進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

026 最新話からの考察 106話③ 手から手へ

みなさんこんにちは。

 

※8/27 注 次の記事 027 ダークサイドて補足していますが、この記事の考察はアルミンがいつもそう思って考え、行動しているという考察ではありません。あくまでアルミンの深層心理に根付いているものを”作中に描かれている事実”から読み取ろうと試みているものです。また、それにより結論付けている深層心理の傾向は、ごく一般的なものであり、現実の私たちの心の中にも似たような部分が普通にありふれているものです。私の言葉足らずなところはあると思いますが、そのような理解の上でお読みいただけたらと願っております。そして、その深層心理が実際の思考や行動に与える影響については、ぜひGoogle先生に尋ねてみてください。

 

 

※8/21 追記:閲覧注意を追加しました。 


アルミンとエレンの対立ということで、今度はアルミンを解剖していくわけですが、正直に言ってつかみづらいキャラだなぁと思います。大雑把なイメージとしては、いわゆる知性キャラで軍師とか参謀的なポジションであり、同時に主人公の幼馴染という親友であり永遠のライバル的な感じでありながらも、普段は意外と存在感がない、そんな感じなんでしょうけど。

二人の間に存在する明らかなギャップとして、記憶の影響があるのはみなさんご存知のことと思いますので、ここでは記憶とは異なる角度から、彼らの対立を考察してみたいと思います。

 


今回はかなり偏見の固まりのような考察です。おまえの考察全部が偏見だろ、って批判は聞き流しつつ言い訳しますと、普段はできるだけ客観的事実に基づいて考察するように努めているつもりですが、人物の内面の話になるとなかなか難しいところがありまして・・あ、あと、アルミンが嫌いなわけでもありませんので誤解なきようお願いします。・・むしろ好きだな笑

 

!閲覧注意!
この記事は最新話までのネタバレ、登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。

 

 


[手から手へ]

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アルミンの回想で構成されている106話、そういえばこの作品は、誰かのモノローグで始まっていました。そして、あまり数は多くないですが所々ナレーションとしてのモノローグが出てきます。

そしてご存知のように、アニメ版でナレーションに声を当てているのはアルミンです。つまり、この物語全体がアルミンのモノローグの可能性があります。おそらくラストもモノローグで締めくくられそうな気がしたりします。106話のモノローグも、見方によっては未来からの視点で語られているような雰囲気すら感じさせますね。(3年前と言ってますので、現在に視点があることは間違いありませんが)

 

 

本題にまいります。

 

 

アルミンに抱く印象は人それぞれだと思いますが、個人的には非常に我が強い人物として描かれているように感じています。ぱっと見ではエレンの方が我が強く、アルミンは控えめに見えるのですが、実のところは逆、というのが私の今の印象です。我が強いというのは、裏を返せば時として非常に勇敢なことでもあるのですが、その勇敢さが出ているのがシガンシナの超大型戦の時でしょうか(20巻81話)

 

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この時は自分を犠牲にして超大型を倒す作戦を、”エレンには半分内緒で”決行するわけです。壁を挟んで同じく命を投げ出したエルヴィンとの一致があり、その後どちらを生かすか、みたいなことが描かれているのは面白いところですね。ここに至るまでには、当時のアルミンには自分の読み違えで現状があるという思いがあってからのことだったりもします(20巻79話)

 

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-さっきだってベルトルトの読みをハズしてこのザマだ…‼

 

アルミンは常に的確な分析や作戦立案をしている感じがありますが、決して完璧な人物とは描かれていません。この作品の良いところの一つだと思います。それが特に見られるのが、2度にわたる進撃と鎧の戦いです(11巻44話)

 

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-ひとまず壁まで近づけ‼

 

最初の鎧戦では、アルミンはエレンが奪われないことを企図して壁際で戦うことを提案しました。結果はみなさんご存知の通りで、”壁際にいたために”超大型の爆撃を喰らってエレンをさらわれるわけです。壁から離れていたら鎧を撃破できていた可能性もあり、その場合ベルトルさんも力を使い果たしたところで捕獲、もしくは殺害できていた可能性が生まれ、ユミルから事情を聴くこともでき、全く異なる展開が待ち受けていたかもしれません。

その反省から、シガンシナ戦の際は壁から離れて戦うように提案します(19巻75話)

 

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-単純な対策ですが
-壁から離れた位置で戦いましょう

 

