019 最新話からの考察 104話③ ヒトを感知するモノ
みなさんこんにちは。
ここ数話のマーレとの戦闘で、その精神的な成長を描かれているエレンですが、巨人の力のコントロールにもかなりの飛躍が見られるように思います。そこに気になる点があり、今回の考察に至りました。とはいえ、現状ではたいした事柄でもないのですが・・
また、正直なところ私も半信半疑なので、そのつもりでお読みいただき、一緒に考えていただけたらと思っております。
4/28 タイトルをちょっち変えました
最新話のネタバレを含んでおります。別マガ5月号、104話をお読みになってからご覧ください。
[ヒトを感知するモノ]
海に出てから3年間という空白の間に、作中でいう”巨人の練度”が向上しているのは誰もが感じていることと思います。今回それを見せつけたのが、戦鎚との戦いで手札を残した、つまり巨人化の回数を重ねられるよう力をセーブした、ということでしょう。このことは、エレンの巨人には修復する様子がほとんど見られなかったことからも分かります。蒸気がまともに上がったのは、うなじから抜ける際の3回だけに見えます。修復をしないことによって力をセーブしていたと推測できます。
それと同時に、本人が加齢とともに成長して、またその自信からか、とても落ち着いた精神状態になっているのは分かります。特にミカサへの信頼などはそれが出ていると思います。
以前のエレンなら、ミカサと戦鎚を戦わせながら落ち着いて攻略法を考えることなどできなかったでしょう。それは兵団の他の皆に対しても同様で、エレンは今回、おそらく彼の作戦上の役割である”戦鎚の無力化”以外のことはしていません。同様に兵団員たちも、彼らそれぞれの役割以外のことに手を出そうとしていませんね。以前の調査兵団と比べても、より統率が取れているように感じますし、お互いの揺るぎない信頼関係のようなものも感じられます。フロックがやや暴走してはいましたが笑
話を戻しまして、エレンの巨人での戦いにフォーカスしてみると、硬質化パンチくらいしか繰り出しておらず、前述の”力のセーブ”以外はたいした変化を感じられません。まあ特別なことをやっていないこと自体が、”力のセーブ”の一部なのかもしれませんが。
ただ、巨人化状態には限らないのですが、もしかしたら新たな能力なんじゃないか、と思わせるシーンが、チラホラ見られるのです。
今回は先に私の推論から書きます。
それは、他者の意思を読むというか、感じることができるのではないか、ということです。
どういうことか、説明していきます。
まず最初に違和感を持ったのは、このページです(25巻102話)
ご存知の通り、獣の巨人がやや遅れて現場に到着した際の、各人の表情が描かれたシーンです。その流れは以下の通りです。
-ジークも到着したことを喜ぶかのようなポルコ
-思うところがあるかのようなピークの真顔
-同じく思うところあり気なマガトと兵士たち、ほっとした表情を見せる者も
(中略)
-ちょっとまずいとでも言うような表情のエレン
このエレンの表情は、普通に受け取れば、獣が来たことをまずいと思っている表情に見えます。あるいは、ジークが内通している前提でも、まだ戦鎚を無力化できていないうちに獣が到着してしまったことで、予定が狂っている現状をまずく思っている表情に見えます。
もちろん、ただそれだけでも問題は無いのですが、どうしても深読みしたくなってしまうのが(中略)の部分です。ジーク登場と各人の反応という流れの中に、突如差し込まれたガビの現状、これがエレンのコマと順番が逆だったら、全く問題ないんです。でも、”なぜか”このシーンが先に挿入されていることで、エレンはあたかもガビのセリフに反応しているようにも見えてしまいます。
いかがでしょうか?ガビがここに挟まっていることに違和感を覚えませんか?
