進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

015 最新話からの考察 104話② パラディ島がこの先生きのこるには

みなさんこんにちは。

 

 

今回は最新話である104話からパラディ島の作戦を振り返り、今後を占っていきたいと思います。

 

この記事は最新話である104話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。

 

 

 

 


[パラディ島がこの先生きのこるには]

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以前、004 最新話からの考察 102話④ 調査兵団の目的 - 進撃の巨人を読み解く にて、作戦目的は真実の記憶をレベリオ民に取り返すことではないかと推測しました。実際には現場での座標の発動はせず、既に撤退戦に移行しています。

 

様々な伏線を見るに、帰還直後かは分かりませんがいずれ行われると今でも思っていますが、それでは兵団の今作戦の主旨は何だったのか、という疑問について、作戦全体から確認してみたいと思います。

 

確定していないジーク及びアニ父などの回収についてはいったん脇に置いておきます。また、撤退戦が無事完了したと想定しての話になっています。

 

 

 

 

 

104話にて、アルミンはこう言っています。

 

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 こうなってしまった以上は…もう
 皆と…エレンを回収できなければ

 僕らに未来はありません

 

アルミンとハンジは現場で起こってる細々としたことは知り得ませんから、光の道の存在により作戦が遂行されていることを確認するわけです。細かく言えば、アルミンはおそらく現場から伝わってくる音や光、振動をもとに軍港破壊を決行、さらに光の道の設置を確認してレベリオへの侵入を続ける、といった感じと推測できます。

 

そのアルミンが「こうなってしまった」というのは、ヴィリー・タイバーの宣戦布告に対応したエレンの開戦判断により作戦が決行されたことを意味しており、その結果として世界にパラディ島の脅威を喧伝することになる、という意味にとらえるのが自然だと思います。そして、それは作戦を行う上で予期されていたこと、ということでしょう。

 

その上で必要不可欠なこととして、みんなを連れて撤退を完了することだと言っているわけですから、ジャンやコニーの様子を見ても、既に現場での作戦段階は完了している、と考えて良いと思います。

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エレンやジャンの言動から、兵団がやり終えた目的を推測するならば・・

 

 -マーレの宣戦布告に対しての攻撃開始、ヴィリー・タイバーと戦鎚の無力化
 -マーレ軍中枢人物の殲滅、軍港破壊と海軍への打撃
 -抵抗する知性巨人の無力化

 

といった感じでしょうか。そして作戦の結果こうなることが分かっていた、ということを合わせて言えば、
 
 -パラディ島の脅威を世界へ喧伝すること

 

こちらも”目的”に入れてしまっても差し支えないかもしれません。

 


これらを俯瞰してみると、マーレに対して大打撃を与えていることは確かですが、これ自体は一時しのぎにしかならないことは明白だと思います。戦鎚を含めた知性巨人の捕食・奪取も最初から狙っておらず、あくまで一時的な無力化を目的としていたことも明らかに読み取れます。

 

知性巨人は数日もあれば回復するでしょうし、軍の指揮系統を破壊しても、早急に建て直しをされることは間違いありません。ピークが解説していた、パラディ側の数的不利と体力不足は依然として変わることはないのです。ということは、何らかの次なる作戦があり、それにはエレンや兵団員の無事帰還が必要条件である、ということになります。

 

 

では、仮にエレンや兵団員が帰還できなかったとしたら、どうなるんでしょうか。

 

 

まず、マーレ軍に大打撃を与えた事実は変わりません。しかしながら、その打撃を与えた”地ならしの脅威”である始祖のエレンと、”空を飛ぶ悪魔”である兵団員たちを失ったならば、戦力の低下と見なされるでしょう。第三者的に見てパラディも大打撃をこうむり、”地ならしの脅威”という切り札を失ったならば、良くて痛み分け、もしくはパラディの負けと見なされてもおかしくはありません。

 

すなわち第三者から見て”勝者”であることが必要なのではないかと考えられます。

 

