進撃の巨人を読み解く

進撃の巨人はSFを下敷きにしたヒューマンドラマだ・・と思う

005 最新話からの考察 102話⑤ 巨人大戦の真相とは

みなさんこんにちは。

 

9/27 追記:巨人大戦に関しまして、新たに記事を書きました。この記事を否定するものではありませんが、そちらをご覧いただくことをお勧めします。

shintoki.hatenablog.com

 

進撃の巨人の最新話からの考察をしております。
今回は、進撃世界の歴史の真実を探りたいと思います。
巨人大戦です。エレンたちが置かれた壁の中の歴史もここから始まっています。

 

 


今回は妄想とツッコミが多くを占めます。というのも情報があまりに少ないため、仮定に仮定を重ねざるを得ないのです。
しかしながら、もしこの推論が当たっていたなら物語全体のかなり重大なネタバレとなるかもしれません。
以上をご承知の上でお読みいただけたら幸いです。

 

この記事は最新話である102話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。

※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。

 

 

 

[巨人大戦]

f:id:shingeki4946:20180303001304p:plain


まずは手掛かりを探るため、作中で語られる歴史をみてみます。
全文引用しようかと思いましたが、長すぎたので要点のみにしました。詳しくはコミックス各巻や別マガ1月号をご参照ください。

 

【ヴィリー・タイバーが演説で語った歴史】
25巻99話・100話

前半
英雄ヘーロスが巧みな情報操作で巨人を持つ家を倒していった
タイバー家と手を組み、始祖の巨人であるフリッツ王も島に退かせた
しかしフリッツ王は地ならしの脅威を未だ持っている
マーレは脅威の排除のため巨人や軍艦を送り込んだが返り討ちにあっている

後半
実は巨人大戦で世界を救ったのは145代フリッツ王
始祖の巨人を継承すると同時にタイバー家と結託
虐げられ続けたマーレの解放のためヘーロスを英雄として活躍させる
平和を願って不戦の契りを作り、島に引きこもった
マーレがエルディア人の殲滅を願うのであればそれを受け入れるが、報復を受けるまでは束の間の楽園を享受したいと言い残す
近年、反乱がありエレン・イェーガーによって始祖が奪われた

タイバー家は保身のためエルディアを売ったが、私ヴィリーは世界の平和のために恥をしのんで公表する
エレン・イェーガーが地ならしをする可能性があり、地ならしには最新技術でも対応できない
私は不本意にもエルディア人に生まれてしまったが、どうか共に戦って、共に生きてはもらえないか


…ヴィリーの演説の前半は、今までマーレが公表してきた歴史です。すなわち世界各国はこれを正史としているはずです。
タイバー家とヘーロス(マーレ)を英雄視させながら、パラディ島に他国を寄せ付けない意図があったのでしょうか。

後半では、マーレとタイバーをいったん落とし、145代を持ち上げています。
壁の王とエルディア人への印象を良くしながら、諸悪を現在のパラディ政府とエレンに押し付ける感じでしょうか。
マーレのパラディ攻略の正当化も謀っているようです。
これまでのは何だったんだという疑問を差し挟む余地を与えずに、同情を誘う話から協力を要請しています。
さらに実際に襲撃を受けることによってマーレとそのエルディア人、タイバー家への憐憫の情を抱かせ、演説の信憑性を上げる狙いでしょうか。


【爺イェーガー(グリシャの父)の語る歴史】
21巻86話 
…こちらはマーレがレベリオのエルディア人支配のためにおしつけている自虐史観満載の歴史で、ヴィリーの前半と差異がみられないので割愛します。

【クルーガーの語る歴史】
21巻86話
マーレがパラディ島を取りにいったのは資源を狙ってのことである
地ならしの脅威を除くため、始祖を手に入れたい

22巻89話
大陸に留まった王家の残党は革命軍となったが、マーレにより鎮圧された
145代が言い残した言葉
「エルディアが再び世界を焼くというのなら我々は滅ぶべくして滅ぶ」
「我は始祖の巨人と不戦の契りを交わした」

【ダイナ・フリッツの語る歴史】
21巻86話
始祖の巨人は他の巨人すべてを支配し操ることができる
巨人大戦は145代目が始祖を継承したことが始まり
王家が始祖を持っていることによりエルディアは均衡を保っていたが、145代目はそれを放棄
壁内移住の際、ダイナの家とは折り合わずに決別した

