進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

049 最新話からの考察 111話② No.2

みなさんこんにちは。

 

 

!!閲覧注意!!
111話は起承転結で言えば承のような感じです。ですので、あんまり考察のしようが無いなんて言っていたのですが、前回の記事に頂いたコメントから繋がったことがあり、別の記事をそっちのけで考察してしまいました。現時点ではまだ根拠がしっかりしているとは言いがたい事柄なので、妄想半分くらいの感じでお読みいただけると助かります。

ただ、私なりには整合性が取れてると感じている上に、今後の展開にかなり突っ込んだ言及をしていますので、もしも考察通りだったらと考えたらとてもおすすめできません。毎月の連載を楽しみたい方は、今回はお読みにならないでください。言い過ぎかもしれませんが、それでもお読みいただける場合はどうぞ自己責任にてお願いいたします。

あと、長いです。まとまりがなくてすみません。

 

 

 

 


この記事は最新話である111話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。注記の無いものは全て111話からのものです。

 

 

 

 

 


[No.2]

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どうも最近バイアスとか、そんなことばかり書いている気がします。個人的にですが、最近の展開では人の認識のあやふやさとか、その危うさのようなものがやたらと強調されているように感じています。

 


ハンジはこう言っています。

 

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-ジークやイェレナは計画が上手くいっても
-自身への懸念が晴らされないことは予測済みだったんだ…
-この状況を踏まえた上で事前に仕掛けられた
-「保険」が効果を発揮してきている

 

”断言”してますね。これが重要だと思います。

 

ちなみに私も断言できます。もしジークがこれを聞いたら、こんな感じのことを言いますよ(27巻110話)

 

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冗談はさておき、このハンジの断言がワインに繋がっていきます。

 

 


-長い余談-

ここから件のワインについて考えていきますが、先に言ってしまうと、脊髄液が入っているかどうかはそれほど重要ではありません。こういう推理も楽しいので膨らませてしまいましたが、長い余談とでも思ってください。あと、妄想する楽しみをぶち壊すかもしれませんので先にごめんなさい。


048 111話 要点チェック の本文後にワインについて書きましたが、既にお読みいただいてるものとして書いていきます。

 

今回はワインの入手経路から考えてみましょう。

 

ワインに脊髄液が入っていると仮定して、その入手方法は大きく分けて以下の2つになるかと思います。

・外から脊髄液の入った物を持ち込んだ
・後から脊髄液を混入した

 


まずは、外から持ってきた場合です。

 

調査船で運んできたと仮定しましょう。あの船に乗っていたのは義勇兵だけではありませんし、そもそも遊びに行くわけではありませんから、乗組員用のワインを積んでいたとしてもたかが知れているでしょう。そこに大量のワインをこっそり積み込むのはリスクも高くて難しいでしょうから、持ってこられたとしても少量です。ジークが乗っていたわけじゃありませんから、マーレ軍が意図的にワインを載せることもないと思います。少量しかないので幹部を狙う、まあ理には適ってます。そんな少量で何が望めるのか分かりませんが、とりあえず一つの可能性として保留してみます。


今度はヒィズルの船です。すでに氷瀑石を持ち帰ってることや、レストランで提供する大量のワインや食材を考えれば、規模は大きくないが貿易のようなものが始まっていたと考えられます。

脊髄液入りのワインを瓶詰段階から製造するならば、おそらく巨人化学の研究所とやらが絡むことになると思います。そこに内通者がいたとして、そのワインが秘密裡にヒィズルの船に運び込まれ、マーレからパラディに輸送される感じでしょうか。そしてカモフラージュなのか、他にもたくさんの銘柄も一緒にパラディに運ぶわけですね。で、幹部を狙い撃ちにして飲ませた、と。

 

