104 最新話からの考察 129話 オールドファッション vs フレンチクルーラー
みなさんこんにちは。
久しぶりに簡潔にまとめることができました(大嘘)
この記事は最新話である129話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。注記の無いものは全て別冊少年マガジン2020年6月7月合併号・129話からのものです。
[オールドファッション vs フレンチクルーラー]
えーと、実はあまり書くことがなくて困ってたりしてます。と言っても別に悪い意味じゃなくてですね、とりあえずですけど、
おっちゃんたちがカッコよかったとか、
ファルコ飛びそうじゃない?とか、
フロックは船か飛行艇にいそう??
とかとか、このあたりはみなさんもお読みになった時に感じたり考えたり、あちらこちらで読んだりしてるから端折っちゃっても良さそうな感じですよね。書いたとしてもそれ以上のなにかは私には書けませんし。
なんとなく多数の賛同が得られた気がしますのでそういうことにしまして、今回はシンプルに一点集中です。
さて、王道面が描かれた129話でしたが、まさに昔を懐かしむが如く、以前の場面と重なる描写が多数ありました。
相手の名前もよく知らないおじ様方が互いを認め鼓舞し合う様は、かつてのエレンとライナーを思わせます(4巻16話)
それから、かつてライナーやアニに助けられたコニーが彼らを助ける場面ももちろん(32巻129話、6巻23話)
綺麗に重なってきます。余談ですが当時のライナーの行動は作戦の遂行こそ念頭にあったでしょうが、その場においてのみ言えばジャンとアルミンを助け、アニを守るような行動であったとも言えるわけですね。
それはともかく、
-…賭け
賭けのような作戦に一縷の望みを求めるのもかつての調査兵団を思い出させますし、相手方のフロックも、(32巻129話、7巻27話、12巻49話)
-死守せよ!!
-心臓を捧げよ!!
まるでエルヴィンが乗り移ったとでもいうか、その背中を追いかけ続けているように見えます。他にもフロックがエルヴィンに重ねられ対比されているような描写が多々ありますが、それもみなさんご存知でしょうからとりあえず端折っちゃいましょう。
とまぁこんな具合に、一部を切り取っただけでもこれだけ昔と重ねられています。だから「懐古」ということなのかもしれませんが、だとしても「だから何?」とも思えてしまうかもしれません。
さて、いったん話を切り替えます。
今回、アニやライナーが危惧していたようなことが半分現実のものとなっていました(32巻128話)
-その邪魔をしてくるイェーガー派からは死傷者を出したくない
-…とでも言うつもり?
-お前達4人は戦わなくていい…
この話題は「手を汚す」みたいな結論になっていたはずですが、今回途中までまともに戦っていたのはほぼマーレ側の人間(とハンジ)だけでした。ミカサが一番分かりやすく描かれていて、彼女は戦ってはいますが途中まで抜刀していません。
それでも殺傷力は持っているとはいえ、アニやライナーがまさに体を張ってボロボロになっている横でその相手に手心を加えていたことになります。はっきり言ってしまえば中途半端で気持ちが入っていないというか他人事のようというか、あるいは傍観者的とも言えるかもしれません。
そんな彼らもその後、流れで言えば前回アルミンを撃とうとしたダズにやむなく手を下したコニーが皮切りになる形で、
-躊躇えば仲間が死ぬ
というエピソードが完成し、その後は容赦なく殺しまくります(14巻58話)
-あぁ…大いなる目標のためなら殺しまくりだ
-お前だっててめぇのために殺すだろ?
