進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

047 物語の考察 さすがピークちゃん、その通りだよ

みなさんこんにちは。

 

 

群像劇の様相を呈してきた現状、それぞれの思惑が気になるところです。そこで今回は戦士隊、特に次回あたりに動きが見られそうなピークちゃんのお話です。

 

 

 

この記事は最新話である110話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。 

 

 

 

 

[さすがピークちゃん、その通りだよ]

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前回、基本的に嘘をつかないようなことを言っておいてなんですが、特殊な人が一人います。ジーク・イェーガーです。おそらく物語の役割上、自分の立場を偽らないといけないからだと思います。その替わりかどうか、読者にはちゃんと分かるように、彼は”嘘をつけないメガネ”をかけていますよね(23巻93話)

 

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-王家の血を引いているわけでもないのに

読者はジークが王家の血を引いていることを知っていますから、このシーンからはマーレ軍にそのことを偽っていることが分かるわけです。つまり、ジークのメガネが曇っている時は、ジーク自身、あるいは他の誰かの発言に対して、ジークに裏があることが読者だけには分かるようになっています。私たちが会話するとき、無意識は相手の目からも多くの情報を読み取っていますから、目が見えないということは真意が見えない、といった表現かもしれません。逆に言えば、目が見える状態のジークに裏は無いとも言えるかもしれません。

 

 

 


さて、副題を「嘘つき」と題された95話では、ライナーが自分自身をごまかし、ガビをごまかし、その母カリナも自分自身をごまかしていることによって、それがライナーへの嘘になっている様が描かれています。でもそこには他にも嘘つきが潜んでいたようです。

 


そこではライナーのエピソードと並行して、マーレ軍による戦士隊への思想調査が描かれています。その際、ジークは2度に渡りこのようなセリフを繰り返しています(24巻95話)

 

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-さすがピークちゃん その通りだよ

 

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-さすがピークちゃんだ まったくその通りだよ

みなさんもお気付きの通り、そのどちらもジークのメガネが曇っています。当然、何か裏があると考えるのが自然だと思います。それに加えて、2つとも唾を飛ばすような、口角泡を飛ばすかのような表現がされているのも気になりますよね。

 


まず状況を整理しますと、この思想調査はマーレ軍によって、戦士隊の思想を確認しながら指示を伝えるといった趣旨で行われています。言うまでもありませんが、ジークはマーレ軍の戦士長の立場としてそれを取り仕切っている形です。思想を見る目的がある以上、ジーク以外の戦士たちは指示される内容を知らないと考えられます。

主要な伝達事項は、1年以内にパラディ島を制圧する方針と、それに向けてタイバー家が宣戦布告を行うということです。これらはマーレ軍内では既に決定していることです。ジークにとってはこれらを戦士隊に納得・周知させることが任務ですので、エルディア人の人権の危機などを絡めながらパラディ島を攻める必要性を説いていきます。


まず、エルディア人とマーレの国力は一蓮托生であることを主張し、その維持のためにパラディ島を攻める必要がある旨を説きます。読み返していただくと分かると思いますが、この理屈だけでも攻める理由としては完結しています。

ここで、最初の「さすがピークちゃん」に繋がる発言があります(24巻95話)

 

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-しかし… 今となっては「始祖奪還計画」が成功しても
-エルディア人に対する世界の歴史感情を清算するには至らないほど
-悪化してると思いますが……

これを受けてジークは物語が必要だと主張を始め、そのためにタイバー家が宣誓することを伝達します。そこで再びさすがのピークちゃんの発言があります(24巻95話)

 

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-確かにタイバー家は一度も巨人の力を敵国に向けたことが無い
-何より巨人大戦でフリッツ王を退けた一族として諸外国に顔が利く
-タイバー家を通せば世界は耳を傾けざるを得ないでしょう

ピークちゃんの発言は、なぜタイバー家でなくてはならないのかを端的に補足しています。先述した通り、タイバー家が宣誓することは軍内での決定事項であり、今回の主要な伝達事項です。彼女の2つの発言は、その話題の進行に不自然なほど都合が良いのです。もちろん、ピークちゃんは知恵者として描かれていますので、個人の才覚だと言うこともできると思います。でもここで、ジークのメガネが曇っていることを思い出してください。

 

裏があるはずです。

 

でも、これらのピークちゃんの言葉に対して、ジークが異論を持っているというのはおかしいですよね。彼女の言葉をそのまま受けて論理を展開させているわけですから。ということは、こう解釈すべきかもしれません。

 

さすが、とは思っていない。

 

ピークちゃんの言っていることに論理的な破綻は見られませんから、考えられるのは筋書通りのことを言っただけという感じでしょうか。そう考えると、唾を飛ばす表現もわざとらしい肯定を感じさせますし、彼女が発言の際にジークの方を見ていないことが台本をそらんじているような感じにも見えます。