ですが、またそれが裏目に出ます。いや、こちらは何とも言い難いですが、角度的に超大型を壁際には落とせませんから、ベルトルさんは市街地中央で誰も巻き添えにせず巨人化した可能性が高いです。最初に巨人化をやめたのはライナーの姿が目に入ったためですので、それが無かった可能性があるということです。その場合、ハンジ班も生き残っていたでしょうし、鎧があおむけになることも無く、そのままライナーを仕留められたかもしれません。

もちろんこれらはあくまで結果論であり、アルミン自身が過去に言っている通り、後からは何とでも言えることでしかありません。あくまで、アルミンが完璧とは描かれていない例と捉えてください。上記の例は物語の展開上、必要なセリフだったわけですが、実はアルミンじゃなくても良いはずです。それをあえて知的キャラであるアルミンに言わせている、というのは多分重要です。進撃と鎧、すなわちエレンとライナーを読めなかった、というのも意味を帯びてきそうなんです。さらにうがった見方をすれば、「後からは何とでも言える」ということをアルミンに言わせているのも、アルミン自身の心の言い訳を感じさせます。こちらはこの考察を最後までお読みいただいてから、みなさんに判断してもらえれば、と思います。


さて、シガンシナ戦といえば、さらにこんな動きもしていました(19巻77話)

 

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-…交渉…できる余地なんて無かった…
(中略)
-これは… 仕方なかったんだ…

 

一度目に鎧を倒した際は、話し合いの余地は無かったと述懐して、あたかも自分に言い訳するかのようです。それを引きずってかベルトルさんに対して話し合いを持ち掛けました(19巻78話)

 

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-これが最後の 交渉のチャンスなんです!!

 

これはベルトルさんにより、時間稼ぎと説明されていますが、本当にそうでしょうか。さらにこれも裏目に出ます

おそらくアルミンが話し合いを持ち掛けなければ、ベルトルさんはあのまま巨人化をしていたでしょう。その場合、ハンジ班もまだ鎧に到達しておらず爆風を避け得た可能性があります。アルミンも後で自ら「読みをハズした」と言っていることからも、あれは時間稼ぎではなく話し合いたかった可能性が高いです。そして、やはりここでも出てくる”話し合い”というキーワードは、アルミンにこびりついた何かを想像させるのです。


我が強い、というのは自分を貫くことでもあるのですが、言い換えれば”自分が常に正しい”、あるいは”常に正しくありたい”という思いが根底にあると思います。さらに言えば、その”自分が正しい”ことを実感するために、その正しさを他者に認めてほしいという、いわば承認欲求にも繋がると思います。このあたりがアルミンの”話し合い”への固執に繋がっていると思われます。

作中で繰り返し描かれているように、アルミンの一つの固着点は、少年期のエピソードにあります(1巻1話)

 

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お爺ちゃんの本から得た知識、そこからの自分の考えを同世代の子どもに”話し”認められたかったのでしょう。ところがそれは異端だとして壁にぶちあたる。それでも負けを認めず”話し”続けるが、相手は力に訴え、力では及ばない。そこに助け船を出したのがエレンでした。エレンは力を貸してくれるばかりか、”話”への共感すら与えてくれました。自分を承認してくれる唯一無二の存在となったわけです。おそらくそこに、心理学における同一化が生じているように思います。エレンのようになりたい、そうでなくてはならない、さもなければ自分の価値が低いことになります。それは一種の憧憬でありながら、同時に越えなくてはならない壁として、アルミンの中にこびりついていると思われます。

作中でもアルミンはこう独白しています(2巻5話)

 

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-僕の友達はこの世界で強くあろうとした
-弱い僕を助けてくれた
-それが堪えられなかった…
-二人にとって僕は守られる存在なんだ
-二人のように強く…
-肩を並べてこの世界を生きていきたかった…

 

エレンたちのように強くなきゃいけない、そして守る側でもなくちゃいけない、それは二人が実際にどう思っているかは関係なく、自分がそうあるべきだと思っていて、そうでないことを許容できない、ということですよね。

 

 

「自分が常に正しくないといけない」という思いは、今回の「ほかに道があったんじゃないか」という悔恨にも表れています。そしてこれは今回に始まったことではありません(8巻32話)

 

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-もっとやり方が他に… あったはずだ

 

アニとのやりとりの後ですら思っていたりします。この時はミカサが的確なツッコミを入れていますが。先述の「交渉の余地なんて無かった、仕方なかった」もその裏返しと言えます。

 


