進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

056 最新話からの考察 112話①.55 追記の補足

みなさんこんにちは。

 

前回の追記にいただいたコメントから気付いたことがあり、エレンへの理解を深める上で良いテーマだと思いましたので追記の追記になってしまい恐縮ですが記事にしました。054055 の両記事をお読みの上でご覧いただけると分かりやすいかと思います。


この記事は最新話である112話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。注記の無いものは全て112話からのものです。

 

 

 


[追記の補足]

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今回の言動の裏にあるものを探るにあたって、誰もが感じている通り、エレンの言っていることは必ずしも正しくない、というのは作中に書かれている事実からもほぼ間違いないでしょう。問題になってくるのは、エレンが意図的に嘘をついているのか、そうでないのか、という部分だと思います。

私は現在、後者ではないかと思っているわけですが、エレンを理解するヒントになり得るかもしれないと感じ、その根拠についてお話させていただきます。

 

まず前提として、私はエレンってその時々の感情をものすごくストレートに言ってしまう(悪く言えば上手に気をまわせない)人だと感じています(5巻19話)

 

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-ま…まずいか…?
-これ以上は黙った方が…

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-この腰抜け共に……
-この…腰抜け共め…

特にこの審議所、考えと同時に言葉が出てしまっている感じです。さらにはエルヴィンリヴァイと出会った牢屋での言葉とか、アニやライナーが疑われた時の食ってかかる言葉にも同様のものを感じます。シガンシナではアルミンの話し合いを否定する言葉がとっさに口に出ますが、直後には全てはアルミンのおかげだと兵長に食ってかかっていました。その時々で思っていることを口にしてしまう、それも言いにくいことも平然と言ってしまう(空気を読まない)ような感じがあります(13巻54話)

 

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-不自然で正直気持ち悪かったよ

エレンは意図していませんでしたが、ヒストリアはこのストレートな言葉に救われています。サシャの死に対する笑いも「死ぬ時でさえお前の目的は肉なのかよ、お前らしいな」っていう、手向けであり懐かしむ気持ちがストレートに出たもののように感じます。

 


かつてエレンは、お決まりのようにジャンと言い合いをし、取っ組み合いをしていました。

エレンがジャンから様々な気付きをもらっていることは作中でも分かりやすく描かれていますから、エレンの心のどこかにはジャンを認める部分があったのは間違いないと思います。そうでなければ文句すら言わないものですよね。つまり、エレンの中にはジャンを認める部分と認めない部分が同居していたと考えられます。でも、エレンはジャンのいない所でも憎まれ口を叩いていました。つまり表の意識では、単純になんか気に食わないと思ってたんでしょう。いつも全く関係ないことを言って殴り合ってるのは、反論できない部分を無意識的に避けているからだと思います。

認める部分とそうでない部分があって、その両者のうち表に出てきているのは後者の方なわけです。これを「あいつの言ってることは分かる部分もあるけど、そうじゃない悪人の部分があって、その悪い部分を矯正したいから悪口言わなきゃ」とエレンが意識していたと考える方はいないと思います。


エレンはミカサに対して、「もう家族を失いたくない」など理解できる部分はあったけど、それでも何であそこまで執着するのか理解できない部分がありました。もともとエレンは彼女を突き放すようなことを度々言っていたことから分かる通り、やっぱり表に出てるのは後者です。これも同様に、今まではミカサのために自立を促してたわけではなく、単にあれこれ構われるのが嫌だったわけですよね。

その理解できない部分に上手く理屈を付けられるのが「アッカーマンの血」だった、ということではないかなと思います。理解できなかったものが理解できるようになる、自分の感じていた違和感が正しかったことになる感じです。だからそれを述べました。


アルミンと喧嘩にならなかったのは、注射器以後までは彼の言うことを全て正しいと思っていたからです。でも、ここ数年は正しいと思ってなかったことが既に描かれています。表に出るのは・・後者ではないでしょうか。それに上手く理屈を付けられるのが「ベルトルトの影響」だったのかなと思います。アルミンがすごいやつだったことも、今は正しくないと感じることにも矛盾しません。自分の違和感が正しかったことになります。だからそれを述べました。

エレンは、お前はすごかったということを過去形で言っています。お前はすごいけど今は操られている(だから目を覚ませ)ではなく、お前は以前はすごかったけどもう脳がやられちまった、と言っているだけかもしれません。

 

意識レベルで考えた時に、自分の考えに反対する人たちへ苛立ちながら、その相手に自由を促すというのはどうも矛盾が生じるように思います。エレンが言ってることは、お前らは無知で不自由だからオレに反対したんだ、と受け取ることもできます。つまり知れば分かる、自由になればオレの言ってることが正しいと分かる、みたいな感じです。選択の自由というより、自分の意見の正しさとそこへの同調を主張していることになると思うんです。

自由な選択を志向するならば反対も自由意志だと受け止めてもいいように思いますが、エレンは苛立ちを隠さず、だんまりまで決めこんでいました。あるいは二人は違う、ハンジや他の人たちは自由意志で反対したからムカつくけど、二人は自由意志じゃなかったからムカつかないってことでしょうか。それでもやっぱり、二人が自由意志だったらオレの正しさが分かるってことになりそう・・かな。


個人的な理解ですが、人間ってぜんぜん合理的じゃないし、この作品ってずっと非合理さの方が描かれているように思っています。確かに、人間の感情には相反する両面の想いが潜んでいるものだと思います。「以前はすごかった」「お前らは無知だから自由じゃない」という言葉の裏には、「しっかりしろ」「自由になれ」って無意識的な裏があることが考えられます。もしかしたらそれがエレンの言動の根源だった可能性もあります。でもあくまで無意識的なものでしかないように思います。そして、最後にどちらを選択するのかはやっぱり自分の都合でしかないと思います。だからこそ人間は非合理な行動を繰り返し、争いが無くなることはないんだろうなと思ったりするのでした。

今回の話は、どちらとも取れる描き方がされており、いろんな解釈ができると思います。今のところ私は、大事だと言ってた104期を始め兵団の仲間たちの中で、ミカサとアルミン二人だけに変な線引きをする小さい男よりも、人間の性質によって自分が正しいと思いたがる人間くさい男であって欲しいので、意図的に嘘を付くことは無いんじゃないかと”思いたい”感じです。

 

 

 

 

ところで、かつてジャンとエレンがやり合っているのを見て、サシャは「愛情表現」だと言いました。第3者の視点、ですね。

 

するとアルミンから見て他の二人のやり取り、ミカサから見て他の二人のやり取りは似たような感じに見えてくるかもしれません。ですので、あの二人が「エレンは私たちを引き離そうとしているんじゃないか」と”誤解”する可能性はありそうだと思っています。

 

 


本日もご覧いただき、ありがとうございました。


written: 12th Dec 2018
updated: none