うーーーん。

ごめんなさい、自分で言っててなんですが、もの凄いコジツケ感しかありません・・

めちゃくちゃ手間かかってますよね。そんなに手間暇かけて運んでまで、いくらかの幹部だけを狙い撃ちする意味が考え付きません。だったらできるだけ多くの人に飲ませたほうが効果的ですよね。脊髄液入りを数銘柄作って、手当たり次第に流通させた方が脅しにも保険にもなりますし、手間もかからないと思います。

あのワインを飲んでおかしくなった人はいません。ローグは飲んでないかもしれないし、描かれてないと思われるかもしれませんが、もし飲んだら意識を失くすとか変調をきたすのであれば、噂を広める人がいなくなるか、違う意味で噂になっているはずです。それを飲みたがるジャンがヤバい人になってしまいます。何事も無くステルス的に人々に仕込めるのであれば、全員に仕込んでしまって反抗する人間だけ巨人にする方が理に適っているのではないでしょうか。物量的に全員は無理でも、できるだけ多く、という意味です。

 


そもそも巨人化するなり脅しに使った瞬間に、ジークはパラディ島の敵だとバレるわけですよね。それって幹部の首にナイフを当てて脅迫するのとたいして変わらないんじゃないでしょうか(あ、ダメだこれ言ったら終わってしまう)

 

 

き、気を取り直して、島で混入したケースも考えてみましょう。

 


先に一点、こちらを思い出してください(22巻87話)

 

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少し昔のものですが、巨人化薬です。とりあえず思い出していただければそれで充分です。

 

それでは、今回問題になったワインを確認していきます。こちらをご覧ください。

 

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セリフからも分かる通り、ジャンはその場で開けて飲もうという勢いですよね。だからニコロは慌てて止めたんですよね。それを踏まえて、ジャンの手つきにご注目ください。

 

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この問題のワインの蓋はスクリューキャップという、ペットボトルの蓋のような回して開けるタイプに見えます。それがどうしたのかと言いますと・・

 

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地下のカーヴにあるワインの蓋は長いんです。一応、蝋封とか長いスクリューキャップの可能性もないとは言えません。ただ、切れ目が見当たらないのと、スクリューキャップとの描き分け(2枚目の真ん中が件のボトルです)を敢えてしていることから、キャップシールではないかと推測できます。キャップシールという薄い金属のカバーの下は、コルクで栓がしてあるはずです。

 

先ほどの巨人化薬も、コルクのような栓をしていました。

 

巨人化薬をコルク栓にするメリットは、注射針を刺してから抜いてもコルクが伸縮するために穴が塞がり、空気の侵入を遮断できることだと思います。ところがスクリューキャップの場合は、穴を開けたら塞がることはありません。つまり空気が入り続けます。

では脊髄液入りのワインはどうでしょうか。もちろん、揮発している様子は見られませんので液体として安定している、つまり空気に触れても問題ないですよね。でもそこじゃありません。

ワインをお飲みになる方は分かると思いますが、ワインはいったん開封したら、蓋をしたとしても数日もしない内に大幅に味が劣化します。別格に良いワインだけは開けてから数日後が美味しいとかありますが、それでもその後は劣化の一途をたどります。これは空気中の酸素との反応で起こります。

 

そんな劣化したワインが”噂になる”のはおかしくありませんか。それとも、ジャンはヤバい人だから不味くて噂のものを飲みたがったのでしょうか。

 

もしイェレナなりニコロが脊髄液を混入させるとして、わざわざスクリューキャップのものを選ぶとは思えません。すぐ横にコルク栓の物があるのです。いや、実際あれがコルク栓だという確証はありませんが、実はそれはあまり問題ありません。

ワインの蓋にスクリューキャップを使うのが広まったのは、ここ半世紀も無いくらい最近のことです。欧州ではコルク信仰のようなものが今でもあるくらい、ワインと言えばコルク栓なのが当たり前でした。進撃の時代背景ならばコルク栓の方が自然だったりします。お飲みになる方はこの感覚をご理解いただけるのではないかと思います。じゃあ作者は深く考えずに現在主流になりつつあるスクリューキャップを描いただけなのでしょうか。