もしもこの時、離れた場所にいるガビの強い殺意を感じ取っていたのだとしたら・・
ここで、いくつか同様の解釈ができそうなケースを見ていきましょう。
・ケース2(25巻100話)
-その通りだ
ファルコは心の中で、始祖を取り押さえるチャンスだと考えていたところ、エレンの「その通りだ」という一言で驚愕の表情を見せます。ファルコは心を読まれたのかと思って、驚いたわけですね。ただし、その後のエレンのセリフも含めて、「その通りだ」はヴィリー・タイバーの演説の言葉に自然に繋がっており、また、その後のエレンの話がファルコにとっては強烈な内容だったため、当初の疑惑は忘れ去られています。果たしてこれは、ファルコの勘違いだったのでしょうか。
・ケース3(25巻101話)
-今だ ミカサ
これは未だに謎に包まれたセリフです。通常の解釈としては、エレンからはミカサが見えていた、または、作戦で最初からこのタイミングを決めていた、といった感じでしょうか。どちらもやや強引な感じが否めません。エレンからミカサまではだいぶ距離がありますし、仮に立体起動の軌跡が見えたならマガトたちも気付いておかしくないようにも思えます。タイミングを事前に決めておけるような動き方もしてないように見えます。つまり、ミカサが機を窺っていることを察知したのではないでしょうか。
・ケース4(25巻102話)
水晶化したヴィリー妹を食べようとしていたエレンは、顎が背後から飛びかかってくる瞬間、あるいは一瞬前にそれを察知しているようです。漫画の表現で言えば、時系列はエレンが一番早いはずです。マガトの反応と比べると、顎が飛び掛かる前後に対照的になっているように見えます。同時、という表現にも見えますが、顎は背後から飛び掛かっているので、少なくともエレンからは見えないはずですよね。それに対処をしていないのは、顎が速すぎたのか、リヴァイへの信頼でしょうか。
・ケース5(26巻103話)
「エレンは敵じゃないんだよ」と言うジークに、あたかも「戦鎚はちゃんと無力化したよ」と見せているようにも見えます。まあこれは声が聞こえているってことなのかもしれませんが、その真意をちゃんと受け止めている、とも解釈できるように感じます。その後はご存知の通り、”準備は整った”と言わんばかりにジークがリヴァイに倒されるわけです。この解釈をすると、一連のシーンはエレン、ジーク、リヴァイの3者が以心伝心で会話をしているようにさえ見えてきます。
どれも根拠としては弱いものばかりなんですが、特に3番目のミカサのケースなどは、エレンが何かを察知していると考えると、自然なシーンになるように思います。
意志とか記憶が絡むとなると、やはり道が絡んでいるのではと推測できます。となると、エレンが行っているだけに始祖の力なのかと考えたのですが、実は他にも怪しいシーンが出てきました。
まずはジークです(25巻100話)
ヴィリー・タイバーの演説「エルディア人の根絶を願っていました」に反応するかのように抜かれている1コマです。ヴィリーの語っている心情はおそらく本心ですので、その強い想いを感じ取ったのでしょうか。これは考えすぎで、戻るタイミングをただ窺っているだけかもしれませんが。
次にピークです(26巻104話)
雷槍による攻撃で息も絶え絶えだったはずのピークですが、ジャンがとどめの雷槍を放つ瞬間、それに応じたかのように車力の目が見開かれ、ピークの排出で蒸気を上げました。これはファルコを守る行動(同時に自分も守っている)であることはおそらく間違いありません。次の攻撃に”本体”が無防備になるリスクはありますが、体を動かせる状態ではなかったため、ベストの方法だったとは思います。しかしこれは、車力の視界からはジャンは死角になるでしょうから、見て行っているわけではないはずです。つまりジャンの意図を感じて対応したと考えられるのではないでしょうか。
そしてその後、ガビとファルコがライナーに助けを求める声を聞くかのように、目を開きます(26巻104話)
同様に解釈すれば、瀕死のピークは彼らの強い想いを感じ取って、意識を戻したのかもしれません。もしかするとピークも心の声でライナーを呼んでいたのかもしれませんね。
エレンに限らずできるとするなら、これは知性巨人の能力なのかもしれません。記憶の例から、知性巨人化が道との繋がりを強めることは確からしいので、彼ら継承者は道を通じて他のユミルの民の強い想いのようなものを感じ取ることができるのかもしれませんね。そしてガビは純粋なだけにその想いがとても強い・・とか。ガビの殺意を感じての、エレンのまずいという表情には、思い当たることがあります。別にガビ自体は子供ですし、脅威ではないのですが、おそらくまずいのです。このへんはまた別の考察で書いてみたいと思います。
もしかしたらエレンがファルコに「その候補生は女の子か?」と聞いたこともこれで説明できるかもしれません。そして、104話でエレンがライナーを待っていたかのように見えることや、ポルコを守るために巨人化したライナーを「今は殺せやしないだろう」とあっさり引いたことも、ライナーの意思を感じてのことかもしれません。
最後に補足しておくと、ミカサのケースはやっぱり謎が残ります。アッカーマンは記憶改竄ができないのだから、道と繋がっていないのではないか、ということです。確かにそうかもしれませんし、そうではないかもしれません。「巨人化学の副産物」と呼ばれ、常人ならざる能力を持っている以上、何らかの巨人要素が絡んでいることは間違いないわけです。現状では答えの出ない問題ですが、もしこの考察が正しかったならば、道やアッカーマンの仕組みのヒントの一つになるかもしれません。
自分で読み返してみても、やっぱり根拠が薄いと言わざるを得ませんが、104話の最後に、最初のケース同様の強い殺意をガビが飛ばしていると思いますので、次回で何か反応があるのか、楽しみに待ちたいと思います。無かったら・・この考察は無意味かもしれませんね笑
-あとがき-
書き終えてタイトルを考えてて、”意思の感知”とかかなー、ってやってて思いつきました。これって、無垢巨人の特性に絡んでるかも?
