進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

058 巨人化学⑪ 生命-II attack on titan

みなさんこんにちは。

 

 

この記事は 057 生命-I の続きです。そちらの警告文をお読みになった上で本文をご覧いただいた方のみご閲覧ください。警告をご承諾いただいてない方の閲覧はお断りいたします。

 

 


この記事は最新話である112話までのネタバレを含んでいる可能性があります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。 

 

 

 


[attack on titan]

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人間というのは脆弱な生き物です。力では大型の、いや同サイズの動物にすら勝てません。敏捷性は小型の動物にも劣ります。鳥のように空を飛ぶこともできなければ、魚のように高速で泳ぎ回ることもできません。目に見えない細菌やウィルスの侵入を簡単に許し、あっさりと大量殺戮をされたりします。地球全体から見ればちっぽけで非力で、のろのろと地面の上を動き回っている動物に過ぎません。ところがそんな存在が食物連鎖の頂点に立ち、いわば地球上を支配している、それが現実に起こっていることです。

人間を支配者たらしめたものは何なのでしょうか。他の生物と命運を分けたものとは一体なんなのでしょうか。そんなことを考えてみると、全ては知性というものに行き着くように思います。動物にも知性を持った種は多くありますが、人間ほどそれを発達させた存在は他にありません。その差が最も顕著なのが、脳の一番新しい部分である大脳新皮質に発生した意識という機能だと思います。意識の獲得によって人間は自分という存在を半客観的に認識できるようになりました。自我の誕生です。

知能の高い動物の中には言葉を解する種もあるようですが、数えられる程しかいません。餌などの条件付けによって”なつく”生物はもう少し増えます。そして、集団行動を行う生物はもっと増えます。これらは知能の発達の段階を現していると思います。さらにここからは、知能というものに関してある共通点が見えてくるように思います。

言語、なつく、集団行動・・そのどれも、全ては他者との関わり合い、現代風に言えばコミュニケーションにまつわることばかりなのです。つまり知能が発達すればするほど他者とのコミュニケーションが円滑となる、裏を返せば、それが知能の存在意義だということになるでしょう。

非力な人間が他の生物に生存競争で打ち勝つために、集団で行動する機能を発達させてきたと考えれば符合が合います。人間が単独で生き残るのは非常に困難です。安全な現代でさえ、完全な自給自足なんて容易にできることではありません。他者との協力によって生き残りやすくする為に知能を発達させ、その結果として生存競争を勝ち抜き、地球の支配者となったということなのでしょう。

 

ところで、みなさんは昆虫に人間のような知能があると言われたら信じられますか?

あの米粒ほどの脳容量しかない虫です。しかし虫の中には、人間に負けずとも劣らない社会生活を営む種がたくさんあります。ご存知の方も多いでしょうが、アリやハチなんかがその代表です。

それらは、まるで職業の概念があるかのように分業をして暮らしています。外敵と戦う戦闘員がおり、食べ物を見つけ巣に運ぶ者がいます。巣の増築やメンテナンスをする者がいます。女王が生んだ子や女王のお世話をする者もいます。女王でさえ、ひたすら子供を産み続けるという役割を持っています。

面白いのは、みんな同じように女王から生まれてきたのに、戦闘型と内職型で体の大きさや機能が全く異なる成長を遂げるところです。それはあたかも運命付けられた役割であるかのように、そしてその役割を果たすことだけに専念して一生を終えます。まさに個を捨て公に身を捧げているのです。

基本的には子を設けるのは女王だけなのですが、外敵などに女王が殺されたり、女王自身が弱ってきたりすると、突如として子供たちの中から女王に成長する個体が現れるそうです。そんな感じですので、生物学者はアリの生態を調べる際に巣をひとつの単位として考えなければなりません。働きアリ一匹だけを見ても、それはあくまでアリという生物の一部分でしかないのです。まるで全体が一つの意志を持っているかのように”生きて”いるのです。


おそらくこれが「道」のモデルであるというのは、もうみなさんもお気付きになったのではないでしょうか。


でも、これってアリやハチに限ったことではありません。私たちの中にも「道」のようなものが存在していると私は考えます。

みなさんは食べ物から栄養を摂取することによって、体中の細胞を取り換えながら生きていますよね。人間は数十兆個の細胞が集まってできています。そして、頭や首や腕や足といったように、様々な特徴を持った部位を持っています。ではあなたが栄養素の一つだったとして、あなたが手の細胞になるのか、足の細胞になるかは誰が決めているのでしょうか。むろん栄養素にそんな決定権はありませんし、人間の意識は何かを食べる時に「手にな~れ、足にな~れ」なんて考えることはありません。それどころか、栄養が一箇所に集中することもなく全体に按配されています。つまり、みなさんの意識が知らない間にそれを取り仕切っているフィクサーがいます。

身体全体の調整を行っているのは無意識です。そして無意識とは形が無く目に見えません。でも、体の隅々まで繋がっていて全体のためにそれを調整しています。同じ栄養素を材料に、ある時は爪に変化させ、またある時は足首の細胞に変化させます。要するにこれって生物全般に存在する機能ですよね。「道」って、言うほど荒唐無稽な設定ではないかもしれません。

足首の細胞はたまたま足首になっただけで、もし爪になっていたらもっと固い物質になっていました。足首の細胞は自分が足首であることを認識していません。ただ全体の意志に従って、足首の細胞としての役目を力尽き果てるまで続けるだけです。「道」で繋がっている巨人たちは、全体の意志によってたまたま巨人の姿をしているだけかもしれません。私たち人間は身体中の生きてる細胞を集めた一つの生命であり、アリはコロニーを単位として一つの生命としての振舞いを見せます。ユミルの民も全体を一つの生命とした細胞のような存在であると捉えられるかもしれません。だからそのパーツが失われた時、赤子継承として代役が発生するのかもしれません。それはまさに先に述べた女王アリのように。

 

その目には見えない「道」という一つの生命が本体で、パーツとして巨人という実体を用いて生きているとするなら・・

 


attack on titan

巨人に 乗っかって 戦う、ということではないでしょうか。

 


・・この英題は本当に面白いと思います。エレンたちを見れば本当に巨人に乗っているようですし、巨人への攻撃といった意味にも捉えられます(その場合 attack on titans、あるいは on the titan とするのが正確なのかもしれませんが)。もし「道」が乗っていることも暗示しているとなれば、トリプルミーニングになりますね。

 

 

 

 

 

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-人が人と違うのはきっと
-こういう時のためだったんだ
(18巻72話)

 

目になる細胞、指になる細胞、つま先になる細胞、人と人が違うのはそういった役割を果たすためなのかもしれません。そしてそれらは、どれも欠かすことのできない大事なパーツであるとも言えるかもしれません。


次回に続きます。

 

 

 


-おまけ-

 

本文で挙げたアリなどを社会性昆虫と呼ぶのですが、それらが他の生物と一線を画するのは女王しか子を産まないということです。生命は種を繋ぐことが根本的な性質としてあり、どの生物も子を作るというのが生涯の大目標なのですが、女王以外のアリは子を産まずに一生を終えます。これは生物としては非常に異例なことです。

これを「不妊カースト」と呼んでいます。生まれながらにして子を残せるかどうかの地位が決まっている感じなんですね。

 

あれ? カーストって最近どこかで聞いたような・・

 

-おまけおわり-

 

 

 

 

 

本日もご覧いただき、ありがとうございました。

 

written: 20th Dec 2018
updated: none