…王家の末裔であることを考えれば、最も信頼がおけるのではないでしょうか。
グリシャがグライス君のようにもっと質問してくれてたら良かったのですが笑
ただし、「私の家」とは決別した、と言ってますので、ダイナの家は王家とはいえ本流ではなかった、つまり、傍流あるいは分家の視点で語られていることは留意しておかないといけませんね。


それではこれらを基に考察していきましょう。

145代が壁内への移住を完了させたのは743年(845年の102年前)で間違いなさそうです。
では巨人大戦の始まりはいつかというと・・・
842年(850年の8年前)にフリーダ・レイスが始祖を継承しています(16巻64話)。
さかのぼること13年前、829年にウーリ・レイスが始祖を継承したと考えられます。
壁内はレイス家にとって安全な状態だったと思いますので、きっちり13年おきに始祖を継承していたと仮定すると、継承年は、816年-803年-790年-777年-764年-751年-738年となり、145代目は738年に継承した可能性が高いと推察できます。
ダイナ・フリッツによれば「巨人大戦は145代目の王が始祖の巨人を継承したことが始まり(21巻86話)」ですので、738年に巨人大戦が始まった、と考えて良さそうです。
5年間に戦乱と、壁を作って民を移住させるまでがあった、ということになりますね。


それぞれの語る歴史を比較していくと、いくつか食い違う点が出てきます。

まず、145代が最後に言い残した言葉です。 
ヴィリー「もしマーレがエルディア人の殲滅を願うのであればそれを受け入れる」
クルーガー「エルディアが再び世界を焼くというなら我々は滅ぶべくして滅ぶ」

…どちらが正確なのかは分かりません。どちらも滅びを受け入れる、という点は同じです。
ヴィリーの方はマーレへの贖罪というニュアンスが強く、マーレに都合の良い感じですね。
クルーガーの方はといえば・・
マーレには全く言及しておらず、しかもエルディアを相手どって言っているようです。
つまり、自分はすでにエルディアではない、という認識だったのでしょうか。


次に、巨人大戦の始まった要因についてです。
ダイナは145代の継承が原因と言ってます。
ヴィリーは特に言及しておりませんが、巨人の家々の内輪もめがそのまま発展した感じに受け取れます。

…集団である以上、派閥やら権力争いが常にあったことは間違いないでしょう。
ただ、千年以上も内輪もめをしてきた連中が、全面戦争に踏み切って自らの国すら亡ぼすというところまでいくには何かが必要ではないでしょうか。
ダイナの言い方だと145代が始祖の力を使わなかったから戦争に発展した、のではなく、継承したこと自体が原因のように聞こえます。
王位継承でもめたとか、あるいは王としてふさわしくない人物だった、ということでしょうか?
ものすごく引っ掛かりを覚える部分です。


では平和を愛すると言われている145代はどんな人物だったのでしょうか。
巨人の力と不戦の契りにより、その思想を受け継いでいるはずの二人の子孫から類推してみます。

確かにフリーダもウーリも一見おだやかで優しい人物に見えますね。
近しい人だけに見せた負の一面、「私達は罪深い(フリーダ)」「壁の中にさえ楽園を築けなかった(ウーリ)」
という言葉も贖罪意識や無力感、平和への渇望ともとれるでしょうか。

しかしながら、外の世界や壁の秘密が絡むと、容赦なく人を殺しまくっていることは周知の通りですね。
それも自分たちの一族と言っても良いはずの壁の民に対して、です。
エルディア人はマーレを虐げてきたから罪深い、というならば、一番罪が深いのは指導者である王でしょう。それが仮に民主導だったとしてもです。
どうも壁の王の罪の意識には、ズレを感じて仕方がありません。

グリシャが助けを求めて来た際には、それを聞き入れず、諭すでもなく、激昂させる一言を放った後に、巨人化して応戦しました。
マーレ人じゃないから滅びを受け入れないということなのか、はたまたエルディア人はやはり罪深いから滅びろということなのでしょうか。

145代に関して言えば、多くの国民を大陸に残していきました。
ヴィリーは「できる限りの国民」と表現していましたが、壁内にはまだいくらでも民を住まわせる土地があるように見えます。
むしろ人を増やして開拓し、生産者を増やせば食糧不足も解消できたんじゃないかとさえ思います。
残留した民衆がどうなるかなんて普通に分かりそうなものですが・・

