みなさんこんにちは。
今回は最新話からはいったん離れて、物語全体の考察をしていきたいと思います。
ただ、今後の展開予想になっている部分もありますので、最新103話までお読みになってからご覧になることをお勧めいたします。
また、毎度のことですが、強烈なネタバレになる可能性もありますので、閲覧注意ということでよろしくお願いします。
この記事は最新話である103話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
[記憶のもたらすもの]
以前、調査兵団の作戦目的は、「真実の歴史を見せること」ではないかと考察しましたが、今回の考察はその記憶の解放によって起こりうる、ある一つの可能性についてのお話です。
「記憶の継承」は進撃の巨人の世界では重要な設定の一つですが、現実にもそれに近いものがあります。
まず、人間が火を恐れたり、暗闇を恐れたりするのは、本能と呼ばれますが、それは我々の祖先がそれらを克服できなかった時代から脈々と継がれてきている記憶だと言えるのではないかということです。そして、実際に動物実験でも親になんらかのショックを与えると、生まれた子どもがそれを覚えているかのように振る舞う、言わば親子間でのトラウマの記憶の継承のようなことが確認されているそうです。若干オカルトめいて聞こえるかもしれませんが、ちゃんとした科学者によって研究されていることです。
進撃世界のユミルの民は、記憶の継承に対してより強い仕組みを持っていますから、レベリオの民なんかは代々にわたって「マーレに恭順を示し、沈黙して命を繋いでいくこと」が刷り込みのように無意識の奥底にこびりついているかもしれません。
そのレベリオ民ですが、彼らの自虐意識が非常に高いのはマーレの洗脳的な教育もあるでしょうが、一部にはそれ以上の異常性を見受けられます。それがマーレの戦士への執着です。
といいますのも、マーレの戦士に一族が選ばれることのメリットは名誉マーレ人になれることなのはご承知の通りです。しかし、この名誉マーレ人というもの、たいした価値が無いように見受けられるのです。
どういうことかというと、名誉マーレ人である戦士隊の親御さんたち、戦士自身もそうですが、みんな収容区内に住んでいるようなのです。戦士募集の際の名目では「マーレ国内での自由を保証する」とありますので、おそらく収容所外での居住権も認められていると思います。しかし実際のところ、収容区外には住めないということなんじゃないでしょうか。
それが分かるのが、戦士隊たちのレベリオ帰還時のシーンです(23巻94話)。
マーレ国のために命をかけて戦った兵士たち、英雄といっても過言ではない名誉マーレ人である戦士たちを見るマーレ人たちの冷ややかな目、もはや腕章に色が付いたところで、迫害がひどすぎて収容区外には住めないであろうことが容易に想像されます。
収容区からの外出時にはライナーでさえ、いまだに外出理由と許可証の提示が必要です。
まさに名ばかりの「名誉」だけで、全くメリットが無さそうなんです。
そんなあってないような名誉を得るだけの為に、13年しか生きられない戦士に可愛い我が子を送り出す、これを異常と言わずして何と言えばよいのでしょうか。
このことに関して作中に一つヒントが示されています。爺イェーガーの話です。
彼はエレンに対してグライス一家について語ります。要約するなら、コルトとファルコの一家は、自分たちには何の罪も無いにも関わらず、負い目を負わされ、それに突き動かされるようにマーレへの奉仕に子どもの命すら捧げざるを得ない、ということです。
かつて爺イェーガーが「ただ慎ましく生きていくしかない」とグリシャに言っていたことは正しく、クルーガーが爺イェーガーを「賢い男」と評したことも納得がいきます。普通に考えれば、こちらの道を選択するべきなのです。
このことは、他の戦士たちの各家庭にも、先祖、あるいは一族から引き継ぐ、それなりの事情がある可能性を示唆しています。
それと同時に、そのような状況に至った先祖の記憶も、彼らの無意識の奥底に眠っているのではないでしょうか。
作中ではヒストリアがエレンに触れた時にフリーダのことを思い出し、「記憶の蓋」がひらいたという表現がなされていますが、もし記憶を操ることができる始祖の力によって、全てのエルディア人の「記憶の蓋」を開くことができるとしたら・・
