進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

004 最新話からの考察 102話④ 調査兵団の目的

みなさんこんにちは。
進撃の巨人最新話からの考察を書き綴っております。

今回は、ようやく主軸のパラディ島壁内勢力に話を移していきたいと思います。
調査兵団と題しましたが、呼称はすでに変わっているかもしれませんね。自由の翼の紋章、壁外での活動という点は維持していますので調査兵団としておきました。
海外勢ともコンタクトをとっているみたいですし、自身のことをエルディア王国と名乗っているかもしれませんね。

今回はかなり長くなってしまいましたが、頑張って考察しましたのでお読みいただけたら嬉しいです。

 

 

この記事は最新話である102話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。

 

 


[調査兵団]

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まずは例によって事実確認からまいりますが、最初に兵装を見ていきましょう。
久しぶりに登場した立体起動装置ですが、3人だけ少し装備が異なるようです。


・ジャン、コニー、フロック、他の兵団員

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ケニーら中央憲兵が使っていた対人立体起動装置をベースにしたものでしょう。
本体は後背上部に装備し、メイン武器は銃、アンカーの射出口が銃身と一体化したものです。
便宜上「新型」とします。
主に銃と雷槍による距離をとった戦闘、および手投げ爆弾による制圧行動用とみられます。
雷槍のホルダーは以下の3人を含め、全員が装備してあります。

 

・サシャ

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今まで調査兵団や駐屯兵団が使っていたものと同様のものでしょう。
本体は後背腰部に装備、アンカーの射出口も腰部側面に前方向きについています。
メイン武器はおなじみのブレードで替刃を両太もも側面に装備しています。
こちらは便宜上「旧型」と呼びます。

サシャのみ、ライフルを持っています。
基本的にスナイパーの役割と思われます。
おそらくライフルを構える際に新型の本体ホルダーが邪魔になるのでしょう。

 

・ミカサ

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新型と旧型の両方を装備しています。
あらゆる状況に対応するためと思われます。また対巨人の戦いも念頭に入っているでしょう。
他の兵団員と別行動でエレンと一緒に戦っていることからも、今まで通りエレンを守りながら戦うことが
任務とみてよさそうです。

 

・リヴァイ

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旧型のみ装備しています。
基本的に対巨人に特化した装備と考えてよさそうです。
エレンのそばに位置していたことからも、ミカサ同様の役割をしながら全体の指揮を執る、といったところでしょうか。
まあ彼の場合は小銃の代わりにブレードで事足りると、本人が言ってそうですが・・


全体の装備を俯瞰すると対巨人というより、対人や制圧が主目的のように感じられますね。


それでは、事実確認です。

①作戦前段階として知性巨人たちを拘束。ただしジークのみ時間を要する命令をした上で解放。
②戦鎚の巨人の情報は無し
③民間への被害は最小限に抑えること
④開始後、最初は家屋の屋根を伝って現場へ駆けつけている
⑤会場および周辺の制圧
⑥周辺道路の封鎖・照明の設置
⑦時間までに戦鎚の巨人を無力化することが目標
⑧作戦後起こることについては明確に分からない


項目ごとに読み解いていきます。

①知性巨人の拘束(ジークのぞく)
エレンとロープ兵によって、知性巨人である戦士たちの分断とゆるやかな拘束がなされています。
ジークのみ、時間を要する命令をした上で単独で解き放っています。

殺害の意図は見られませんね。ピークポッコは殺害しようと思えばできたでしょう。
ライナーも殺すのは簡単だったでしょう。本人もそれを望んでるくらいでしたし。

もしライナーを殺すつもりでいたなら、あの場にファルコを残した意味が分からなくなります。
なぜならエレンはファルコが「いいやつ」だから「長生きしてくれるなら嬉しい」のです。
それが仮に嘘だったとしても、引きとどめてわざわざ殺す対象とは思えません。
もしも戦士候補生を脅威と考えていたなら、コルトやガビ等にもなにか手立てを打ったことでしょう。
それを行っていない以上、候補生もただの子ども達という認識であることが分かります。
そして親しかったファルコを残したということは、死んだり怪我して欲しくないから、
戦場になる可能性のある会場よりも安全な地下室に留めたと考えられます。
今のエレンなら硬質化で小さな檻のようなものを作るくらいは造作もないんじゃないでしょうか。