そんなことはないと思います。作者がワインをお飲みになるのかは調べても分かりませんでしたが、既にコルク栓の利点を活かした設定を描いています。そしてワインの栓も描き分けをしている節があります。その作者が件のワインを敢えてスクリューキャップにしているのです。その意味は・・もう書くまでもないように思います。

 

 


結局、ワインに脊髄液が入っているとすると合理性も、その目的もおかしなことになりそうなんですよね。先ほども書きましたが、脅迫するならできるだけ多くの人に飲ませた方が効果があるはずです。以前どこかで読んだ覚えがあるのですが、エレンはジークたちに脅迫されているのではないかという説がありました。エレンを脅すなら104期に飲ませるのが一番効果があります。つまり、飲んだ人が多くなればなるほど、脅せる人が増えていくわけです。どんどん広めるべきなんです。島の全員が飲んでたら、エレンも兵団も言うことを聞くと思います。逆に何かの理由で幹部だけを狙い撃ちしたいなら、評判になるようなワインと混ぜちゃいけないんです。現に関係ないジャンが巻き込まれる寸前でした。無茶苦茶、じゃありませんか。

実は作中に描かれている”事実”は、おすすめしたワインが噂になった、ということしか描かれていません。私にはどう考えても普通に美味しいワインにしか思えません。もしあるとすれば、全てのワインに実は入ってました、とかなら可能性あるかもとは思います。あとは、戦略的な目的も無く思いつきで入れたくらいのケースでしょうか。その場合ジークは関わってないことになりそうです(27巻110話)

 

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-…いつまでも時間があると思っているならそれは間違いだと伝えろ

脅すつもりがあるならこんなことを言う必要も無く、他に伝えるべきことがあるはずです。時間がないんですよね?


ワインに関して言えるのは今のところこんな感じなのですが、いずれにせよその真偽が分かるのはだいぶ先になりそうです。

 

なぜかと言うと、試せませんから。

 

物語としてこれが重要なんだと思います。ハンジたちは脊髄液が入っている可能性を知ったわけですが、彼女らは真実を知ることができません。試しに巨人化してみろなんて言える訳がありませんし、ではイェレナやジークを問い質したところでどうでしょう。知らない、あるいは入ってないと言われても、確かめようがありません。そして何より、その言葉を信じることができません。これは絶対に解けない疑惑なんです。答えが出るのは、ジークが本当に巨人化なり脅迫をした時だけ。つまりもう手遅れな場合だけです。ジークが白だった場合は答えが出ることはありません。

おそらく来月あたりに義勇兵、イェレナあたりへの疑惑として発展すると思われます。残念ながらこの解決不能な疑惑は既に立ち上ってしまいました。もはや実際に脊髄液が入っているかどうかは大した問題ではありません。ハンジたちがそれを疑わざるを得ないことが問題なんです。

-長い余談おわり-

 

 

疑いを晴らす、というのは非常に難しいことです。

 

 

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-何より我々はジークを疑うだけで一歩も前に進まなかった…

今回、兵団が何もできていなかった事実をハンジは認めていました。そして人によってはエルディア国の生存に反する行為と捉えるだろうと、イェーガー派の心情を推測しています。もちろんハンジがこう言っている背景には、以下の会話の影響があると考えられます(27巻107話)

 

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-あなたに何ができるって言うんですか?

エレンが怒りを露にする直前のハンジのセリフはこうでした(27巻107話)

 

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-君と焦燥感を共にしたつもりだった

 

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-でも君がなぜ単独行動に出て
-この島を危機に追い込んだのかが分からない
-もうヒストリアはどうなってもよかったのかい?

