進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

085 巨人化学 番外 記憶


みなさんこんにちは。

 

※変更 2019/08/15 扉絵が意味不明すぎたので少し変えました。

 

!!閲覧注意!!
いつもの、”もし万が一にでも予想通りになってしまったら読んだことは取り消せませんよ”というやつです。どうぞくれぐれも自己責任で。

 

 

 


今回はたびたび取り上げてきた記憶のおはなしです。なんとなく巨人化学のコーナーっぽい話なのですが、本題部分が限りなく予想や妄想に近いので番外としました。け、決して”心”の記事を中途で放置してるからというわけではありません。決して。

以前書いたものと少し重複する部分があるので、そちらを読んでいただいてる方には申し訳ありません。

 

 

 

 


この記事は最新話である120話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。注記の無いものは全て120話からのものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


[記憶]

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進撃では記憶というものが非常に重要な要素であるのは言うまでもありません。

 

ところで記憶というのは何とも不思議なものです。私たちは個々で膨大な量の記憶を持っています。いや、持っているはずなんですが、記憶には姿かたちが無いのでどこにどれだけあるのかよく分かりません。なんとなく頭の中にありそうな感じはします。でもやっぱり形が無いので、他の人に見せることもできません。

自分の記憶やイメージしているものを伝えたいけど言葉では上手くいかない、そんな経験は誰にでもあると思います。百聞は一見に如かずなんて諺があるくらいで、見せた方が手っ取り早いですよね。それならと友達になにかを見せたとします。自分と友達は同じものを一緒に見て、同じ記憶を共有したはずです。ところが後になってそれを話題にすると、なにやらズレが出てきたりすることがあります。同じものを見て記憶を作ったはずなのに同じ記憶にならない。頭の中でしっかりイメージできるので自信満々に語った記憶が間違っていることもあれば、うろ覚えで自信が無かった記憶が完璧に合っていたりもします。すっかり忘れてた何年も前のことを鮮明に、まるでそこにいるかのように正確に思い出したりもすれば、つい最近のことでも完全に忘れていたり、ぼんやりとしか思い出せなかったりします。とても精密なようで不安定要素も多い機能であり、「記憶ってなんなの?」と問われるといまいちはっきりと説明しづらいものです。

 

 


じゃあ記憶ってなんなんでしょう。

 

 


ひとつの考え方として、記憶とは”情報とその結びつき”であると捉えることができます。

 

例えば、”りんご”

多くの方はこの”りんご”という文字を見て、あの赤い林檎を思い浮かべることと思います。それは”りんご”という名称・言葉と、あの果実のイメージが私たちの脳内で結びつきを持っているからです。外国人に”りんご”という文字を見せても、ほとんどの人は林檎を思い浮かべられません。なぜなら結びついてないからです。彼らは"apple"とか"pomme”といった他の文字と林檎が結びついています。つまり結びつき方は個人によって異なるんですね。

林檎のイメージは、さらに細かな情報に分類していくことができます。”赤”という色の情報だったり、”形”の情報、”果実である”という情報などたくさんの情報が結びついて林檎のイメージを作っています。林檎が果実だということを知らない人は、”果実”という情報との結びつきがありません。すると別の人の林檎と少し違ってきます。思い浮かべる”形”も人それぞれ少しずつ違ったりするでしょう。個々人が持つ結びつき方の違いによって、それぞれが異なる林檎像を思い浮かべるわけです。

また、情報の結びつきは1対1ではなく複数が同時に結びついています。”リンゴ”という情報には赤い林檎の他にも色々なものが結びついていて、例えば青りんご、アップル社(macとかiphoneだったりも)、アップルパイといったように同時に複数のものが結びついています。そこには結びつき方の強弱があって、例えば真っ先に赤い林檎を思い浮かべる人もいれば、青りんごの農家の方は先に青りんごを思い浮かべたりするかもしれません。もちろん青りんご農家は赤い林檎を知らないわけではありませんが、先に青りんごが出てきたりします。こんな風に結びつきの強さによって思い浮かべる順番などが変わってきたりします。

