進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

003 最新話からの考察 102話③ マーレ軍元帥カルヴィ

みなさんこんにちは。
最新話からパラディ勢の作戦目的、今後の展開を考察しております。

3回目の今回は、マーレ軍の元帥であるカルヴィについて書きたいと思います。いや、書かせてください。
というのも正直、妄想半分というか、あまり自信はないのです。
ですが、どうしても気になってしまう点がありまして・・

 

 

この記事は最新話である102話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。

 

 

 

[カルヴィ元帥]

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23巻93話にて、中東戦争が終わった直後の会議にて初登場したカルヴィ元帥。
作品中ではさまざまな人物により無能なマーレ軍幹部と評された、その幹部のトップであります。
その通り無能な人物かと思わせるような描写も多く、本当に無能なだけなのかもしれません。が、どうしても気になる1コマがあり、そこから考察が広がっていきました。

 

こちらがその1コマ

f:id:shingeki4946:20180222225133p:plain(25巻99話より)
ヴィリーの演説の最中、ずっと難しい顔をして演説を聴いているカルヴィに、軍服を着た人物がなにやら耳打ちをしています。

 

 

ではあらためまして、カルヴィの数少ない登場シーンから、現在知りうる事実を確認していきましょう。

①会議にて、エルディア人であるジークの意見・提案に耳を傾け、議会に諮ることを明言(23巻93話)
②ヴィリーの演説中は終始厳しい表情に見える(25巻99話)
③何かを耳打ちされている(25巻99話)
④襲ってくるエレン巨人に対しての動じないかのような態度(25巻101話)

 


①カルヴィ自身もジークのことを信用している旨を発言していますので、単純に無能だが器量のある人だという受け取り方もできます。元帥まで登りつめていることを考慮すれば、エルディア人だからどうこういう訳でも無いのかもしれません。


ひとつ言えることは、一般人から一般兵士までエルディア人を奴隷のように扱い、罵るマーレ人を散々見せられてきてからのこのシーンは潤いであると同時にギャップを感じさせるものだと思います。
今のところ、他人種からエルディア人への暖かみのある描写がされたのは、このシーンの他
・パーティでキヨミがウドを助けた場面
・レベリオ門兵の戦士隊キッズへの対応
・ライナー達4人を送り出した時のマガトの言葉
くらいでしょうか。

それほどエルディア人は差別を被っている、ということですね。
実際、会議直後にもコルトがジークに、「エルディア人がマーレ軍元帥に意見を通すなんて」(23巻93話)と言い、”人種的に”あり得ないことだと強調しています。
対照させているのかはわかりませんが、24巻98話ではパラディ攻略作戦会議でライナーを人種に絡めて罵るマーレ軍の将校だか参謀だかが描かれています。

 


そして③です。
このシーンの前後の流れはこうなっています。
 
ヴィリーの演説前半が終わり中休み、マガトが何か異常があればすぐ知らせるよう部下に命ずる
→ピークとポルコが落とし穴に落とされる
→エレンとライナーの地下室、演説の後半が始まる
→耳打ち
→そのまま演説が続き、マガトに戦士隊の行方不明が伝えられたのは次の94話

耳打ちの前には、ピークとポルコの件以外、特に報告を受けるような出来事は描かれていません。もちろん別件である可能性は否めませんが、もし耳打ちがピークポルコだと仮定すると、①と②さらには④までの事実に意味合いが生まれてくるように感じます。

まず言えるのは、戦士隊を現場指揮官であるマガトから奪うことに関与しているならば、カルヴィは少なくともマガトと同じサイドではないことになります。

私はロープ兵はエルディア復権派(あるいはフクロウと呼ぶべきか)であると考えています。もしそれにカルヴィが噛んでいるのであれば、彼も復権派でありエルディア人である可能性が高くなります。

カルヴィが復権派であるなら①も②も自然と理解できます。
また、マーレ軍に関しての次の2つの疑問にも理由付けが可能になります。


1、兵器開発競争への遅れ
作品内ではマーレ軍が巨人の力に胡坐をかいていたことにより、兵器の技術開発で他国に遅れをとっているとマガトの言葉によって表現されていましたが、
カルヴィが元帥の立場を活用して開発の速度を緩めていたのかもしれません。
なぜなら、マーレは超大国です。

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こちらの地図で確認できるように、アフリカ大陸から中東、東西ヨーロッパ、少なくとも南アメリカの一部までを治める、いわば覇権国家です。
これだけの領土・植民地があるなら、その国境線や国内の防衛だけ考えても7体の巨人だけでは賄いきれないんじゃないでしょうか。
自然と通常兵器の開発が進んでおかしくないし、それにかけることのできる資金や資源は、他国と比べても潤沢にあるはずです。
しかしそれをしてこなかった、というところに何がしかの意図的なものを感じずにはいられません。

