110 世界観⑭ 暁
みなさんこんにちは。
また分割か。(しかも三分割になりそう)
この記事は当ブログの過去の記事をご覧いただいていることを想定して書いています。最新話のみならず物語の結末までを含む全てに対する考察が含まれていますのでご注意ください。当然ネタバレも全開です。また、完全にメタ的な視点から書いてますので、進撃の世界にどっぷり入り込んでいる方は読まない方が良いかもしれません。閲覧に際してはこれらにご留意の上、くれぐれも自己責任にて読むか読まないかをご選択いただけますようお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。扉絵は16巻66話から引用しております。
[暁]
昔話をしましょう。
あかつき、
アニメの主題歌でLinked Horizonさんが用いているためか印象としてはものすごくある言葉にも関わらず、作中には一切出てこない言葉です。おそらく直接的な表現を避けてるのだと思います。言うまでもなく130話の副題にもなっている「夜明け」のことですよね。
そして当然ながらそれは北欧神話で最終戦争ラグナロクを「神々の黄昏」と呼ぶことに対応してるわけです。たそがれとあかつき、すなわち「夕暮れ」から「夜明け」への流れです。もちろんその過程には93話「闇夜の列車」などに見られるような「夜」が挟まってきます。そういえば「白夜」という夜に昇る太陽の表現もありましたね。ともかく、夕暮れから夜を経て夜明けに至るという流れが作品のあちこちに匂わされています。
暁の象徴と言えば、ルシファーです。ルシファーとは明けの明星のことであり、また堕天使としても有名ですよね。アニメ3期のYoshikiさんの曲はまさに堕天使のイメージだったと思います。作中でも巨人の力を「神にも等しい力」と表現していますから、神に近しいものが人間界に現れたと捉えれば、ユミルの民自体をルシファーに重ねることもできるように思います。あるいは堕天使と人間との合いの子の末裔といったところでしょうか。
宗派にもよるようなんですが、ルシファーは大悪魔サタンと同一だと言われます。あるいは天から堕ちたことでサタンになった、といった解釈もあります。まぁ「大地の悪魔」という言葉がピッタリはまる感じですよね。それと「神でもあり悪魔でもある」ということでもあるでしょう。あと失楽園の話はもうしたから省略していいですよね。
さらに、
宗派によってはルシファーはイエス・キリストと同一だと見なすこともあるそうです。ルシファーとは「光をもたらす者」であり、イエスは「救済をもたらす者」であることや、神と人間の間に位置するような部分が重ねられているのでしょうか。
そもそも、明けの明星は古来から伴星として捉えられてきました。空が明るみ太陽が昇る直前のわずかな間だけ、太陽の露払いであるかのごとく、あるいは太陽を地面から引っぱり上げるかのように、あるいは太陽を導くかのように一瞬の輝きを放つ、それが明けの明星です。そしてイエス・キリスト伝説は旧来の太陽信仰が基になっていると言われますが、神の子として神と人との間に立ち、神の言葉を伝え神の奇跡を行う、それがイエス・キリストであるならば、太陽の伴星である明星=ルシファーと重ねられるのも納得がいくように思います。
だから ”人類の” 夜明けなんだと思います。ユミルの民とかエルディアが主体なのではなくて、世界をひっくるめた人類の夜明け。それをもたらしたものということなのでしょう。巨人とは人類を導く伴星だったという感じですね。
さらにさらに、