 

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(15巻59話)


作中でも語られている通り、事実とは勝者に左右されるものです。これは現実世界でも変わらないこの世の中の残酷な真理です。タイバー家、あるいはマーレが喧伝していることが正しい歴史として世界中に信じられていたのは、彼らが巨人大戦の勝者だったからに他なりません。


この、勝者の歴史ということを踏まえて考えると、一連の作戦結果は、非常に強いアドバンテージになり得ます。

 

 

パラディ島は歴史を書き直す権利を得た、ということです。

 


おそらく帰還後まもなく、全世界に向けて声明を発表するのではないでしょうか。それをヒストリア女王がやるのかは定かではありませんが、事の経緯とパラディの大義を表明し、世界に問うこととなるでしょう。各国の収容所にいるエルディア人の解放も求めるかもしれません。

 

その後ろ盾となるのが、超大国マーレに大打撃を与えた事実であり、軍事的な脅威でもあります。だからこそ彼らは、皆やエレンを無事に回収しなくてはならないと考えられます。

 

そして、存在することは確からしい協力国がさらに後ろ盾となったり、パラディの声明に賛同する姿勢を見せれば、他にも賛同する国が出てくる可能性は大いにあります。どこの国も自国を守ることが根本にありますから、今まで誰も勝てなかったマーレを凌駕する国があれば、そちら側につくか、我関せずで傍観を決め込むわけです。

 

 

 

それは世界の国々を脅す行為であるとも捉えられますし、その通りでもあるのですが、大義名分に関してはパラディは嘘をつく必要がありません。

 

それはマーレには皮肉なことではありますが、ヴィリー・タイバーの演説による後押しがあるからです。

 

ヴィリーは世界に向けて、はっきりとこう表明しました。

 

マーレは、今までは世界の脅威を排除するためにパラディ島を攻撃していると言っていました。しかし、真実は少し異なり、パラディ島は脅威では無かったどころか、その王により世界の平和が保たれていました。現在のパラディ島はその王位を簒奪したため、脅威となりました。ので、世界一丸となってこの脅威を排除しましょう。

 

この演説には大きなツッコミどころがあるのはご存知の通りです。

 

 

今までマーレがパラディを脅威だとして攻めてたのは何だったのか?

 

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(25巻99話)


そのことは私たち読者のみならず、作中でも疑問に思われています。ただし、ヴィリーはそれを間髪入れない泣き落とし演出にてうやむやにしてしまいます。そのままマーレが”勝者”になっていれば、当然それが事実であり、正しい歴史となっていたことでしょう。しかし、パラディ島が”勝者”となった今、それを覆すことが可能です。

 

パラディ島は巨人大戦後の100年間、他国を攻撃したこともなければ、その準備をしたことさえありません。そもそも外の世界の存在すら知りませんでした。それを攻撃してきたのはマーレであり、王が打倒され現在の体制に変わったのもマーレの攻撃が原因です。そしてその事実を隠して世界を巻き込んだマーレの宣戦布告に応じただけです。

 

 

話が完全に通っている上に、”勝者”となっていることで脅しも効きます。

 

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まさにこんな感じです。マーレが敗北した今、それでも戦いたいと思う国は、そうそう無いでしょう。

 

 


おそらくこのことに向けて、マーレの仕掛けた罠(?)にあえて乗っかって奇襲作戦を仕掛けた、というのがパラディ側の目的の最たるものではないでしょうか。これは賭けでしたが、”勝者”となった以上かつての兵団の大義と同様に、今度は世界の国々に真実の記憶を取り返すことにもなるのです。

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(22巻90話)

 

 

 

 


この考察をしていて改めて思いました。いろいろ問題はあったとはいえ、壁の王が壁内に作り上げた理想郷は、確かに平和を実現していたと言えるかもしれないなあと・・

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(23巻94話)

 

 


本日もご覧いただき、ありがとうございました。

 

 

written: 11th Apr 2018
updated: none