進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

011 巨人化学② 隠れた形質

みなさんこんにちは。

 

 


巨人の仕組みを知って物語の謎を解こう、のこのコーナー。今回は基本的なところに戻って、巨人の容姿から、その仕組みを探ってみたいと思います。

 

 

 

この記事は最新話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。

 

 

 


[隠れた形質]

f:id:shingeki4946:20180330003824p:plain(20巻79話)

 

 


巨人といえば、読み始めた当初は出てくる巨人たちに何とも言えない気味悪さ、恐ろしさを感じました。今はあまりそういった感じを抱かなくなってるのは、無垢巨人が出てこない、元が人間だと知った、見慣れた、作者の画力向上できれいな絵になった、などなど、さまざまな理由が考えられるのですが、そもそもなんであれを気持ち悪く感じていたんでしょうか。

 

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(3巻 特別編 リヴァイ兵士長)

 

まず、何を考えているのかわからないところがありそうです。なんか笑ってますし、感情の無い笑顔。そして、バランスの悪さもあると思います。変なところが無駄に育ってたりする、あの感じです。腹が出ているオッサンを見ても、だらしないとか言うくらいで気味悪いとは違うんですが、巨人は妙に寸胴だったり、手足が長かったり短かったり、なにかが狂っている感じがします。逆に人間とほとんど変わらない体形のヤツはそんなに気持ち悪さを感じません。

 

私たちは今までに見た人々の、平均に近い顔に好感を持つという話があります。逆を言えば、そこから大きくはずれているものには嫌悪感を抱くわけですね。

 

巨人ばかり見ていたら守備範囲が広がるかもしれません笑

 

 

 

しょーもない前フリはさておき・・

 

 


ユミルの民が巨人化すると、元の本人にある程度似ているのはご存知の通りです。また、エレンが良い例なのですが、エレンは子供の時は子供の姿、成長するにつれ巨人体の姿が変わっています。さらにユミルを見てみれば、巨人化してから60年ほど経過してもその姿は変わっていないようです。エルディア復権派の人々も同様です。つまり、”巨人化した時点”での本人の形質を膨れ上がらせているというか、巨大化させているということのようです。

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エルディア復権派のみなさん(1巻4話、22巻87話)

 

 


いろんな巨人を見ていると、人間をそのままコピーしたような巨人がいる一方で、元の人間との違いがみられる巨人も多く見られます。

 


ダイナ・フリッツ(12巻49話、22巻87話)

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顔はダイナに似ていますが、あちこち強調された感じになっており、変わらぬ笑顔と合わさってキモチワルイです。上半身がやたら育っているのに対し、下半身がなんというか、短いです。

 

 


コニー母(13巻51話、9巻37話)

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顔はよく似ていますが、ダイナ同様に少し強調が見られます。手足が異常なほど細く、動けません。

 

 

 

 

今度は知性巨人を見てみましょう。知性巨人は、本人に似た素体に、各巨人の特徴がアドオンされているような感じになっていますね。

 

 

鎧(19巻75話)

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顔はライナーに似ています。筋肉むき出しの全身を、鎧状の硬質化した皮膚が覆っているような感じです。

 

 


超大型(24巻95話)

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筋肉むき出しで身長が約60メートルあります。髪の毛と皮膚が無いので分かりづらいですが、顔はややベルトルさんに似ているかなとも思います。

 

 

 


女型(24巻95話)

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こちらも筋肉むき出しですが、一部皮膚があるように見えます。その名の通り女性の体形をしており、アニにも似ていると思います。

 

 

 


車力(21巻83話)

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まず四足歩行なのが何よりの特徴でしょう。全身を皮膚で覆われています。顔はピークに似ているとは言い難いですが、元々はこの顔をしたオッサンが中にいる予定だったことが作者により公表されています。

 

 

 


戦鎚(25巻101話)

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女性っぽさを感じますので、本人の形質は出ているようですね。軟度のある硬質素材で全身を覆っており、またその素材から様々なものを創り出せるのが特徴のようです。

 

 

 


獣(11巻46話)

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全身を体毛に覆われ、猿のような姿をしています。身長はやや高めで、腕がやたら長いですね。顔はジークの面影があると思います。耳が尖っています。目の周りはメガネの跡のようになっており、中の本人のメガネは巨人化時は溶け込んだようになっているようです。メガネが返ってくるのかはいまいちはっきりしません。

 

 

 


顎(12巻47話、24巻95話、23巻91話)

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せむし男のような体形、鋭いアゴと爪が特徴です。全身を皮膚で覆われ、ガリアード兄弟が本人それぞれの髪の色の反映を実証しています。ポルコの顔がやや異なる、というかライナーっぽさがあるんですが、銃痕を見るに硬質化を加えているのではないかと推測します。ユミルは耳が尖っていますが、他二人は今のところ確認できません。ただし、ユミルについては後述しますが、設定に不確かな部分が存在しているかもしれません。

 

 

 


進撃(19巻78話、16巻63話、22巻88話)