さらに言葉尻をつつくようなのですが、
ヴィリーの演説前半でヘーロスの巧みな情報操作で巨人たちを同士討ちさせて討伐した、これはわかります。
後半では主役を145代にすり替えるわけですが、やっぱり同士討ちさせた、と言っているんです。
これがわからないです。さっさと始祖の力で操れば戦争もすぐに終わって良かったのではないか、現に今までの王はそうしてきたはずです。どちらが平和志向なのでしょうか。
もっと言えば、王家とタイバー家側に組した巨人の家もあって然るべきと思うのですが、彼らは少なくとも6つの巨人家を叩き潰し、マーレのものとしています。(進撃は経緯が分かりませんが)
エルディア帝国時代に罪の意識を感じるならば、巨人たちも壁の中に連れていくべきだと思ってしまいます。
それともこれはマーレへの配慮なのか、あるいは巨人家を潰したかっただけなのでしょうか。

 


そういえばグリシャと戦いになった時も、操れば良かっただけですよね。
ロッドはフリーダの経験がとか言ってましたが、それは格闘戦に対するものであって、フリーダはすでにヒストリアの記憶をこともなげに操っていました。
また、ウーリがケニーを巨人でつかんだシーンでも分かりますが、記憶への干渉は一瞬でできるように見えます。
ウーリは瞬時にケニーの記憶を探り、探れない為ロッドに撃つなと指示しています。

 

 

ここでふと気付いたのですが、こちらのシーンをご覧ください。(22巻90話)

f:id:shingeki4946:20180303001349p:plain

これ、3コマ目あたりで操る、あるいは記憶を読もうとしているように見えませんか?
そして、操れなかったこと、もしくは記憶を読んだこと、によってグリシャが何者なのかを理解し敵意を向けた、次に来るのはグリシャを激昂させる一言のはずです。
一応可能性として併記しましたが、記憶を読んだ後に戦うのであれば当然操ってしまえば勝てたはずです。
でもそれをしなかったということは、操ろうとしたが操れなかった、ということになるのではないでしょうか。

壁の王にもし操れるエルディア人とそうでない者がいるとしたなら・・・
そういえば似たような設定がありますね。ジークは自分の脊髄液を投与したエルディア人のみ操れます。

 

ということは、巨人大戦で巨人たちを操らなかったのは、操れなかったということなんでしょうか。


今までの王がすべての巨人を操ることで治めてきたとするなら、巨人を操れない者が始祖を継承したなら、確かにふさわしくないと言えます。
それを他の巨人家が知ったら黙っていないでしょうが、145代の始祖にはそれを止めることができません。
145代の継承が原因で戦争が起こった、ということと合致しそうです。

では、145代が正当な王になるにはどうすれば良いのでしょう。
今までの王の正当性を消し去ってしまえばどうでしょうか。
歴史を改竄し、当時の記憶を持つものを消してしまえば誰もその正当性に異議を唱えられなくなります。
それにはまず、記憶を継承する存在である巨人の家々の継承を断つ必要があります。当然、自分たち以外の王家も滅ぼさなくてはなりません。
レイス家とタイバー家が影武者のような形式をとっているのも、命を狙われる危険性を感じていたからかもしれません。

また、おそらく壁内に連れていったエルディア人の民衆は、145代が操り得た人々なんでしょう。
そういう意味では「できる限りの国民」を連れていった、ということになるのかもしれませんね。

王政編にて、ヒストリアが尋ねました。
レイス家はどうして巨人を排除して人類を解放しなかったのか、と。
壁内の民は操れても、大陸からやってきた無垢巨人たちは操れなかったから、としたら合点がいきます。


実は後付けでささやかな根拠になりそうなものを見つけまして・・
アニメの方なのでアレなんですが、35話(2期10回)、ユミルが幼少時に祭り上げられるシーンにて、ユミルを拾った男はこう言っています。
「このユミル様こそ、真に王の血を継ぐ存在」と

 

次回以降は操れる、操れない民がいる理由や壁内に移住した理由など、考察していきたいと思います。

 

本日もご覧いただき、ありがとうございました。

written: 2nd Mar 2018
updated: 27th Sep 2018