042 物語の考察 新説 壁の王
みなさんこんにちは。
※12/10 注:こちらの記事のいくつかの部分に関して、現在再検討中です。
今回はむかしばなしです。壁の王について再び考察してみたのですが、大筋は以前の記事の焼き直しのような感じではあります。初期に書いた前回の文章が拙く感じて仕方がなかったのと、新たに繋がったので付け加えたい部分をまとめ直しました。以前のものをお読みいただいてるみなさまには重複があって恐縮なのですが、別物になってるとは思いますので、よろしければご一読くだされば幸いです。
!閲覧注意!
長いです。それと仮説が合っていたらけっこうなネタバレになりますので、そのあたりをご了承いただける方のみお読みくださいませ。とはいえ、妄想に過ぎませんこともご理解ください。
この記事は進撃の巨人の全編にわたるネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
[新説 壁の王]
ウーリ・レイスとフリーダ・レイスには、平和や”人の和”といったものに対しての渇望が見られます。壁の王たちは何を求めていたのか、巨人大戦の謎に迫りながら探っていきたいと思います。
グリシャの父、イェーガー翁はかつてこう説明していました(21巻86話)
-フリッツ王は残された国土「パラディ島」に
-三重の壁を築き国民と共にそこへ逃げ込んだ
-だが全員ではない
-我々非マーレ派のエルディア人残党は
-奴らに見捨てられ この大陸に取り残された
おそらくこれは誤植でも洗脳教育でもなく、他の誰も語っていない事実を述べているのではないか、というのが現在の私の推論です。
彼の言うことを分かりやすく不要な部分を削ぎ落としてみましょう。
フリッツ王は国民と共に逃げ込んだ
我々非マーレ派のエルディア人残党は 奴らに見捨てられ取り残された
「奴ら」は「フリッツ王と逃げ込んだ国民」にかかっています。「我々」と「奴ら」を区別した上で、”我々=非マーレ派のエルディア人残党”と言っています。
非マーレ派という言葉は、”マーレ派ではない”という意味ですから、マーレ派が存在しなかったら非マーレ派という言葉は生まれません。反マーレという意味ではありませんよね。別にマーレに反抗心が無くても、関心が無いだけでも非マーレ派と言えるわけです。つまり、大部分のエルディア帝国民は非マーレ派と言えると思います。
そして「奴ら」、すなわち「逃げ込んだ国民」がマーレ派だと考えるのが自然です。
これが誤植を疑われたのは致し方ないことだと思います。なぜならイェーガー翁が説明した頃の常識は、"マーレが王を討伐し、王は島へ逃げ去った"というものでした。マーレに負けた王がマーレ派を連れて逃げるというのは確かにおかしな話です。作中の世界の人々も、当時の読者もそう思っていたはずでしょうが、訂正されることはなかったようです。
ところがヴィリー・タイバーの告白により様相が逆転します。ご存知の通り、王はマーレに負けたフリをして島へと去っていたのです。その際にマーレが復興できるように便宜を図っていますから、王がマーレ派で、マーレ派のエルディア人だけを島へ連れていったとすると全てが自然に繋がります。
30年以上も昔、マーレの情報操作によりレベリオ民も世界の人々も誤った歴史認識を持っていた中、イェーガー翁だけがさりげなく真実を語っていたのです。あの時にデタラメを言う意味はありませんし、そのデタラメがたまたま真実と一致してたなんて馬鹿げた話はないでしょう。つまり彼は真実を知っていた、ということになります。
改めて整理しておきます。
作中に描かれている事実として、壁中の人々はマーレ派エルディア人のルーツを持ち、レベリオ民は非マーレ派エルディア人のルーツを持つということになります。単純に置き去りにした、されたという関係ではない、ということです。
では、エルディア帝国民でありながらマーレ派というのは、どんな人々なんでしょう。
普通に考えれば、全員かは分かりませんが、中心になる人々は”マーレにルーツを持った人”である可能性が高いのではないでしょうか。マーレに全く関係ない人がマーレ派を作るというのは考えにくいですよね。加えて彼らはユミルの民でもあるわけです。
つまり、”ユミルの民とマーレ人の混血”の人々が中心だった可能性が高いです。
ああ、そういえば。マーレの語る歴史では民族浄化の罪を声高に叫んでいました。真偽の程は置いておくとして、混血ということに関してかなり強い感情を持って生まれた国と考えて良さそうです。マーレ人がエルディア人と子供を作ることも厳罰に処されるみたいですね。
少しずつ、壁の王の意図が見えてきた感じがします。