無垢巨人は人と知性巨人を感知して喰らいます。動物や他の無垢巨人には反応しません。人や知性巨人と無垢巨人を分けるものは、意思のあるなし、と言えるかもしれませんね。
本日もご覧いただき、ありがとうございました。
written: 27th Apr 2018
updated: 28th Apr 2018
018 物語の考察 タイバーの務め[後編]
みなさんこんにちは。
9/27 追記:タイバー家に関しまして、現在は少し見方が変わっております。こちらの記事を全て否定するわけではありませんが、ご参考程度でお読みいただけると助かります。
今回も前回に続きましてタイバー家(主にヴィリー)の考察です。先に タイバーの務め[前編] をご覧いただいた上でお読みください。
この記事は最新話である104話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
[タイバーの務め]
・続 ヴィリーの人物像
前半では、ヴィリーが家系への絶望から、世捨て人となり何もしてこなかったらしいことが分かってきました。同時にその人間味あふれるネタキャラっぷりも理解できました。
その後はご存知の通り、ヴィリー(以下、お兄ちゃん)は覚醒して命を賭した行動に出るわけです。それを妹は涙を流しながら讃えました。”お兄ちゃん、頑張ったね”と・・
では、お兄ちゃんは何を成し遂げたんでしょうか?
今回、なぜ動かざるを得なくなったのかといえば、タイバー家にとって起こってはならない事が起きたからでしょう。巨人大戦以来の彼らの基盤である現体制の維持に支障が出た、つまり壁の王が打倒され、始祖が奪われたことに他ならないと思います。しかも、その相手がマーレにも攻撃をしかける兆しがあるのです。当然、相手の最大の標的は、巨人大戦の片棒を担いだタイバー家である可能性もあります。そもそもマーレが傾けば今までの暮らしは維持できません。
これまで実家への不満をブツブツ言いながら、ぬくぬくと暮らしてきたボンであるお兄ちゃんは、その生活を失う可能性に気付かされたのでしょう。まがりなりにも超大国の影のトップですから、その部下たちはきちんと仕事しているはずです。今までは聞き流していた報告にちゃんと向き合ってみたら、既にかなりまずい状況に陥っていました。そこで、分析を基にマガトに白羽の矢をたて、コンタクトするわけです(24巻97話)
お兄ちゃん、しょっぱなから痛いところを突かれてしまいます笑。ネタキャラに真面目人間マガトの相手は分が悪いです。まさに今まで何もしてこなかったツケです。しかし、お兄ちゃんはやればできる子なので、ピンチを脱するための凄い作戦を思いついたんです。かつて親からもらったコネを使って、全世界を味方にすることです。こうして世紀の大バクチ打ちに変貌していくわけです。
・作戦に至る過程
ヴィリーの立場になって考えると、彼らの作戦動機は意外とシンプルに見えます。
まず、パラディ島で王家が打倒され、始祖が奪われたことを知ります。そしてヤツらは、次はマーレだと言わんばかりに密偵を送り込んできていることも発覚します。
今まで世界に対しては、”悪の権化であるエルディア王を倒した”と嘘を言うことで、英雄扱いされてきました。そして大戦後も、”世界の脅威に立ち向かう英雄”を演じることで、その地位を守ってきたわけです。
ところが、実際に”世界の脅威”を排除したヤツらが現れてしまいました。ヤツらはマーレを調査しており、そのバックには他国の存在を匂わせています。もしもヤツらが真相にたどりつき、それを全世界に公表したら、ヤツらは全世界の英雄になるかもしれません。逆にタイバーとマーレは大戦での悪だくみとその後の嘘がばれ、全世界を敵にまわすことになりかねません。なにせ”世界の脅威”と結託していたわけですから。
