進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

055 最新話からの考察 112話①.5 追記

みなさんこんにちは。

 

前回初見での印象を書きましたが、あれから考えてみて少し異なるニュアンスの可能性を感じたので簡単に追記です。


この記事は最新話である112話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。注記の無いものは全て112話からのものです。

 

 


[追記]

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まず、エレンがミカサとアルミンに言ったことの土台は、確実にエレン自身の中にあったことは説明するまでもないかと思います。ミカサに世話を焼かれることに反発していましたし、この3年間のアルミンの言動に懐疑的な視線を向けていたことが描かれています。あくまでそういうモヤモヤした感じを持っていただけで、はっきりと「嫌いだ」とか「使えない」と思っていたわけではないでしょう。それを踏まえて。

 

 

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-オレは自由だ

 

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-それはオレの自由意志が選択したものだ

アルミンの問いに対し、一方的に繰り返すように”自分が自由であること”を言っています。それはなんだか自分に言い聞かせるかのようにも聞こえなくありません。あるいは、不安を打ち消すようであるとも受け取れるかもしれません。

 

エレンの視点からここに至る経緯を振り返ってみれば、あのマーレの襲撃は、自由のためにしたことは疑いようがないと思います。そして、それは当然パラディ島のため、みんなのためでもあったはずです。「みんな来てくれて良かった」の後、そのみんなから非難され、投獄されて1カ月の期間がありました。その間には操られてる疑惑も浮上しています。こんな疑問が去来するかもしれません。

①つまり俺は間違ってたのか?
②ということは俺は誰かのいいように動かされたってことか?操られてるのか?

エレンにはずっと自由を求めて戦ってきた自覚があります。そんな彼にとって「操られていたかもしれない」などというのは、耐え難い、決して認めることのできないような話だと思います。すると②をひっくり返す方向へ考えが向かうはずです。こんな感じになります。

①つまり俺は間違ってたのか?
❷俺は操られてない。俺の自由意志だ。

もともと①の「みんなが俺を否定している→俺は間違っているかも」が根拠となって②「俺は操られている?」という疑問に繋がっていたわけです。そして②をひっくり返しただけだと、”俺が自由意志でやったこと”、つまり自分が自由を求めた行為が間違っているといった自己矛盾に陥ります。こういう場合に人間の脳は①を否定する材料を探します。

❶俺は間違ってない
❷俺は操られてない。俺の自由意志だ。

自分が間違っていないということは、それを否定しているみんなが間違っているんだろう、となります。おそらくここで先ほど書いた”もやもやした記憶”とジークから聞いた知識に結びつきが生まれたんだと思います。

 記憶は個人の思考に影響を与える
 アッカーマンは王家を守る仕組みを持つ

それはこんな感じだったかもしれません。

そういえばアルミンがぬるいことを言い出したのは、シガンシナ戦が終わってからだ。つまりベルトルトを喰ってから。そういうことか。あいつはベルトルトの影響でおかしくなったんだ。ジークの言っていることは本当だ。ああ、そうか。子供の頃、ミカサにもやもやした感じがあったのは、あいつが不自由な存在だと感じていたからか。仕組みに支配された奴隷だからむかついてたんだ。やっぱりジークの言っていることは本当だ。

合点がいってしまったのかもしれません。だから理屈に合う、二人の都合の良い部分だけを取り上げてしまっているので、上っ面だけを見て言ってる感じになっているのでしょう。

 

ただ、もともと疑問に思ったということはどこかにその可能性を感じているということです。つまり、自分は間違っているかも、という想いは完全に拭いされていないと思います。だからこそ、”特別なあの二人”に確認したかったのかもしれません。

 

俺は自由だよな?お前らなら分かるよな?って・・

 

そう考えると、二人の第一声はタイミング的に最悪のものでした。

 

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-本当に…ジークやイェレナに懐柔されてしまったのか…

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-いいえ あなたは操られてる

エレンは二人の言葉を受けて、”俺は自由”を連呼し、それぞれを口撃し始めています。

 

 操られてるのは俺じゃねぇ、お前らだ

 

この感情の流れは以前も描かれてましたよね。”俺が悪いのか?、いやお前が悪い”って。(詳しくは 032 エレンの場合 をご参照ください)

 

・・ということは、やっぱりエレンは相変わらずエレンなんです。三つの巨人の影響を受けていることは間違いないでしょう。でもやっぱりエレンなんだと思います。そしてそれはミカサやアルミンにも言えることなんでしょう。アルミンが言った端的で見事なツッコミ通り、アルミンが操られているのならば、エレンはもっと操られていることになってしまいます。でもエレンはその矛盾に気付かずに都合の良い部分だけを引用してしまったのでしょうか。少し知識に溺れているところもあるかもしれません。

それに火を付けてしまったのは、二人がエレンの自由を疑う言葉かもしれませんが、その言葉は本当は”エレンを信じたい”という気持ちの裏返しでもあるわけです。もの悲しい、ボタンの掛け違えなのかな、と。

 

 

 

本日もご覧いただき、ありがとうございました。

 

written: 10th Dec 2018
updated: none