進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

052 物語の考察 アニ・レオンハートの場合

みなさんこんにちは。

 

今回は、アニちゃんにまつわるあれこれです。

 

 


この記事は最新話である111話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。 

 

 

 

[アニ・レオンハートの場合]

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再登場が期待されるアニですが、彼女の水晶化が解けた後どうなるかは予測が難しいところです。そこで、彼女のこれまでを振り返りながらヒントを探してみたいと思います。

 

 

まずアニと言えばこれを前提として抑えておかねばなりません(8巻33話)

 

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-俺が間違っていた…

アニは幼少の頃より父から体術をたたき込まれていました。アニ父は「現実離れした理想」のためにそれをしていたようですが、始祖奪還作戦の直前に考えを改めたようです。彼女はその体術を「無意味」だと表現しながら、望まずに習得したことを告白していました(4巻17話)

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-幼い私は心底下らないと思いながらも…
-この無意味な技の習得を強いる父に逆らえなかった…

 

 

もう一つ、印象的なエピソードがこれでしょうか(23巻94話)

 

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平然と虫を殺すアニの姿は、そんな抑え込んだ感情の発散だったのかもしれません。生命に対する当時の考え方の現れにも見えます。またこの場面からは、同世代の戦士候補生たちがへばるようなランニングの直後であるにも関わらず、息一つ乱さずに虫を捉えるという彼女のずば抜けた体力や敏捷性が読み取れます。父の鍛錬がそうとう厳しいものだったということでしょう。頭脳派のピークちゃんなんか死にそうなのに笑

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その後、始祖奪還作戦が始まりマルセルが捕食されると、こうして感情を露にしました(24巻96話)

 

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-何が名誉マーレ人だ!!
-選ばれし戦士だ!!
-マーレもエルディアも全部クソッたれだ!!
-全員嘘っ吐きで!!
-自分のことしか考えてないくせに!!


訓練兵時代にも同様のことを言ってたりします(4巻17話)

 

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-私はもうこれ以上この下らない世界で
-兵士ごっこに興じれるほど バカになれない

050 世界を知らない で触れましたように、アニは”悪い人を前提とした社会”で生まれ育ってきた人間です。おそらく当時のアニには、世界はこんな風に見えていたようです。

自分たちのためにエルディア人を利用するマーレ、自分たちのために子供を戦地に送り出すエルディア人、そして自分の理想のために娘を戦士に仕立て、手遅れになってから自分の都合のために撤回した父親。世界には自分の都合ばかり他人に押し付ける、そんな人間しかいません。そんなクソッたれな世界に辟易していたのでしょう。ならば自分も自分のために生きて帰る、他人のことなんか知ったことか、そんな感情から他人への無関心を貫いていたのかもしれません(24巻96話)

 

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-悪いと思ってんなら死ねよ!!
-罪を被って死ね!!

 

 


そんな彼女が転機を迎えたのが、これだと思います(4巻17話)

 

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-すげぇ技術だな

それをきっかけにして、エレンと会話をするようになっていきました(4巻17話)

 

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-何も立派な兵士になりたいわけじゃない
-あんたに一泡吹かすためだ

そんなジャンの姿がかつての自分に重なっていたんですね(4巻17話)

 

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-いいぞアニ!
-流石は俺の娘だ!!

嫌々ながらも習得してた裏には、父に一泡吹かせたい、すなわち父に認めて欲しい感情が潜んでいたわけです。そしてその父から教わったものが他人から認められた、つまり自分の価値になっていたということです。”父に押し付けられた無意味なもの”から、”父のくれたもの”に変わっていった感じでしょうか。アニ自身も悪い気がしていないのが伝わってきます(4巻17話)

 

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-そんなにこの技が気に入ったんなら
-教えてやってもいいけど?

さすがはエレンさん、空気読めませんでしたけど・・(4巻17話)

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それまで他者と関わることを避けていた、あまり喋らなかったアニが、エレンには饒舌になっていきます。このぐらいの歳であれば、それが恋心とないまぜになっている部分もあったかもしれませんね(11巻44話)

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-あんたも男ならさ…
-私の…このか弱い体をもっと労わるべきなんじゃないの?