であれば、ヤツらより先に、壁の王が”世界の脅威”ではなかったことを全世界に公表する必要があります。もちろん、ただ嘘でした、なんて言ったら自分たちの信用を傷つけるだけですから、うまいやり方を考えないといけません。
ヤツらが壁の王を打倒したことが英雄的行為になり得るならば、その正当性を覆してしまえば良いかもしれません。つまりヤツらを不当に王位を奪った”簒奪者”とすれば、悪に仕立てあげることができます。ただ、その為には壁の王が正当だったと公表する必要があり、タイバーとマーレの名誉を返上せざるを得ません。今まで言ってきたこととの整合性も取れません。でも、それで世界を味方につけてしまえば、その簒奪者を自分たちが打倒することで英雄に返り咲けます。それが「再びヘーロスが必要なのだ」と言った意味なのでしょう。ヘーロスとは、世界のために悪を討ち滅ぼす象徴です。勝ちさえすれば、今までの嘘なども含めて、何とでもストーリーは作れます。現に大戦後の世界は、嘘を信じ続けてきたわけですから。
これはリスクの大きい賭けです。どちらが世界を動かせるか、というチキンレースのようなものです。事実の公表はやはり勇気が必要だったんでしょう。ヴィリーの”ため”るような間からも、その事が見て取れます(25巻99話)
危険な賭けではありますが、演説と”予期せぬ”襲撃によって世界を味方につけ、パラディ島の現体制を簒奪者に仕立て上げることができれば、全てが一変する可能性があります。島の悪魔によって命を奪われたヴィリーやマーレ、エルディア人への同情も集まり、同時にその悪魔を討ち取った英雄として、称賛を浴びることになるでしょう。今までの嘘も、正当な王を守るためだったとか、勇気をもってそれを公表したと美談にされるかもしれません。関係悪化していた国々との関係改善の可能性も生まれ、上手くいけば世界公認のもとでパラディを管轄、あるいは自分たちの手の者を王に仕立て上げることができたかもしれません。
まあ結局、勝負に負けてしまったわけですが・・
・タイバー家と145代の考察
まとめるならば、タイバー家、そしてヴィリーは、今まで何もしてきませんでした。ポルコが思想調査の際に指摘していたことは正しかったのです。でも、ヴィリーはその人生の最後に命を投げうった賭けにでました。そしてそれは、彼がずっと目を背けてきた自分の家、タイバー家の存続のためであり、マーレの存続のためでもあります。さらに言えば、壁の王の正当性を示して、その王が作った体制を守ることにも寄与しています。
おそらくヴィリーの行動の発端は保身によるものだと推測しますが、最終的にタイバー家が成すべき、大戦後の体制維持と、壁の王家の仇敵の打倒に奮力しているのです。これこそが彼が紆余曲折の末に果たした”タイバーの務め”なんじゃないかと思います。
そりゃ妹も泣いて喜びますわ。
一つ、謎が残ります。
巨人大戦の折、なぜタイバー家だけが145代のパートナーに選ばれたのか。
これ、私が妄想として述べていることに繋がってしまいそうです。
145代は巨人大戦において、その行動が示す通り、尋常ではないほどマーレを優遇しています。自らを貶める対象にしてまで、マーレの復権を図っているわけです。彼らの言葉を信じるならば、エルディア帝国に征服された国は他にもいくらでもあるはずなのに、です。
普通に考えても、145代はマーレ人なんじゃないでしょうか?