余談にはなりますが、進撃世界の名前は様々な人種が混ざってきた歴史を表現しているように思います。主にドイツ系の名前が多いですが、ジャンなんてフランスっぽいですね。レオンハルトではなくレオンハートだったり、スプリンガーとか、英米語っぽさを感じさせます。
要は色々混ざっているんだと思います。それがエルディア帝国時代なのか古代マーレ時代なのかは分かりませんが、混血なんてそこらじゅうに普通にあることです。日本は島国なので少し特殊ですが、それでも縄文系の土着人と弥生系の渡来人が混ざっていたりするわけです。
なんで縄文とか弥生とかの話を出したかと言いますと、それがおよそ3~4世紀頃、ざっくり1700年くらい前のことだからです。それを踏まえたら、1700年前の古代マーレ国の復興ってピンとこない感じがしませんか? 日本で言えば邪馬台国とかを復活させよう的なノリということになります。祖先ですけど、全く知らない国や人ですよね。自分の直系の先祖なんて、どんなに調べても名前すら知ることはできないでしょう。
とどのつまり、ただの建前に過ぎないんじゃないでしょうか。
グリシャが復権派に心血を捧げたのは、エルディア帝国が素晴らしかったからではありません。順番が逆なんです。そもそもは現状に不満があっただけで、それを解消するためにエルディア帝国の復興というのが都合が良かったに過ぎないと思います。現に古文書を読めないのに都合の良いように解釈して、自分たちの行動の根拠、正当化の材料としていましたし、後にこう述懐しています(22巻88話)
-これが自由の代償だとわかっていたなら
-払わなかった
そういえばケニーも似たようなことを言っていました(17巻69話)
-今思えば一族の恨みなんて大して感じてなかったのかもしれない
同様にマーレ派の人々も祖国の復興という建前を用いて、何らかの現状への不満をぶつけたかった、と推測することができます。そのマーレ派の人々の不満を推し量れるのが、この証言です(16巻63話)
-お前のその血は奴隷用の血だ…
奴隷扱いを受けていたとなれば、不満を覚えるには充分です。おそらく彼らは現在のレベリオ民のように、兵器の素材として飼い殺しにされていたことは想像に難くありません。それはエルディア帝国が良い悪いという問題ではなく、人間の性質だと思います。家族か他人のどちらかを巨人にしなくてはならないなら、ほとんどの人は他人を選ぶんじゃないかと思います。それは生物の本質がそう出来ているからです。そして人間は知能を用いてそれを安定したシステムにしていきます。その際にエルディア人の国であればエルディア人が優遇されるのは避けようがありません。それ以外の人はどうしたって不満のある立場に置かれるのです。純粋なエルディア人ではないけど巨人化できる混血の人々は、エルディア帝国の為政者にとって非常に都合の良い存在であったことでしょう。
彼らは現在のレベリオ民と同じ立場、すなわちグリシャとも全く同じということになります。であればそこに、エルディアならぬ”マーレ復権派”のような集団が存在したとしても何の不思議もありません。そんな人々から見れば、祖国マーレの復興(≒エルディア帝国の打倒)という建前は、心血を注ぐのに都合が良かったはずです。
ジークのセリフは、かつて起こった出来事を想像させます(20巻81話)
-しまいには壁の中の奴ら全員
-年寄りから子供まで 特攻させるんだろうな…
奴隷の民が体制に悲劇的な反乱を起こす、至って自然な流れだと思います。しかも彼らが奴隷である原因の”巨人化できる”ことは、同時に武器にもなります。彼らは望んで死を、つまり巨人化することを選んだ可能性があるということです(20巻81話)
-どうせ誇り高き死がどうとか言い出すぞ
彼らは民族の解放や復興という名分に”心臓を捧げる”ことによって、名誉と武器を同時に得ることになります。これも承認欲求が原動力になっていると思いますが、人間はその命に、または人生に意味を見出すためなら、時として自らの命を投げうつ傾向があると思います。ジークはそこに名誉があろうが無かろうが死は死であり、死んだら終わりじゃないかと”誇り高き死”という表現で揶揄しているように思います。
これらを勘案するに巨人大戦とは、奴隷同然の身分であった混血の民族が、当時の体制であるエルディア帝国に反旗を翻したことに他ならないのではないでしょうか。
その中心となるであろう壁の王はどう考えているかといいますと・・(16巻66話)
-何かに取り憑かれたように…私達は罪人だとか言って…