この結びつき方やその強弱は、日々変化していきます。例えば10年前はある曲を聴く度にある人を思い浮かべていたとします。当時はその人がその曲と強く結びついていたということです。でも今は、その曲から別の人を思い浮かべるかもしれませんし、あるいは冬などといった季節を感じたりなどするかもしれません。結びつきの強さは変わっていくんです。こうやって人それぞれの経験によって結びつきは日々変化していきます。

さらに”赤”という色の情報にはこれまた人それぞれ、林檎の他にも色々なものが結びついています。例えばイチゴ、トマト、ポスト、血、広島カープなどが、人それぞれに異なる強度で結びついているのです。そこで、リンゴ→赤→ポストといった具合で結びつきを辿っていくのが連想です。何か繋がりを持ったものを想起したことによって、全く関係ないものが思い浮かんだりするのです(15巻62話)

 

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-この場所なら
-少しのきっかけを与えるだけで もしくはーー

エレンが記憶を見たこの場面、まさにこの連想が働いています。ロッドは「この場所なら」と言っています。もちろん記憶を見るに至る直接のきっかけは王家との接触ですが、その同じ”場所”から連想することで、今まで思い出すこともできなかった膨大な記憶のうち、あの”場所”で起こったことが思い出されているわけです。

 

 

 

 

 


長ったらしい説明にお付き合いいただき、ありがとうございました。大雑把な説明ではありましたが、進撃を読む上でこういった記憶のメカニズムを把握しといて損はないと考えます。

なぜなら上記のように、作者はそれを踏まえて描いていると考えられるからです。

 

 

 

 

 

 

さて、完全に説明できるとは言いませんが、今回の2ページからもいろいろな情報を拾うことができます。

 

 

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例えばこのあたり、家族を焼かれるクルーガーの記憶や、壁を壊した超大型、そこから王家を殺さざるを得なかったグリシャ(注射の場面かもしれませんが)といった風に、”トラウマ”あるいは”復讐を誓う”ような連想で結びついている感じになっています。

 

 

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その”トラウマ”の直上には旧リヴァイ班がいます。これもエレンにとって”大事な仲間”を失った”トラウマ”的な出来事に関連する人々ですよね。

 

 

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その旧リヴァイ班から上には”大事な仲間”たちが次々と現れていきます。飛行船や鳥なんかは”自由”の象徴でしょうか。仲間たちの平和な日常は”自由”を連想させるといった感じかもしれません。

 

ここでヒストリアが羽織っているものはこの場面と共通させているでしょうから(27巻108話)

 

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少なくともエレンはヒストリアと会っていたということが分かります。そしてヒストリアに隣接する”自由”に羽ばたく鳥は、そこでの会話が”自由”に関連していることなどを思わせます。

 

 


今度は右側のページ。

 

 

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たぶん母の手料理、母、母を食った巨人と、”母”で連想されていってる感じです。

 

 

 

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同胞を蹴落とすクルーガー、海、フェイ、このあたりもまた”自由”に関連しています。クルーガーとフェイからは”自由の代償”という感じもありますね。

 

 

 

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ジャンがミカサに小さくくっついてるあたりは面白いです。これがエレンの印象なんでしょう。

 

 

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そしてライナーもやはりミカサとイメージが繋がるところがあるんでしょうね(24巻97話)

 

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-お前や…
-ミカサみたいになるには…
-どうやったら…

ライナーはそこからアニ、そして仲間方面にも繋がっていく感じです。残念なことにエレンから見るとベルトルさんは、仲間としての印象はやはり薄めだったということかもしれません。

 

 

 

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印象という意味では、エレンの中でミカサはやはり大きいんだと思います(念のため言っておきますが、矢印がどうとかいう話ではありません。) ”心を占める”なんて日本語もありますが、好きであれ嫌いであれ、なんだかんだ大きい存在というのはありますよね。

 

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アルミンも、ミカサほどではないですが全体の中でかなり大きな部分を占めていることからも、そんな意味が察せられるように思います。これはおそらくアルミンが夢を語っている場面ですから、それがエレンにとって非常に印象的な出来事だったということもあるでしょう。

 

 

 

 