ただし、145代も壁の王たちも巨人化できますから、ユミル・フリッツの血が入っていることになります。つまり、混血ということです。
145代にマーレの血が入っているとすれば、エルディア帝国とその民衆への恨みつらみが容易に理解できます。そして、帝国を憎み、各巨人家をつぶしていった145代が、なぜタイバー家だけ味方にしたのか。もう言うまでもないと思いますが、タイバー家もマーレの血が入ってそうですよね。というか、タイバー家と145代は親族であるかもしれません。
以前長々と書いた記事よりも自然な説明になってますね・・
-補足-
誤解のないように説明しておきますと、タイバー家がエルディア王家の血を引いている、ということではありません。あくまで、145代と同じ血族ではないかということです。むしろ逆に、145代も王家の血を引いてない可能性も生まれてくるかもしれません。そしてそのことは、前半で述べた通り、巨人大戦において彼らがしたことが革命と言ってよいものであることも、その理由になりそうです。
心理学で”投影”という言葉があります。ネットで一時期流行ったブーメランというのもその一種だと思いますが、人間は相手の心情や行動を予想する時に、自分の知識や経験をもとに想像するわけです。自分に”人を騙す”という概念が無い人は、相手が騙してくるとは思わないので、騙されやすかったりします。ライナーが「クリスタが俺に気がある」と感じたのは、本人が気があるから、というのも分かりやすい一例でしょうか。何が言いたいかというと、”簒奪者”という言葉を使う彼らは、その概念がある、つまり彼らが”簒奪者”である可能性も高い、ということです。
それを裏付けるかのように、壁の王たちは使うべきところで始祖の力を使っていないことが散見されています。本来の王家の血統ではないので、完全な形では使えない、というのが自然な見方のように思います。
-補足おわり-
さて、そんなタイバー家や145代の行いに目を背けていたヴィリーは、”マーレ”という国がマーレ人とエルディア人のものだ、と言っていました。マーレなのにマーレ人だけのものではない上に、マーレ人とエルディア人の他にもいるであろう人種のものでもないのです。自分の家系への反発もあるのかもしれませんが、彼が双方の血を引いていると考えれば、いたって自然な考え方とも言えるかもしれません。
145代らと考え方が異なるのは、環境の違いも大きいと思います。145代はエルディア人による支配の時代に生き、恨みをつのらせましたが、ヴィリーの生きた現代には、エルディア人による支配なんて昔話の中にしかないわけですから。その点を考えると、頭主であるヴィリーが戦鎚を継がなかったのは、結果的に良かったのかもしれません。”記憶”を直接体感せずに物事を判断できますので。
ヴィリーはその言葉通り、マーレにいるエルディア人を救うことも作戦に組み込んでいました。マーレ軍の古い体制のすげ替えも、おそらくその為です。巨人の力だけに頼り、拡大路線を突き進む現行の国家戦略では、エルディア人の立場の改善など望むべくもないからです。マガトの思想は、その点においてエルディア人には救いとなる部分を含んでいます。また、ヴィリーの考え方は、非常に現実的で現代的だと思います。
私たち読者はどうしてもパラディ島寄りの視線になってしまうため、ヴィリーは敵のボスであるかのように映ってしまいがちですが、その実、彼は自身の信念に従って、公平な民衆への愛情をもって負の連鎖を断ち切ろうとしていたのではないかと、思うのです。
哀しいことに、それはエレンを筆頭とした現パラディ勢力の犠牲が土台になっていた為、相容れることはありませんでしたが。
・裏の役割
これはなんとなくそう思う、という予想のようなものですが、ヴィリー・タイバーが果たした、物語における最大の役割はこれかもしれない、なんて漠然と思っています(25巻100話)
-現実問題として世界の軍が手を取り合うにはまだまだ越えねばならない問題があります
-しかし我々は強大な敵を前にすれば一つになれるはずです
-私達みんなで力を合わせればどんな困難も乗り越えて行けるはずです‼
このページ、ヴィリーの演説の言葉をバックに、エレンとライナーがずっと”手を取り合って”いるんです。意味深すぎませんか?