「なぜ~危機に追い込んだのかが分からない」という言葉は、君は島を危機に追い込んだが、なぜそうしたのか分からない、という意味ですよね。つまり、「危機に追い込んだ」ことはハンジの中で確定しています、その理由が分からないだけで。ちなみに(26巻105話)

 

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-世界がパラディ島に総攻撃を仕掛けてくるまでの時間かい?

このセリフも同じことを言ってます。ハンジの中では、エレンのせいで世界が攻めてくることになったことが確定した事実となっています。その確信はフロックとの会話の中にも見られます(27巻109話)

 

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-そしてその勝利は世界中の軍が
-このちっぽけな島に総攻撃をくらわせる
-これ以上ない必然性を与えてしまったけど

「必然性を与えてしまった」、確信してますね。フロックはそれに対して、地鳴らしが無ければそもそも危機だったと、そして今もエレンを牢に入れて試すこともせずに時間を浪費してていいのかと問います(27巻109話)

 

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-…うん
-君が正しいのかもしれないね…

これらの会話が今回のセリフに繋がっています。ハンジは確信を持って言っていた「危機に追い込んだ」が正しいとは限らないことを認めています。断定から可能性に格下げされているわけです。ついでに言えば、焦燥感を共にできていなかったことも認めていることになります。そりゃ、「つもり」なんて言われたエレンも苛立ったわけですね。

 


少し読者目線で考えてみましょう。

たらればですけど、あの時エレンが襲撃を止めていたらどうなっていたと思いますか? ヴィリー・タイバーの宣戦布告は世界から無視され、攻めてきてもせいぜいマーレだけだった、あるいは誰も攻めてこなかったのでしょうか?

違いますよね。あくまでたらればですが、エレンが攻撃しなくても世界が攻めてくる流れはもう出来上がっていました。つまり、ハンジは最初から誤っていた可能性が高いです。別に推測を見誤ることは人間誰しもあることなので仕方がありません。何より重要なのは、誤っているかもしれない推測に過ぎないことを、その時のハンジは確信を持って断言していたんです。「エレンのせいで危機に追い込まれた」って。人間の断定なんてこんな足元のおぼつかないものなのです。

 

ここで最初に挙げたシーンをもう一度ご覧ください。

 

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-ジークやイェレナは計画が上手くいっても
-自身への懸念が晴らされないことは予測済みだったんだ…
-この状況を踏まえた上で事前に仕掛けられた
-「保険」が効果を発揮してきている

ハンジは断言していますけど、これはもう確定した事実でしょうか?

 

私は現時点ではどちらともいえない、少なくとも確定はしていない、としか言えません。実際、読者目線でもイェレナがフロックに反乱の指示を与えたかどうかは描かれていないので分からないと思います。でもやっぱり、ハンジは断言してしまっているんです。もちろん彼女の視点からだと仕方が無い部分も理解できます。でも裏を返せば、読者にとってはハンジの断言に信憑性なんてカケラも無いってことになってしまいます。

さらにハンジは上記の断定を根拠に、その”第1の保険”があるんだから他にも第2、第3の保険があるかもしれない、と言っているわけです。その根拠自体の信憑性が疑わしいわけです。あくまで可能性でしかなく、それが”第1の保険”だったかどうかは五分五分に過ぎません。”第1の保険”が正しい可能性を50%とするなら、その上で”第2の保険”がある可能性も五分五分だとすると、その確率は25%しかありません。

もちろんその恐れが少しでもあれば確かめる必要があるのは当然です。当然なんですけど、結局「疑うばかりで前に進まなかった」ことに逆戻りしてしまっているんです。「前に進まなかったのは疑ってばかりだったから」ならば、疑っていた自分を疑ってみないといけないと思います。具体的には信用できるケースを並行して考えるべきだと思います。でも結局、彼女は疑いを持つ目線からしか考えられていないようです。

ハンジの発言によって104期たちは「さらに保険があるかも」という前提で物事を判断してしまいます。そこにニコロの告白があり、おそらく次回あたりに義勇兵の誰かの名前が出ることでしょう。当然彼らは「やっぱり第2があった」と確信に変わります。それと同時に”第1の保険”への確信は揺るぎないものとなることでしょう、五分五分なのに。

