進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

054 最新話からの考察 112話① 要点チェック

みなさんこんにちは。

 

※12/10 追記:補足として記事を書きました。→ こちら

今回、こんなに急展開になるとは全く心の準備ができていませんでした。設定部分への答え合わせもかなり多く読み応えのある回でしたが、ちょっと今回だけでは判断しかねることも多いので、疑問をそのまま共有させていただく感じで見ていきたいと思います。

 

 


この記事は最新話である112話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。注記の無いものは全て112話からのものです。

 

 

 

 

[無知]

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112話の副題は「無知」、今回は簡単ですね。

 

そう、無知なのは私めでございます。ワインは最初の調査船から大量に積まれていたとのことでした。

 

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-ただ…このワインは第一回の調査船から大量に積まれていた

なるほど、あそこに義勇兵を潜り込ませたのも”大半のエルディア人”によるものだとすれば、その可能性もあったわけです。他の上官や兵士たちは怪しんでいたが何も言わなかった、という感じでしょうか。そして義勇兵を疑って拘束する一方で、”その義勇兵が持ち込んだ”ワインをわざわざジークの拘留地まで持っていったということになるのでしょうか。他のワインがいくらでもあるにも関わらず。ユルユルの兵団を考えればそれもあり得なくはないですけど。

一つ考えられるのは拘留地にいた30人+連絡係の中にイェーガー派がいたという可能性です。なんか引っかかるのは、

 

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-ニコロの妄想に過ぎない話です
-何の証拠も無い

この期に及んでグリーズに否定する発言をさせていて、まだはっきりしないようにしているあたりです。まぁ普通に考えれば手の内を明かさない、そして(27巻107話)

 

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-すぐにまた 我々と食卓を囲む日が来ますから

やっぱりそういう意味でしたか、ということになるんでしょうけど。

 

 

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フロックのこれはエレンには内緒という意味もあったりするんでしょうか? ちなみに憲兵団幹部が飲まされたことは、グリーズも知ってるし憲兵にいるイェーガー派も知っている、そもそもあのワインは噂になっていたことを考えれば、フロックが知っていることには何の不思議もなかったりします。とするとグリーズの推測を元にフロックが早合点した可能性も無くはないのですが、イェレナが何か言うまでは謀略だと考えておいた方が良さそうですね。

さておき、イェレナ側(?)とパイプを持っていたのがグリーズだったと分かり、レストラン内でも分断があったということが分かりました。意見の対立と連鎖のようなものが徹底的に描かれています。

 

ところでこの場面・・

 

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もしかしたら忘れ物をしていたりするんでしょうか?

 

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さて、ここから本題です。

 

なんというか、他の作品では決してお目にかかれなさそうなシーンが唐突にやってきました。とりあえずエレンが言っている基本設定はほぼ間違っていないものとして捉えています。今まで描かれていた事との符合も取れていると思います。

 

それを踏まえてまずはコレ。

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ここから真っ先に思い出したのはこちらの場面(25巻99話)

 

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おそらくみなさんも同様ではないかと思います。ところで・・

 

 

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ミカサはその”仕組み”に突き動かされてアルミンを組み伏せたわけですよね。エレンはそれを予期していて、悠然と構えていたわけです。後で「喧嘩にならない」と言いながらボコっている通り、アルミンが腕力ではエレンに適わないことは最初から分かっています。非武装のアルミンとガビ、武器がなくとも腕力ではミカサの方が上だとしても、そのミカサは”仕組み”によってエレンを攻撃しないはずです。

 

つまり、あの部屋にエレンの脅威になるものは何一つありません。じゃあ、何のために手に傷を作っておいたのでしょうか。

 

そこで思い当たることが一つあります。

みなさんも薄々感じているのではないでしょうか。どうもエレンは知りすぎている感じが否めません。

 

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-お前はまだアニのところに通っているだろ?

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-エレンの判断です
-ピクシス司令は我々に島の命運を委ねるような賭けをしない

もちろんこれらは、イェーガー派による内偵によって知ったと考えることもできます。

 

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でも、まるでミカサとアルミンがいることを分かっていたかのように部屋に入ってきました。

 

先述したライナーあたりの事に関して、以前 019 ヒトを感知するモノ という記事を書いたことがあるのですが、よろしければ参考までにご覧ください。レベリオ襲撃の際にも同様のことが多く見受けられます。

 

もしかしたら、エレンは道を通じて他者の記憶にアクセスできるようになっているかもしれません。

 

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なんかこの、手を出して目をつぶっている感じ、意味深ではないでしょうか。傷によって巨人化に近い状態になり、道との繋がりを開くといった感じかもしれません。そういえば始祖の発動時は巨人化してませんでしたよね、エレンも・・そしてフリーダも(13巻54話)

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ところで、副題の「無知」は普通に読めば、ミカサやアルミンのことを言っているようで実はエレンが無知なんだろう、と考えますよね。実際、エレンの言っていることにはかなり疑わしい部分があります。

 

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-お前の脳はベルトルトにやられちまった

記憶が人間の思考に影響を与えることは間違いないでしょうから、アルミンがベルトルさんの影響を受けていることは否定できません。ただ、アルミンの「話し合い」思想はもともと彼の負けず嫌いな、自分を認めて欲しい感情の裏返しだと思っています(1巻1話、3巻10話)

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そしておそらく、最近の彼がそれに拘泥していたのは、夢のことで裏切られたエレンへの同様の想いが根底にあると思われます。そう考えると、エレンの言っている事とはどうも噛み合いません。

 