イエス・キリストと言えば日本でもクリスマスは馴染み深いものになってますよね。でもご存知の方も多いと思いますが、クリスマスはイエス・キリストの誕生日ではありません。このことはキリスト教自体にも認めている宗派もあります。そもそも「イエス・キリストのモデルになった人はいるだろう」と目されていますが、実際にはその程度の情報しかないってことです。いたことさえ断言できないレベルです。私たちがネット上に垂れ流している個人情報の方がよほど多いでしょう笑。それでも誕生日だけは間違いない事実であり毎年お誕生会が開かれてる、なーんて滑稽な話だったりするのでしょうか。あるいは。
まぁ揶揄するのは程々にしまして、クリスマスの前身と言われているものにサトゥルヌス祭やミトラス祭があります。
余談ですがミトラス祭はミトラス教のお祝い事で、おそらく王都ミットラスはここからきていると考えられます。ミトラス神(ミスラ神とも)は「契約」の神であるとされるのもポイント高いです。ちなみにマーレはローマ(帝国)のもじりでもあるでしょうけど、ローマ帝国の国教になったキリスト教によって弾圧されて滅んだのがミトラス教というのもポイントです。
余談ついでで、サトゥルヌス神は「農耕」の神です。12月25日は兵長のお誕生日です。あれ?アッカーマンと農耕って何かあったような・・
さて、話を戻します。
じゃあクリスマスって何なのって話なんですが、サトゥルヌス祭もミトラス祭も冬至のお祭りだと言われています。冬至ってのはご存知の通り、一年中で夜が最も長い日です。夜が最も長いというのは見方を変えれば、冬至の日を境にしてそれ以降はだんだんと昼が長くなっていくということです。
先ほどもちらっと書きましたが、イエス・キリスト伝説というのは太陽信仰が基になっていると考えられています。太陽は地球上の全てにエネルギーをくれる神のような存在なんですが、燦々と照りつける夏、実りの秋を経て、冬至に向かうにつれて太陽の光(=神の力)は弱くなっていきます。夜が長くなる、すなわち闇が強くなっていき、草木は枯れ、生物の活動も停滞します。しかし冬至を境に太陽は再び力を増していく、つまり再生・復活するわけです。
現代以上に自然現象への依存度が高かったであろう先史時代の人間が太陽を神格化するのは全く不思議ではないし、冬至というのが農耕をする人々にとって重要なイベントであったことも窺い知れます。またそうした人々を統率するにあたって擬人化した伝説が生まれたことにも納得できるように思います。
なにはともあれ、冬至を過ぎるとだんだんと日が長くなっていき、やがて暗い冬のあいだ死んでいた草木が再び芽吹き始めます。私たちはその時期を「春」と呼びますよね。再生の季節、あるいは新しい何かが始まる季節といった趣もあるでしょうか(22巻90話)
-トロスト区から昇降機が解放され街道の舗装事業が開始される頃には
-草花が芽吹き 蝶が舞っていた
ところで古語表現ではありますが、ドイツ語で春のことを lenz とも言うそうです。
クリスタは当然ながらキリストと同義でしょう。
キリストはルシファー。明星は金星。金星は英語で Venus です。ヴィーナスはもちろん、(17巻70話)
-女神様…
です。
では、クリスタ・レンズの話を始めましょう。
・・って言ってもヒストリアの方ですが。
さて、早口で端折りながらいきますが、ヒストリアの物語は端的に言うと家柄とか伝統からの脱却が主軸になっていると思います。王家の血を引くという将来を宿命付けられたような境遇に産まれたのはジークと同じ、でもジークと違って彼女は「要らない子」から「必要とされる子」への流れです。あ、これユミルの時に書いたことと全く同じですね。
家柄、伝統、歴史、慣習などなど、他にもいくらでもあるでしょうが、これらは人間が未来のために積み上げていくもの、あるいは結果として生じたものであり、また同時に過去から未来を縛り付けるものとも言えます。
ヒストリアの父親であるロッド・レイスは、若い頃は正義に燃える青少年だったようです(17巻68話)
-巨人を今すぐ一匹残らず殺せばいいんだよ!!
-何で!? 何でわかってくれないんだ!?