エレンの共感と許容、ライナーの本音の吐露によって両者の距離はかなり近づいたと思います。”まだまだ越えねばならない問題”はあるでしょうけど・・
この場面は、世界と手を結ぼうとしているヴィリー(レイス体制と世界)と、既に手を取りつつあるエレンとライナー(エルディア人勢力)の対比のようにも見えます。長らく描かれてきた通り、ライナーは現体制の矛盾や欺瞞を、自己否定の固まりになるほど身に染みて分かっています。エレンはあえてライナーとの対話の席を設けましたし、次世代であるファルコにも言い聞かせるように同席させてます。パラディとフクロウの戦略でも戦鎚以外の知性巨人の隔離を図っていました。ポルコもかなり思うところがあるのを描かれています。ガビは友人・知人の死を初めて目の当たりにして頭に血が昇っている状態ですが、ヴィリーの演説を聞いて一番衝撃を受けていたようにみえます。
まあ、それぞれの目標は交錯すれど戦わなくてはならないという残酷さが、この作品のキモだとも思いますので、すぐに上手くいくとは思えませんけど。もし現実になるとしたら、意図していないとはいえ、ヴィリーが果たした役割は、かなり大きいと思うんです。
・終わりに
タイバー家に関しては以上となりますが、今後の展開に絡んでる部分を少しだけ。
こちらの密談のシーンで、ヴィリーはこう言っています(25巻100話)
-敵は海を渡り、我々の首元まで迫っていた
-もはや いつ喉を切り裂かれてもおかしくない
-何より危惧すべきパラディ島勢力の協力者の影だが…
-依然その実体が掴めないままでいる…
続けて読むと分かりやすいのですが、彼の言葉には登場人物(というか勢力)が3つあります。敵、パラディ島勢力、協力者です。途中でページが変わるため混同しそうになるのは、さすがだなと勝手に思っていますが。
”敵”は総称とも読めるのですが、マガトは続けてこう言っています。
-敵の正体や目的、攻撃手段が不明なまま…
マガトはこれ以前にジークとの会話で、始祖が奪われた経緯、すなわち”パラディ島勢力”の正体は知っていた、またはその時に知ったことは明白です。つまり彼らが言っている”敵”とは、別の勢力であり海を渡ってくるもの、とも考えられます。であれば、海外の国かその一部であるという見方が自然でしょう。そして、直接攻撃を仕掛けてくるであろう”パラディ島勢力”は、”敵”の先鋒に過ぎないという風にも読み取れます。今後のパラディの動きも含めて、全体の戦略を担っている勢力がいるわけです。
今回の作戦でエレンが突出したような事になっていたのは、おそらくエレンがその勢力の戦略に率先して乗っかっているからだと推測しています。作戦全体は統一された動きをしていますから、当然兵団側もその戦略を共有していますし、そうせざるを得ないことを理解していると思います。ミカサが心配しているのは、他国である勢力の戦略にエレンが自らの手を汚して突き進んでいくことへの危惧と、自分を含めたパラディ島という勢力から離れていってしまうような、そんな感じから言っているように見えますが、いかがでしょうか。
前述した通り、戦鎚の敗北によってタイバーの思惑通りには進んでいないのが現状です。どちらかというと賭けに勝ったパラディ側が主導権を握りつつあるかもしれません。ヴィリーがまいた種を受けて世界がどう動くのか、そしてマガトとパラディの次なる戦略が気になるところですね。
最後にヴィリーにまつわる事実をもう一つ。
ヴィリーが演説の後半で「タイバー家は保身のためにエルディアを売った」と言ったことを思い出した上で、こちらをご覧ください。
完全にイヤミになっているのが分かります。
キヨミさんは、お前らが臆病者なのは知ってまっせ、と言っているわけですね。お兄ちゃん、踏んだり蹴ったりですね。そりゃお付きの人もこんな顔になりますよ・・
長文・拙文にも関わらず最後までお読みいただき、ありがとうございました。
written: 20th Apr 2018
updated: 27th Sep 2018
017 物語の考察 タイバーの務め[前編]
みなさんこんにちは。
9/27 追記:タイバー家に関しまして、現在は少し見方が変わっております。こちらの記事を全て否定するわけではありませんが、ご参考程度でお読みいただけると助かります。
今回のテーマはタイバー家です。今さらという感じもありますが、104話にてそのエピソードがひと段落した感がありますので、今までの言動から彼らの役割について振り返ってみたいと思います。
※長くなったので2回に分けました。こちらは前半になります。
あと、ヴィリー・タイバーをこよなく愛する方は、読まないほうがいいかもしれませんし、読んだほうがいいかもしれません。