そこにはきっと様々な悲喜こもごものストーリーがあり、彼らはそれを自分のことのように追体験し、何かに気付いたり、何かを考え、行動が変化していくのではないでしょうか。
どうもそれに向けての伏線としか思えない事柄が、作中には散見されるのです。
それぞれについて見ていきたいと思います。
【ブラウン家】
最初は、そのマーレ傾倒の病的具合では頭一つ抜けているカリナおばさんのブラウン家です。
さて、ブラウンと言えば思い当たるのが「ヨロイ・ブラウン」です。
この液体をレイス家がどうやって手に入れたかは明かされていませんが、注射器と脊髄由来液の瓶を見るに、どうも古いものである可能性が高く、壁内移住時に持ち込んだのではないかと推測できます。
レイス家のもの(16巻66話)…全体的に大きく、シリンダーも太いです。瓶は陶器でしょうか。
こちらが約20年前にマーレが使っているもの(22巻87話)…注射器は小型化されており、瓶もプラスチックかガラスに見えます。
ただ反論の余地もあり、レイス家のものは王家用の装飾品的なものだったとも考えられますが。
これが仮に古いものであった場合、エルディア帝国時代にブラウンという家が「鎧の巨人」を管理していた可能性が出てきます。その後、巨人大戦で鎧はマーレ側に奪われていますので、ブラウン家はそこで敗者となっており、粛清されていると考えられます。
9つの巨人を管理していた家は相当の権力を持っていたでしょうから、ブラウン家もそれなりの規模があったことでしょう。粛清がどの程度の範囲まで及んだか、という話になりますが、一部の親族が生き残った可能性もあるんじゃないでしょうか。ただし、グライス家と同じような立場になるのは避けられないでしょうが。
その後、ブラウン家が代を重ねていく中、カリナは抑圧された家庭で育つことになります。「マーレ人に生まれていれば」と思うことは必然かもしれません。マーレ人との恋愛や結婚への憧れ、その子どもとマーレ人を目指すなど、全てはマーレ人であることへの憧憬と考えられると思います。
さらにブラウン家と言えば、みなさまご存知のモーゼス・ブラウンもあるんです。
-モーゼス・ブラウンについて-
モーゼス・ブラウンは1話冒頭、調査兵団の壁外調査に参加しており、巨人に喰われたと思われる兵士です。かの有名な「何の成果も得られませんでした!」のシーンでキース団長が片腕を渡した女性がモーゼスの母です。このシーンを巡っては、当初マンガ版では母親が「息子のブラウンはどこ?」と尋ねていることに対し、アニメ化の際に親が子を苗字で呼ぶのはおかしいという理由で、名前をモーゼスに差し替えられた経緯があります。
その後、担当編集者のコメントで彼の名は「モーゼス・ブラウン」であることが正式に発表されました。
左がモーゼス(1巻1話)、右がライナー(4巻18話)です。
額から目や眉、顔の輪郭はライナーと似ている感じもしなくもありません。
アニメ版はもう少し似て描かれている感じがします。左モーゼス(1話)、右ライナー(3話)です。
ちなみにこの兵士がモーゼス・ブラウンであるという根拠は、アニメのエンドクレジットにあります。
アニメ1話のエンドクレジットを見ると、モーゼスに声優が当てられているのがわかります。そして、冒頭のシーンでまともなセリフを喋っている兵士は、キース団長とエルヴィン、この兵士だけです。その後は腕だけしか出てきていませんので、この兵士がモーゼスであることはほぼ間違いないと言ってよいでしょう。
-閑話休題-
ブラウンというのはありふれた名前なので、どこにでもいるはずだとも言えます。しかしながら、先述のモーゼス・ブラウンの名前騒動によって「彼の苗字がブラウンでなくてはならなかった」ことが推察されるのです。
なぜなら、彼は今に至ってもこのシーンでしか出てきていません。特に意味が無いのであれば、名前を変更するにあたって、ただのモーゼスでも問題なかったのです。リアリティを捨てるなら、ブラウンが名前だと言い張っても良かったわけです。それをわざわざ「モーゼス・ブラウン」だとフルネームで言い換えたのです。
さらに言えば、名前の変更だけなら、顎の巨人であったマルセルでもされております。連載当時「ベリック」だった名前をコミックス発刊時に「マルセル」に変更されたそうです(理由は未だ不明です)。
すなわち作者の意図として、あの場面で「ブラウン」という名前を出しておきたかったが、後になって件のツッコミが入り修正せざるを得なかったと伺われるのです。そして修正後も「ブラウン」でなければならなかったということです。そこに1巻から現在まで登場し続けているブラウンさんがいる以上、その関連性を疑わないわけにはいきません。
