077 最新話からの考察 118話① うそのほことたて
みなさんこんにちは。
※2019/6/16 -よもやま-部分を一部修正しました。
118話、普通に面白すぎてやばかった・・語彙が足りてませんが、ともあれ感想などあれこれ。今回は(今回も)ちょっとまとまりがありません。
この記事は最新話である118話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。注記の無いものは全て118話からのものです。
[うそのほことたて]
まずは細かいところを触っておくことにします。
今回は何より、イェレナさんがのびのびし過ぎてるのが面白かったです。
104期が出てきてもどこ吹く風、オニャンコが出すことを予想していたかは定かではありませんが、むしろどうでもいいって感じでしょうか。
「”そんなことより”ごらんなさい、我が神の御業を」とでも言わんばかりに空を見上げます。いい感じに酔ってらっしゃいますね。
そして今回一番気になったのが”神”ことお兄ちゃん、どんだけ壁を削るんだってことです。獣は岩を持って壁を上れないでしょうから、前回ラストでライナーに投じたのは多分ここです(29巻117話)
ちなみにウトガルド城の時はこんな感じでした(10巻39話)
今回は連投してますから、その度に壁を削ってることを想像するとなんかいじらしいというか気になって仕方がありません。ピークちゃんのおかげで壁の崩壊は免れまし・・はい、どうでもいいですね。
そういえばピークちゃんは最初ジークから見て左側にいたのに、
最後は右側なんですね。シガンシナの壁上をほぼ半周したんでしょうか。あるいは途中で横断したんでしょうか。速いですね。でも何よりスゴいのは、それに揺られ続けて平然としているマガト氏ではないかと思います。はい、どうでもいいですね。
おじさん繋がりで書いておきますが、キースもワインを飲んでいたようです。
でもなぜ赤の腕章なんでしょう?
(比較用)
最終的に屈服したから、あるいは訓練兵たちのささやかな温情とかなんでしょうか。まぁたいした意味はなさそうに思いますケド。
腕章でおじさんと言えばナイル氏、今回は美味しいところを持っていきました。結局ナイルのこのつぶやきが起点になってファルコの告白に繋がっていくわけです。
-娘達には伝えたいことがまだまだあったのにな…
-オレは巨人になっちまうかもしれねぇから…
-もう… 言い残すことはねぇ…
ただ、ファルコは伝えることは伝えきってしまった。ナイルはまだ伝えきれておらず、会えたら今度こそ伝えたい・・お二人には残念ですが巨人化フラグとしか思えない感じです。
根拠ですか? →それが進撃だから。
ところでそんなファルコに告白されたガビ。しかしここはキレイにまとまりましたね。ガビは一気に高みに上ったように思います。いまだに悪魔とか言ってるコルトとはレベルの違う高み。
-ずっと同じことを…
-ずっと同じことを繰り返してる…
やられたらやり返す、やり返された方から見たら「やられた」なのでまたやり返す。その永遠に続く繰り返し。マーレ編でずっとこれが描かれていることは私たち読者は周知ですが、作中の人物でこれに気付いている人はほとんどいません。サシャ父くらい、あと大昔のクルーガー。そこに幼くして気付いてしまったこの少女は、やはり希望の光になっていくのかもしれません。そして前回のエレンの「馬鹿な真似」とはこのことではないかと改めて思います。
ところでガビちゃん、これ誰に撃ちこむの?