この記事は最新話である104話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
[タイバーの務め]
ヴィリーと妹がエレンに喰われたことで、物語の表舞台から去った感のあるタイバー家。正直なところ、未だにその真意が読みづらい一族だと思います。彼らはいったい何を目的として、何をしてきたんでしょうか。
・戦鎚の巨人の管理者
タイバー家は戦鎚の巨人を代々受け継いできた、管理者の一族だということは物語で明言されています。巨人大戦の当時から続いているということですので、それ以前も、エルディア帝国(以下、帝国)の時代から管理家、またはそれなりの立場にあった、ということが分かります。貴族階級のような感じなんでしょうか。タイバー家の王家との実際の関係性は不明で、王家の血が入っているかどうかも定かではありません。
家系で知性巨人を継承することが最も記憶を受け継ぎやすい方法ですから、始祖を除けば本当の歴史を最も良く知っていたのはタイバー家だったと言ってよいでしょう。またこのことから類推できることとして、帝国の時代は8つの知性巨人を、それぞれ固有の家系で継承するシステムだった可能性は高いですね。言わば既得権益であり、それを巡って権力争いが起こることも納得できます。
・ヴィリーの演説から分かること
ヴィリーは前半で”今まで公表してきた歴史”を、後半で”それを覆す新たな事実”を話しました。ということは、前半部分は巨人大戦での145代目フリッツ王(以下、145代)とタイバー家の、狙いや思惑が込められていると考えられます。
前半で語っている歴史はこのような感じです。
まず、巨人の力を用いて世界の覇権を握っていた帝国を徹底批判しています。帝国によって数多の民族が滅ぼされてきたと言うことで、”全世界”の敵だったことを強調しています。続いて、ヘーロス(=マーレ)とタイバー家を、”全世界”を救った英雄として持ち上げ、以降のパラディ島への攻撃も”全世界”の平和のためだという大義を唱えています。同時に、パラディ島の脅威を喧伝することにより、他国をパラディ島に寄せ付けない目的が垣間見えます。
ヴィリーが後半部で語っている通り、巨人大戦の当時、145代とタイバー家は協力関係にあったようです。前半では、その両者間に勝者と敗者がいるということは、八百長の意図があったということになります。八百長をするということは、対外的にその勝った負けたという事実が必要だったということです。そこから推測するに、彼らがそれぞれ象徴になっている、帝国(145代)を敗者として下げることにより、マーレ(タイバー家)を英雄として上げることが目的だったと言って良さそうです。
彼らはさらに、マーレの地位を名実ともに上げるために、タイバー家の戦鎚の他、6つの知性巨人をマーレのものとしました。ヴィリーはこれを、「マーレへの贖罪として自由と力を与えた」と表現していました。
おそらくこれは、当時の知性巨人たちから奪い取る形で成し遂げています。情報操作だ同士討ちだと言ってる割には、一部の巨人家が彼らに組した形跡がありません。他の巨人家が全く出てきておらず、マーレが戦士を一般募集していることも、それを裏付けています。他の知性巨人家を操ったり、味方になるよう調略しなかったということは、他の巨人家は、彼らにとって当初から叩き潰す対象だった可能性を示唆しています。
-余談-
余談ですが、おそらく車力は、落とし穴で拘束された上で巨人の力を奪われたんじゃないかと推測しています。ピークがあの罠の存在を知っていたのは、車力の記憶からではないかと。
-余談おわり-
同様に、王家の残党や旧帝国派の人々の弾圧を、タイバー家が主導していたようです(22巻88話、89話)
クルーガーの家族(王家の残党)の皆殺しと、ユミルたちの集会を取り締まったシーンです。ここには色付きの制服を着た兵が出てきますが、これは現在のタイバー家の私兵の制服と似ています(24巻97話)
王家の残党とは、元は145代の親族のようなものです。それを協力者のタイバー家が狩っているわけです。前述の帝国を下げる意図や、知性巨人家の扱いも合わせて考えると、おそらく旧帝国に関するものは全て、彼らの敵だったのではないかと推測されます。
次に、パラディ島に他国を寄せ付けない意図、に関しても考えてみましょう。
まず、パラディ島を無垢巨人だらけにしたのがマーレなのはご存知の通りです。前述のユミルの件のように、元はタイバー家が主導していたとみられます。
さらに、壁内へ引きこもる際に地ならしの脅威を言い残したことも、同様の意図が感じられます。しかも、実際は「不戦の契り」で行使できないにも関わらず、その部分だけ意図的に隠していました。他国からすれば、下手に手出しはできなくなりますよね。さらに言えば、その脅威を排除するという名目でのマーレの攻撃も、黙認せざるを得なくなります。