ところで、自分が間違っていないことの確認には、時に他者との比較も生みだします。つまり、相手と比べて、より正しくなくてはいけないという考えに及ぶわけです。そしてこれは、良く言えば自説を曲げない人となりますが、ちょっとトゲのある言い方をすれば、自分の意見が絶対だということになります。さらに、自分の意見が絶対に正しいならば、他者の意見は基本的に必要がありません。他者には自分の意見を認めることのみを要求するのです。

106話で、”話し合い”のもたらしたモノとして、「海の向こうにいる人達は敵だけじゃなかった」と言っています。彼のセリフだけを見ると希望を夢見る感じに受け取れますが、そもそも、この「海の向こう」をすべてが敵だと言ったのはエレンです。アルミンは、そのエレンの言葉を否定しながら、自分が正しいと言っているわけですね。


こんなエピソードもあります(3巻12話)

 

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-皮算用ですらない思いつきなのに…
-いきなり実用するなんて…

 

自分の案とはいえ、根拠が薄弱な状態でそれを実行することに懐疑的な姿勢を見せています。それも相手は友人のエレンではなく、ピクシスを訝っているわけです。彼の”正しさ”は相手を選ぶものではありません。誰であろうと、根拠の薄弱なもので自分の正しさが汚されることは許容できないのです。だから、作戦が失敗しそうになった時に「何やってるんだ、エレン」と規律から何から無視して、真っ先に駆けつけました。ここで面白いのは、エレンはピクシスとの”話し合い”により、ピクシスの真意にちゃんと辿り着いていることです。既にいくばくかの隔たりも感じさせますね。

 

さらに、前述のシガンシナ戦で、壁を挟んでエルヴィンと同じように命を投げうった作戦、と書きましたが、エルヴィンはリヴァイにそのことを告げているのに対し、アルミンはエレンに隠していました。なぜなら彼の意見は常に正しいので、エレンの意見を必要としないからです。エルヴィンは策を話しながらも、リヴァイに問いかけているのと対照的でもあります。しかも、ここで命を賭けているのは、「何かを捨てなければ何も変えられない」という自説の正しさを証明するためなのは、本人が言っています。

 

同様に、懲罰沙汰を起こしてまで自分のことを想ってくれた友人2人に対しても容赦ありません(21巻85話)

 

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-それじゃあわかりません…
-団長が死んでいいわけがない

 

まるで命を救ってくれた2人を咎めるかのようです。同様に、叙勲式前にアルミンをかばう2人を制するように「フロックが正しい」と言うのですが、その理由はまさに、自説の正しさを確保するためです。

 

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-要は大事なものを捨てることができなかったからだろ?

 

正しさの重要性に比べれば、友人の想いなど関係ないとでも言うかのようです。それもそのはず、彼にとって「自分が正しいこと」のほうが、自分の命よりも大事なのは上記の例を見れば明らかです。

 

 


さて、アルミンのエレンに対する態度として、見つめている描写がとても多いことはみなさんお気付きのことと思います。エレンが何か言うたび、それを黙って見るアルミンの顔が抜かれるのは、もはやお約束ですよね。そして彼のキャラを考えれば、その裏でいろんなことを考えていることは誰もが想像していることでしょう。

アルミンはいつも考えて考えて考えています。エレンのことを。なぜなら、彼の中でエレンを一番よく分かっているのは自分だからです。エレンが自分の最大の理解者なので、同一化をしている彼は、エレンの最大の理解者でなくてはならないのです。今回、「ミカサよりも」という言葉が出てきましたが、以前からミカサを出し抜くようなところが散見されます。

 

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先を越されてちょっととまどうミカサ(18巻73話)

 

 

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-…また二人しかわからない話してる

エレンと共有する夢は、二人だけのものなのでミカサにも話しません(18巻72話)

 

 

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-今自分にできることをやるんだ!!
(中略)
-エレンは僕に任せろ!!

エレンを何とかできるのは”僕”です(3巻13話)

 


ただ、アルミンはエレンを一番分かっているつもりでいますが、想像はあくまで想像でしかありません。アルミンから見た他者というのは、彼の頭の中で創り上げられた偶像に近いと言ってよいかもしれません。彼にとっての「正しいエレン」は、彼の頭の中のエレンなので、実際のエレンの意見は必要としないのです。それゆえ、彼は基本的に他者の意見を受け入れ難いのでしょう。わりと断定口調が多く、一方的に話すことが多いのも、その現れかもしれません。その点においてエレンは、より多くの人と関わり、話し合い、柔軟に意見が変わるところがあります。そもそも人間がお互いを完全に理解することは不可能なので、できるだけ理解し合うために、話し合うわけです。アルミンは口で言っていることはまさしく正論を言っているわけですが、その実、人と話し合うことをほとんどしていないように見えます。

