進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

057 巨人化学⑩ 生命-I 巨人

みなさんこんにちは。

 

巨人の設定から世界観を探るコーナーです。112話の熱気も落ち着いたところで、今回から冬休みの自由研究よろしく(休みじゃねぇですが)全てを包括した記事をこっそり書いてみたいと思います。ただ、あまりに壮大すぎて私の文章力ではキレイにまとめきれないので数回に分割する形にしました。多分5~6回くらいです。

 

!!警告!!
この記事はこの作品の根底にある設定やテーマに関するお話です。キャラやストーリーの展開に直接関わるものではなく理屈っぽい話でもありますので、そういうのが好きな方のみご覧ください。また、この内容は連載が終わってから見るべきものだと思っております。ネタバレの度合いは今まで閲覧注意を付けてきた記事なんて比ではありません。今回から続く記事を最後まで読むと進撃の見方がガラッと変わる可能性があります。正直なところ書くかどうか迷いましたが、私は個人的な承認欲求と書きたい欲求を満たす自由を行使するのみであり、この警告文は私なりの自由に伴う責任です。これが的外れだったとしても私は笑いものになる程度で済みますが、もしもその通りだった場合に”知ってしまったこと”を取り消せないのはあなたです。どうかくれぐれもご勘案の上、読む自由か読まない自由を、ご自身の自由意志にてご選択ください。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。 

 

 

 

 

[巨人]

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もともとブログ全体の説明文には「進撃はヒューマンドラマだ」なんて書いていました。実際そう思って読んできましたし、読めば読むほど確信を深めていたんです。

でも今は、正確に言えば間違っていたことに気付きました。

この作品は人間にとどまらず、生命そのものを描いていると思います。こんなことを考えついた作者は尊敬しますが、はっきり言って頭おかしいとも思います(誉め言葉)。

 

 

 

 


この物語の始まりが始祖ユミルであることは言うまでもありません。まるでおとぎ話のような、あの逸話から全ては始まっています。ただし今回は104期の方のユミルから始まります。


巨人について考える時、ユミルは非常に重要なサンプルです。というのも、彼女は無垢巨人にされてから60年ほど壁外を彷徨っていたからです。長らく無垢巨人だった末に知性巨人になったのは、今のところ作中では彼女だけですね。

まずは一つ思い出してください(13巻51話)

 

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今までハンジが切り刻んだ無垢巨人たちは、うなじを開いても何も出てこなかったとされています。ただそこには見えないけど脳と脊髄だったであろう何かがあって、それが巨人の生命線になっているのは確かなようです。エレンが何度も取り込まれかけていたのを考えれば、人間の身体はやがて巨人に取り込まれていくのだろう、それに伴って意識も消失してしまうだろうという推測もできます。ここで重要なのは、身体だけでなく脳と脊髄も消えていたことです。

では約60年の間、無垢巨人として壁外を彷徨っていたユミルはどうなっていたと思いますか?

 

当然、巨人に取り込まれて跡形も無く消えていたと考えるのが自然ですよね。

ということは、104期として壁内で活動していたユミルの身体は、巨人になる前の身体に存在したDNAかなにかの情報から復元されたものだと考えられます。ユミルの肉体が70~80歳の姿でなかったことはそれを裏付けているでしょう。

かつての肉体が全て無くなっていてそれが復元された、その意味するところは、ユミルという人間がゼロから丸ごと作り上げられたということです。巨人たちは身体を切り落としても再生できるんだから当たり前だろって思われるかもしれませんし、その通りなんですけどね。大事なのは、巨人はそれをすることができる、ということです。


翻って、人間ってどうでしたっけ?