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エレンのみ始祖も併せ持っていますが、特に変わった点は見受けられず、だいたい本人の特徴が出ているように感じます。全身を皮膚で覆われ、標準的な男性体形に感じますが、グリシャは本人が痩せているにも関わらず、だらしない体形になっています。また、クルーガーは確認できませんが、エレンとグリシャは耳が尖っています。

 

 

 

 


始祖(17巻69話、16巻63話、12巻50話)

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ウーリは部分巨人化のため、完全には把握できませんが、フリーダを見るに全身を皮膚で覆われていそうです。フリーダは女性の体形になっています。エレンの座標発動時に巨人化していないことを合わせると、もしかすると始祖には外見の特徴が無く、本人の形質がそのまま出ている可能性があります。始祖の特徴は座標の中心であり、意識・記憶に干渉するという内面的なことであることからも、あり得るかもしれません。

 

 

 

 

さて、こうして各巨人を見ていくと、やはり本人には見られない形質が現れている巨人も多くいることが発見できます。

 

 


その一つがエレンの口です。(25巻101話、15巻62話)

 

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歯並びというか、口そのものが2つ重なっているかのような形状をしています。エレンが2つの巨人を宿していることを連想させますが、無垢巨人の時にも表れているため、否定されます。また、他の始祖や進撃の人たちには見られないため、これはエレンの個人の形質だと言えます。


さらにエレン巨人には、耳が尖っているという特徴があります。他に尖り耳を持つのは、グリシャ(進撃)、ジーク(獣)、ユミル(顎)となっています。エレンは無垢の時も尖っているように見えます。ユミルを除くとイェーガー家の面々になりますので、なにやら血の繋がりとの関係を感じさせますね。ただ、ユミルなんですが・・

 

 

-ユミル巨人について-

 

まずは並べてみてみましょう。順番に、ライナーの回想の無垢(10巻40話)、顎として初登場時(10巻41話)、最新の無垢(24巻95話)です。

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元々、ユミル巨人は耳が尖っているものとして描かれ続けてきました。ところが、最新である24巻において、尖っていない耳に明らかに改変されています。それ以降、ユミルが登場する機会は無く、現状何が正しいのか分からない状態になっています。どうもユミルに関しては何らかの設定変更、あるいは以前描いたものが誤っていた、といったことが考えうるのですが、考察のしようがないので、私はユミル巨人についてはいったん忘れようと思っています。

 

もし最新をとって、無垢では尖っていないが、顎になると尖る、ということであれば、エレンのケースと矛盾するので、現状の耳の考察は無意味になりそうです。エレンも修正されるという条件であれば、尖り耳は進撃・獣・顎の特徴、ということになります。逆にユミルを無視すると、尖り耳は個人の形質になり、イェーガー一族の特徴になります。ポルコの耳が見えるまでは、保留せざるを得ないでしょう。

 

そもそもユミルは無垢でも顎でも、ほぼ同じような姿をしていることも、初期の設定のあやふやさを感じなくはないです。まあこちらは前回考察した時空間の理屈を持ち出せば、こじつけることもできるのですが、今度はアルミンと矛盾しますので。

 

-ユミルおわり-

 

 

 

 

他にも独自の形質をもった巨人がいますので見ていきましょう。

 

 


まずはアルミンです。彼の超大型巨人はまだはっきりと登場しておりませんが、21巻85話のこのイメージはおそらくアルミンの超大型の顔と推測されます。

 

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アルミンはこの時、巨人継承によって前後の記憶を失っているため、超大型=ベルトルさんと誤解しているようですが(あるいは何らかのベルトルさんの記憶か声などを見聞きした可能性も無くはないですが)、ベルトルさんの超大型と見比べると明らかに異なっているのが分かります(20巻79話)

 

 

 

 

 

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アルミンの方は、顔の左半分が非対称で、ドクロを思わせる感じになっており、陰影の加減にも見えますが左目が無いかもしれません。そして何より鼻がありません。

 

 

そこで、アルミンの無垢巨人を見てみると・・ (21巻84話)

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 こちらも鼻がなく、また左目が開かないのか無いのか分かりませんが、なにか問題あるように見えます。近いうちにアルミン超大型は登場すると思われますが、この形質を持っている可能性が高そうです。

 

 

 


続いてはフリーダです(16巻64話)

 

 

 

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こちらはフリーダが始祖継承時に無垢化した時のシーンですが、髪の色がおかしいのです。フリーダは黒髪のはずなのに、巨人体は金髪になっています。これは始祖の継承前ですから、始祖の形質ではありません。元の人間の時と巨人体の髪の色が異なっているのは、今のところフリーダだけです。

 

 

 

 

ではこれらは何か意味があるのか、となってきます。

 

 


2重の口、鼻の欠損、黒髪が金髪になる・・先ほど出た血の繋がりをヒントに考えると、どうも本人には発現していない遺伝子の異常、あるいは劣性の遺伝形質というのが想像されます。

 

 


-遺伝についての補足-

 

ご存知の方も多いと思いますが、念のため補足いたします。

 