 

 

彼が他者を必要としないことの表現かは定かではないですが、象徴的なシーンがあります。進撃には手と手を取り合うシーンがよく出てくるのはご存知の通りですが、それを俯瞰して観ると・・

 

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エレン→アルミン ×
エレンが差し伸べた手を取りません(1巻1話)

これは、同様のことが何度もあった可能性があります。

 

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アルミン→エレン ○
アルミンが伸ばした手をエレンが取り、救い出します(1巻4話)

 

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エレン→アルミン ×
この時は上の直後で助けるために取ろうとしますが、取れませんでした(1巻4話)

 

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アルミン→エレン? 
エレンは気を失っているので例外ですが、先ほど取れなかった手を”独りで”取ります(2巻9話)

 

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アルミン→エレン ○
レイス領地下から出るエレンを引き上げます。105話とほぼ同じ構図ですね(17巻67話)

 

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アルミン→エレン ○
そして105話です。

 

こうしてみると、アルミンはエレンから差し伸べられた手を取ったことがないのです。さらに、かなり意味深なのが10巻42話です。

 

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手を取ってるかと思ったら、腕を引っ張った感じに見えます。これは違うかなと思っていたら・・

 

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その直前、エレンとライナーはがっしり手を取り合っているんです。エレンは多分、アルミンがエレンの手を取りたがらないことを分かっているんじゃないでしょうか。


さらにさらに、

 

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アルミンはコニーの手も拒否しました(2巻5話)

 

対してエレンは差し伸べられた手は、関係がこじれている今もなお、常に取っています。そして、アルミンとのことに対照しているのかはわかりませんが、エレンとライナーはお互いに差し出した手を取り合っています(24巻97話、25巻100話)

 

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これを人間関係になぞらえて言うならば、エレンとライナーは”分かり合って”ますよね。さらにエレンはファルコともある程度関係を築いています。当然、ライナーもファルコも”海の向こうの人たち”なわけです。そのように見た時、エレンは”手”と同様に”分かり合うこと”を決して拒否していません。むしろそちらもどんどん進めている。アルミンの意見を取り入れた可能性すらあります。そんなエレンから見たら、アルミンは受け身でしかやっていないですよね。たまたま誰かの思惑があって送り込まれた義勇兵たちと、その義勇兵の力で平和裏に捕虜にできたマーレ人たち。港、料理、鉄道、その歩み寄りの発端は全て、相手からのものです。

さらに”手”から類推するならば、アルミンの言う”分かり合い”は、彼が分かり合いたいと思った時に、彼の望む分かり合い方でしか行われないかもしれません。一方通行なんです。それは本当の意味で分かり合うことにはならないでしょう。

同様に考えれば、アルミンの言う「エレンが分からなくなった」というのは、そもそも、彼はエレンのことを分かって、あるいは分かろうとして、いなかったんじゃないかと考えられます。しかしながら彼の中には”彼の思うエレン”という偶像があって、その偶像こそが彼が”分かっていた”エレンなわけですが、いつの間にか実際のエレンはその偶像からかけ離れていた、ということなんじゃないでしょうか。それもそのはずで、エレンは多くの経験や記憶を通じて、その考え方を日々更新しておりどんどん変わっていっています。それを端的に言うと”成長”ということだと思います。


その経験の差はセリフでも示唆されていたりします(26巻106話)

 

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-そうなる前に話し合えないのかな?
-港ができたらマーレや世界中の人と話し合って 誤解を解けば…
(中略)
-だから… 僕達は怖くないって


明らかに既視感のあるセリフですよね?(24巻98話)

 

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-きっとエルディア人を世界の人に理解してもらうためでしょ
-私達は悪魔じゃありませんって

 

手法などは違えど、アルミンのセリフはガビのそれと一致して描かれています。ガビの立ち位置といえば、「何も知らない大人から教えられた、何も知らない子供」であり、かつてのライナーも同様でした。さらに、ガビは子供の頃のエレンとかぶるように描かれていることから、子供の頃のエレンも同様だったということです。

そんなエレンやライナーも、様々な体験や人々との関わりを経て成長し、今やお互いの諸々を理解し合って手を取り合うところまで来ました。ガビと、彼女の一歩先行くファルコは、今回早回しで様々なことを体験し、また、これから起こるであろう新天地での人々との関わり合いによって、成長を余儀なくされそうです。そこにあって、以前のガビと重なるように描かれてしまったアルミン、その彼が2~3年経って出した答えが、「エレンがもう分からない」という、いわば理解し合うことの放棄宣言なのは、非常に残念なばかりです。