普通に考えれば、ブラウンの一族の中に壁内に入った者もいて、その子孫がモーゼスだということでしょう。元帝国の巨人家がマーレにくだるよりエルディア王の下へと考えても、なんら不自然ではありません。
そしてこのことは、同様に巨人大戦で分断された多くの一族がある可能性を示唆しています。
話を戻しまして、一心不乱にマーレに尽くすことが人生の目的のようになってしまっていたカリナが、もし真実を知ったならどうなるでしょうか。
自分の家系は元は位が高く、没落させられた家であること(これは既に知っている可能性も無きにしもあらずですが)。悪魔・敵だと言い続けていた人々の中には、かつて分断された親族がいて、自分たちと同じように何も知らずに戦わされていたこと。
世界の見方が変わり、自分の過去の行いを省みるのでしょうか。
今まで目的達成の道具のようにしか接していなかった息子ライナー、そして今まさに命を捧げようとしている姪のガビ、子ども達の人生に目を向けるきっかけになるかもしれません。
【フーバー家】
これは根拠薄弱なのですが、ベルトルさんの祖先の誰かは、ユミルを祭り上げたインチキ(?)司祭だった可能性があります。
まずはこちら、ベルトルさんに似ていませんか?
さらにアニメでは2期にこのシーンが前倒しで挿入されたのですが、それがちょうどベルトルさんがユミルをおぶっているシーンに挟まっている上に、声が非常に似ています。おそらく声優さんが同じだと思うのですが、演技をほとんど変えていないと思われるのです(探したんですがこのモブ男の声優は公表されてないようです)。
左がユミルを拾った男(2期10話)、右がベルトルさん(1期3話)です。これは狙ってるでしょうね。
このベルトルさんの祖先も、ユミルと一緒に楽園送りにされたと思われますので、残された一族はグライス家のような立場になっていてもおかしくありません。ただフーバー家もユミルも現在関係者が残っていないので、作中で語られないかもしれません。可能性があるとすればポルコの記憶くらいですが、どうでしょうか。
余談ですが、ユミルとフーバー家の因縁を順を追って書くとこのような物語になります。
少女ユミル、ベルトルさん祖先に拾われ新しい人生を得る。祖先さんも羽振りの良い人生を得る
→マーレ当局の摘発にあい、ユミルは祖先さん達を助ける為に嘘をつくが、どちらも楽園送りにされ地獄へ
→約60年後、ユミルはベルトルさんの仲間を喰って、また新しい人生を得る
→ベルトルさんらを助けるためにもらった人生(命)を返す
ユミルはベルトルさん絡みで2度の新しい人生を得て、それぞれで助けようとするが一度目は失敗、二度目にてそれが叶うという、なんとも数奇な劇中劇となっています。既に完了している感じもあるので、やはり出てこないかもです。
【レオンハート家】
こちらはブラウンやグライスとは様相を異にします。アニ父の「現実離れした理想」とは未だ明らかになっていませんが、巨人の力が必要だったということでしょう。その何らかの目的のためにマーレに娘の命を捧げた、という点では他の家と変わりありません。異なるのはすぐにそのことの誤りに気付いたことです。
理想という言葉からはいくらでも妄想が広がるのですが、王家や巨人家の残党だったかもしれませんね。
ところでアニ自身はライナーのように精神分裂まではいかなかったものの、戦士と兵士のはざま、良心と罪悪感に圧し潰されそうになっていました。父との約束だけを唯一の心の拠り所として。
そんなアニが真実を知り父と再会することで心の中の矛盾と結晶が氷解するかもしれませんね。
【イェーガー家】
グリシャの父は疑ってかかると怪しい部分がたくさんあります。
クルーガーに賢いと評されている通り、かなりの切れ者と思われます。グリシャは子供だったのでマーレの犬としか読み取れていませんが、その実、あれだけ熱心なマーレ奉仕の姿勢は「言うな、この建物は壁が薄い」や「我々にできることは…この収容区でただ慎ましく、沈黙し…生きることだ」から、愚かさを分かっていて敢えて行っている、と読み取れます。カリナと異なり、家族を守る最善策をきっちり理解しているわけです。(でも最善策にとどまっていては何も打破できない、ということも作品中で描かれているのは面白いところです。あと、カリナも敢えてやっている可能性は残してはいます)
