みなさんこんにちは。
106話にて、エレンとアルミンの対立が浮き彫りになってきました。おそらく今後の展開に重大な影響をもたらすであろうその関係性について、考察していきたいと思います。
この記事は最新話である106話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
[擬似体験]
106話は、アルミンのモノローグとして描かれています。それはアニに語りかける形になっていますが、実質エレンへの想いであり、またアルミン自身への問いかけでもあるように受け取れます。
アルミンはこう言っています。
-誰よりもエレンを理解しているつもりだった…
-ミカサよりも… …でも
-もう…わからない
エレンのことが分からなくなった、と。
実はこれ、読者も同様の立場に置かれていますよね。特にマーレ編に入ってからは、私たちにもエレンが何を考えているのかが見えてきません。エレンの内心が描かれたのは戦鎚が地下にいる推測をした時くらいで、何を目指し、何をしようとしているかはセリフからも見つけられませんでした。私たちはいつの間にか、アルミンと同様の視点を体験させられていたのかもしれません。
さて、106話になってマーレ襲撃がひと段落したことにより、パラディ島で起こっていたことが描かれ始めました。そこには、兵団とエレンの間にある明らかな温度差が描かれています。
みなさんは106話を読んだとき、どのような感想を持ちましたか?
ぜひそれを思い出しながら、振り返ってみましょう。
まずは、最初の調査船団を義勇兵たちの反乱により制圧した際の感想です。
-でも…話し合うことができて
-情報が手に入るなんて とてつもない幸運だよ
-あぁ…本当に運が良かった…
-敵の上陸を阻止できたのは偶然だ
-マーレが本腰を入れれば 敵の規模は こんなもんじゃすまねぇ…
-何とかしねぇと…
エレンとアルミンは、同じ”幸運”について会話していますが、その意味するところは全くと言っていいほど異なっています。
アルミンは後で分かる通り、「人と人は話し合って分かり合える」ということを理想としていますので、それが現実のものとなり得そうなことに素直に喜び、希望を見出そうとしているように見えます。
対してエレンは、それがたまたま起きた、まさに偶然の産物だとして何か手立てを考えないと、といった感じに気を引き締め直しているようです。
マーレを知っている私たち読者から見れば、エレンの言っていることの方が現実味があるのは明白です。この時のマーレは、たまたま少数の軽武装船団で、たまたまパラディ勢が予測した通りに”境界線”近くの南側に来ましたが、もしマーレがその兵力を活かして二正面作戦、あるいはより多くの地点へ同時に戦艦を含めた武装船団を送っていたなら、容易くマーレ軍は上陸し、無垢巨人がいないことが明らかにされ、さらなる陸上侵攻部隊が送られてパラディ島は陥落したかもしれません。エレンの言う通り、本当にラッキーだったと言えます。
そしてアルミンの言う幸運は、もちろん幸運だったことには変わりはないのですが、実はジークの工作によるものでしかなかったということが分かっています。もしジークの差し金が無かったらどうなってたか想像してみると・・
-私に構わずこの悪魔供を撃って下さい!!
-マーレは「穢れた血」に貸す耳など持ち合わせていない!!
この部隊長(?)やニコロの行動でも分かる通り、犠牲を覚悟で戦闘が始まっていたでしょう。この時は巨人の力で勝利する可能性は高いと思いますが、どこかのタイミングで逃げ延びた船が出て、その後は制圧を目的とした軍が送られたことでしょう。そうなった時にパラディ島の兵力で対応しきれるとは思えません。巨人は圧倒的な兵器ではありますが、量産ができないこと、そして持続力に弱点があります。マーレが数の暴力で押し寄せてくれば、エレンとアルミンの巨人化の回数が尽きたところで終戦になるでしょう。そしてそのことをマーレ軍は分かっているはずです。
会議のシーンに移ります。
-相手は「獣の巨人」だぞ!?
-ラガコの村民を巨人に変え‼ 壁中を恐怖に陥れ‼
-調査兵団を壊滅寸前まで殺戮した張本人がそうぬかしたのか!!