壁の外に脅威があって、我が家にだけはそれをどうにかできる力がある。檻に入れられる程ですから、一度や二度ではなく相当懇願したんじゃないかと思います。でも彼は最終的に初代王の思想という名の伝統に屈し、まさに伝統の象徴のようになっていきます(16巻66話)
-初代王はそれこそが真の平和だと信じている
-…なぜかはわからない
神がなぜそう考えるのかは分からないが、それが神の御心ならばそれに従う。
といった感じで盲目的に神を信じるようになり、子供にそれを押し付けていきます。そして自分には神をこの世界に呼び戻す神官のような使命・役割があるんだと思い込んでいきます。おそらく弟や子供を巨人にして自分だけが生き永らえたことへの罪悪感なんかから目を逸らす働きかけもあったのでしょう。その根源は「死にたくない」ということでしょうが、それはさておき。
余談ですが、ロッドはよく毒親というかクソ親父くらいの評価をされてると思います。実際その通りなんですが、上記の文章を少しアレンジしてみました。
なぜこういうルールになっているのかはっきり分かっていないが、それがルールなら従う。他の人にもルールを遵守するよう働きかける。
なぜこういう慣習や伝統があるのかは分からないが従う。他の人にも(以下略
意外と誰にでも心当たりがありそうな話です。
反対に ”なぜ兵士は人類のために心臓を捧げなければいけないのか” という疑問をちゃんと差し挟んだのがフロックだったりしますし、以前はそれが ”正しい” からとやっていたけど最終的になぜそうするのかに気付いたのがアルミンだったりとかしますよね。
キーワードは「盲信」「疑問」「知る」といったところでしょうか。なんかファルコとガビの話っぽくなってしまいました。
ちなみに「伝統は破るべきもの」みたいな話ではありません。ちょうど今アニメでやっているあたりがそれで、(28巻113話)
-これこそが我々が淘汰すべき悪習そのものだ!!
-粛清してみせよ!!
この後の展開をご存知であるみなさんには言うまでもないでしょうが、伝統や慣習といった受け継がれていくものが必ずしも悪いということではないのです。だから上記のキーワードみたいな話になります。
閑話休題。
ヒストリアの話に戻します(16巻66話)
彼女はそんな家柄や伝統、歴史や慣習といったものを背負い投げすることで親殺しに至るわけですが、ロッドを物理的に殺した直後にこんな場面がありました(17巻68話)
-こうやって流されやすいのは間違いなく私…
女王をやれと言われたからやる、あるいは父に嫌われたくなかったから庇おうとしたことなど含めても、流されていたと言えばそうなのでしょう。でも彼女はここで自ら立ったんですね。それまでの出来事の中で「自分が何のためにそれをするのか」ということを明確に意識するようになったということなのでしょう。だから彼女は孤児の保護政策などといった自分が本当にやりたいことを推し進めていきます。女王という役割は元々流れで与えられたものかもしれませんが、その絶大な力を自らのやりたいこと(それは同時に民のためでもある)に上手く活用していくんです。
余談ながら個人的にここは原作の流れの方が好きです。アニメはたぶん構成上の都合と「それをお仕着せにするかは自分次第~」というセリフを言わせたかったため最初からヒストリア自身の意志で引き受ける形になったのだと推測しますが、原作の方の、初めはただ流されて女王を引き受ける感じの方が本人の気付きや転換がより強調されているように感じたりします。
個人的な感傷はさておき、気付きを得たヒストリアは(17巻69話)
-私が巨人にとどめを刺したことにして下さい!
-そうすればこの壁の求心力となって情勢は固まるはずです
エルヴィンに自らの考えを具申したり、(22巻90話)
-公表しましょう
-我々は皆 運命を共にする壁の民
-これからは一つに団結して
-力を合わせなくてはなりません
兵団内での情報公開に対する議論でも自らの意志で鉈を振るっていきます。そしてこれらの「選択」が、彼女自身の意見でありながらきちんと民のことを考えた選択になっていることも見て取れます。ユミルの「選択」と似ている感じもあるでしょうか。
その後マーレ編に入ってからは途端に出番が少なくなってしまったヒストリアでしたが、終盤にきて少しだけ彼女の動きが明らかになりました(32巻130話)
-私が…子供を作るのはどう?