人間も、怪我をしたらやがて治ります。そもそも私たちの身体は新陳代謝によって細胞が日々入れ替わっていますから、全てを再生していると捉えることもできるかもしれません。

ただし、限界があります。

人間は失った自分の腕を再生することはできません。壊れた臓器を修復することもできません。いったん失ったものを再生することはできないのです。

ところが巨人はそれをできます。だから心臓に剣を突きたてても死なないわけです。これは人間と巨人の大きく異なる特徴と言えますよね。

 

ここで一つ、問います。ぜひ自分の答えを出してみてください。

 

問1
ユミルは顎の巨人を継承したことによって人間に戻りました。ウトガルド城では内臓をぐちゃぐちゃにされましたが死ぬことはなく、失った腕や足もまた生えてきました。

 

ユミルは、人間と巨人、どちらに近いと思いますか?

 

 

 

 

答えを思い浮かべていただけましたでしょうか。

 

 

 

 

巨人、ではありませんか?

 

もちろん彼女はユミルの民であり知性巨人ですから、当たり前だと怒られそうです。でも、今までの私も、たぶんみなさんも、みんな固定観念に囚われているかなと思います。

はっきりと書きます。

 

ユミルもエレンもアルミンもライナーも、彼らは巨人であって人間ではありません。


こう書くと抵抗感が出てきませんか? もし抵抗感を覚えたなら固定観念があると言うことです。さっきの問いに「巨人に近い」と思った方はこれを否定することはできないと思います。

言うなれば、顎を継承したユミルは人間に戻ったのではなく、あれはユミルの姿をした巨人です(3巻10話)

 

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-人間です

実はエレン、答えを間違っていました笑 (11巻46話)

 

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-もう人間じゃねぇんだぞ お前らは!!

本人の意図はともかく、こちらは合ってました。

 

冗談はさておき、これは単なる言い方や見方の問題のように感じるかもしれませんが、彼らが人間であるという固定観念は失くした方が良いと思います。

ちょっと詭弁っぽいのですが、一つ例を挙げてみます。

進撃はよくファンタジーだと言われます。そりゃ私たち現実の人間にしてみれば巨人になることはあり得ませんから、至極当然の話だと思います。巨人について考えようとするとだいたいこんな感じになるでしょうか。

なぜ人間が巨人になるのか→ユミルの民だから→ではユミルの民とはなにか→遺伝するようだから細胞かDNAに秘密がある?→なぜ人間がユミルの民になったのか→「契約」があったから

結局、謎は謎のまま、新たな謎がどんどん増えていってお手上げな感じですよね。でもこれは人間視点で、私たち人間の常識で考えているからです。彼らが巨人であるという視点から見ると、謎が一つ、謎でなくなります。

なぜ人間が巨人になるのか→人間は巨人になりません。彼らは巨人だから巨人の姿をしているだけです。彼らは人体をゼロから作り出せるから人間の姿をすることもできると考えられます。

じゃあ巨人ってなんなの? って話にはなると思いますので謎はもちろん残るんですけど、少なくとも考えるべき問題が変化しているのがお分かりになるかと思います。問題の本質は違うところにあった、ってやつです。やっぱり詭弁な感じは否めませんが・・


まぁとりあえず、今回はみなさんが「ユミルはどちらかと言えば巨人だ」って感じたことだけ重要だと思ってください。


次回に続きます。

 

 


あ、別に根拠とか言うつもりはありませんが、一つ面白いものをお伝えしておきます。


アニメ1期前半のオープニングが始まってすぐ、画面全体が血塗れになっていて縦揺れしています。

まさに”巨人の視点”を表現しているんだと思います。

 

 

 

 

-長い補足-

 

この通過儀礼だけでは内容が無さすぎるので、補足を付けます。

ただ、先に一つお断りしておかなければならないのは、私の理解が浅い分野ですので誤りがあるかもしれません。そのため補足にしたという大人の事情もあります。付け焼刃程度の知識しかありませんので、詳しい方がいらっしゃいましたらご指摘などコメントいただけたら幸いです。いろいろと教えていただけたら嬉しいです。


何の補足かと申しますと巨人の仕組み、その物理の方です。巨人の身体はいったい何でできているのか。

さっそく結論から言ってしまうと、たぶんプラズマだと思います。うさんくさくなってしまうので大槻教授のことは忘れてください。最近はプラズマテレビの方かもしれませんが。