つまり、ワインに脊髄液が入っているかもという疑惑は、ジークやイェレナが”第1の保険”を仕掛けていたという推測を、確定した事実に変化させてしまうのです。実際に入っていようが、いまいが。

 

人の認識における危うさをご理解いただけたでしょうか。前回と重複にはなりますが、作中でワインが怪しいとして描かれているシーンをご覧ください(27巻108話)

 

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-オススメはこいつだろ?

ニコロは脊髄液が入っていると”推測”しているから暗い表情をしていると思われます。

 

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-勝手に触るな!!

ニコロは脊髄液が入っていると”推測”しているからジャンたちに飲ませたくありません。

 

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-多分… ジークの脊髄液だ

ニコロは脊髄液が入っていると”推測”しているからそう告白しました。

たったこれだけです。全てはニコロがそう”推測”しているからの行動だけです。「多分…」と言っているわけですから、彼は「脊髄液が入っていますよ」とは誰にも言われていません。つまり、彼は入っているか入っていないかを全く知らないと言っても過言ではありません。

あまりメタ的な推測は良くないとは思いますが、この描き方からすれば、ニコロの推測も、ジークやイェレナへの疑惑も、誤解である方が物語としては”残酷”ですよね。

 

 

実はこの記事を書き始めたのは、前回の記事で”脊髄液ワインは何が目的だと思いますか?”という私の問いかけに、「兵団の分裂では」とコメントをいただいたことでした。ありがとうございました。正にこれだ、と繋がったんです。

確かに、私が推測で書いたように犠牲を覚悟でジーク殺害を企てる一方で、我が身に関することなので当然それに反発する”飲んだ側の人”が出てきて対立するのは必然です。ただし、これをジークの目的として考えてしまうと、上にも書きました通り、やっぱり広範囲にばらまいた方がより分裂させる要因にも、脅しにもなると思います。つまりジーク以外の目的ということになるわけです。

そしてジーク以外であると同時に、これは”作者の目的”も言い当ててると思います。

 

 

 

ここからは現時点では想像の域を出ないお話です。

 

 


まず、兵団は現在いろいろと分裂していってますよね。イェーガー派と兵団しかり、兵団内でも調査兵団憲兵団だったり。この分裂の原因を考えてみると、目的は同じだけど目的に対する考え方や手段の違いにより起こっていると言えます。

その考え方の違いということに思い至ったら、オニャンコポンが浮上してきました。オニャンコという人は、義勇兵ではナンバー2のような存在と言って良いかなと推測します(26巻106話)

 

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ここに同席していることが裏付けていると思います。ただ、最近のオニャンコ自身の証言によって、義勇兵の在りようが見えてきました(27巻110話)

 

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-俺達は最初から
-底の知れないイェレナの背中を
-追いかけるのみでしたから…

彼の証言通りとすれば、義勇兵はイェレナのワンマン体制と言って良さそうです。ですので、ナンバー2のような立場と言っても、実のところ他の面々と大して変わりがない感じが想像できます。


ところでオニャンコはこんなことも言っていました(27巻110話)

 

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-寝食を共にした友であっても
-こちらを疑ったマーレ人はすべて事故死として葬った…
-俺達もそれがマーレに奪われた祖国のためだと
-信じることで乗り切ったんです

目の前で既知の人間が殺されていくのを、”乗り切った”んです。要するに良くは思ってなかったけど、こらえましたってことですよね。オニャンコの心の奥底には、そんな反感ともいえる感情が抑圧されているんでしょう。抑圧された感情は消えてなくなるのではなく、意識からは見えないながらも影響を与えていきます。

 

 

さて、義勇兵は到着後、パラディ島に様々なものをもたらしました(以下、次の注記まで26巻106話から引用)