そういえばニクい演出だなと感じたのがこれ。
そしてこれ。
ここをかぶらせてくるとは思いませんでした。もちろん、物は違えどファルコの腕章はマーレの腕章と重ねられています(27巻108話)
ガビは気付きを得て固執していたもの、いわば今までの自分の象徴である腕章を捨て去りました。ミカサにとってマフラーはまさに自分の想いの象徴ですから、彼女もそれをいったん置き、本当の自分自身の気持ちと対話を始めたんだと思います。何かに囚われていた過去の自分と決別して、彼女らは今まさに成長しているのでしょう。
もともとミカサはかなり客観視のできる人物として描かれていますが、エレンに関してだけは想いが入ってしまっていました。それが現在はエレンへの想いをいったん置いたとするならば、より完全な客観視に近づいていくことになります。
-そう
もはやルイーゼがどうこう言おうが「どうでもいい」のでしょう。何の意味も持たない感傷的な言葉、そんなものに関わることにも意味がない、といった感じかもしれません。
-…助けたい
そうして余分な感情を捨てた彼女が、それでもエレンを助けたいと感じています。エレンへの執着を排したつもりで考えてみても、助けたい気持ちが存在してしまう。もちろんどれだけ考えたってそれが生じている具体的な理由は見つからないでしょう。だからエレンが言っている通りなのかも、と。それでも彼女は自問自答をしていくのだと思います。たぶんここはものすごく重要。
そういえばエレンの目が、始祖っぽくなってきました。
アルミンの説の正誤に関わらず、もしジークが意識を失っていればエレンが主導権を握るのはほぼ間違いなさそうに思います。その時エレンは何をするのでしょうか。シガンシナ区の壁巨人を動かすだけなら、今のところ誰とも利害の衝突はないはずですが、はたして。
ここから先は人を選ぶと思うので念のため注意喚起しておきます。すごく雑な言い方をすれば「アルミンは嘘つき」みたいな話なので、嫌な予感がした方は立ち去るが吉と思います。
さて、今回の副題は「騙し討ち」でした。
もちろんこれは主にピークちゃんの、あるいは前回から続くジークの奇襲といった感じを表現しているのは明白でしょう。面白いなと思ったのは、やっぱりシガンシナ戦と対照になっていて、思い返してみれば獣も超大型も鎧もみんな騙し討ちのような形で討ち取られています。もっと言えば獣の投石、ベルトルさんの投下、壁の中に潜んでいたライナー、隠し持っていた雷槍、夜明けの奇襲、まさに双方の騙し合いなわけです。と同時にそこには双方の”侮り”があって、戦士隊の巨人たちは言うまでもなく、兵団側も雷槍で倒した鎧の生死を確認せずに復活させてしまったり、最終的に獣と鎧を取り逃がしたりしています。騙し合いで侮り合いでもあったわけです。
ところで今回の副題からは、作者が読者を騙しにきている感じも個人的には覚えるのですが、これは今に始まったことではないので私の気のせいでしょう。
ただ、この副題によって明確に気付かされたことが一つあります。それはアルミンが、この作品では数少ない「嘘をつける人物」として描かれていることです。先だって注意を促しましたが、別に他意はありませんので、残っている方は淡々と捉えていただけることを期待しています。
前述した通り、戦いとは時に騙し合いであるわけですから、それも一つの武器なわけです。その強力な武器を持っているのがアルミンだと言いかえてもいいです。私が言いたいのは、少なくともこの作品では「嘘をつける人」と「嘘をつけない人」を明確に区別して描かれているというだけのこと。そして敵に勝つなどといった目的があれば、アルミンは「嘘をつける人間」だと描かれているということだけ。
ちょうどアニメでも原作でもアルミンが活躍しているところですので、マフラーをいったん置いていただくために証拠を示しておきます(6巻23話、8巻31話、12巻49話、19巻78話、20巻82話)
-右翼側で本当に死に急いでしまった死に急ぎ野郎の仇だ!!
-そいつに殺された!!
-エレンを逃がすことに協力してくれないかな…
-アニなら今…極北のユトピア区の地下深くで
-拷問を受けてるよ
-それは残念だよ!! 僕はもう!!
-アニの悲鳴は聞きたくなかったっていうのに!!
-僕がエレンにウソついたことあった?
もちろん敵を倒すためのもので、美談と活躍の陰にかくれて悪いイメージもないと思いますが、彼はひとつの戦法として嘘を身に付けているのは事実です。というよりアルミンの活躍したとされるシーンのほとんどが嘘によるものというあたり、作者の何らかの意図が感じられるかもしれません。彼は嘘という武器を自在に操って敵を騙し、味方を優位に持っていってるんですね。まぁシガンシナ戦なんかは失敗していますが、あれもアルミンの中にあったベルトルさんへの侮りや見誤りだと考えれば、興味深いものではあります。
そこで対照になってくるのがやはりエレンで、彼は嘘をつくのが下手なように感じます(8巻31話)
-この地下に入るだけで証明できることがあるんだ!!