 

 

さて、ここからは現時点では完全に予想とか妄想の類です。わざとらしく避けてきたのでお分かりでしょうが、もちろん話の核心はここですよね。

 

 

 

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先に私の予想から書きます。

 

 

たぶんこれ、「いってらっしゃい」の反対側じゃないかなと予想しています(1巻1話)

 

 

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ちっちゃいコマですが、1話でもミカサは白い長袖の服で肩に手をかけているんです。そして、今回のエレンの記憶のミカサはまさにその時の場面なんですよね。そこに連なるように、つまり結びつきを持って描かれているのがこの少年なわけです。

 

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私は以前から「いってらっしゃい」は巨人大戦後、壁の王に反発した将軍家の女性(=ミカサの祖先)が進撃くんを壁の外に送り出した場面ではないかと予想しております。それが正しいかは分かりませんが、おそらくそれは1巻の場所と全く同じだろうとも予想していて、先述した地下空洞で地下空洞の記憶という見方が正しいならば、ピッタリはまってしまいます。1話でエレンがあの夢を見た理由も、同じ場所で近くに将軍家がいるという似たシチュエーションだったから連想が働いたとも考えられるわけです。

 

ちなみにこの少年は暗い色のベストを着ていますが、もしかしたらイェーガーさんと繋がってしまうかもしれません(21巻86話)

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まぁロッドなんかもそうなんで、このへんはまだ分かりませんけどね。

 

 

ところで少年はターバンのようなものを巻いていますが、現実でも中東というのはローマ帝国時代の世界から見れば”東洋”と言っても差し支えないものでしたから、ヒィズルの起源みたいなものを匂わせているかもしれません。ヒィズルを日本とし、マーレ(やエルディア帝国)をローマ帝国などの西欧文明と捉えるならば、中東はその中間であり文化が”混ざり合う”あたりとも言えますし、東の始まりとも言えます。カルラという名前はカールの女性形であり西洋圏の名前でもあるのですが、同時に迦楼羅と漢字表記もでき、インドのガルーダ神が由来の名前と捉えることもできるあたり意味深だと思います。

そして黒のターバンはムハンマドの子孫のみ身に付けられるといった感じで、色で地位を表したりもするそうです。するとこの少年はかなりの地位の家系である可能性が高いとも考えられます。ちなみに作中では中東戦争やヴィリーのパーティでも黒いターバンを巻いた人は登場していません。ヒィズルそのものではなさそうですが、東洋と西洋が混じっていて位の高い家系(もしかしたらそれがエルディア帝国本家の家系とか)であるかもしれません。

 

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この少年の右上は”母”に繋がっていってる感じがあることからも、「いってらっしゃい」を言った人物が母や姉であるか、あるいは将軍家と中東系で家系が異なるなら血の繋がりは無いかもしれませんが、母のような存在だったということかもしれません。

 

 

 


ただし、これが「いってらっしゃい」の反対側だと仮定した時にひとつ気になるのは、視点なんですよね。他は全てエレンの視点、すなわち進撃とか始祖の視点であるにも関わらず、ここだけ反対側から見てることになってしまいます。

すると何が考えられるかというと、例えばですが「いってらっしゃい」と言った女性は進撃の継承者で、自由のため、彼を外に送り出すために食われたなんて可能性もあるかもしれません。もしそうだとすると少し繋がってきそうなセリフがあって(25巻100話)

 

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-何で母さんはあの日 巨人に食われた?

 

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-世界を救うためだったら
-そりゃあ 仕方ないよなぁ…

何も知らない子供のエレンは母が巨人に食われたことで復讐の念を抱くばかりでしたが、過去の進撃が壁の王から壁内世界を救うために母のような人を食ったなんて展開ならば、このセリフがより意味深いものになってきそうです。そしてそれはまた自由のためであったとすれば、”自由の代償”というものを考えさせられる感じにもなりますね。

 

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・・まぁ、すべては想像に過ぎませんが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


きっとあの少年は、ターバンをマフラーのように巻いてあげるんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 

本日もご覧いただきありがとうございました。


written: 14th Aug 2019
updated: none