トップが軍内でそれを裁可しなければ、新型艦の開発をしたくとも議会にあげられることはなく、予算が付きません。
有能な部下がいくら無能なトップだと嘆いたところで、どうすることもできないのが軍隊でしょう。

もちろんカルヴィ自身にとっても、戦況が悪くなれば立場を危うくするリスクは大きいのですが、それを差し引いても巨人が最高の戦力であることを維持しようとしていたとは考えられないでしょうか。
復権派視点で考えると、技術開発が進み巨人の戦術価値が下がることはイコール民族の滅亡といえます。もしマーレほどの超大国が技術開発競争に加わり先陣を切っていけば、その速度はぐんぐん加速していくことが明白です。
現実の世界でもアメリカとソ連が競って軍拡をしてきた時の弊害が今も影を落としていますよね。


2、始祖奪還計画のずさんさ
読者から見て、およそ超大国の軍事作戦とは思えないツッコミどころ満載の始祖奪還計画、作中でもマガトやピークにそれを言及させています。
マガトは特に、上からの命令で従わざるを得ないせいもあり「(こんな無茶な作戦ですまないが)生きて帰ってこい」と言っていたようにも感じられます。
そうです、これも”無能な”上により決定された作戦でした。
であるならば、カルヴィの意図により作戦の失敗可能性を上げたと考えられないでしょうか。

 

始祖奪還は復権派にとって悲願でした。ジークを戦士に仕立てようとしたのも、マーレに先を越されるという危惧があってのことでした。

マーレが始祖を手に入れれば、自分達を含めたエルディア人は完全に殺戮兵器として洗脳されてしまうかもしれません。
それを止めたいが国内の趨勢や民意には抗いきれない、クルーガーが送った進撃はまもなく13年で寿命を迎えるが、パラディで何かが起こった兆しもない、ならば少なくともマーレが始祖を獲得することを防ぐ必要があります。

もちろん巨人を失うリスクはありましたし、実際そうなりましたが、それを加味しても失敗させたいところではないでしょうか。
本当に成功させる気があったなら、やはり獣に指揮を執らせるべきだったでしょう。マガトからコルトへの教育を見ても、マーレは獣の継承者の年齢をずらし、指揮官として育てている節がみられます。
子供4人であるならば猶更、定期的に連絡をとって指示を与えていくことも作戦に組み込んでおくべきでした。
アルミンが言ってた通り後からは何とでも言えるのでアレですけどね。
もしライナー達がトロスト外門に続いてウォールローゼを破壊していたら壁内はおそらく自滅してましたから。


余談ですが、いわゆる赤子ガチャ(知性巨人の持ち主が死ぬと赤子に継承されること)は、圧倒的にマーレに有利であるし、マーレ自身もある程度そう認識していたと思っています。
一番の理由はマーレが巨人の運用ノウハウをもっていることです。
マーレ国内のエルディア人に継承されれば血液検査で即発見され、戦士候補生にすぐに食わせれば良いわけです。家族を名誉マーレ人にしておけば問題も起こらないでしょう。
もしパラディ島内に継承されても、世界から隔絶された中で兵器として活用できる技術を蓄えてるとは思えません。
偶然巨人化しても無垢巨人のように敵とみなされて殺される可能性が高いですし、下手すれば気づかないまま死亡してまた赤子ガチャになりそうです。
マーレからすれば、しばらく手元にない状態になるだけのことです。


④については妄想しかできませんが、上記が正しければカルヴィはこれまでもリスクを覚悟で結果を出してきた人ですので、死を覚悟して臨んでいたかもしれません。
クルーガーと同様に自らの手によって同胞の血を流しながら、じっと時を待っていた。巨人の戦術価値の低下が現実に迫ってくる中、かつての復権派の息子が始祖を奪取してマーレと戦おうとしている。ここが勝負所と判断してもおかしくありません。

もしくはちょっとご都合主義っぽくなりますが、エレンがカルヴィを手にとり、地面に逃がした可能性もなくはない、かな・・・
カルヴィは常にサッシュという色付きのたすきをしているので、カーキの軍服だらけの中ならすこーしだけ目立つはず、なんですが・・

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そんなわけで、私はカルヴィ元帥がエルディア人である可能性、あるんじゃないかと思っています。
最後になりますが、ヴィリーも軍内部にパラディ協力者がいる可能性を示唆しています。

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それでは、本日もご覧いただきありがとうございました。


written: 22nd Feb 2018
updated: none