ところがこれをパラディの科学力とするなら、確かに時間が必要でしょう。

ちなみにこれは私の見解ではありますが、作中でも同様の見解が示されています(107話)

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-最新兵器を導入することはそれほど困難なことではありません
-しかし近代的な軍隊を設立するためには強固な国力の土台を築く必要があります
-教育や経済力に外交力…そして人口

マーレは全て持っていることは明白です。

 

 

 

ここで上記を踏まえ、マーレをエルディアに置き換えてジークとカルヴィの会話を追っていくと、二人はあたかもエルディア復権派としての相談を、周囲に気付かれないように言葉を変換しながらしているように見えるのです。

 


細かく見ていきましょう。

 

 

 

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このカルヴィ元帥の言葉を聞いて、ジークは提案を願い出ます。カルヴィが言っていることは「マーレが弱体化した現状」ということです。

 

 

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-「驚異の子」ジークよ 言ってみろ

ジークの発言を求める言葉に対し、カルヴィは”なぜか”あだ名を付けて彼を呼び、許可します。おそらくこのあだ名が密談の開始を意味していると思いますが、それは後述します。その後ジークがパラディ島作戦の再開を提案しますが、マガトから横槍が入ってしまったため、それに答えつつ先述の提案理由を述べていきます。

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ジークの理由に対して、カルヴィは悩みながら、突如としてジークの「任期」を気にする発言をします。

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-お前の「任期」はあと1年足らずだったな……

もちろんパラディ攻略にはジークの獣の力が必要だという意味にもとれます。とれるんですが、やや突飛に感じる部分もなくはない感じです。でも密談だと捉えると、とても自然に繋がるセリフになります。つまり、「王家の巨人」を使えるのは、あと1年足らずしかなかったな、ということです。

 

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-えぇ…コルトが私の「獣」の能力をすべて引き継げるのか…
-私は とても不安でして…

もちろん引き継げないことは分かり切っています。周囲へのつじつま合わせでありながら、間もなく王家の巨人が失われることを強調しているのかもしれません。

 

 

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-残り1年の命をもって4年前の雪辱を果たしたいというわけか
-その通りでございます

1年で決着をつけるという合意でしょう。当然コルトに継承することはハナから考えていません。引き継げるか不安と言いながら、今までコルトに投球術だけでも教えてこなかったことは、あのノーコンぶりから明らかです。つまり、最初からコルトへの継承は考慮すらしていない、ということです。

 

 

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-あの忌まわしき驚異
-グリシャ・イエーガーの行いに終止符を打つのは
-かつての息子である私でなくてはなりません

 

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-さすがは「驚異の子」
-幼子が親を売って示したその忠義
-一度だって疑ったことは無い

この「驚異」に違和感を覚えた方も多かったのではないでしょうか。普通だったら「脅威」ですよね。「驚異」を辞書で引いてみてください。密談の根拠になりそうですので。

驚異とは、”驚くべき素晴らしいもの”という意味で、ポジティブな意味で使います。マーレ視点から見て、ジークの「驚異の子」だけなら理解できます。すごい能力を持ってますから。ところが、この「驚異の子」は、「”驚異であるグリシャ・イェーガー”の子ども」だということが、ジークのセリフから分かります。マーレから見て、グリシャ・イェーガーを”驚くべき素晴らしいもの”という表現はあり得ないはずです。つまり、この言葉が彼らの立場を代弁しています。しかも周囲の人間はこれを”脅威”と勝手に解釈することでしょう。読者のために仕掛けられたこの漢字は、後になってそういうことだったのかと思わせるための仕掛けである可能性は高いでしょうね。この二人が外部で密談をしているところを万が一誰かに見られたらまずいため、彼らはこの「驚異」を合言葉にあえて会議の場で相談しているのではないでしょうか。マーレ軍のトップであるマーレ人と、戦士とはいえエルディア人が仲良くしてたら怪しいですから。

とすると、ジークのセリフは「素晴らしいグリシャがやり遂げたことを自分が完結させなくてはいけない」という意味になるでしょう。そもそも、マーレ視点であるなら目的は始祖を奪還することであって、その対象がレイスであろうがグリシャであろうが関係ないんです。それをグリシャの行為のケツを拭くみたいなことを持ち出してくるのは、少し違和感があったわけです。