違う意味で物議を醸したセリフですが、まず抑えておきたいのはこのあたりに対応してる点です(27巻108話)
-だが妊娠しちまえば出産するまでは巨人にされずに済むって
-そう助言した奴がいる
ローグら憲兵の推測では「イェレナあたりの入れ知恵で延命のために子供を作ったんじゃないか」ということでしたが、
それは彼女自身の意志だった、ということ。
でも前述した流れを念頭に置いていれば自然でしかありませんよね。また暗喩と言っていいのかは分かりませんが、彼女は「死なないための選択」をしたわけではなかった、という捉え方もできるかもしれません。
さて、その時ヒストリアはエレンにこんなことを言っています(32巻130話)
-争う必要も逃げる必要も無い
実はエレンが似たようなことを後に口走っています(28巻112話)
-エルディアの問題を解決するのに争いは無用だ
もちろんヒストリアが言っていたのはあくまで憲兵への対応の話ですので違うと言えば違うのですが、そのセリフが出てきた流れってこんな感じなんです(32巻130話)
-憲兵と争うかここから逃げるしか…手は無い
戦うか逃げるかしかない、そして世界は皆殺しにするしかない、といった感じでエレンはかなり強硬的なことばかりを言っていたんです。どうもそのニュアンスが少し変わっていると捉えられるように思います。そして後に彼女の言葉を反芻するような部分があるということは、ヒストリアの提案によってエレンはなんらかの影響を受けたと推察できるのではないかと思うんです。
そのエレンはレベリオ襲撃直後にこう言っていました(26巻105話)
-これで時間は稼げたはずです
この時はエレンに対してネガ視線に偏っていたハンジによる皮肉交じりの一言によって論点がずれてしまいますが(ちなみに「争いは無用だ」の時も同様に論点がずれています)エレンの目的のひとつに時間を稼ぐことがあったということは間違いないでしょう。そしてローグらが言っていたようにヒストリアの妊娠が時間を稼ぐ効果を発揮したことも事実です。つまり二人には共通する目的があったと推測することができます。
さらにその後「出たい時にいつでも出られる」にも関わらず、エレンはしばしの間「戦え戦え」とか言いながらおとなしく収監されていたのはご存知の通り。さらに時を同じくしてヒストリアも同じような目をしていた描写がありました(27巻107話)
エレンに関してはすでに考察していますが、要するにヒストリアも同じ意図があったのではないかという話です。
つまり二人は「待っていた」んだと思います。
何をってもちろん、
みんなの選択を、です。
二人が行ったことに共通するものは時間を稼いだということです。でもその時間稼ぎによって決定的な何かが得られたのかと言うと、最終回を目前にした今振り返っても特に思い浮かびません。実際ハンジの言っていた通り世界の行動を早めたような部分もあると思います。じゃあ彼らの行動は無意味あるいは逆効果に過ぎなかったということでしょうか。
いや、こう捉えればそこには確かなものが存在することになります。
二人の行動は、少なくともみんなに選択できる余地を生み出したと。言い換えれば、選択肢を与えたということです。
しかもこれは時間を作ったというだけに留まりません。ジークという王家の血を引く巨人を連れてくることによって選択肢のお膳立てまでしていることになります。以前書いた兵長がエレンに対して選択肢をお膳立てしたこと、そしてエレンが始祖ユミルに選択肢を与えたことと綺麗に重なってきますね。
ヒストリアはエレンとの会話でこんなことを言っています(32巻130話)
-みんなが動いてくれたから…
-私はそれで十分だよ
ひとりひとりの小さな選択が集まって壁内世界が変わっていったのを目の当りにしてきた彼女にとって、今回は思い通りではなかったにしてもみんながひとつの目的に向かって行動を選択してくれたことが何よりも嬉しかった、ということでしょう。
先ほど妊娠は彼女の選択だった旨を書きましたが、ヒストリアの選択にはいつも付随してくるものがありましたよね。
それは、民のためでもあるということ。
だから民衆を中心としたパラディ島全体に対して選択の余地を与え、それを待ったのだろうと思います。拡大解釈をすれば世界の人々さえ含めているかもしれません。ですので、仮にパラディ島全体として王家が獣を継承していくことを望んだなら、エレンはともかく彼女自身は再びそれを受け入れたと思います。
ですがご存知の通り、相変わらずぐだぐだと問題の先送りに終始し内輪揉めを続けたのが兵団でした。もちろん兵団の人々も大事で守るべき島の人間であることに変わりはないのですが、見方によっては兵団によってパラディ島の選択が阻害されていたと言う事もできるかもしれません(27巻110話)
-…いつまでも時間があると思っているなら
-それは間違いだと伝えろ
-それだけは同じ意見だ
いくら時間を稼いだとは言っても、あの兵長でさえジークに同意せざるを得ないほどに猶予が無かったのも事実です。当然エレンにしてもいつまでも指を咥えて選択を待っていられるはずもないでしょうから、彼は彼の行動を起こすほかなかったということだろうと思います。
ヒストリアの発した印象的な言葉で「悪い子」というのがありました(16巻66話)
-全部ぶっ壊してやる!!