-こっちに来て証明しろ!!
エレンさん・・もはや答えを言っているのと同じですよ、それ。
「女型じゃないことを証明しろ」ではなく「証明できることがある」、この期に及んでまだ隠そうとはしているんです。バレバレですけど。まぁこれに限らずだいたい思ったことを言ってしまってます。嘘をつかないし嘘をつくのも下手なのがエレンなんだと思います。
私の覚えている限りではアニも作中で嘘のセリフを言ったことは一度もないんじゃないかと思います。読み返して確認したわけではないので100%とは言い切れませんが。さらにライナーやベルトルさんもそれに近い感じで、彼らは戦士隊であることはもちろん黙っているわけですけど、言葉としてはほとんど嘘をついてなかったように思います。
黙ってたって騙してたことには変わりない、というのは確かにそうなんですが、黙っている(=嘘を言わない)ことと、嘘を言葉で言うことは区別して捉えたほうが良いように思います。実際、現代の法律でもきっちり区別されてて、私たちは黙秘することは権利として持っていますが、口を開いて嘘を言った場合は偽証罪などといった罪に問われることになっています。
およそ作中のほとんどの人たちがこんな感じで、進撃では嘘を口に出して言う人はほとんどいません。メタ的な言い方をすれば、作者は登場人物に嘘を言わせていないということになります。その中にあってのアルミン、つまり彼は「嘘をつける人」として描かれているということなんでしょう。
さて、ここから本題です。(前置きだったのかよ)
118話を初見した時に、私はこう感じました。
「アルミンの言ってることは筋が通ってる、でも、ぜんぶ推測でしかないなぁ」と。
これは今も変わりません。アルミンの言っていることは間違いなく全てが推測です。ただ、これまでもそうでしたが、彼は賢くて論理的に考えることができます。ですのでおそらく彼の言っていることは”だいたい合ってる”感じになるんだと思います。まさに「正解を導き出す力」というやつです。
でも、そんな彼のロジックを用いたとしても割り出しきれないものがあると思うんです。それが人間の心。
-ありえないだろ⁉
-あのエレンだよ⁉
どのエレンなんでしょう?
答えはアルミンの中のエレンです。アルミンの言う「あのエレン」ってのは、あくまでアルミンの想像の産物に過ぎません。ではアルミンの想像するエレンは正確なのでしょうか?(22巻90話、26巻106話、28巻112話)
夢
-誰よりもエレンを理解しているつもりだった…
-ミカサよりも…
-…でも
-もう… わからない…
-その後もエレンの自由意思なの?
あーよかった、やっぱりアルミンはエレンのことを一番良く分かって・・って思わないですよね。全然わかってませんから。
はっきり書いてしまいますが、アルミンはエレンのことをさほど理解していません。分かったつもりになってただけです。「わからない」と言ってた頃から数か月、あの幼馴染会談からも少し時間が経ちました。幼馴染会談を除けばアルミンとエレンは会話どころか一度も会っていません。「あのエレン」とは一体?
要するにアルミンの読みはだいたい合ってるんだろうと思うのですが、エレンの考えとか意志に関する部分、そこだけは間違っている可能性があるということです。正直なところ、間違ってる可能性の方が高いとさえ思います。
ではそれがいったい何をもたらすのか。
もともと104期たちは「地鳴らし」や「エレンとジークの接触」自体に否定的な姿勢でした。でも今回のアルミン演説によって、エレンは「小規模の地鳴らし」をするつもりなんだろうと思いながらも助けようとしています。これはおそらく安楽死計画が浮上したことによって、地鳴らしを受け入れるハードルが相対的に下がったことも関係しているとは思います。ただ、それだけではなくアルミンが言った「始祖の力はエレンの意志だけで発動するからイェレナたちには従ってるフリをすればよかった」というのが前提となっています。
エレンに死んで欲しいとは思わないし、接触したとしてもエレンがそう思っているなら・・
彼らの中では、アルミンの語った推測がさもエレンの「真意」であるかのようになってきているかもしれません。ではエレンは本当にアルミンが言った通りの考えなんでしょうか。もしそうじゃなかったらどうなるんでしょうか。
おそらく今回のことは、エレンが単独行で留守の間に起こったことと同じだと推測します。以前 027 ダークサイド でアルミンの言葉によって104期らがエレンに反感を持つに至ったのではないかと推測したのですが、そのイメージがまさにこれです(ただ、ダークサイドの時は無意識の反発心を少し強く書きすぎてるなと、今さら読み返して反省しております。当時は飛行船の恐いアルミンからの類推だったので許してね笑)
コニーは言います。
-裏切られるのは飽きてんだぜ俺は!!