この”私たち”が指しているものは色々考えられるのですが、少なくとも壁内の民が罪深いと考えていることは間違いなさそうです。奴隷の解放を擁護するなら、その民を再び檻に入れ、出ようとしたら殺すというのは矛盾します。むしろ戦乱を巻き起こしたことは罪深いから檻から出てはいけない、世界と関わってはいけない、と受け止めるのが自然でしょうか(17巻68話)
実の息子であるロッドですら、檻に入れて叱責しています。レイス家の人間であっても檻から出てはいけない対象に含まれているわけですね。
また、クルーガーの話を信じるならば、壁に入る際にはおそらく旧王家を拒んでいます(22巻89話)
そして、大陸ではタイバー家やマーレを使って旧王家の殲滅を図っていたようです。つまり、エルディア帝国は徹底的に潰し、マーレ人を解放しています。およそ「ユミルの民は存在してはいけなかった」という想いは実際にあったと考えられます。
こうして見てみるとユミルの民の世界と他の世界を切り離す意図があるかのようです。それが壁の王なりの”存在してはいけなかったけど存在してしまった”ユミルの民への決着の付け方だったのでしょうか。
ところが、まだいくつか説明のつかない事実が残るのです。
・王政幹部を連れて行く必要があったのか。彼らは何者なのか
・なぜ知性巨人も壁の中に隔離しなかったのか
そして・・
・フリーダはなぜグリシャと戦い、敗れたのか
おそらくこれが最大の謎であり鍵じゃないかと思います。これを矛盾なく説明できる方法が今のところ見当たりません、ある一つの仮説を除いては。
まず前記の考察通りだったとすれば、壁外の非マーレ派エルディア人は敵ですので、戦うことは納得できます。隔離した状態を保つためとすれば、壁の王の考える平和とも矛盾することはありません。しかし、「全ての巨人を支配する」はずの始祖の巨人が、あっさりと敗れています。
よく平和主義だからと言われますが、巨人化して戦ったことと矛盾します(16巻63話)
これを見て戦っていないと言える人はいないと思います。ちなみに、家族を守るために仕方なく戦ったというのも違います。それだったら”今のうち逃げて”となりますよね(16巻63話)
家族は逃げずに戦いを見守っています。
では、ロッドが言う通り「経験が足りなかった」からでしょうか(16巻63話)
言い方で分かると思いますが、残念ながらロッドは適当に言っているだけです。記事の最後に補足を書きましたが、彼は巨人について何も知りません。そもそもフリーダは継承から既に3年経っていますし、ヒストリアの記憶を操っています。格闘の訓練はしていないでしょうから、確かにそちらの経験は足りないでしょうが、グリシャの記憶をピリッと消してしまえば完勝できたはずです。何をしに自分がそこにいるのか忘れてしまえば、戦意など消えて無くなるでしょう。ヒストリアの記憶を操れる時点で、少なくとも記憶の操作に不戦の契りは関係ないことも付け加えておきます。
結局のところ、フリーダは勝つために戦ったけど勝てなかったようにしか見えません。そして、勝つための最も簡単な方法を行っていないことになります。それって普通に考えても、それをすることができないからじゃないでしょうか。
つまり、フリーダはグリシャを操れなかった、ということです。
ではなぜ、フリーダがグリシャを操れないと考えられるのかを説明していきます。
まずはケニーの祖父が言っていたこの事実を思い出してください(16巻65話)
-一つの血縁からなる単一の民族である
改めて言うまでもありませんが、壁中の人間は基本的に単一の血族であるとされています。王もそれに含まれているのかは明言されていませんが、さておきこちらをご覧ください(24巻95話)
-…血の繋がりは
-「九つの巨人」の記憶の継承に強く影響する(以下略)
ユミルの民の設定として、血縁が近いと記憶が見やすいというのがあります。これはエレンがグリシャの記憶をたくさん見ていることが実証にもなっていますね。
血縁が近いと記憶を見やすい、裏を返すと、血縁が遠いと記憶が見にくくなる、ということになります。
ケニーの祖父が言っていた通り、壁内は単一の血族です。そして先述した通り、壁内はマーレ派であり、マーレの血が入っている可能性が高いのです。他人種の血が入った時、血縁は一気に遠くなります。純血のエルディア人と、マーレの血が入ったエルディア人の血縁の距離はかなり遠いと言ってよいでしょう。
つまり壁の王は、同じ血族である壁中の人々の記憶には干渉できるが、壁外の人々には干渉できない、あるいは操ったり消したりするレベルでの干渉ができない、という可能性が生まれてくるのです。
そう考えると、フリーダが戦ったけど敗れたことに説明が付きます(22巻90話)