-ぬけぬけとよくもまぁ…
-我々は随分と低く見積もられたものだな…
感情的な部分は理解できます。ただ、私たち読者から見ると、では他に手立てはあるの?という疑問が湧いてきます。もしそうでなければ、ピクシスのようにまずは冷静に検討と見定めをするべきです。御前会議に出ている以上、仮にもそれなりの地位にある方々でしょうから。(調査兵団は”英雄”ですので、階級が低くとも参加していると思います)
その後、パラディ島が新しいモノや知識に触れていく様子がギャグを交えて描かれていきます。このへんはパラディ島に戻ってきた感じがして、癒されるシーンでもありますね。懐かしさすら覚えます。
義勇兵たちと、さらには最初に抵抗していたニコロを含めた捕虜たちとも打ち解けていく様が描かれていきます。ですが、そのどこにもエレンの姿はありません。
それからしばらく経っての射撃のシーンです。
おそらくエレンは上記のような時も射撃訓練などなど、戦うための準備をしていたのではないかと推測されます。
「話し合って分かり合えたこと」を夢見心地で話すアルミン。エレンはそれを厳しい視線で見つめ、「そんなことより」と言わんばかりに記憶の話をアルミンに振ります。
-時間はねぇぞ
-ジークの寿命はあと3年もねぇ
-このまま…イェレナ達の作戦通りに進めていいのかな?
(中略)
-そうなる前に話し合えないのかな?
-港ができたらマーレや世界中の人と話し合って 誤解を解けば…
アルミンの理想が話し合って分かり合うことだと分かります。エレンはそれを語るアルミンやミカサに矢継ぎ早にツッコミを入れていきます。「時間がない(から早くなんとかしないと)」というエレンの考えに対して、「時間をかければ(なんとかできるかも)」というアルミンとミカサの考え方、それを受けてエレンは「その時間を稼ぐためにも、なんとかしないと」とツッコミを入れています。
もはや平行線ですね。
そして現在に戻り、全てはアルミンの回想だったことが分かります。そこでアルミンはこう呟いています。
-もしかしたら別の道があったんじゃないかって…
-そればかり考えてしまう
この場にエレンはいませんのでツッコミは入りませんが、もしいたら、きっとツッコんでいたと思います。それは私たち読者と同じ疑問、「(この期に及んで)じゃあ別の道ってなんだよ?」。エレンっぽく言うとこんな感じでしょうか。
今回の話は、パラディに戻ってきた癒しでもある、と前述しました。とても平和だなーと感じます。
平和じゃないはずなのに。
それも仕方がないことではあるのかもしれません。眼前の危機だった無垢巨人を討伐してしまったことで、パラディ島には一時的な平和が訪れていました。しかも、警戒はしていたマーレの派兵も、”幸運にも”たいしたことない規模で、交戦することすらなく終わってしまいました。
アルミンは理想を語っていますが、時間が必要だと言います。ミカサもそれに迎合しているようです。その時から3年ほど、少なくとも2年は経った現在、「もしかしたら他の道があった(かもしれない)」と言っているということは、目に見えた進展は無かったのでしょう。もしかしたら友好国などとの交渉など始まっているのかもしれませんが、別の道と呼べるものになっているかと言えば、疑わしいでしょう。
それはジークの物言いに、ハンジやリヴァイですら口を閉ざすことからも推測できます(26巻105話)
おそらく彼らには具体的な次案はなさそうに見えます。
悲劇の直後なのでアレですが、サシャは半分寝ていたり、重大な会議中にコニーのことをずっと気にしています。夜明け近い張り込みでしたし、会議のが色恋かは定かではないですが、いずれにせよ緊張感は見受けられません。そういえばサシャが凶弾に倒れたのは、兵団全体の緊張感の無さから、とも言えなくはないのは皮肉ですが。
マーレ襲撃で登場した3年後の104期たちは、みんな髪型も変わってオシャレな感じになっていました。もちろん年数経過とか、年頃なのでという表現でもあるでしょうが、壁の外に巨人がいたらそんな心の余裕も無かったかもしれません。
-鹵獲した船を使って海の外と交易ができるってわけか!
現実はそんなに生温い状況ではなさそうです。
106話では、とにかくしつこいくらいに兵団の”ゆるみ”や”甘さ”のようなものが描かれているように思います。読んでてもどかしいというか、じれったさすら覚えます。エレンは少し焦りすぎているようにも思えますが、それでもエレンの方が現状に適した考えをしているとも思います。
おそらくこの歯がゆい感じは、エレンが兵団に対して感じていたものと同じなんじゃないかと思います。つまり、私たちはいつの間にかエレンの視点を疑似体験させられていたのかもしれません。すごい仕掛けだなぁと思いました。アルミンの視点を見ていたかと思っていたら、実はエレンの方だったわけです。ネットで反応を見てみましたが、やはり兵団のぬるさを指摘している意見もけっこうありましたので、この仕掛けは大成功だと思います。みなさんはどう感じましたか?