私たちの遺伝子は、父と母からそれぞれ受け継いだ遺伝子が対になっており、体の各パーツに対応した部分から父か母のどちらかの形質を発現させます。そのため、目は父に似てるが、鼻は母に似ている、といったことが起こります。ただしパーツによっては、出やすい形質と出にくい形質が決まっており、それぞれを優性、劣性の遺伝形質と呼びます(現在はそれぞれ顕性、潜性と呼ぶ流れになっているようです。なぜかと言うと、遺伝子に優劣があるイメージが感じられてしまうためです。実際には出やすいか、出にくいか、という意味以上のものはありません。ここでは長年使われてきた馴染みのある表現として古い方を使わせて頂いています)

 

鼻の欠損などは形態異常といわれ、遺伝子の異常によって起こるのですが、普通は劣性として隠れることが多いようです。遺伝子の異常は、親から子へ、代々遺伝子を引き継いでいく過程で、時々起こるミスコピーが主な原因です。それは普通にありふれていることで、私たちはみな誰もがいくつかのミスコピーを持っているそうです。しかしながらそれは、通常は優性の陰に隠れて表には出ないのです。


世界で近親婚がタブーとされているのは、そのためです。私があるミスコピーを持っているとすると、そのミスコピーは祖先から引き継いでいる可能性があり、その同じ祖先の血をひく親族は全く同じミスコピーを持っている可能性が高くなります。もし結婚した二人ともが同じミスコピーを持っていると、そのどちらを取ってもミスコピーになってしまい、二人の子供には、それが隠れずに表に出てしまうわけです。

 

髪の色はといえば、いくつかの遺伝子が関わっているため、少し話が異なるのですが、基本的には色が濃いほうが出やすいです。色が混ざるイメージをしていただくのが感覚としては近いと思います。黒髪の純日本人が金髪の外人と結婚しても、その子供は金髪になりません。だいたい茶から黒の髪色になります。その子供が金髪と子を成せば、金髪の孫が産まれる可能性がでてきます。

-補足おわり-

 

 


話を戻します。

 

これは、人間の時の本人たちには表れていない隠れた形質が、巨人化した時に出ているかもしれない、ということなんです。ただ、他の巨人たちを見ると必ずしも異常があるとは言えないものもたくさんいます。ということは、優性と劣性に関係なく、テキトーに形質が現れている、ということかもしれません。そう考えると、無垢巨人たちのバランスの悪さが説明できるような感じもしています。

 

 

 

だからそれがなんなんだ、ということになるかと思います。

 

 

 

もしこの仮定が正しいならば、血筋の見極めに利用できる可能性があると思うのです。どういうことか例を上げます。

 


(あくまで例え話です)
私は145代フリッツ王が混血だと妄想していますが、例えば真の王家血統が今までずっと黒髪だったとしましょう。それは周囲の重臣らも知っていることです。145代も普段は黒髪だったとします。ところが、継承のために巨人化してみたら出るはずのない金髪が出てきた、なんてことがあったとしたら・・

 

 

同様に、エレン巨人の口のような形態異常も、考えようによってはいろいろ妄想ができます。

 

根拠にするつもりはないのですが、現実世界で形態異常の遺伝子を多く持っている可能性があるのが、王族です。なぜなら、彼らは自分たちの血の正統性と利権を守るために、近しい、あるいは身分の高い家との交配を繰り返してきたからです。現在のヨーロッパ各国の王族は、ほとんどがどこかで血が繋がっているといいます。進撃世界の王族がどのように血を受け継いできたかは窺い知ることはことはできませんが、同様の可能性もあるかもしれません。

 

 

 

あ? でも・・アルミン?

 

 

 

さらにイェーガー家のみなさん(もしくは進撃・獣・顎)の尖り耳は、大地の悪魔を連想しませんか?大地の悪魔がそもそも何なのか不明ですが、いわば巨人の根源みたいな感じなのは確かだと思います(21巻86話)

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ジークは特殊な力を使えます(ダイナの血かもしれませんが)
・エレンは少なくとも座標を発動させた事実があります(ダイナの力、あるいはカルラの血かもしれませんが)

 

もしかするとイェーガー家の血筋には、何か秘密があるかもしれません。

 

 

 

 

こうして見てみると、巨人体は隠れている遺伝形質を発現させている可能性があると言えませんでしょうか。あくまで仮説の域は出ていませんが、アルミンの例などは意味深な感じがするので、来月以降に登場した時に、その形質が現れているなら、おそらくそこに何らかの秘密が隠されている、と思うのです。。

 

 

 

 

 

 

最後に・・

 

 

謎というか、ずっと気になっていることなんですが、超大型巨人の足首についてです。

 

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なんか先がつまった感じになっています。こちらは地ならしのイメージ図(25巻100話)ですが、どちらもそうであることから、これはベルトルさんの形質ではなく超大型の形質だと分かります。なんか9つの巨人が何なのか、ということに繋がってそうな感じがするんです。

 


なんとなく、象の足っぽくも見えますし、巨大樹の根本を連想させるようにも感じるような・・

 

 

 


本日もご覧いただき、ありがとうございました。

 

 

written: 29th Mar 2018
updated: none