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-降参なんかしてないで学習しなよ
-力の使い方と
-女の子との話し方を

彼女は普通のか弱い女の子でもあることを認めて欲しいのです。おそらくその感情は、もともと父親に対する想いだったんでしょう。それが抑圧されたことによって反発する感情が人間不信として現れていた、というのがかつての彼女の言動を形作っていたんじゃないかと思います。

エレンはそんなアニに新たな視点と承認を与えた存在です。彼女は後にエレンをこう評しています(8巻31話)

 

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-尊敬するよ
-ただ単にバカなだけかもしれないけど…

エレンやマルロが言っていたことは、アニの言葉を借りれば”正しい人を前提とした”考え方です。自分の都合よりも他人の、みんなの都合を優先させるといったもので、自己犠牲的な性質もあります。アニにとっては一種のカルチャーショックだったのではないかと思います。

「バカなだけかも」と揶揄しているあたり、”なぜ他人のためにそんなことができるのか?”という疑問であり興味のようなものも感じていたんでしょう。そこを疑問に思うということは、アニ自身は違っていて、自分のために行動する人間だということです。そしてそれを普通だと言っています。人間の本質は自分の都合で動くものだということの再確認にもなっているわけですね。つまり「クソッたれ」だと思っていた外の世界の人間や、父親を許容することに繋がっていると思います。彼我の承認と許容、そして世界や人間を理解して受け入れていっているんです。

 

 

そんな”正しい人を前提とした”ものとの出会いから自己承認に至った彼女ですが、世界は残酷すぎました(19巻77話、4巻18話)

 

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彼女には自身の目的のためにやらなければならないことがありました。そんな過酷な現実から目を逸らすためにも、感情を殺していくしかなかったのだと思います(6巻24話)

 

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「私は虫を殺しているだけだ」そんな風に自分を思い込ませないと、やってられなかったんじゃないかと思います。そんな努力も空しく・・(7巻30話)

 

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そういえばジークにもふざけて人を殺すような描写がありました(8巻31話)

 

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-まだ癒えるわけないだろ
-地獄を見てきたばかりなのに

このセリフ、実はもの凄く的を射ています。もちろん彼はトロスト区防衛戦のことを言ってて、アニの気持ちを分かったつもりになっているだけです。でも実際にそれより近々で、地獄を見てきたばかりだったわけです。そしておそらく、アニもライナーたち同様の想いを抱いていたのだと思います(8巻31話、10巻42話)

 

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-私は… 戦士に成り損ねた

 

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-俺達はガキで…何一つ知らなかったんだよ
-こんな奴らがいるなんて知らずにいれば……
-俺は…
-こんな半端なクソ野郎にならずにすんだのに…

壁内の人々との関わり合いによって人間を理解し、父をも許容したアニ。その大事なものとなった父のもとへ生きて帰るという強い想い、そしてストヘス区の戦いで見せた人を殺したくない気持ち、それらの最適解として無意識が導き出したのが水晶化だったのでしょう。自分を守りつつ、他人も傷つけない。

そう考えると、彼女が水晶化から解き放たれたとしても、積極的に戦う感じではないかもしれませんね。ただ、状況がそれを許さない可能性は高いでしょうけど。

 


本人が戦士に成り損ねたと言っている通り、彼女は”正しい人”に感化された部分が少なからずあると思います。正しい人でありたい、他人を信じたい、そんな気持ちがどこかに少し芽生えていたんでしょう(5巻21話)

 

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-決めたんだ…

そんなアニから見て、この時のアルミンは”正しい人”に見えたんじゃないかと思います。その上で・・(8巻31話)

 

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-アニがこの話に乗ってくれなかったら……
-アニは僕にとって悪い人になるね…

ここで言っている良い人とは、エレンを逃がすのに協力してくれる良い人という意味ですよね。もちろんアニが指輪という保険をかけていることから、裏の意図も予想していることは分かります。ただ、彼女は道中であれこれ質問をしています(8巻31話)

 

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-ねぇ…
-私が協力しなかったら
-どうやって壁を越えるつもりだったの?

もし既に巨人化してエレンをさらうなどの意志を固めていたなら、もはや必要のない情報です。疑問をぶつけて確認するということは、アニ自身が考えていることと違う可能性があり得ると思っている、ということです。つまり、言葉通りの良い人である可能性を、少しだけ信じたい気持ちがあったんじゃないかと思うのです(8巻31話)

 

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でも、やはり裏があるほうでした。だからこそ、皮肉を言ったんでしょう(8巻31話)

 

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-アルミン…
-私があんたの…良い人でよかったね

この良い人は、自分が女型の巨人であることで、アルミンの疑っていたことが正解になるから都合が良かったね、ということです。やっぱりそっちの良い人だったね、って感じだと思うんです。アニの視点から見ると、少し信じてみたかったけどやっぱり裏切られたように感じたかもしれません。もちろん彼女は人間が自分の都合で動くことを理解しています。だからそんなもんだと思って保険をかけていました、とはいえ・・

 

ちなみにその時、バカで尊敬できるエレンは、最後までアニを信じようとしていました(8巻31話)

 

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-だから…!!
-つまんねぇって言ってるだろうが!!