 

 

さらに会議後のコルトとの会話です。

 

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-王家の血を引いてるわけでもないのに

この目を描かない表現は、裏があったり、嘘をついていたりするような時に使われていることはご存知の通りです。ここでは当然、王家の血を引いてることを隠していることを表現しているわけです。そしてその直前、

 

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-素晴らしかったです……
-エルディア人がマーレ軍元帥に意見を通すなんて

民族問題を引き合いに出して感嘆するコルトの話を聞くジークの目が描かれていません。つまり、ジークは「実際はそうじゃないんだよ」と思っているのでしょうが、もしあれが密談でなかったとすると、ここで目が描かれていない意味が見当もつかなくなります。

 

 

 

さて、私にはもはや密談にしか見えないのですが、みなさんはいかがでしょうか? ぜひ騙されたと思って93話をもう一度読んでみてください。

 

 

 

 

ではとりあえず、これを密談だと”仮定”してみることにお付き合いください。

 


会議でジークはこう言っています。

 

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-「マーレがパラディ島を占拠し すべての巨人の力を手に収めた」
-という新聞の見出しが必要なのです

例によってマーレはエルディアに置き換えてください。これがジークとカルヴィの合意に至った”目的”かもしれません。

 


確かに、ジークは秘策は最後まで言えないとしながらも、何度となく「始祖の巨人」と「王家の巨人」が接触すると~と言うことを繰り返しています。エレンの発言により地鳴らしばかりがクローズアップされていますが、そうでは無かったですよね。始祖と王家の接触が「始祖の巨人」の真価を引き出すのであれば、地鳴らしはその一端でしかありません。

始祖の巨人の真価とは、間違いなく「全ての巨人を操れること」であるはずです。しかも、作中の言葉を借りて巨人と言いましたが、真価を発揮できたのか疑わしい初代レイス王ですら、壁中の全ユミルの民の記憶改竄ができているわけですから、言い換えれば「全てのユミルの民を操れること」と言ってしまって良いと思います。

 


そもそも、現在分かっている三つの過程だけでは、”エルディア人の問題を一挙に解決”も、”世界を平和”にすることも全く触れられていないですよね。さらに地鳴らしを脅し、あるいは行使したところで、それらの解決に繋がるとは思えません。ところが、上記の始祖の真価を考えた時、可能性が思い浮かんできます。

全てのユミルの民を操ることによって、エルディア人の問題は一挙に解決できるでしょうし、すべての巨人の力を収め、対外的に有利な状況を作れるでしょう。それはまさにエルディア帝国の復活なわけですが、エルディア人の問題については、いくつか可能性が分かれると思います。

記憶の改竄をするのか、記憶の解放をして分かり合いを求めるのか、といったところです。もともと私は記憶の解放について考察しているので、その展開はいずれありそうだと思っていますが、ジークの思惑は異なりそうなんですよね。


まず、当たり前ですけど、ジークにとってはパラディ島のエルディア人以上に、レベリオのエルディア人を守りたいはずです。今までカケラもレベリオの話が出てこないのも不自然なのですが、ジークが祖父母を含めたレベリオ民の記憶改竄をしたいとは思えません。であれば、記憶を解放するということになるかもしれませんが、そこにガビとファルコが絡んできます。

ジークはガビとファルコを誤算であると称しました。もし記憶の解放などで平和裏に両エルディア人を統合する感じだったら、ガビファルコの存在は些事でしかないはずです。もし両エルディア人の記憶を改竄するとしても同様、ガビファルコがいても全く問題ありません。

 

さらに気になるのが、今回のイェレナのセリフ(107話)

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-すぐにまた我々と食卓を囲む日が来ますから

これ、かつての王政を思い出します。つまり、ジークとエレンが接触さえしてしまえば、全て忘れてしまうという意味かもしれません。ただし、このセリフは同時に、地鳴らしで壁内エルディア人だけ滅ぼして、レベリオ民が取って代わるわけではないことの示唆にもなっています。おそらく彼らは壁内勢を今後も戦力として必要としているのでしょう。無垢巨人を掃討した壁内勢を「期待以上だ」と評したことも繋がっているように思います。