案の定と言いますか、タイバー家が出てくることに対してポルコは反発を示しました。何も知らない立場からすれば至極もっともな意見だと思います。ジークはそれに理屈で返すことはせず、感情論のようなもので封殺します(24巻95話)

 

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-タイバー家も祖国マーレを憂いているんだ

ここは議論の場ではなく伝達の場であり、それさえスムーズに果たせればいいと言っているかのようです。余計なことを言うな、と。


こうして見ると知らない立場のポルコに対して、ピークちゃんはどうも知っていた感じがします。ただしこれだけでは根拠としては弱すぎますので、もう一つの事実を見てみましょう(26巻105話)

 

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-ジークの信奉者でしたから…

これはご存知の通り、彼女がイェレナのことをマガトに伝えた時のセリフです。「信奉者」という表現はなにか引っかかるところがありますね。

例えば、104期が壁内で訓練したり戦っていた頃を思い出してください。いつもエレンにべったり付き従っているミカサを、ジャンは見ていましたよね。ジャンがミカサのことを”エレンの信奉者”と表現するでしょうか。ミカサをアルミンに替えてもいいと思います。あるいは、コニーとサシャがいつもつるんでるのを、周囲の人は信奉者と呼ぶでしょうか。

当たり前ですけど、呼ばないですよね。

 

つまり、ピークちゃん自身が何らかの信奉する対象となるもの、例えばジークの思想などについて知らなければ信奉者という言葉は出てこないと考えられます。普通だったら「彼女はよくジークと一緒にいましたから」とか、「憧れているようでしたから」とか言う感じが自然ではないでしょうか。

ということは、彼女はジークに思想があることを知っていることになります。すると先ほどの思想調査で、ジークと阿吽だったことも不自然ではなくなってきます。

 


その思想はおそらく、ライナーとベルトルさんに語っていたものと同じか、近いのではないかと思います(19巻77話)

 

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-ここで座標を奪還し
-この呪われた歴史に終止符を打つ
-…もう 終わらせよう
-終わりにしたいんだよ 俺達で

ベルトルさんはこれ以降、意識にかなりの変化があった様子が描かれていました。最近描かれていることからすれば、”導かれた”ということだと思います。彼はアニを助けることの優先順位を下げ、かつての仲間たちと戦う覚悟も決めました。目的のための犠牲を受け入れてるわけですね。その手段をこう言っています(19巻78話)

 

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-エレンの引き渡しと!!
-壁中人類の死滅!!

つまり、壁内を滅ぼし始祖を手にすることで、エルディア人が虐げられながら相争っている状況を終わらせる、といった感じと思われます。グリシャが復権派時代に言っていた思想に近いですよね。

 

ベルトルさんたちが導かれたシーンにピークちゃんは居合わせていませんが、始祖奪還計画の開始から5年間はジークと2人で本国待機をしており、ウトガルド城戦からシガンシナ戦まででも2か月以上の期間がありましたから、どこかで導かれていたとしても不思議ではありません。自分たちの代で悲劇的な歴史を終わらせようというのは、彼女にとっても受け入れやすい思想だと思います。

 

ジークとピークちゃんはマーレに対して面従腹背し、始祖奪還計画を利用して始祖を手に入れ、レベリオ民の立場を改善する復権派的思想を共有する間柄だったのではないか、と考えられるのです。

 

 


ところが・・

 

パラディによるレベリオ強襲が行われると、再び煙に巻かれることになります(25巻100話、25巻101話、26巻103話)

 

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ピークちゃんの反応はどれも、何が起こるか事前には知らなかったことを示しています。もちろんジークがこの襲撃に関与していることは周知の通りです。にも関わらず、彼女がジークから何かを知らされることは無かったということになります。

じゃあやっぱりジークとは通じていなかったのでしょうか。

とりあえず、通じていたと仮定してお読みください。その方が自然に繋がることがお分かりになると思いますので。

 

まず、これは”たられば”になりますが、ピークちゃんがイェレナのことを告白しなければ、ジークの計画が露呈した可能性は低いです。遺体に注意が向くことも無く、細かい疑問点が結びつきを持つこともなかったでしょう。

つまりピークちゃんの告白は、戦士隊の仲間であり同じエルディア人であるジークを売るようなものだったと言えます。しかもそれは推測でしかありません。推測で仲間を売るには、それなりに強い動機が必要なのではないでしょうか。そしてその動機として、裏切られたという感情は充分な強さを持つのではないかと思います。彼女にしてみれば思いを共有していると思っていたのに何も知らされなかったことは、裏切りとして映るでしょう。さらに”あっちを選んだのか”というような想いを抱いてもおかしくないと思います。