 

これが、アニが水晶化する前の、最後の他者との記憶です。

 

 

 


ベルトルさんの記憶の影響もあってか、今は物言わぬアニにアルミンは感情移入をしているみたいです。確かにアルミンとアニには、それぞれエレンとライナーに対して巻き込まれてる感とでも言うような共通点があります。でもこうして考えると、アニから見えていた景色はなんか違うような気がしています。どちらに付くとかは分かりませんが、少なくとも今のアルミンに対してなら、アニは「そうじゃねぇだろ(©ユミル)」って言う感じじゃないかとも思ったりします。


アニの父親はこんなことも言っていました(8巻33話)

 

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-この世のすべてを敵に回したっていい
-この世のすべてからお前が恨まれることになっても…
-父さんだけはお前の味方だ

今の流れでこの世の全てを敵にまわしそうなのは、どちらかというとやっぱり・・

 

 

 

ところでそのアニ父ですが、以前抱いていた「現実離れした理想」という言葉からは、どうも”大半のエルディア人”の思想と似た感じを覚えます。アニの女型が巨人を引き寄せられることも、王家との関連の可能性を感じさせます。明言されていませんので女型の固有能力の可能性もありますが、叫び声(物理)で動かすあたりもジークと共通していますね。

アニ父が間違いを認めたということは、今は考え方が異なっているということです。アニ父は4年の間、戦士隊関連とは関わり合いを持たずに過ごしていたようですが、今回のマーレ襲撃の際は久しぶりに出てきました。そして、カリナおばさんとは対照的に、ヴィリーの告白にも驚いている様子がありませんでした(25巻99話)

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もしかすると、”大半のエルディア人”が叩かれるところを確認しに来た、という可能性もあるかもしれません。そうであるなら、事前に情報がどこから入ったかというと、やはりジーク関連ということになるのかもしれません。


というのも、かつてジークはこう言ってるんです(17巻70話)

 

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-アニちゃん助けるのは後な

 

決して助けないとは言っていなくて、あくまで後回しだと言っていたんです、あの時は。

 

 

 

 

 


-おまけ-

 

これは憶測でしかありませんが、もしレオンハート家が王家や管理家と何らかの関連があるのであれば、他の戦士たちも同様であった可能性も考えられます。

 

008 記憶のもたらすもの で書きましたが、ユミルに名前を付けた男性はベルトルさんに非常によく似ています(22巻89話)

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アニメではもっとはっきり分かりますし、声もおそらく同じ人が当てている感じがします。この男性は楽園送りになっていることから、フーバー家がグライス家のようにマーレへの奉仕に精力的にならざるを得なかった背景が覗われます。そして”大半のエルディア人”の存在が事実であれば、戦士の人選に恣意的なものがあっても不思議ではありません。

王家の血に意味があることを考えれば、鎧の真価を発揮できるのが継承家であったブラウン家、超大型がフーバー家などといった感じでもおかしくありません。そう考えれば、ライナーが選ばれたのも必然だったのかもしれません。そもそも、マルセルが工作したということになってますが、たかだか10歳過ぎたくらいの子供の意見を軍がどれだけ重視するかということを考慮すれば、あれはマルセルの思い込みに過ぎないと思います。少なくとも軍がライナーを選んだ、そのことは揺るぎないはずです。

そうなると彼ら戦士たちは、旧帝国の管理家だったことが負い目になってマーレへの奉仕を強制されていた一方で、エルディア復興のために選抜された可能性があるのではないかと思います。なんというか、がんじがらめにされてる感じです。ガリアード家やピークちゃんの家も、何か繋がりがあるかもしれません。そして、グライス家やクルーガー家、さらにイェーガー家にも、なにか家系の因縁のようなものがありそうですよね。

 

-おまけおわり-

 

 

 

 

本日もご覧いただき、ありがとうございました。

 

 
written: 30th Nov 2018
updated: none