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ミカサには”仕組み”によって宿主を守ることへの抵抗から頭痛が起こると言っています。ミカサ本人が思い当たるところがある通り、これも仕組みとしては間違っていないと思います。何かに突き動かされるようにエレンを守ろうとするミカサを何度も描かれているのも確かです。ただし、(21巻83話)

 

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焦げミンを見て頭痛が起きていることへの解釈が非常に困難だったりします。アルミンにも第2の宿主のような感情を抱いていた、のでしょうか。

 

これはなんとなくですけど、どうもエレンの言っていることは表層をなぞっているようにしか聞こえないんです。

 

人間の感情というのは、たくさんの記憶の結び付きから生じると思います。AだからBという単純なものではなく、A+C+D+G+J+L+M...といった感じで多くの情報が絡まり合って、そこからはじき出されるものではないかと思います。同じ出来事に対する反応がみんな異なるのはそういうことでしょう。

もしエレンが二人の記憶の断片だけを見て判断しているのであれば、それは実際の二人の感情とはズレが生じるかもしれません。でもエレンにしてみれば、ちょうど記憶が思考に影響を与える仕組みや、アッカーマンの仕組みを知ったばかりで合点がいった、という感じになってしまう可能性はあります。ああ、つじつまが合うな、って。実際、つじつまが合っているのはアルミンが反論できていないことからも明らかなのですが・・

 

 

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根拠と言えるかは分かりませんが、ミカサはアルミンの2撃目を止めにいっていません。ミカサがその気になればアルミンなんて完封できるのは間違いないはずです。必ずしも”仕組み”通りに動いていないのではないでしょうか。

 

そしてやっぱり、エレンであってエレンでないような感じは誰しも感じていると思います。エレン自身が言っている”仕組み”を考慮すれば、アルミンに言われた通り少なくとも何かしらの影響をエレンも受けているはずです。もっとも、目の描き方を完全に変えてきているので、今までのエレンそのものではないのは明らかなんだと思いますが。

 

 

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そこで、この奴隷という言葉にやたらと拘っているのに違和感を覚えます。自由に拘っているのは今までのエレンや進撃の巨人もそうなのですが、なんとなく拘りの方向性が違う感じがするんです。作中の人物で奴隷であることに反発する感情がありそうなのって、やっぱりジークか、始祖の巨人あたりかなと思います。

すると先述したことと繋がって、道を利用するために始祖を発動しているような感じなのでその人格が強めに表に出てるとか、それに加えて、あるいは単独でジークや戦鎚の影響を受けている、みたいなことも考えられるかもしれません。

 


もう一点、なんでミカサアルミンと話そうとしたのかという疑問が残りますよね。いずれにせよ二人とも拘束して連れていくのですから、目的に邁進するのであれば別に三者面談をする必要は全くなかったわけです。

 

エレンがアルミンに言っていることを要約するとこうなります。

「お前はすごいやつだ。なのに今は・・」

 

ミカサに言っていることはこうです。

「お前が強いのも俺に執着してるのも仕組みのせいだ」

 

どちらもそれぞれの自由を促しているように捉えることもできます。たぶん結果的にそうなると思います。でももう一つ、どちらもエレンのコンプレックスの裏返しのようにも受け取れるように思うんです。

アルミンと喧嘩にならなかったのはなぜか。それはアルミンの言うことがいつも正しいと思っていたから、とも言えます。しかも”完全に”負けを認めていたから、言い返すどころか手を出すこともできなかったのかもしれません。

ミカサに対してコンプレックスがあったことは作中に何度も描かれてきています。今まで決して勝つことのできなかった彼女の強さも、親や姉のように振る舞う大人びた態度も、本人の実力ではなく仕組みによるものだったとしたら・・

 

エレンにとってはものすごく都合が良いかもしれません。

 

またいずれ別の記事で書くつもりですが、始祖の巨人はおそらく強いコンプレックスを抱えていると思います。もしかしたらその始祖の影響が強くなってきてエレンのコンプレックスを増幅させた、なんて可能性もあるかもしれません。だからこそそれを拭い去ろうとして自分の力を誇示しようとしていたり、シガンシナへ向かうのかもしれません。あるいはそれは二人を奮起させるためだ、として自分に理由付けをしている可能性も無くはない・・かな。

まぁ、フロックたちがジークを迎えにいってシガンシナで地鳴らしをする、という感じでもあるんでしょうけど、なんかシガンシナ区が破壊されそうな気しかしないんですよね・・

 


そういえば、エレンが道から他人の記憶を見られるなら、それはジークから教わった可能性が高いでしょうから、

 

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ジークも兵長たちの会話を聞くことができているかもしれませんね。

 

ところで女型のことを考えると、ジークって脊髄液無しでもいけるんじゃないの、とか考えたりしてます。それはともかく、もし脊髄液を入れても何も変化なくいられるのが本当であれば、もしかしたら人間の姿に戻すこともできるんじゃないかと思ったりもします。このへんはまだ妄想の域を出ませんけど。

 

あと兵長、なんか自分に言い聞かせるかのようにも感じました。

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最後に、このセリフ。

 

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-無知ほど自由からかけ離れたもんは ねぇって話さ

たぶんこれ、この作品の根幹に関わる話だと思いますけど、無知なほうが自由だと考えることもできると思います。そして、そのことを分かっていないエレン、あるいは始祖の発言自体が、「無知」なんじゃないかと思ったりするのでした。

 

 

 

※追記 12/8

伏線を書き忘れてました。

命を助けてくれたミカサ、「殺したくなんてない」と言っていたアルミン、その二人がボロカスに言われるところを見たのがガビです。今後起こる展開が想像されますね。

 


本日もご覧いただき、ありがとうございました。

  

written: 7th Dec 2018
updated: 8th Dec 2018