躊躇ってしまうのが人間とはいえ、躊躇えば大事な仲間が死ぬし、仲間が死ねばやがて自分も死にます。目の前の兵士を情に任せて殺さなければ、後にその兵士が放つ雷槍で味方が死ぬかもしれません。そんなのは優しさでも美しくも平和的でもなんでもなく、ただの自殺行為であったと言ってもよいかもしれません。
じゃあ躊躇ってた今までと彼らの中で変わったものはなにかと考えてみれば、それは要するに必死になった、ならざるを得なかったってことだと思うんです。同じ島の人間だから手心を加えるとか、敵であっても島のみんなが一人でも多く生き残って欲しいみたいに四の五の言っている余裕がなくなったという感じでもあると思います。
そしてこれこそが最大の「懐古」であり、副題の意味するところではないかと思います。
思えば、かつての彼らは常に巨人に命を脅かされていて、とにかくヤツらをなんとか倒すしかありませんでした。相手が得体の知れない存在でしたから当たり前ではあるのですが、当時は「彼らも同じ生き物だから」みたいな理由で峰打ちするようなことは無かったはずです。なぜかと言えばそんなことをする理由も余裕も無かったからです。そんなことをしていたら自分たちが殺されるだけだったんです。
ところが人間っていろいろと見えてきたり周囲との関係が出来あがってくると、四の五のが生まれてくるんです。いろんなものに配慮しなくてはいけなくなって、みんなのことを考えなくてはいけなくなって、自分を害そうとする相手のことまで考えてしまったりして、身動きが取りにくくなっていきます。
王政編あたりではその葛藤が顕著になりつつありましたが、最終的に彼らは戦いました。やらなければ王政や憲兵にやられるということで、やっぱり仲間や自分の命がかかってたわけです。しかしながらその後数年間の”余裕”を経たマーレ編以降が、再び四の五ので溢れかえっていたのは記憶に新しいのではないかと思います。
そして今回、命のかかった全く余裕のない状況の中で、懐古というか原点に立ち返る部分があったのでしょう。
原点とはつまり、生きることに必死であるということ。
今回はこれに尽きるのではないかと思います。重ねるように描写されてる過去の場面は全て、かつての彼らがなんとかして生きるために必死でがむしゃらに戦っていた時のことなのは、言うまでもないと思います。
というわけで短くて恐縮なんですが、本題というか、今回はこれしか書くことがありません。
あ、でもアルミンくんさんだけ露骨に外されてるのは今後が楽しみですね。それと誰かさんの薫陶を受けてるファルコさんは、彼らよりも先んじて「生きることに必死」だったように思います。
あとそれを踏まえて余談を少し。
今回のキースまわりの話、個人的には美談と捉えていいのか悩ましい部分も多少あるのですが、それはともかく承認欲求のモデルケースみたいな話になってて面白いというか非常に身につまされるので、少しだけ触れておきたいと思います。
キースの人生は「特別であること」に縛られたものでした。083 キース・シャーディスの場合 という記事にも書きましたが、彼のかつての行動の全ては自分が特別であることを示すためのものでしかなかったようです。
あくまで目的はそれですので、なにをしたにしても「私はこんな凄いことしてるんだ(チラッ」「ほら私はすごいだろ?(チラッチラッ」みたいな感じです。だからその目的のための手段は、実際は調査兵団じゃなくてもなんでも別に良かったんだと思います、自分の凄ささえ周囲に示せることであれば。
だからこそ今回の行動に妙味がありまして、彼は紆余曲折あった末に ”誰にも知られることなく”、そして名前も肩書もない ”ただのキース・シャーディス” として、ただただ自分の考えに従って行動したんですね。もしかしたら彼にとって、誰かの目を気にせずに行動を起こしたのは最初で最後というくらいなのかもしれません。
ところがその ”ただの行動” が、かつて無我夢中で追い求めた「特別」を成すことになってしまうあたりに哀愁が漂います。
ものすっごく皮肉な話なんですが、(18巻71話)
-凡人は何も成し遂げなかった
-特別な人間は いる
-ただそれが 自分ではなかったというだけのこと
今回キースの行動が生んだ結果は、以前の彼が囚われていた考えの全否定になっています。「特別」だからなにかを成し遂げるのではなく、ただのなんでもない人が目的に向かってただ行動した結果、それが時に「特別」なものと呼ばれるだけだったんです。カルラが言ってた言葉を思い返させられるような話でもありますね。
こうやって第三者視点から見ると、承認欲求にまみれていたかつての彼が結果を出せなかった理由も改めてよく分かると思います。彼がずっと関心を持って取り組んでいたのは「他の人からいかに凄く見えるか」ばかりでしたので、関心がなかった調査兵団長を上手くできなかったのも当たり前ですよね、そもそもの目的じゃなかったんですから。あーこれ刺さる、痛い痛い・・
他人の目ばっかり気にするのはやめよう、私たちは私たちのために生きようよと思う今日この頃なのでした。
まぁなんにせよ、今までの人生が否定されてしまったかのようではありますが、彼は他人の目に映る「キースさん」という殻を脱ぎ捨てたことで、最期に少しだけ、「本当のキース」として生きることができたという言い方もできるかもしれません(18巻71話)
-本当の自分に従って生きろ
ほんとブーメランばかりで哀しすぎて笑うしかないんですけど。とはいえ彼もやはり、傍観者から「必死に生きる」方へ向かったことになるんだと思います。
だからこそ必死に生き延びてでもまだやれることがあるようには思ってしまうのですが、アオリ文にもあった通り「死に方を選んだ」ということでもあり、マガト同様に次の世代へ託すことができたということでもあるのでしょう。この作品っぽく言うなら ”継承した” の方がはまるかもしれませんが。
ちなみにピークちゃんのこのセリフ、
-…元帥だってば
思いっきりおまえが言うな案件なんですが、(29巻117話)
しかも129話でも直前まで言ってたりするんですけど、
舌の根も乾かぬうちにみたいな話はさておき、マガトと同じセリフをピークちゃんが言うようになったと受け止めれば、なんだか感慨深いものもあります。
継承された、わけですよね。
本日もご覧いただきありがとうございました。
written: 14th Jun 2020
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