 

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マーレ料理はイェレナがニコロを紹介することによって成されています。紹介の仕方を見ると、マーレ人捕虜の人権を守ろうとしたこととの繋がりを覚えなくもありません。

 

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鉄道の際はオニャンコだけが描かれています。

 

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インフラ整備はオニャンコが主導している感じでしょうか。港の計画の際はイェレナもいますが、遠巻きから見ている感じです。そして、得意気に自説を語ってイェレナにたしなめられるかのようなオニャンコも描かれていました。

 

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ここからはイェレナとオニャンコの間に何らかの考え方の違いがあることが読み取れます。そして・・(27巻110話)

 

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-この三年間 共に汗を流して培った鉄道も貿易もこの島を豊かにしたはずです!

”私がした”鉄道や港が島を豊かにした、というニュアンスが透けて見えるような気がしなくもありません。対して、イェレナがマーレ人に自由を与えたことに対してはよく知らない感じでした(27巻110話)

 

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-俺達は彼女なりのマーレ人への贖罪意識の表れだと理解しました

イェレナの心情を”想像”して終わりです。その目的や意図を尋ねてもいない、ということです。


私はこれらから、実体のない肩書き?だけのナンバー2が抱く、「俺だってやれるんだ」という無意識的な感情のようなものを感じます。ちょうどこんな感じです(18巻71話)

 

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-ほざいてろ凡人共
-私が団長にさえなれば成果は出せるのだ

 

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-誰も私を馬鹿にできる者はいなくなる
-皆が私の考えを理解し
-皆が私を認める

 

港の建設の際は、さぞ気分が良かったのではないかと思います。彼の心の奥底にはこういう感情があると推測します。

「俺の方がイェレナより上手くやれるのに」

人によるとは思いますが、みなさんもこういう感じを覚えたことってありませんか?

あいつが中心になってやるんだったら、失敗したらいいのに
あいつがチヤホヤされてて面白くないから、盛り上がらなければいいのに

別に人間としては至って普通の感情なんですが、誰だって自分が一番なんです。自分の思い描く世界を望むんです。それって当たり前のことのように聞こえるでしょうけど、意外と表に出せません。なぜならこういう感情は無意識から湧き上がってくるもので、意識は空気を読んでそれをセーブしようとするからです。だから表向きは作り笑いを浮かべながら、やんわりと非協力的な姿勢や乗り気じゃない態度を取ってしまったりします。知らず知らずのうちに、足を引っ張るようなことをしてしまったりするのです。

キースだって、成果を出せる方法を知っていたなら団長にそれを提案していけば良かったはずですよね、エルヴィンみたいに。でも彼はそうしないで、まだかまだかと待っていたんです、自分に団長がまわってくるのを。別に彼を貶めるわけではありませんが、キース以前の調査兵団長は全員死んで交代してきたんですよ。

 

言わば、無意識的に団長が死ぬのを楽しみに待っていたんです。

 

人間の心ってそんなもので、自分の理想が一番になることであれば、現在一番の人が失敗したりするのを無意識的に願ってしまったりするんです。それって他者から見て自分が一番であることが大事ということです。自分に自信がないから、そうやって自分の価値を確認したいんです。この島を豊かにしたのは他の何よりも”港と鉄道”なんです。

多分、オニャンコの立場ってけっこう辛いんです。ナンバー2っぽいけど、ワンマン組織だから実は他の人と変わらない、実は誰もナンバー2だなんて思ってないかもしれない。だから「俺のやったこと見て見て!」ってなるのかもしれません。

 

 


オニャンコとアルミンにはかぶるセリフがあります(27巻110話、26巻106話)

 

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-…最初は互いに疑心暗鬼になり 上手くまとまらなかった…

 

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-そりゃ最初はお互い疑心暗鬼でまったく上手くいかなかったよ

 

さらに港の時のアルミンの表情を合わせて見れば(26巻106話)