そして、息子夫婦が楽園送りにされるときのこの表情。あきらめのような表情にも見えますが、母と、獣の前任者(?)が泣いているのと対照的です。
さらに直近のエレンとの手紙の話です。彼が手紙のことをなぜ知っているのでしょうか。ジークから聞いた可能性はもちろんありますが。
そして入院してたのかは分かりませんが、精神壊れてるのかと思えば、エレンとの会話は年老いてなお頭脳明晰さを感じさせます。
そもそも開業医ということであれば、本人でなくとも先祖がフクロウと関わりを持っていた可能性もありますね。
これらの家族の物語は、記憶の解放によって動き出す可能性があります。
さらに、モーゼスの家のみならず、アッカーマンと東洋人の例を見れば、自ら145代目に付き従って壁内へ入った人々がいてもおかしくありません。その多くは憲兵に粛清されている可能性もありますが、中にはレベリオの民のように、沈黙して生きることを選んだ人々がいたとしたら・・
そんなことを考えてみました。
【アルミン・アルレルト】
アルミンは最初の3人組の一人でありながら、非常に謎が多い存在です。
まずもって家族が怪しいところだらけです。爺ちゃんは壁外の本を持っているし、親は気球作って壁外へ行こうとしています(両親については、当初の設定に変更があり、王政編にてアニメ版に沿った形で修正されたことが明らかになっていますので、そちらを事実として取り扱います)。
さらに預言者のような発言、アニメのナレーション、そして・・・タイバー家とよく似た鼻。
もしかすると、エレンとアルミンの対立ってけっこう洒落にならないレベルかもしれません。
アルミンについては後日しっかりと考察したいと思っています。
【エレン・イェーガー】
以前の考察でカルラはクルーガーと遠い親戚のつながりがあるのではないかと述べました。こちらをご参照ください。001 最新話からの考察 102話① ロープ兵の正体 - 進撃の巨人を読み解く
実はこれ、顔が似ていること以外にも強めの根拠があります。
ご存知の通り、エレンはクルーガーの記憶をかなり鮮明に、幾度も思い出しています。グリシャもその場にいたシーンが多いため混同しそうになりますが、決定的なシーンがあります。
グロいのでモザイクしましたが、フェイが嚙み殺されて、犬に囲まれているシーンです(22巻90話)。これはグリシャは見ていないですよね。グリシャは妹の死を知ったのすら翌日になってからですから。
おそらくクルーガーはエレンと別れた後、グロスを探しに行って、これを見たんでしょう。後にこれを復権派を通じてグリシャに伝えたのです。
次にこのシーン、
エレンはグリシャではなく、クルーガーに重なり合っています。つまり、エレンはクルーガーとの道の結びつきが強いということです。
あの「ミカサやアルミンを守りたいなら」というセリフも、未来のエレンがグリシャに言われている場面の記憶をクルーガーが見た、と解釈できます。
さて、このことはかなり恐ろしい可能性を生み出します。
クルーガーは王家の残党です。100%とは言えませんが、真の王家の血が流れている可能性があります。そして、その血がカルラも同様であれば、エレンにも真の王家の血が流れている可能性が生まれます。
さらにさらにその可能性を後押しするかのように、エレンはある記憶を見ています。
そう、フリーダの記憶です。しかもこれはヒストリアと接触して「記憶の蓋」がひらく以前です。後には、グリシャ vs フリーダの場面をフリーダ視点からも見ていますね。
これはとんでもないことで、エレンは座標の力を単体で発動できる可能性があるかもしれません。
-以下、妄想-
【ピーク・〇〇】
これは妄想というか、当てずっぽうの予想でしかありませんが・・
ピークちゃんの苗字が気になって気になって、さらにここ数話のピークちゃんの顔の描き方がどこかで見たことあるような気がして、むしろロープ兵どころじゃないくらい見たことある気がしてたんですが、もしかすると1%くらいの確率でこれかもしれません。
目の形が違いますが、鼻、口、アゴからエラの部分の描き方は似ているような気がしないでもなくなくない・・・
まあ確かにこの苗字は出せないよな~と思いますし、キャラ付けの方向性も合ってる部分あるなあと・・
無いな。
まあ、妄想です。
-妄想おわり-
本日もご覧いただき、ありがとうございました。
written: 12th Mar 2018
updated: none