それはさておき、「クソッ!! こいつもかよ!? 「車力の巨人」!!」(102話)というジャンのセリフから、ピークポッコがあの場に現れたのは予定外、
つまり作戦の現段階ではおとなしく足止めされていて欲しかったことが伺えます。
あわせて、ジャンの「きやがった」という獣に対する反応は、獣の登場を想定していたと取れます。


②戦鎚の巨人の情報は無かった
エレンは戦鎚がどのような能力を持っているか知らず、いろいろ試みながら攻略しようとしています。
ジャンが「車力の巨人」と呼んでいることから分かる通り、壁内は巨人の情報を事前に知り得ていることは間違いないですが、
エレンの記憶や内部協力者からのリークにも戦鎚の情報は無かった、ということが分かります。
それに対して、マガトは戦鎚の本体が別にあることを知っていたようです。
真意の見えにくいタイバー家ですが、これでエレンとタイバーが組んでいて、戦っているフリといった可能性は無くなったと言ってよいでしょう。
つまり、タイバー家とマガトは敵だということです。


③民間への被害は最小限に抑えること
ジャンが明言している通り、民間人、すなわち一般エルディア人は今作戦の敵ではありません。


④開始後、最初は家屋の屋根を伝って現場へ駆けつけている
ピークポッコが頭上を飛ぶ兵団を目撃していることからも、兵団は作戦開始後に現場へ駆けつけていることがわかります。
おそらく作戦開始の合図はエレンの巨人化による噴煙や轟音でしょうか。(アニメなら稲光ですね)
フロックのセリフ「エレンは示した 戦えってな」からも、演説内容等によっては武力に頼らないオプションがあったと推察されます。
作戦を中止する可能性があるなら、リスクを冒して収容区内に人員や武器弾薬を運び込むより収容区外に潜伏するほうが理に適っています。


⑤会場および周辺の制圧
祝砲用に用意されていた徹甲弾の大砲の破壊を皮切りに、会場周辺の建物の確保とマーレ軍の排除をしています。
この屋上にあった砲塔の存在や配置を兵団が知っていることは、内部協力者の存在の確たる証拠です。


⑥周辺道路の封鎖・照明の設置
規模や配置が不明なので何とも推測し難いですが、道路封鎖はコニーの発言によれば援軍の車両が現場へ入れないようにしている模様です。
照明に関しては後述します。


⑦時間までに戦鎚の巨人を無力化することが目標
この段階での目標は戦鎚の無力化ということがジャンの言葉で明らかにされています。
さらにエレンとミカサがうなじをつぶそうとしましたので、ここでいう無力化とは戦鎚を殺す、あるいは戦闘不能にすることだと分かります。
もちろん殺して良いのですから、エレンが喰ってその能力を奪うことは問題ありませんが、喰わなくても良いということです。
戦鎚を喰うことが目標では無かったことが確定しました。その上で何らかのタイミングを待っている、ということですね。


⑧作戦後起こることについては明確に分からない
生き残ってそれを見るまでは、この作戦の結果なにが起こるかは分からない。
まあ何言ってるかよく分かりませんね笑

 

ポイントをまとめますと、
まず作戦前行動として、鎧、顎、車力の拘束を行い、獣だけ時間を要する命令をした上で解放しました。
そして演説を聴き、マーレ国の宣戦布告を受けて作戦を開始しました。
敵は戦鎚の巨人とマーレ軍であり、一般エルディア人は攻撃対象ではありません。
兵団は会場および周辺の制圧、照明の設置を行い、エレンとミカサは戦鎚の巨人を無力化、あとはある時間を待つ必要があります。
この作戦の結果何が起こるかは分かっていません。