-ライナーに…ベルトルト!!
-アニ!!
-エレン!!
-もう飽きたんだよクソが!!
おそらくマーレ襲撃前も、口には出さなかったかもしれませんが、ライナーベルトルアニに同様の想いを抱いていたのでしょう。あのマーレ襲撃でそこにエレンが加わりました。エレンが単独行を始めてからコニーがエレンと話したのは「サシャは何か言ってたか」のくだりだけです。その後コニーはエレンが何を考えてるか分からないとしながらも、「裏切り」と断定しているわけです。
今回また、それをグッと呑み込んで、エレンがそういう考えなら仕方ねぇといった感じで助けにいきます。ではここで、万が一にでも、エレンの行動が彼らが考えていたのと異なっていたなら、そしてサシャのように何か悲劇が起きたりしたら彼はどう考えるのでしょうか。
また裏切られた、またエレンの独断行動に巻き込まれた、と思うかもしれません。
ただ、今回は以前と異なることがおそらく一点だけあります。
それは先述したように、ミカサが非常に冷静な状態であること。そもそも今回のアルミン演説はミカサとアルミンの会話の流れから発生しているのですが、よく見るとこの二人の会話、少し噛み合ってません。
エレンの言う通りかも
↓
それは嘘だ
↓
なんでウソ?
↓
(ミカサではなく”みんな”に対して)エレンはこれこれこういうわけでイェレナたちを騙しているんだよ
この時点で話がやや逸れてしまっていて、アルミンはミカサの問いへの明確な解答をしていません。あくまでエレンにはこういう「真意」があるんだろうという話しかしてないのです。
でもミカサはそれを上手に汲み取って、真意が別にある(つまりいろいろと嘘をついている)可能性については分かった、でもそれと暴言は結びつかないでしょと再び問いかけています。
-……
-それは…
最終的には嘘を塗り固めるための嘘なんじゃないかってことで、やっぱりアルミンは明確な解答をできていないんです。アルミンはこう言っています。
-無理矢理ついた嘘だからね
これ、そのままアルミンのことではないかと思います。現実でも他人のことを嘘つき呼ばわりする人が、えてして本人が嘘つきだったりするものです。それは本人が身に覚えがあるので、相手も自分と同じように嘘を付くだろうと無意識的に想像するからなんですね。逆に普段まったく嘘を付かない人は「こういう場面で嘘を付くだろう」みたいな発想が頭に無いので、他人のことも疑わなかったりします。人間は知っている言葉しか発しない生き物なんです。
アルミンがここでエレンの嘘を断言しているのは、もうそれ自体が嘘だと言ってるようなものかもしれません。アルミン自身が無意識的に自説に都合の良いように無理矢理こじつけてしまってるのでしょう。それはアルミン自身が言っているように「嘘(この場合は自説)を尤もらしくするため」と考えられます。
ただ今までと異なるのは、ミカサが極めて客観的であることです。
おそらくミカサはアルミンのこじつけを見抜いてると思います。少なくとも納得はしてないでしょう。今まではミカサにも「エレンはこういう人のはず」という思い込みがあって、それにツジツマを合わせて都合の良い解釈を与えてくれるアルミンの言葉を易々と信じていたのかもしれません。でも今は、自分の中にある「信じたいエレン」の偶像を捨てて、一歩引いたところから物事を見ているとするならば、それはまたアルミンの言葉も一歩引いて吟味することに繋がります。
-補足-
私が「他人を嘘つき呼ばわりする嘘つき」だと言われてもアレなので、少しだけ補足しておきます。
-少なくとも…
-ミカサがよく頭を痛そうにしてたことなんて
-エレンも僕も昔から知ってた
ここが適当に合わせた嘘の部分だと思います。作中でそれに該当する描写がありません。もしかしたら描かれていない子供の頃にあったのかもしれませんが、(11巻45話)
-どこか痛いの?
