037 物語の考察 記憶の蓋
みなさんこんにちは。
今回もやや地味に思える考察ですが、これが現在の状況の大きな要因の一つになっているかもしれません。壁の王によって行われた記憶の改竄、今となっては懐かしい初期の設定のようですが、やはり全ては壁の王から始まることなのかもしれない、そんな考察です。
この記事は最新話までのネタバレ、登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう、切にお願い申し上げます。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
[記憶の蓋]
この物語は、こんな言葉から始まっていました(1巻1話)
-その日 人類は思い出した
-ヤツらに支配されていた恐怖を…
-鳥籠の中に囚われていた屈辱を……
壁内は145代目フリッツ王の記憶改竄から100年余り、壁の外への興味、恐怖などなど、全てを忘れて平和ボケな暮らしを続けてきたことが描かれています。誰も教室で教えられたことに疑問を差し挟むこともなく、調査兵団のような壁の外に関心を抱く人々は異端、変人として扱われていたようです。
ユミルの民が「道」で繋がれた存在であるなら、最近の考察の通り、無意識には巨人への恐怖の記憶が働きかけているはずではないか、そう考えたのがこの考察の始まりでした。
・・とはいえ作中の人物たちは、そんな恐怖などまるで無いかのように平和ボケをしていましたーエレンとアルミンを除いては。というのが1話から読み取れることです。
しかし作中にはいくつかの気になる描写があります(5巻19話)
-5年前から急に支持を集めだした組織の…
-確か…宗教とか言ったっけ…?
ウォール教は壁が破られてから急速に支持を集めたとあります。つまりストヘス区で描かれていたようなウォールシーナの住民を中心に、救いを求めだしたということです。もちろん伝聞やらなんやらで恐怖が伝染していたことは想像に難くありませんが、ウォールシーナの住民から見れば、5年前の時点では対岸の火事という感覚もあったのではないかという推測もできます。でも、多くの人が恐怖から逃れるかのように”急に”宗教を求めだしたようです。
-大体…あなた方は…
-巨人を見たことも無いクセに何がそんなに怖いんですか?(5巻19話)
この時は既にトロスト区外門を一度破られていますので対岸の火事では無いでしょうが、エレンの言うことにも一理あるような気もします。
これらを踏まえて「その日」に、本当に恐怖の記憶を「思い出した」のかもしれない、と考えると繋がることがでてきます。
みなさんもご存知の通り、「その日」に起こったことは超大型の出現だけではありません。同じ日に、始祖の巨人が打倒されています。その日、始祖の巨人による記憶への影響が途絶えた、と考えることもできるのではないでしょうか。であれば文字通り、「人類は思い出した」ことになると思うのです。
壁の王は継続的に、人類の無意識の記憶領域に働きかけ、巨人や外界への関心を持たないようにしていたとしたら、そしてそれが「その日」から効果を失い、やがて人々が「道」からユミルの民全体の記憶を無意識化に取り戻したとすれば、超大型や鎧の呼称がマーレと共通していることなどにも説明が付けられそうです。
仮にそうだったからといって、たいしたことでは無さそうに見えます。でも、ある一つの可能性が生まれてきます。
グリシャ・イェーガーは元々の目的を忘れることなくレイス家に辿り着きました。つまり、記憶の干渉の影響を受けていないことになります。グリシャと壁内の人々の違いは、知性巨人であることと壁外の人間であることが挙げられます。ただ、エレンは知性巨人になる以前から巨人への関心を持つことができ、街の子ども達からつまはじきにされていました。ということは、血である可能性が高いのではないかと推測されます。
そう考えると、ある人々が同様に思い浮かんできます(14巻55話)
壁外への関心や疑問を持つことができ、中央憲兵に消されていった人々、もしかすると彼らは影響を受けない側の人間、すなわち壁外にルーツを持つ人々だったのではないでしょうか。
アルミンの両親は気球で壁外へ出ることを試みて消されました。エルヴィンの父親は疑問を口にして消されました。坑夫の話も同様ですが、王政は彼らが不都合な存在だったとしても、殺す以外の方法も取れたはずです。記憶を消してしまえば、調査や拷問、口止め、証拠隠滅、全ての手間が省けるわけです。でもそれをしなかった、それでいて人を使って徹底的に弾圧した、ということは記憶に干渉できなかった可能性は充分に考えられると思います。およそ調査兵団もそういった人々の炙り出しと、どうせ壁外で勝手に死ぬからということで認められていた可能性まで考えられます。