プラズマというのは個体・液体・気体に次ぐ、物質の第4態とされている”状態”です。個体~気体への変化は温度が上がることによって成されますよね。温度が上がると「氷→水→水蒸気」といった感じで変化していくわけです。同様に、気体をさらに加熱するとプラズマになります。原子から電子が飛び出した電離という状態になってまして、元の原子より広い範囲に影響を及ぼします。つまり、体積が大きくなります。もしも人間の肉体の全ての原子をプラズマ化することができたら、大きく膨れ上がると思います。でも、あくまで電子が飛び出したから広がっただけですので、構成する物質の量は変わりません。ということは、見た目は大きくなりますが質量は変わりません。

プラズマが生み出すエネルギーは気体と比べても膨大です。現在も新たなエネルギー源としての研究が盛んに行われている程で、あの巨大な身体を支え、大きな力を出すこともプラズマなら可能だと考えられます。そしてプラズマは気体がさらに加熱された状態ですから熱いです。ところで人間の身体の大部分は水でできていますよね。巨人体はプラズマ状態の水だと考えてみると、冷えたら気体になるわけです。結びつきを失った、すなわち切り落とされた腕は空気に冷やされて水蒸気になり、空気と混ざっていきます。つまり消えていきます。

あまり身近な印象がないかもしれませんが、炎も雷もオーロラも蛍光灯もプラズマです。この宇宙の90%以上がプラズマ状態の物質で満たされているそうです。実はありふれた状態なんです。アニメでは、巨人化の際に雷が落ちるような表現がされてますよね。プラズマは電子が飛び出すことにより電荷を持っていますので、それが雷を誘発しているのだと思います。同じくアニメでは超大型なんかに筋肉の一部が光る描写も見られます。これも同様に、電子が飛び出して自由に動いていることから説明できると思います。

プラズマは核融合にも利用されています。核融合とは原子と原子を合わせることで別の原子を作ってしまおうという、現代の錬金術のようなものです。むか~しむかし、この世の物質はいろんな種類の原子でできていると考えられていました。その中で、鉄(Fe)を金(Au)に変えようという夢を抱いていた感じです。でも全く別の物質に変えるってのは現実味がありませんでした。ところが今では、全ての原子はクォークレプトンというもっと細かい物質の組み合わせで出来ていることが分かっています。すると、元となる材料は一緒なんですから組み合わせなどを上手くやればできそうですよね。とはいえ、ゴールドを作るのはかなり難しいらしいです。それでも超高温+超高圧という条件さえ揃えばできるそうです。金が作れるなら、皮膚を固い物質に変換する、空気中の物質から人体を作りだす、なんかできそうな気がしてきませんか。人間なんてほぼ水ですし。あと、プラズマは特定の条件化で結晶になるそうです。

 

プラズマをそんな風に自在に操れる生物がいるはずないって思われるかもしれません。そこでこんなことを考えてみました。

私たちが原子の存在を知ったのは学校で習った時ですよね。ところで私たちは生まれてすぐに呼吸を始めます。呼吸を細かく言うと、窒素が大部分を占める中に少しだけ水や酸素や二酸化炭素が混ざっている空気という目に見えないものを吸い込んで、そこから酸素だけをピックアップして残りを排出しています。つまり、私たちは原子という存在を知る以前からそれを活用しています。言うなれば私たちの身体は酸素という原子を知っていて、それを利用する仕組みに最初から出来ているんです。その利用するものが宇宙にありふれているプラズマである可能性、私は普通にあり得ると思います。

 

雑な説明ですみませんでしたが、プラズマを持ち出すだけで現実の物理学に反することなく巨人の身体に関することはほぼ説明が付けられてしまうかもしれません。もちろんフィクションですので小さな嘘の部分もあるでしょうし、見た感じを言ってるだけですので根拠なんてありませんけどね。


-補足おわり-


それではまた巨人化学⑪にて!

 


本日もご覧いただき、ありがとうございました。


written: 19th Dec 2018
updated: none