 

さて事実確認が終わったところで、壁内の視点に立って作戦を考えてみましょう。

まず彼らの状況を振り返ります。
グリシャの手記、エレンの記憶、協力者による情報などによって外の世界の状況をざっくり知ることができたとします。

人的資源、軍事力、技術力、生産力には圧倒的な差がある
パラディを攻撃しているマーレは世界でも超大国であり、自分たちはそのマーレと海に囲まれた島である
平和的解決の道を模索しようにも、自分たちが持っているものは2体の知性巨人(実際には4体あるが運用上)と、いくらかの天然資源のみ
その巨人の数ですらマーレにかなわず、外交カードにはなり得ない
さらにマーレ以外の国々の技術力が上がって巨人の戦術的価値が下がりつつあり、未来も無い

まさに吹けば飛ぶような存在であることに絶望するほか無かったのではないかと想像します。

当然、戦って死ぬか、座して死を待つか、という議論になるわけです。

しかしながら・・
調査兵団はそもそも吹けば飛ぶような小さな一兵団にすぎませんでした。ご存知の通り消滅寸前までいったことさえあります。
そんな彼らが強大な権力に立ち向かい、犠牲を払いながらも壁内をある程度一つにまとめるに至りました。
そして死んでいった仲間の死に意味を与えるのは生き残った彼らの使命であるという精神を持っています。
ただ座して死を待つという安易な道は選ばないでしょう。

では、壁内を一つにするにあたって彼らが何を成したのか、何が壁内を一つにしたのか。

それは真実を暴き、民衆に記憶を取り返したことだと思います。ピクシスもそれが彼らの王政転覆の大義である、と語っています。
王政の打倒はあくまでその過程に過ぎないと思います。もし民衆が記憶を奪われたままだったなら、内乱が起き再び貴族が王政に成り代わる可能性は作中でも示唆されています。

彼らは支配者によって記憶を奪われ、檻に閉じ込められながら、何も知らずに未知の脅威に怯え、戦っていた
その戦っていた直接の相手は、知れば知るほど同じような境遇にあり、しかも同じ血をひく民族だった

なんともひどい話です。今まで多くの命を奪われたとはいえ、なにが悲しくて同じ民族同士滅ぼしあわなきゃいけないんでしょう。
でも、そう思えるのは壁内が真実を知ったからにほかありません。
ならば一つの可能性が浮かび上がります。

レベリオのエルディア人も、真実を知ったら我々と戦うことに疑問を覚えるのではないか、と
本当の敵はその記憶を奪った者たちではないか、と
もしそうであれば、少なくとも同族と戦うことは避けられるかもしれない

ただし、あくまで「かもしれない」です。レベリオ民がそれをどう判断するかは、確信できるはずがありません。
ジャンやリヴァイが、生き残って見届けることに主眼を置いたことを言ってるのはそういうことでしょう。
今作戦の目的を知っている壁内勢ですらフロックのように考える者もいるわけです。
ジャンの「おまえ"まだ”そんなこと言ってるのか」とか、フロックの物言いに反論しようとせず口をつぐむあたりはそれが出ていると思います。
彼ら壁内勢自身も、この作戦を成し遂げた時にようやく真実の歴史を本当の意味で知ることになるのでしょうが、それをどう判断するかは自身ですらわからないのです。
ハンジはかつて壁内でこう言いました。「情報は納税者に委ねられる」(22巻90話)と。彼らは同じことをしようとしていると思います。

さらに言えば、レベリオの一般市民はおろか知性巨人たちもまだ「敵」ではありません。彼らも何も知らないと思われるからです。
ただし戦鎚の巨人、つまりタイバー家だけは異なります。タイバー家こそが記憶を奪い去った当人ですから当然、真っ先に殲滅するべき対象です。
付け加えるなら、ヴィリーの演説は世界の人々の記憶も都合のいいように書き換えようとしていると取れるような内容でした。
それを聴いていたエレンが開戦に踏み切ったのは「仕方がない」ことではないでしょうか。