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アルミンはオニャンコに導かれていそうです。直接その言葉は描かれていませんが、「話せば分かり合える」もオニャンコの影響もあるかもしれません。港の計画でオニャンコが得意気に言ってたことも、そんな感じの考え方でした。今回も待っている間、なにか話していたようです。アルミンの右手あたりに注目です。

 

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アルミンの「話せば分かり合える」は、エレンの「戦わなきゃ生きられない」の対極をいくかのような考え方です。その背景にはおそらく夢のことでアルミンの中にエレンへの反発する感情が土台としてあったからだと推測しています。


エレンはイェレナとの密会で何らかの影響を受けています。そのイェレナは目的のために躊躇せずに手を汚してきたそうです。マーレ襲撃でのエレンもそうでした。さらに、エレンはマーレ人も含めて「みんな同じだ」と考え、イェレナはマーレ人の人権を守っています。


アルミンは「話せば分かり合える」と主張するわりに話せるように努力しているようには見えませんが、エレンは実践するかのようにライナーと、ファルコと話して一時は分かり合えたように見えます。

オニャンコは「皆求められたから存在する」つまりみんな平等だ、というようなことを言っていますが、イェレナがマーレ人の人権を守ろうとしたこと、つまり平等を実践する行為に対してあまり関心が無いようです。”なぜそうするのか”を尋ねることすらしていません。


この対照的なものを見ていると、イェレナと、彼女に対するオニャンコの反発する心理がそのままエレンとアルミンの関係に出ているようにも思えます。そこだけにとどまりません(26巻106話)

 

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これが島なのかは不明ですが、おそらくこの時エレンと一緒にイェレナも潜伏を開始していますよね。するとそこはオニャンコの独壇場になり得ます。彼にとっては夢のようなナンバー1として振る舞えるような機会だったかもしれません。

エレンの手紙の解釈には、そのオニャンコと彼に導かれたアルミンの考えがかなり影響したのでは、と想像します。どちらもそれぞれイェレナとエレンに内心反発する感情を持っている可能性があるわけです。「そんなことしたら世界に攻める理由を与えてしまうんじゃないか」なんて言ったとしたら、周りにいるハンジや104期もその可能性を前提に置いて考えるようになります。客観的な事実は、あの時点ではもうエレンが攻撃しようがしまいが世界は攻めてきた可能性が高いです。でもその可能性を天秤にかけられることはなく、ハンジはずっと「エレンが危機に追い込んだ」ことを確信を持って主張していました。


現在はすでに、エレン、イェレナ、フロックたちに対する、アルミンや104期、オニャンコ、兵団という対立構図になりつつあります。もしかすると、元をたどればイェレナとオニャンコの考え方の違いが原因の一つということになるのかもしれません。

 

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モブリットを彷彿とさせるかのような和みのシーンに見えるかもしれませんが、オニャンコの動きはとても不自然に感じます。今まではずっと帯同者然として一番後ろの方におさまっていた彼が、この時だけハンジの言葉を遮るかのように前に出てきているのです。何かこの場を支配したいというか、自分のペースに持ち込みたいような、そんな感じを受けます。ニコロも「義勇兵」という言葉に反応しただけかもしれませんが、それまでとは打って変わって表情を曇らせる感じになっていますね。

おそらく来月にはニコロが推測した理由を問われると思いますが、義勇兵についての話であるなら本来はオニャンコは同席させるべきじゃないと思います。同席させちゃうんでしょうけど(27巻110話)

 

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-イェレナがそんなことするわけ無いとは言わないんだね
-彼女ならやりかねないと思っているから?

