進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

020 最新話からの考察 105話 要点チェック

みなさんこんにちは。

 

最新の105話から、例によって気になる点などを拾っていきたいと思います。もうみなさんお読みになっていることでしょうが、今回は特に、未読の方はまず本編を読んでください。

 

 

この記事は最新話である105話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。

 

 

 


[105話 凶弾]

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サブタイトルから嫌な予感が漂う105話でした。項目別にみていきましょう。

 

 

 


・幼馴染

 

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エレンとアルミンの間には、思っていた以上の感情の乖離があったようです。そしてそこに挟まるようなミカサ。アルミンは静かに怒っている感じでしょうか。手をとって上がった後も一言も交わさないことから、エレンも全てを承知で行っていたことがわかります。

 

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咄嗟にかばおうとしていることからも、ミカサは今でも常にエレン側に立っているようです。ただしこの視線のやり取りから想像するに、事前に”今回はエレンに非があること”を言いくるめられていたのかもしれません。実際ミカサも反論ができないでしょう。かつてハンネスさんと話したように、エレンはいつも一人で先に行ってしまい、二人はそれを追いかけ助ける。今回も似た形ではあるものの、エレンがそれを確信犯的に利用した、ということがハンジに指摘されていますし、それは一種の裏切りと言ってもよいでしょう。
また、ひょっとするとですが、エレンが出奔する際に手助け、あるいは止めなかったなどの負い目があるかもしれませんね。

 

 

 

・104期

 

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この3人のシーンは癒しですが、と同時に”甘さ”の表現でもあるかもしれません。この流れから、ロボフさんの撤退が完了してないにも関わらず、彼らは警戒を解いてしまいました。それは戦勝に湧いているフロックらと同様のことであり、またそれが副題の”凶弾”に繋がってしまったわけですね。兵団側にある”迷い”とエレンの”覚悟”の対比にも感じられます。

 

 

 

・兵団の意思

 

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兵団の戦う意思は思っていたほど固まっていませんでした。まだ意見が固まっていない、他の方法をやりきる前に開戦に踏み出さざるを得なかった、という感じでしょうか。

 

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ジャンたち古参兵と、フロック以下の新参兵たちの温度の違いは、パラディ島全体の縮図をも表現しているように感じます。

 

 

 

・ガビとファルコ

 

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ガビがその想いの丈を吐き出しました。ガビは本当に純粋です。彼女の小さな世界の中で、彼女にとって大事なものを守るために体を張り、必死で何かをつかもうとしています。今回パラディ島に行くことになったということは、彼女はレベリオのエルディア人の視点の代表のようなものなんでしょう。神視点である私たち読者から見ると、どうしても視野狭窄に感じてしまうのは損な役回りですが。

 

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対してファルコは、もともとの思慮深さもありますが、エレンとの邂逅を通じてもう少し広い世界を既に見ています。その上で過去の因縁から生まれる殺し合い、仲間の死、自分の大事なものを守るために戦うことなどの経験や気付きを得ました。裏切られたという想いもありながら、エレンの、すなわち敵の行動理由にまで理解を示そうとする彼が、パラディ島の人々と実際に触れあったなら、この戦いの無益さを誰よりも早く感じられるのではないでしょうか。


やはり希望の光は次世代である彼らなんでしょうね。そこには既に遺恨を残してしまったガビに対する、パラディ側の今後の対処が重要になってくると思います。その点において、ジャンとフロックの考え方の対比は、鍵になってくるように思います。

 

 

 

・イェレナ

 

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女性でしたか。アニメだと声はどうするんだろうとか余計なことが心配になったり・・
余談はさておき、ピークちゃんの”見覚え”は調査船の時でした。私の推理過程は間違っていましたね。ただ、彼女が”クルーガー”である可能性は残っているというか、高まったように感じます。イェレナはアルファベットだとJelenaでしょうが、これはギリシャ神話のヘレネー由来の名前で、言語や地域によってHelena, Elena, Helen, Ellenなどと変化します。それぞれヘレナ、エレナ、ヘレン、エレンなどとなり、エレンという名前との繋がりを感じさせます。

 

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調査船のシーンには、オニャンコポンかは定かではありませんが、アフリカンの姿もあり、彼らはそれを利用してパラディ島とコンタクトをとり、潜伏していたということでしょう。ということは、かなり早い段階からジークは動いていたことになります。そして、マーレ軍内でそれなりの権力を持った人物が同様の意志を抱いている(抱いていた)ということの示唆でもあるかもしれません。

ジークの信奉者」という表現から、ジークがリーダー的な立ち位置にあることが推察されます。王家の血を引いているわけですから当然といえばそうですね。「個人的な興味」というのが異性関係的な意味なのかジークに対する疑念的なものなのかは、はっきりしませんが、始祖に近い力を使えたり、「驚異の子」と呼ばれる経緯などは周知ですので、様々な想像は可能でしょう。加えてジークがライナーやベルトルさんに彼自身の目的をある程度話していたと推察できますので、同様にピークもジーク教に勧誘されていた可能性もあるでしょう。ただし、ジークの裏切りの可能性を孕む事実をすぐにマガトに伝えていることから、ジークへの肩入れは無いかもしれません。愛憎相半ば、という可能性もありますが。