記憶という話になれば行うことは当然、始祖による座標の力を発動させることですね。これは誰もが想像していることと思います。
ただ記憶の「改竄」ではないというのが私の見立てです。前述したとおり、今までの兵団のやってきたことを考えれば、改竄することはあり得ないと言ってよいと思います。

 

さて、これらを踏まえて作戦行動を顧みてみましょう。

彼らは真実の記憶を見せる時間を作らなくてはなりません。アッカーマンの二人以外は動けなくなる可能性があります。
そのため前もって現場周辺の制圧、そこにつながる道の封鎖と指揮系統の破壊によるマーレ軍の援軍の到着遅延を図ります。
敵ではない知性巨人は殺さないが、邪魔をされないよう一時拘束しておきます。
戦鎚(タイバー家)を殲滅した上で獣を待ち、接触して座標発動。後は野となれ山となれ。
目的とやっていることの符号がだいたい合ってきたように思います。


残るは照明の設置ですが、こちらは情報があまりに足りないので妄想だと思ってお読みください。

上方向きのライトであることも加味すれば、やはり誰もが想像している通り何かしらの飛行物への目印である可能性は高いと思います。

ただ壁内は他国から情報提供を受けたと言っても基礎技術や工学も遅れているため、自前で航空機を用意するのは難しいのではないかと想像します。
そうすると協力関係から借り受けるしかないわけですが、協力者も表立ってマーレと戦争を始める事態をおいそれと招くことはできないでしょうから、機種等で足が着くような物は渡せないわけです。
そこで、作品内に何度か登場している飛行船の出番となりそうです。
まず飛行船は地上からは作動音が聞こえません。グリシャとフェイが見上げているシーンや、要塞攻撃に使われているシーンでも進撃おなじみの「ドオオオオオ」という擬音が描かれていません。
しかも夜間であることを合わせれば、作中の兵器レベルではその船籍を知ることはおろか存在を知られないままレベリオ上空まで飛来し、離脱することが可能と思われます。
これは何かをパラシュートで降ろすことが目的だと推測されます。

ではわざわざ手間をかけてパラシュートで降ろさなければいけないものとはなんでしょうか?
まず思い当たるのは、通常の海上輸送で港のチェックを逃れることが難しいものです。


私の現在の予想では、結晶に入ったアニだと思っています。


武器弾薬と違い、あの大きさでは差しさわりのない荷物の中に隠して入れるのも難しく、目を離したら逃げられる可能性も想定されます。
わざわざ空輸せざるを得ない理由は充分にあります。

ではなぜアニを運んでこないといけないのかといいますと、おそらくアニにも記憶を取り戻させ、選択を促すためだと考えられます。
(現状では我々読者には座標の力の影響範囲が分からないのと同様、壁内勢も分かっていないと仮定する必要があるかもしれませんが)
アニを運んでくるのはアルミンだと思います。ハンジも多分一緒におりますが、ともかく、巨人であるアルミンがいれば不測の事態への対処もできるでしょう。


そうして、知性巨人が集い、真実を知ったことによって一丸となることができたならば、世界中で唯一の巨人保有国であり、9つの巨人のうち8つを占有することになります。
戦鎚が赤子ガチャでマーレに戻ったとしても、もはやたいした問題ではないでしょう。
少なくとも現状では世界最高の軍事力を手に入れることになります。おそらくここまでやってようやく外交のテーブルにつける、といった感じではないでしょうか。
不確定な要素の多い作戦にはなりますが、あの絶望的な状況ではここに一縷の望みを賭けたとしてもおかしくないなと思えます。
兵団の作戦はいつも賭けでしたしね。


さて、上記が正しかったとしても、一つ、疑問が残ります。
それを知ったからといってレベリオの民衆が味方になる可能性があるほどの真実とはなんだろうか、と。

引き続きそのあたりを考察していきたいと思います。

 

長文に関わらずお読みくださり、ありがとうございました。

 

written: 25th Feb 2018
updated: none