実際のところ、エレンの兵団への気持ちはあちこちから察することができます。捕虜たちとの”分かり合い”には参加せず、アルミンやミカサに対してはきっぱりと危機感を訴えていました。会議のシーンは決定的でもあります。
元々、エレンが始祖と王家のことを黙っていたのは、自分の推測は不確かなのにも関わらず兵団がヒストリアを犠牲にするかもしれない、いわば兵団組織へのちょっとした不信感からでした。エレンは今回、その不信感を暴露することも厭わず、無駄に感情論を振りかざす他兵団の幹部を一蹴するために発言しています。と同時に・・(22巻89話)
-あのことは…まだ話してない
-母さんとハンネスさんを殺したあの巨人が
-親父の前妻だったかもしれないなんて こんなこと…
ミカサへの気遣いも顧みず、発言したのです。未だにミカサに伝えてなかったことは、彼女の驚愕する様が物語っていると思います。
エレンはとにかく焦っています。何を置いても、目前に迫る脅威に対応しなくてはと考えているわけです。ミカサやアルミン、兵団の仲間たち、いわば大事なものを捨てることを厭わずに(みんなができないなら俺が)やらなければならない、ということです。
そしてその仲間や兵団、ひいてはパラディ島全体に対するもどかしい気持ちは、ある意味、「なんで分からないんだ」という相手を下に見るかのような感情にも繋がります(26巻105話)
-…構いませんが すべては手紙に記した通りです
-ご理解いただけたはずでは?
これは意訳するなら、「手紙で伝えましたよね?なんでわからないんですか?」ということだと思います。それもリヴァイに対してです。リヴァイが言ってる”地下街のクソ野郎”とは、相手を侮り、下に見て、居丈高に上から物を言ってくるような人々のことかもしれません。以前、審議所で同じように”しつけ”をした時は、「必要な演出だと」相手への理解を示したエレンが変わってしまった、そのことに失望を隠せなかったんだと思います。
106話にてエレンの兵団への想いを私たちは体験することができました。ただしそれは、エレンが正しくて兵団が間違っている、ということには直接繋がらないはずです。前回予告した通り、エレンとアルミンの関係から、そのあたりを考察していきたいと思いますが、長くなりましたので次回に続きます。
-余談-
今月の作者への一問一答で「リヴァイはコーヒーがダメ」というのがあったそうで、以前には「コーヒーを飲むと鬱になる」という回答があったそうです。
コーヒーといえばカフェインによる覚醒作用が有名ですが、カフェインは過剰に摂取すると中毒や、自律神経失調症などの副作用を招きます。自律神経とは身体の心臓や呼吸などといった、自動的に活動している部分を管理している神経系です。自律神経は交感神経と副交感神経に分かれており、交感神経は体を動かしたり活動する時、副交感神経は身体を休める時に活発化するものなのですが、この交感と副交感のバランスが崩れると自律神経失調症となり、鬱などの症状が現れます。カフェインはこの副交感神経を阻害することで交感神経を活発化させるため、眠気が払われ目がさえる、という作用をもたらします。
以前の考察をお読みいただいた方はもうお分かりかと思いますが、心臓や呼吸と言えば、無意識の司る領域です。自律神経の大部分は無意識が司っています。そして身体能力がずば抜けているアッカーマンは、おそらく交感神経の活動が異常に活発なはずです。普段はそれでもバランスを取っているのか、やや鬱気味なのかもしれませんが、カフェインの摂取をすると副交感神経のコントロールが阻害されて、バランスが取れなくなるのかもしれません。結果、鬱になる、ということかもです。
紅茶は好きなようですが、紅茶にもコーヒーほどでは無いにせよカフェインは含まれているので、量の問題なのか分かりませんが・・
-余談おわり-
リンク貼りませんけど、カップヌードルコラボの謎肉の動画が面白かったです。「謎肉」で検索すれば日清の特設ページが見つかると思いますので、まだの人はぜひ!(ダイマではありません笑)
本日もご覧いただき、ありがとうございました。
written: 12th June 2018
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