-私は人類の敵だけど… エレンの味方
-いい子にもなれないし 神様にもなりたくない
-でも…
-自分なんかいらないなんて言って泣いてる人がいたら…
-そんなことないよ って伝えにいきたい
彼女の言う「悪い子」ってのは端的に言えば旧来の体制や伝統、慣習といった過去から継がれていくものに囚われず、自分の大事なものを大事にする行動をとる人のことです。どこが悪い子なんだってツッコミはひとまず置いといて話を戻しますが、
おそらく二人は悪い子になるしかなかった、
いや、悪魔になるしかなかったのだと思います(21巻84話)
-こいつは悪魔になるしかなかった
だからこその138話、エレンによるミカサへの最後の言葉が(34巻138話、20巻80話、21巻84話)
「ありがとう」
なのでしょう。
最終的にミカサは甘ったるい「悪魔のささやき」に流されることもせず(34巻130話)
-今日はもう何にもしないでゆっくりしてようぜ
(エレンは悪魔になるしかなかった)
また、かつて命を救ってくれたエレンという「過去」に囚われることもなく(27巻109話)
(ミカサはずっとエレンから目を逸らし続けてきた。身体的にも目を逸らす作用、拒否反応として頭痛が起こっていた。そうやって彼女は自分が生み出した美しい虚像であるエレンばかりを見てきたけど、最後に本当の意味で彼と向き合った)
そして自らの意志で自分の大事に想うものを守るために戦うことを、前へ進むことを選択したわけです。
もちろんそれはエレンを親友だと思っているアルミンや仲間だと思っている他の面々も同様で、そうやって過去の虚像を見て逃げるのではなく、現実をありのままに真っすぐに見つめて戦うことを選んだ、意志を持って過去を打ち破ったということになるのでしょう。
それはエレンがずっと言っていた考え方でもあり、大事な彼らだからこそそうやって生きていって欲しいという願いでもありました。(32巻130話)
-続いてほしい
-ずっと… 幸せに生きていけるように
でもエレンの中にもいろんなエレンがいて、(33巻131話)
-島を… エルディアを救うため…
-それだけじゃ…ない
自らの夢を実現したい自分とそうではない自分の間で葛藤があったのだと思います(20巻80話)
-俺は…
-…このまま
-地下室に行きたい…
-…すぐそこにあるんだ
-…だが リヴァイ
-見えるか? 俺達の仲間が…
以前の記事の繰り返しになりますが、「地下室に行きたい、でも~」と自ら疑問を差し挟むというのは、本人は「行かない」方を選択したいけどしきれないということだと私は思います。そして兵長はエルヴィンの意志を汲んで背中を押したようなものであると。
「世界一自由であるために世界をぶっ潰したい、でも」
ミカサも背中を押したんだと思います。
そして背中を押す時に適切な言葉は(34巻138話)
-いってらっしゃい
それはエレンが「悪魔になること」を許容することでもあり、それもまたエレンの意志を汲んだということになります。
命を救ってくれた英雄としてのエレンの虚像ではなく、本当のエレンを見つめるということ。エレンの言う「戦わなければ~」という考え方を自らの意志の下に実践するということ。そして悪魔になるしかなかったエレンをそのまま悪魔として見送ってあげるということ。
それはすなわち、「ありのままのエレンを受け入れる」ということであり、(18巻71話)
-だからこの子はもう偉いんです
つまりそれは、母の承認のようなものだろうと思うんです。
次回に続きます。
本日もご覧いただきありがとうございました。
written: 23rd Mar 2021
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