これは都合の良い解釈かもしれませんが、3コマ目あたりは記憶に干渉しようとしているかのように見えませんでしょうか。でもできなかった、だから敵だと認識して戦った、そういうことかもしれません。
それだけにとどまらず、壁の王がマーレ派しか壁内に連れていかなかった説明にもなります。つまり、操れる人々しか連れていけなかったのでは、ということです。そもそも巨人大戦前、知性巨人たちを操っていれば戦争にすらならなかったでしょう。さらに言えば、壁の外の無垢巨人は壁外のエルディア人ですから、壁の王にはどうすることもできなかったのでしょう。巨人打倒の思想を持っていたウーリもフリーダも、継承した瞬間にそれを知り、口を閉ざすしかなかったのかもしれませんね。
さて、この仮説を基にして考えると、ある面白いことが生まれてきます。
それは、不戦の契りがブラフだということです。
おそらく不戦の契りとは、契約とかで使えなくしたのではなく、もともと血統的に力が使えなかった145代がなんとか抑止効果を生みだそうとした言い訳のようなものではないかと思っています。
そもそも「始祖の巨人と契りを交わした」と言っていましたが、エレンは始祖の巨人です。そして彼の意志で力を発動させています。つまり、始祖の巨人は力の発動を一切拒否していないわけです。レイス家の継承者が何もできないことを周囲から見れば、あたかも「思想に囚われた」ように見えますよね。
実はこれを後押しするかもしれない事実があります(22巻89話)
-我は「始祖の巨人」と「不戦の契り」を交わした
壁の王は、旧帝国の王家に向かって”もう力が使えない”ことを伝えています。まぁ、聞いてもないのに理由をペラペラ喋るあたりがもう完全に言い訳なんですが、冗談はさておき。
”攻めてきたら地鳴らしで滅ぼす”というのは、全世界に対する抑止力としての言葉です。そして、”不戦の契り”は、王家残党に始祖を奪い返す意欲を失わせる意図での発言だと思います。
でも待ってください。不戦の契りを敵に教える必要ってありませんよね?
地鳴らしだけで充分な抑止力になるはずです。むしろ力が使えないなら抑止力に疑問符が付けられてしまいます。つまりそこには、力を使えない理由を説明しなくてはならない何かがあったと考えられます。
その後、タイバーやマーレによって旧王家はほぼ殲滅され、不戦の契りについては無事に隠匿されてきたことはみなさんもご存知の通りです。口封じ、だったのではないでしょうか。
145代は始祖を継承した時に、自分が始祖の力を完全には扱えないことを知ったのかもしれません。なぜ混血の145代が王位継承者になれたのかは定かではありませんが、不満を持ったマーレ派の”内部工作”があったのかもしれません。グリシャがやろうとしていたことと似ている感じもします。
継承に立ち会った時かは分かりませんが、当時の王家や国の重鎮の一部が力を使えないことを知ってしまったのではないでしょうか。だから王家には言い訳を述べ、知ってしまった重鎮は壁の中へ連れていき、口を封じたのかもしれません。
ケニーの祖父はこう言っていました(16巻65話)
-もっとも… ワシの親の代は子供に失われた
-歴史を伝えることなどはしなかったがな…
これは王に賛同した他の王政幹部の家系も、子孫に事実を伝承しないと約束させられたことを示唆しています。
ダイナはこう語っていました(21巻86話)
-そもそも「巨人大戦」とは
-145代目の王が「始祖の巨人」を
-継承したことが始まりですが
それまで1700年もの間、内部の小競り合いがあったとはいえ保たれてきた帝国が、”145代の継承”を原因にして国を亡ぼすほどの戦争に突入するのです。そこで何か大きな出来事があったということです(21巻86話)
-それでも王家が「始祖の巨人」を呈することで
-エルディアは均衡を保つことができていたのです
今までは始祖の力が抑止力になっていたということです。145代は巨人家を抑えるどころか、武力などを用いてぶっ潰しているわけです。つまり、彼は決して戦いから逃げていませんが、”なぜか”抑止力たり得なかった、ということです。そして、その抑止力たり得ないことが原因で、巨人大戦が始まったということになります。
その原因を”始祖の力を使えなかったこと”と仮定すれば、全てが綺麗に話が通るように思います。
さて、この仮説が正しいとするなら、壁の王は望まずして王位に立ち、仕方なく事態を収めようとしたことになります。それを察せられるのが、ウーリとフリーダに自己への否定的な感情が描かれていることでしょうか(13巻54話、17巻69話)
-おねぇちゃんみたいになれるかなぁ?