現状でマーレ側が分かっている情報を整理しておくと・・

ジークの信奉者」であるマーレ兵が行方不明になった調査船に乗っており、その兵が戦士隊の拘束に暗躍しました。その際、ジークは単独で解放された上、遅れて現場に到着したり、言動に含みがあるなど、疑念を抱くには充分な状況証拠があります。あっさり倒されたことも同様ですが、実際の生死はマーレ側には分かりません。ガビとファルコは敵の飛行船に乗り込みましたが、その後の生死は不明です。
ライナーはファルコに呼ばれて演説前から行方不明になりました。そしてエレン・イェーガーにやられたらしいが、詳しい経緯は不明です。ファルコがいない今、それを知るのはライナー本人のみ。あと、飛行船は自軍のものとの推測は可能です。

ライナーがどこまで話すのかが興味深いですね。

 

 

 

ジーク教

 

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今回の作戦はジークの主導によるものだと判明しました。兵団側は議論を尽くしていないうちにジークとエレンによって時計の針を進められた感じでしょうか。そこに従わざるを得なくされたということでエレンの独断を責められてはいますが、その必要性や緊急性、好機であったことは兵団側も理解はしているのでしょう。ジークの言葉への反論が無いことがそれを窺わせます。エレンへの懲罰、拘束も緩い感じです。戻ったら収監されるかもしれませんが、それも以前のように形式的なものにせざるを得ないかもしれません。そのエレンの必要性を彼自身が分かっていての行動と映るので、余計に憤りを生むんでしょうね。逆に言えば、エレンはそういった諸々を飲み込んででもやらなくてはならない、と思っているということです。

 

 

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今回で一番意外だったのは、フロックがエルディア”帝国”を自称したことです。フロックが勢いで言ったのかもと考えましたが、周りも同調しており、ジャンたちでさえ突っ込んでいませんから、彼らは帝国になったのでしょう。ジャンやリヴァイとイェレナ、ハンジとオニャンコポンとの会話を見るに、彼らがパラディ島でそれなりに親しくなっているのは確実です。そこにイェレナによるジーク教の布教工作があったかもしれません。現にフロックを始めとする一部の兵団員たちは、エレンを媒介としてそれに同調しているようです。保守と革新というようなイデオロギーの相違すら生まれてきているように感じます。どうも帝国という表現はジーク側の発案に思えて仕方がありませんが。

帝国という表現がジークによるものだとしたら、彼の目指すところはかなり過激な要素を含んでいるかもしれません。客観的に見れば、現状の打開策としてはジーク、エレンのやり方が妥当に思われますが、前述したガビ、ファルコへのフロックとジャンそれぞれの対処を見るに、ジーク教はいささか過激すぎる匂いがします(もちろん、ジークの思想とは直接の関係はありませんが)。憎しみの連鎖を断ち切るには、「人間性を保ったまま」事にあたることが必要になりそうですが、帝国という言葉からは別の憎しみを生みだしそうな予感さえ抱きます。

ジーク教などと言っていますが、信奉者という言葉から例えているだけで、あくまでジークの戦略や思想を指しているにすぎませんので、悪しからず。

 

 

 

・サシャ

 

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憎しみの連鎖はそう簡単には断ち切らせてくれないようです。元々フラグは立ちまくっていたわけですが、やっぱり無事に帰らせてはくれませんでした。。残念です。副題を見た瞬間に、いやーな感じがして、でも飛行船に無事乗り込めて、ロボフさんが撃たれた時には可哀そうだけどこれだったか、と思ったらアンカーが繋がってて、あ、ダメだなと・・
非常に揺さぶられた一話でした。ただの感想でごめんなさい。

サシャは壁内が描かれていた段階で、他者からの許容に基づいた自己の許容、一種の通過儀礼を乗り越えて成長することが役どころだったように思います。彼女はそのモデルケースの一つであり、主役級の面々との対比でもあったのでしょうが、そこにもう一つ役割が与えられただけでも幸い・・とは思えませんよ、まったく。

 

 

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エレンが己の全てを投げうってでも手に入れたいもの、それは他愛もないような、あって然るべき当然の権利なんでしょう。ガビが言葉にした想いの丈が、エレンのたったひとコマの追憶にかぶさります。そのための覚悟はしていたけど、それでも・・という想いすら言葉にせず、嚙み殺しながら。

ジークはそれをどう思いながら見つめているのでしょうか。現状、あの飛行船の中には様々な思惑が入り混じっています。おおまかに分けてジーク・イェレナ・エレン、104期と兵団首脳陣、他兵団員たち、レベリオ代表ガビ、ガビと近いけど中立よりなファルコ、といった感じでしょうか。ジークとエレンも思惑が一致しているとは限りません。イェレナとジークすらその限りではないかもしれません。ジークがエルディア人全体の復権を図っていることは間違いないと思いますが、そこには壁内人と壁外人という区別がある可能性は以前考察した通りです。その”壁”をどう乗り越えるかというところで、齟齬が生じそうなんですよね。やっぱりガビの今後の変化と、それに寄与するファルコが希望の光になりそうな気がします。というか希望になって。

 

 

 

あ、アニ父はどうなったんでしょうか・・・・・・

 

 

 

本日もご覧いただき、ありがとうございました。

 

 

written: 10th May 2018
updated: none