そしてなにより、壁の王が壁外の人間の記憶に干渉できなかった根拠になる可能性があります。このことはまた次の考察に続いていきます。
ところで・・(18巻73話)
-オレとお前は街の子供達と馴染めないはみ出しもん同士だった
-ただそれだけだったんだオレ達は
-あの時お前の話を聞いて
-お前の目を見るまでは
エレン同様、子供の頃から壁の外への関心を消されることの無かったアルミン、彼のルーツも壁外ではないかということになります。前述の両親はもとより、お爺ちゃんが壁外の本を隠し持っていたこともそれを裏付けるかのようです。
そんなアルミンはエレンと初めて出会った時、既に負けず嫌いな一面を描かれています(21巻83話)
-僕は逃げてない
これは記憶の干渉を受けないために異端とされる考え方をできてしまったことが、彼の性格形成に大きく関わった可能性を示唆しています。おそらく幼少期のアルミンは普通に会話をするだけでも、街の子ども達とは大きくズレてしまったのかもしれません。なぜそうなるかなんて本人は知る由もないでしょうから、自分の発言を普通に聞いてほしい、という欲求はやがて”聞いてもらえるように言わないといけない”と変化していくことは不自然ではないでしょう。おそらくこれが以前考察したアルミンの考え方の基礎を作っているように思います。
このことを物語全体に照らして言うならば、壁の王の記憶改竄を遠因としてエレンとアルミンは出会い、友人になったとも言え、さらに現在のすれ違いの大元の要因も記憶改竄にある、ということが言えてしまうかもしれません。
そして調査兵団も同様に、集まるべくして集まったのかもしれませんね。
謝辞
今これを読んでくださってる方の中にも、ツイッターから来られた方が多くいらっしゃると予想していますが、ツイッターで取り上げていただいたことで驚くほどのアクセスをいただきました。
賛否両論あるみなさんのご感想などを読むことができたのは私としては大収穫で、ツイッターの良いところでもあるなあと、拡散力も含めツイッターというメディアを甘く見ていた自分の情弱っぷりや、相変わらずの言葉足らずな自分の文章を改めて思い知ることができたのも大変有り難かったです。
最初にツイートしてくださった方にはただただ感謝の言葉しかありません。直接ツイッターでお礼を言うのも何か違う気がするので、この場でこっそりお礼を言わせていただきます。
本当にありがとうございました。
そして、RTをしてくださったみなさんも、本当にありがとうございました。
ツイッターを見て読みにきてくださったみなさん、以前から読んでくださっているみなさんも、本当にありがとうございます。
言うまでもないことなんですが、このブログなんて私個人の考察を書き記している程度のものですので、作者の意図を汲み取れているかどうかはわかりませんし、考察の受け止め方はみなさんそれぞれあると思います。諌山先生が何度も作中で訴えている(ように、私には見える)通り、何が正しいか悪いかなんて状況や立ち位置で変わるものだと思いますし、私もそのつもりで文章を書いています。この性格は良いところだ、悪いところだなんて言うつもりは無いし、私個人の予想としても、今後エレンが悪、アルミンが善と受け取られる状況になる可能性をかなり感じています。私の文章力の至らないところがあるとは思いますが、そこだけは誤解して欲しくないと思っています。
私はアルミンも含めて、進撃に登場するキャラクターはみんな好きです。それは通り一辺倒のステレオタイプではない人間臭さが、諌山先生によって吹き込まれているからだと自分では思っています。ただ正義のために戦う人、ただ悪いことばかりする人、ただ天才的に頭がいい人、そんな現実味のないキャラクターに興味は湧きませんし、もしそうだったら進撃にハマることは無かったと思います。
アルミンの凄いところはみなさんは私以上によく知っておられるでしょうし、他のサイトにもありふれています。もしも私の書いたものから、それ以外の、今まで知らなかったアルミンの一部をみなさんが一つでも見つけ出していただけたとしたら、そして進撃って凄いなって改めて思っていただけたなら、頑張って書いたことが報われる思いでおります。
そもそも私の展開予想はだいたい当たりませんが、また気が向いたら、時々でも覗きに来ていただけたらとても嬉しいです。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
written: 21st Aug 2018
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