こんな感じになるかもしれません。その後オニャンコがイェレナについて語ることは、また想像でしかないのでしょう。そしてハンジの言ってた信憑性の無い”第1の保険”と絡み合い、イェレナへの疑惑、さらにはジークへの疑惑が確信となっていき、また無駄な血と時間が流されていくのかもしれません。”仲間内”で争ってる場合じゃないのに。

 

 

 

 


-おまけ-

 

ハンジを例に認識の曖昧さ、危うさを書いてまいりましたが、さりげなく危険な匂いがする認識がもう一つあります。

 

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-エレンを担ぐってことは
-多くの兵士があのジークの後ろ盾を
-信用しているってことだぞ?

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-ジークを信じるエレンを信じているんだろう

これ、”エレンはジークを信じている”が既成事実かのようになってしまっています。さらに、ザックレーの殺害はフロックたちがやったことですが、エレンとイェーガー派が一緒くたになっていて、エレンがやったという風になってしまっています。

 

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-まさか…総統まで殺したエレンに協力するなんて…

ジャンもそういう認識ですよね。

 

-…まだエレンがやったと決まったわけじゃない

対してミカサは冷静です。以前の104期での会話もそうでしたが、ミカサが一番客観的に見えてますね。でもコニーの言動から分かる通り、彼らから見るとミカサはエレン寄りに見えているわけです。実は偏ってしまっているのは彼らなのにも関わらず。やっぱりミカサとピクシス司令が頼みの綱なんでしょうか・・

 

でも多分、ハンジなのかなと思います。記事ではネガティブな部分ばかりを取り上げてしまいましたが、一つポジティブな面があるからです。

本文で書きました通り、彼女はエレンやフロックとの話を通じて彼らを理解し、その考えを認めましたよね。まさに「話して分かり合える」を実践していると言えると思います。ハンジはちゃんと話してない人のことは疑ってかかっていますが、話せばそれを受け止めることができるのでしょう。彼女がイェレナやジークと面と向かって話すことができたら、それこそ「何かが変わるかもしれない」と思ったりするのでした。あと兵長ジークと分かり合えそう・・かも。

 

 


それから、こんな妄想もできます。

 

ニコロは、サシャとの出会いを通じて救われたと言っていました。それは当然、サシャの故郷であるパラディ自体の印象も変えたことでしょう。ジャンやコニーたちとの関わり合いも影響があったと思います。

そんな中、イェレナの計らいでレストランで働くようになったのでしょうが、今のハンジたち同様、その意図を測りかねたのかもしれません。何かきっかけがあったかもしれませんが、いずれにせよ邪推してしまったんじゃないかと。でもサシャのこともあって葛藤していたのかもしれません(27巻108話)

 

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-オーイもう一本持ってこいマーレ人

この時のローグたちの会話が聞くに堪えないものだったことは、言うまでもないと思います。もしかしたらこの時に初めて決断したんじゃないでしょうか。こんなエルディア人たちを守ってやる必要なんてないって。サシャのことで荒んでいた部分もあったかもしれません。

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-これは… エルディア人にはもったいない代物なんだよ…

だからこそ、今回ワインに関して咄嗟に出た言葉が人種を区別したものだったのかもしれません。マーレ人呼ばわりするエルディア人、というイメージがあのワインに付いて回っていたから。

 


ニコロはマーレ軍の兵士ですから、”ジークの脊髄液を摂取したらエルディア人を操れる”ことを知っていてもおかしくないはずです。

 

イェレナはこんな感じのことを言ったのかもしれませんね。

 

「この特別なワインを飲んだら、幹部の人たちもきっと私たちやマーレを良く思ってくれるよ」

 

 

 


もしもイェレナが潔白だったら、本来ニコロにとってはサシャと引き合わせてくれて、レストランで働かせてくれた大恩人なんですよね。でも残念ながら、人を疑ってしまったり、団長の死を楽しみに待ってしまうような”人の心が持つ性質”が、それを歪めてしまうのかもしれません。

 

 


これ、ワインに何も入ってないほうが物語として面白いと思いませんか。

 


-おまけおわり-

 

 

 


本日もご覧いただき、ありがとうございました。

 

 
written: 15th Nov 2018
updated: none