そもそもアルミンは、エレンのことを分かっているつもりだっただけなんですが、先ほども述べた通り、彼にとっては頭の中の偶像であるエレンこそが「正しいエレン」なので、そこをはずれて良く分からないエレンになってしまうのは都合が悪いのです。都合が悪いということは、彼にとってエレンは「悪い人」になってしまうわけで、そんな時に彼が縋るのは、次の都合が良い人、「良い人」であるアニだったのでしょうね。さらに言えば、子供の頃とは異なりアルミンの意見を認める人はたくさんいるわけです。おそらくアルミンは、そちらの都合が良い方へと流れていくんでしょう。

エレンもミカサもアルミンのことをかなり理解して、あるいは、しようとしている上で、ゲスだなんだといじりながらも許容していると思います。要は、仲違いでも双方の誤解とかでもなくて、アルミンが一人で思って、思い違えて、ってやってる感じなんじゃないでしょうか。もしそうであるなら、それは根本的な人格の問題ということですので、誤解を解くとか、アルミンの気付きとか、そんな簡単に解決できるレベルでは無くなりそうです。飛行船に上がった時のミカサへの対応とかを見てると、兵団のエレンへの不信感も、アルミンの影響が大きいのではないかと推測しています。

 


物語として、紆余曲折の末にアルミンが成長していく姿が描かれて、エレンと肩を並べてみんなを守るために戦うような展開が来るのか、それとも今のポジションと変わらず、エレンの死に際あたりにようやく何かを掴むのかは、作者次第なところですので、今後の展開を楽しみに待ちたいと思います。

今後を占うという意味では、エレンとファルコ、アルミンとガビが対照になっていることが重要だと思います(24巻97話)

 

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アルミンもガビも自分の手を血で染め、同時に仲間を失う経験をしました。ガビに成長の可能性を期待できる今、アルミンも同様の成長を期待したいところですが、”時が止まっている”アニに縋っているあたりはかなり心配です。逆にアルミン同様、ガビも立ち止まってしまうかもしれません。エレンとファルコとは違う方向へ、アルミンとガビが向かってしまう可能性もありますね。しかもそれは、アルミン本人の言葉とは裏腹に、分かり合わない方向へ向かいそうな感じが漂っています。

正直なところ、人間は固着した思いってそう簡単には解消できないなぁと思いますし、今までの作者の割とドライな語り口を見てると、生易しい方には転ばないだろうなと、根拠のない予想を垂れ流しながら終わりにしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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(22巻90話)

 

この貝殻はアルミンの夢の象徴になるはずでした。その夢とは、彼の頭の中のエレンと共有している二人だけの夢。しかし、実際に夢が叶ったその時、アルミンははっきりと気付いてしまいました。現実のエレンが見ていた夢は、自分とは全く異なるものだったことです。そしてそれは、今までいつも”手”を取ってくれたエレンが、貝殻を一緒に見て欲しい自分の要求を受け入れないことにより、発覚したのです。それは非常に都合が悪いことでした。

・・そして冒頭で述べた、この物語はアルミンの追憶である可能性が高い、ということを思い出すのでした。個人的にはデビルマンのルシファーなんですよ、アルミン。

 

 

 

 


-参考資料-

 

f:id:shingeki4946:20180623152114p:plain(3巻10話)

-人と戦ってどうするんだ?
(中略)
-話し合うんだよ!

 

この頃から既に”話し合い”思想を発揮しています。ちなみにこの時は、巨人の力が無かったら榴弾で死んでいます。

上で書いたので端折りますが、マーレ組それぞれとの”話し合い”も成功したことはありません。全て巨人の力で解決されています。今までに彼の”分かり合い”が成功したことは無いわけです。それが故、より固執している、とも捉えられなくもないですが。

これを今後の展開の示唆と取るか、成功にたどり着く前の紆余曲折と取るか、果たしてどうなっていくんでしょうね。

 

ひとつ心に留めておいてるのは、「世界を救うのはアルミンだ」とエレンが言ったことなのですが・・

 

-以上、参考資料-

 

 

 


あ、あと、アルミンの巨人体に耳が無いのは、「聞く耳を持たないから説」が誕生しました。

 

 


本日もご覧いただき、ありがとうございました。

 

 

written: 23rd Jun 2018
updated: 27th Aug 2018