頭を押さえながら痛みをこらえるミカサにこのセリフ、「また痛むの?」とかではなく。
それでも昔から知ってた・・んでしょうか。それともその後4年の間に、ミカサがたびたび頭を痛そうにしているところを見ていたんでしょうか。誰か家族が死んだわけでもなく。何か危機があったわけでもないのに。もしそこでたびたび頭痛があったなら、今まで全ての人がしてきた頭痛の考察は水泡に帰しますが。
-補足おわり-
そしてアルミンの嘘はイェレナにも見抜かれているようです。
まぁ、さすがに見え透いたセリフだったので当然と言えばそうですが、(29巻116話)
イェレナからしてみれば”分かり合えた”と思って涙さえ浮かべたのに、アルミンに騙され裏切られた感じかもしれません。「導き」としてさんざん描かれているように、それは憎しみさえ生みだしかねません。でも今のイェレナは無敵ですので、それを隠そうともせず騙し合いに応じたといったところでしょうか。アルミンに脅しをかけてますよね。「何かやれるもんならやってみろ」と。
騙そうとして失敗し「やれるもんならどうぞ」とやり返されたアルミンのこの表情、シガンシナでのベルトルさんとの”交渉”のシーンを思い出させます。アルミンは嘘で騙すことによって精神的優位、すなわちマウントを取って、事を自分の思い描く方向へ運ぶという戦術が自然と身についているのでしょうが、相手に予想外の反応をされると弱いみたいです。
つまりこれ、アルミンが「この人はこうだろう」という読みが外れてたってことです。「あのエレン」が外れてないことを祈る他ありません。さらに言えばそこには少なからず”侮り”が見え隠れしているように思います。ベルトルトには、イェレナにはこれを言っておけばいいだろうみたいな。
ところで今回ジャンがエレンのことを言ったセリフ、おそらくアルミンは身に覚えがあったはずです。作中でもエレンのようになりたかったと独白していました(2巻5話)
-二人のように強く…
-肩を並べてこの世界を生きていきたかった…
そこから生じる劣等感により、彼はエレンの差し伸べる手を取ることができませんでした(2巻5話、3巻11話)
-弱い僕を助けてくれた
-それが堪えられなかった…
-二人にとって僕は守られる存在なんだ
-僕は何度も二人に助けられたけど
-僕が二人を助けたことは
-とうとう一度も無いままだ……
助けられる側ではなく、助ける側になりたい。助ける側の方がすごい。エレンの手は取らないけれど自分からはエレンに手を差し伸べるのは、そういう感じでしょうか。
マウンティング完了です。
一度手を取った描写の後にわざわざジャンたちにかぶせてまで、しつこいくらいに強調されています。導かれた相手に対し、自分もそうなりたいと願う。そのすごい人を助ければ、自分はその人よりすごいということ。
今回のアルミンはいつになくグイグイと前に出てきていました。
いつもならジャンが止めそうなシーンで即座に出てきて、
オニャンコの請願にも他の人がとまどうほどの即答っぷり。
賢いアルミンのことですから、すでに頭の中で筋書きができあがっていたのかもしれません。実際、オニャンコにマウントを取ったところから場の空気を支配するに至っています。そして、そこでアルミンが演説したことの全ては「エレンを助ける」ことにみんなを向かわせるものでした。助けられる方より助ける方がすごい。
エレンを助けた人はエレンよりすごい人。
そういえばあの場面、エレンが言ってたのは・・(22巻90話)
-…なあ?
-向こうにいる敵… 全部殺せば
-…オレ達 自由になれるのか?