-いいよいいよ そのままでいいよ
-どうか許してくれ
-こんな小さな壁の中にさえ
-楽園を築けなかった愚かな私を…
おそらく壁の王の自己否定の根源は、力を使えない自分を否定されたことにあるような気がします。壁の中の世界はあたかも、その自己否定の要素を全て排除した世界のようにも見えます。力が使えないのは、自身ではどうすることもできない血統が原因でした。そしてその血統が原因で戦乱が起こったわけです。だからこそ、血統によって相容れない者とお互いを認め合うこと、すなわち友人となることに夢を抱いていたのかもしれません(以下、特に注記のないものは17巻69話から引用)
-だが…滅ぼしあう他無かった我々を
-友人にしたものは一体何だ?
でも結局、巨人大戦もケニーとのことも、力によって成された側面が否定できないところに、ウーリの自嘲めいたセリフがあるのかもしれません。
-あぁ…避けがたい真実だ…
実際、たくさんのものを破壊し、失いました。そのことに自責の念を感じていたのでしょうか。ウーリは言っていました。
-この世界はそう遠くない未来 必ず滅ぶ
やがて報復が来ることを予期していたのでしょう。でも実は、知性巨人はマーレ派に喰わせるなどして壁内に持ち込めたと思うんです。そうすれば壁の世界はより長く維持できたでしょう。でもそれをせず、やがて脅威になるであろうモノを残していったのは、こういう感情かもしれません(25巻99話)
-誰かにー
-裁いてほしかったんじゃないかな
そして、力をつけた相手が自分たちを許してくれることに一縷の望みを持ち、それを待っていたのかもしれません。だからこそ「今死ぬわけにはいかない」ですし、それこそ「酔ってないとやってられなかった」のかもしれません。
まぁ、全ては仮説の上でのおはなしですが。
-補足という名の徒然考察たち-
①友人
1700年前の国の復興を現実味がないとしましたが、実はわずかに可能性がある人々がいると思います。それは滅びた国の王侯貴族です。もし古代マーレの王族の末裔が残っていれば、復興の発想が残っていてもおかしくはないかもしれません。もしかしたら壁の王は古代マーレ王家とエルディア王家の混血、なんて可能性もあるかもしれませんね。
それと直接繋がるわけではありませんが、ウーリが血の異なる者と友人になることを望んだように、純血エルディア人もマーレmixの人たちと本当は仲良くなりたかったのかなと思ったりします。それが現れてるのが、ユミルがヒストリアと結婚したがっていたことかなと。本当は互いに近づきたいにも関わらず、時代や環境、いやむしろ人間の性質として集団になってしまうとそれが叶わないものになってしまうのかもしれませんね(10巻40話)
-私と友達になりたかったの?