すると現時点で考えうるのは、壁内勢を記憶改竄して都合の良いように使いつつ、レベリオ民を記憶をそのままに移住させ、新生エルディア帝国として世界に君臨する感じでしょうか。レベリオの知性巨人は必要があれば記憶改竄する腹積もりもあるかもしれません。壁内を記憶改竄する過程で多少小競り合いになることも想定するならば、ガビファルコがいて欲しくない理由になるかもしれません。少なくともジークが秘策を隠したまま「エレンと会わせろ」と繰り返していることは、接触さえしてしまえばそれ以外のことはどうとでもなるという示唆に思えますね。

 

 

だいぶ秘策が見えてきた感じではありますが、実はまだ「世界は救われる」を回収していませんでした。これは大雑把に2つほど思い当たります。

まず、エルディア帝国として再び世界を支配することが世界平和だと信じている、という可能性。かなり独善的な見方ですが、実際にオニャンコポンやヒィズルのような存在は、かつてのエルディア帝国の治世が悪ばかりではなかった可能性も示しています。

少しかぶるのですが、もう一つは、始祖の真価の及ぼす影響がユミルの民にとどまらない可能性。もしかすると天変地異というか、そんなレベルまでいけるのかもしれません。巨人化学あたりで今後考察していきたいとは思っていますが、おそらくキーワードは神だと思っています。

 

 

さてさて、エレンはそんなジークの思惑は知らないでしょうから、また二転三転あるとは思います。来月が待ち遠しいですね。

 

 

 

 

 

 

-よもやま-

 

前回、墓場のシーンにアルミンがいないことが重要と書きましたが、ヒィズルとの会合にアルミンがいないことを指摘している方がネット上ではけっこういらっしゃるようなので、ちょっと蛇足を書きます。

端的に言うとあの場面にアルミンがいないのは自然というか、いたらおかしい、くらいですよね。まがりなりにも国家と国家の会合のようなものですから、国家の重鎮(ヒストリア女王、兵団のトップクラス)と主題の直接の関係者(始祖の巨人、将軍家の末裔)しか着席していないわけです。リヴァイですら着席していません。イェレナたちと同様に、警護として立ち会ってる感じだと思います。ピクシスでさえ別席です。当たり前ですが、ジャンたち兵団員は参加しておらず、そこにアルミンが呼ばれる必要も意味も全くないでしょう。賢いとか幼馴染3人衆とかは関係なく、アルミンはただのヒラ団員ですから。


ところで、ヒィズルについてはまた別の裏がありそうなのですが、まとまってないので機会を改めます。ただ、ジークはヒィズルに隠し事をしていると思います。というのは、親の密告を単独でやったように話していることです。親たちの復権派会合を見聞きし、お遊びだと断じ、それを密告すれば自分と祖父母は助かると計算する7歳。その後両親の活動の痕跡は全て奪われ、マーレによる情報規制の下で現在に至るコネクションと、他の誰も知らない知識を全て一人で身につけてきた、なんてのはあり得ないでしょう。やはり7歳の子どもが誰の後押しもなくやったというのは無理があると思います。必ずそれを導いた存在があるはずで、そのあたりからも、ジークにとってはヒィズルも仲間というよりは、利用する存在だと見て良さそうです。

ヒィズルに関して言えるのは、ヒィズル国自体はともかく、アズマビト家は「始祖の巨人」と「王家の血を引く巨人」の接触で何が起こるか知っている、ということですね。そしてキヨミさんはそれを「世界の平和」ではなく、「世界の危機」に繋がる可能性もあると考えていることも分かります。

 


あと引っ掛けがあるとしたら、ジークもキヨミさんも「王家の血を引く者」をヒストリア、あるいはレイス家だとは明言していません。まぁこれは深読みし過ぎでしょうが。

 


最後に、これはただの妄想の話なんですが、ガビとファルコがしばらくさまよった挙句に、ダウパー村にたどり着いて、サシャのお父さんに保護されたら面白いですね。いや、都合良すぎではありますが。

 

-よもやま おわり-

 

 

 

 

本日もご覧いただき、ありがとうございました。

 

written: 12th Jul 2018
updated: 25th Nov 2018