普通に考えれば、アルミンはそれまで「エレンは小規模の地鳴らしで脅しをかけるつもり」と踏んでいたわけですから、脅しではなく世界全部をぶっ潰すつもりかもと気付いて驚いた、という感じになると思います。
でもこれ、「なぜエレンは私達を突き放したのか」というミカサの言葉からの連想です。なんか繋がりません。
でもこう考えたらどうでしょうか。
もしかしたらエレンが自分たちを突き放したのは、自分ひとりだけで世界全部を敵に回して死ぬつもりなのかもしれない
そう思い至ったとするなら・・
先ほどの嘘つきの話ではないですが、アルミンはこの発想に至る下地があります。みんなのために嘘をついて勇敢に戦って死のうという発想を持っているからです。
しかもそれは、アルミンにとって「勇敢な自分を示す最高の方法」でもあるようでした。もしそうであるなら、アルミンはそれをさせては困ると感じているかもしれません。
なぜならエレンに追いつくことができなくなるから。
もしかしたらアルミンは、自身の価値を守るためにエレンを守ろうとしているのかもしれませんね。
-よもやま-
-…確かに奴らしくないとは思ったが…
-ありえないことだとまでは…
116話で冷静な見解を示したジャン、彼は今回も冷静でした。これが普通の意見です。「あのエレン」って思ってるのは実はアルミンだけなんですね。アルミンの想像上のエレンなんですから当たり前ですけど。でもこの小さな正論はアルミンの勢いにかき消されています。
ちなみにミカサは、エレンが「嘘をつけない人」だとなんとなくわかってるから、エレンが言ったアッカーマンのことが真実である可能性を考慮してるし、アルミンに突っ込みを入れ続けたんだと考えています。アルミンに向けたミカサの表情と目から想像するに、彼女とアルミンの関係性が少し変わってくるかもしれません。
このエレンが嘘を付けない人であることと、ミカサの印象が正しいとするならば、やっぱりあの幼馴染会談のエレンは嘘ではなく思ったことを言ってしまっただけってことになるかと思います。もちろん言っている内容に思い込みや誤りがあったりはするんでしょうが、それは嘘とは違います。少なくとも、二人を守るという意図をもってわざわざ嘘をついたというのはほぼ無くなったかもしれません。あの賢いアルミンでもその理由が思いつかないわけですから。で、少し前の記事との関連で言うとミカサは誤解する方へは行かなさそうです。逆に、というか誤解するのはやっぱりアルミンの役目だったんですね。
あと、まだ少し判然としない部分もあるのですが、アルミンが今回の考えに至ったのがあの時だとするならば、あれは嘘泣きだったと考えるのが自然なんでしょう。そちらの方が「嘘をつける」という特徴とも合致するわけですし。ただ今回のは「エレンの見解」をアルミンが代弁している体ですから、アルミン本人の思想はいまいち分かりません。
ところで今回記事を書きながらも思ったんですが、アニメとのかぶせ方が凄すぎますね。ライナーとの殴り合いから騙し合いの奇襲作戦などなど、より原作が面白くなるようになってると思います。そこでアニメ3期の意味の分からない分割を顧みるなら、おそらく意図的に合わせてると考えられます。3期の前半もヒストリア周りでかぶせてましたし。よく進撃はアニメの制作が遅くて商機を逃したなんて言われてますけど、あくまで作品の完成度をあげるためだけに敢えて公開時期を遅らせたのだとしたら、こだわりが凄すぎます。そして、そうとしか思えないわけです。脱帽しました。
それと今回のお話でガビはいい子だって評価になった方は多いと思うんです。でもよくよく考えると恐いことだなぁと考えさせられました。別に誰かを批判するとかではなくて、私にも誰にでも実際にある人間の性質として。
今回のガビをいい子だって言ってる人たちの中には、かつて「ガビ嫌い、死ね」って思ってた人もいるだろうと思うんです。もちろん、ガビのことを好きだったり嫌いだったりはいいんですよ、誰だって好き嫌いはありますから。
考えさせられたのはそれが「死ね」から「いい子」に変化した場合のこと。つまりそれって、ガビがいい子に思えるようになったのは「私の考えと同じになったから」ってことですよね。
逆に言えば、「私の考えと違うガビなら死ね」ってことですよね。まぁ人間ってのはそんなものなんでしょうケド・・
あっ・・・・(27巻108話)
エレンが僕達と同じ考えかどうか確かめなくては、違うなら・・
作者がかくもリアルな人間心理を登場人物に描き出していることが、よくお分かりいただけるのではないでしょうか。
-よもやまおわり-
本日もご覧いただきありがとうございました。
written: 10th Jun 2019
updated: 16th Jun 2019