 

それでもやはり、確信に至らないことを告発するのは勇気がいるでしょう。おそらく背中を押したものはこれじゃないかと思います(26巻104話)

 

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-ライナアアアアア

おそらく当時の彼女は裏切られたかもしれないという想いや、次々と仲間がやられていったことに絶望を感じていたのではないかと想像します。身体の回復が遅かったのは、ライナーの例から考えれば生きる意思が弱まっていたからではないかと推測されます。

-余談-
ガビが車力は頑丈じゃないようなことを言っていますが、真面目なファルコがそれに思い至ってなかったということは、戦士候補生の座学等で教えられたことではないのでしょう。言ってしまえばガビがイメージを語っただけかもしれません。話の展開上、ガビに鎧を思い出させるためのセリフであることは明白です。
-余談おわり-

話を戻しまして、たとえそれが推測にすぎなくてもジークが戦いを起こした可能性がある、そしてその戦いによって傷ついたエルディア人の子供達が助けを求めている、ならば自分はそれを救うためにできることをしよう、そういった感じだったのかもしれません。

 

ルイーゼがミカサに導かれ、記者はハンジに導かれ、ジャンやコニーはエレンに導かれました。それぞれが導いた相手に対し、変わってしまったという想いから反感を覚えていますが、導かれた思想は相変わらず持ち続けています。ルイーゼは変わらず戦おうとしており、記者は真実の報道に邁進し、ジャンやコニーは仲間を大事にすることに熱を上げています。

ならばピークちゃんも、レベリオ民を守る気持ちや悲劇を終わらせたい想いは変わっていないのでしょう。それと同時に、ルイーゼや記者たち同様、導いた相手であるジークを問い質したい気持ちが強いことも推察できます。今の彼女は何よりもまず、ジークを見つけ出したいと思っているのではないでしょうか。

 


ところでピークちゃんの立ち位置を考えると、今まではジークと共にマーレを欺いていたわけです。すなわち、ジークが味方でマーレは敵のような存在だったわけです。ところが、味方だったジークに裏切られたとみるやマーレの側についています。いわばジークを共通の敵として、敵の敵が味方になっている感じですよね。

ジークは導いた仲間に何も言わずに、単独で敵と組んでいるように見えるから敵視されているわけです。どこかで聞いたような・・って、エレンの立ち位置と完全一致していますね。

ということは、ピークちゃんと兵団の立ち位置も一致するということです。敵の敵は味方になり得るということを考えれば、共闘体制ができるのは時間の問題かもしれません。もしかすると、パラディとマーレの和解のきっかけになる可能性もあるんじゃないでしょうか。

 


そういえば、こんなことを言っていた人がいました(3巻12話)

 

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-もし… 人類以外の強大な敵が現れたら
-人類は一丸となり争い事をやめるだろうと…

 

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-ずいぶんと呑気ですね…
-欠伸が出ます…

エレンさん、皮肉にもあなたのおかげでそれが実現するかもしれません。

 

 

 

 


そういえば仮定と言ってそのままでしたので、ちゃんと〆ておきます。

 


3回目の「さすがピークちゃん」は、こんなシチュエーションでした(26巻103話)

 

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-とにかく私達は
-アッカーマンから戦士長を守ればいいの

巨人化していたので描かれていませんが、人の状態だったらメガネが曇っていたことは明らかですよね。ジークはこの時、「アッカーマンから守ってもらったら困る、持久戦をしてもらったら困る」と思っていたことは、みなさん既にご存知の通りです。

3回目に裏があるということは、前の2回も裏があるのが自然でしょう。それを裏付けるように、メガネが曇っていました。もしピークちゃんがジークと通じていなかったら、あのメガネに説明が付かないですよね。

 


ところで、彼女は事情を知っている立場で2回の「さすがピークちゃん」を聞き、3回目は知らない立場で聞いています。切れ者のピークちゃんなら何かおかしいって感じたかもしれませんね。おそらくこれも違和感の一つだったんじゃないでしょうか。

 

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-ひとりごと-

 


ハリウッド実写化、すごいですね。一切の期待をしないで待ちたいと思います笑


個人的には変にヒューマンドラマとかやらないでいいので、マーベルやDCのノリでやって欲しいです。特にスパイダーマンの3Dみたいな感じで、50mのウォールローゼからトロスト区に降りていく感じとか、超大型と空中戦みたいなのはぜひ体験したい!

 


・・だから期待すんなってば

 

-ひとりごとおわり-

 

 

 

本日もご覧いただき、ありがとうございました。

  


written: 30th Oct 2018
updated: none