-は?違うね それは無い
②ルーツ
名前のことを少し取り上げましたが、これに関して意味深なことが一つあります。
サシャとその母リサ、さらにカヤの名前は日本の名前のようですよね。作中で日本を模しているのは当然ヒィズル国ですから、彼女らのルーツがヒィズルである可能性があります。カヤは家族ではありませんが、似たような場所を住処に選ぶのは、知らないうちに祖先の記憶がそうさせるのかもしれません。
そして以前も少し書きましたが、方言と言うのは基本的に古い言葉が残って変化したものですので、サシャの家系はエルディアの古い文化を残していると言えるかもしれません。つまり、ヒィズルはエルディアのかなり古い時期、それこそ建国あたりから関わっているのかもしれないなんて妄想もできるわけです。
実はエルディアとヒィズルの妙に深い繋がりと思われるものがもう一つあります(15巻60話、95巻101話)
辞世の句を求めるのって、日本の介錯文化っぽいですよね。タイバー家と王政幹部、どちらもエルディア帝国の伝統を引き継いでいておかしくない人々です。どうもヒィズルは同盟国以上の何かを感じさせますね。
③不戦の契り
不戦の契りはブラフだと思っていますが、壁を作ったのが145代なのが間違いないのであれば地鳴らしは発動できることになります。その場合は壁巨人はマーレ派の人たちの可能性が高いですから。
おそらく帝国時代に巨人化していたのは9つの巨人の管理家を除いて、無垢巨人は混血がほとんどだったんじゃないかと推測します。管理家が純血かどうかは分かりません。もしかしたらそれぞれ異なる人種との混血だったりするかもしれません。例えば戦鎚はマーレmixで145代はそこの流れを汲んでるとか、進撃は東洋人系とかあったりするかもしれません。王家はユミル・フリッツ直系の純血を守っていたでしょうから、ユミル・フリッツを祖先に持つ者、つまり全てのユミルの民を操れるのかなと。
だから多分、エレンとヒストリアだとレベリオ民は操れないけど、地鳴らしは起こせる感じになるかもしれません。
④ロッド・レイスという男
ロッド・レイスはおそらく、ケニーが言っていた通りの哀れな小物だと思います。まず本人も言っていた通り、父、弟、娘の誰一人として彼に真実を話した人はいないですよね。だから彼はいまだに巨人を駆逐することを夢見ていたわけです。なぜそれをしないのか分からないままで。
つまり彼は承認が得られなかったんです、父からも弟からも。まぁ家族の中で自分だけ何も知らされないってのは孤独ですよね。それは耐え難いことなので、ウーリの言った”祈る”ことが自分の役割だと思い込むようになったんだと思います。それが自分の存在価値だという感じですね。(あと女性にも逃げてますけど)
ちょっときつい言い方かもですが、家族はその”祈る者”という自己実現のための道具でしかなくなっていたんでしょうね(16巻63話)
グリシャが巨人化した時、我先にと逃げる姿が描かれています。妻や長男が小さい子たちを気にかけてるのと対照的ですよね。この全力ダッシュっぷりには、作者の悪意すら感じます笑
ヒストリアが注射を拒んだ際にも豹変していました(16巻66話)
残念ながら親子の愛情を語っていたのは形だけのようですね。全く無いとは申しませんが。ところで、メタ的にですが、こちらのセリフは多分ロッドのことを皮肉ってるんじゃないかと思ってしまいます(15巻60話)
-何にも教えてもらえなかったんだなボンクラ息子は
-なーんにも…
フレーゲルはちゃんと”人の見極め方”を教えてもらってますし。ロッドこそ壁の成り立ちを少し知っているだけで、後は民衆の知識と同レベルだったわけです。じゃないと継承用に(たぶん)超大型の巨人化薬なんて選びませんよね。”サイキョウノキョジン”って字面だけで判断しちゃったんでしょう。ケニーの言う通り、巨人に無知なんです。あれをヒストリアが摂取してたらレイス家は滅んでましたね、たぶん(16巻66話)
まぁでも、家族からの拒否感をこれだけ感じてて強い自己否定を持っていながら、王様とか呼ばれちゃうわけです。本人は自分が何もできない、何も知らないことを分かっているのに。かわいそうですよね。退行ってのは耐え難い現実からの逃避です。ヒストリアに拒否されたことがトドメになってしまったんでしょう。
そういえば退行がそのまんま巨人体に現れていました。手足で自重を支えきれないからハイハイって、幼児そのものです。やはり巨人化した時の意志とか想いが形になってるんですね。彼の巨人体がバカでかかったのは、”自分を大きく見せたかったから”かもしれませんね。
思うにロッド・レイスという人は、王家といえどただの人なんだよ、という役割なのかもしれません。
あ、そういえば、
「それを使いこなすには …まだ経験が足りなかったようだ」
どうですか、信憑性あります?
-補足おわり-
これは根拠の全くない妄想以外の何物でもありませんが・・
巨人大戦といえば、一人だけ動向が不明な方がいましたよね。その「自由のために戦う巨人」さん、奴隷だったマーレ派の解放に一役買ってそうな気がします。
あれ?トラブルメーカー?
長文・拙文に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
written: 26th Sep 2018
updated: none