ところで、145代は地ならしの脅威を言い残す時に、興味深いことを言っています。
クルーガーによると、エルディア王家筋に対しては「エルディアが再び世界を焼くというのなら我々は滅ぶべくして滅ぶ」「壁の巨人が世界を平らにならす」と言い残しています。エルディアが攻めてくるなら地ならしで世界中を道連れに滅んでやる、ということです。この言い方は、145代は自身のことをエルディアではない、そして、エルディアは彼にとって敵だと言ってることになります。
対してタイバー家、すなわちマーレに対しては「もしマーレがエルディア人の殲滅を願うのであれば、それを受け入れる」と言い残しています。こちらは自身をエルディアの代表である王として、物を言っています。先ほどと言ってることが変わっているようにも見えますが、どちらもエルディアは滅びるべき存在だという共通点があります。
これらを総合的に見てみれば、彼らがやったことは体制の転換、言ってしまえば革命です。普通の革命と異なるのは王みずから主導していることだけで、実際に旧来の体制どころか国をつぶして、新しい仕組みに変えているわけです。
そして彼らが作った新しい仕組みとは、2つの新しい体制を島と大陸に作りあげることです。旧体制の民衆は滅ぼす対象でもありますが、巨人化という利用価値があったため、奴隷化して搾取するようにしました。
巨人大戦での彼らの思惑が、だいたい見えてきたように思います。
・タイバー家の立ち位置
ここで一つの興味深い発言が出てきます。
ヴィリー・タイバーがマガトにこぼした言葉なのですが・・(24巻97話)
-我々は…ただ見ていた
-エルディア人を檻に入れ、マーレに好き放題やらせるのを
マーレ”に”好き放題”やらせる”と言っています。これ、主語がありませんね。
そして、その主語になり得る人物は一人しかいません。前述の考察をするまでもなく、ヴィリーが彼の目的をちゃんと言っていました・・。それはともかく、タイバー家はそれを「ただ見ていた」と言っています。演説の後半でも「巨人大戦後の一族の安泰を条件にカール・フリッツと手を組み、マーレにエルディアを売った」と言っていますから、要するに保身のために145代の言うがままに帝国つぶしに加担した、といったところなんでしょう。
その後も、体制を維持するために旧王家の残党などを狩っていたくらいで、政治と戦争を含めた国の運営には一切関わらずに「ただ見ていた」というところまで作中で明言されています。
ところで、ヴィリーがマガトに対し「(エルディア人は)悪魔の末裔なんだろ!?」と声を荒げるシーンがあります(25巻100話)
これがタイバー家の総意だとは言えませんが、少なくともヴィリーはエルディア人を敵だとは思っていないようです。145代の思想とは異なっていますね。
タイバー家と145代は、必ずしも一枚岩ではないという感はありますね。
・ヴィリーの人物像
自分の家系に一時は絶望していたことをヴィリーは語りましたが、これはおそらく本音のようです。ヴィリーのエピソードにはその残滓が散見されます。
まず、名家であるにも関わらず全く躾のされていない子供たち(24巻97話)
奥様もどうかしてると思いますが笑
マガトとの密談でも、「…先代に比べては」と常に歯切れが悪いこと(25巻100話)
実際、何もやってこなかった自覚があるんでしょう。
海外の要人たちと親交を温めてきたと言いながら、彼らとの話題は昔の事、子供の時の事ばかりであること(24巻98話)
つまり、長いこと顔を合わせていなかった、ということでしょう。しかも、子供の時に知り合って遊んだのは、自分ではなく親がさせたことですよね。
エルディア人の地位向上に努め…とも言っていますが、実際にはどんどん悪くなっています。マガトに対し、「この国はマーレ人とエルディア人のものだ」と言っていました。これは彼の公明正大な考え方とも受け取れますが、実際にはエルディア人は収容区に入れられた奴隷同様の立場にあるわけで、残念ながら現実が見えているとは言い難い、少なくとも結果は出せていません。まあ、何もしてなかったんでしょうけど。
これらから類推するに、「おまえを犠牲にした」と言っていた、すなわち妹に戦鎚を継がせたことも、彼の家系への嫌悪感情からそうなった可能性が高いんじゃないでしょうか。自分の家系をクズだと思っていたら、その代々継承してきた伝統を守るために早死になんてしたくないですよね。
これらを並べて見た今、彼が深謀遠慮の人だったと感じますか?
私にはとてもそんな人物には思えません。もし先を見据えていたなら、家族のことはともかくとしても、最低でも海外の要人とはもっと親密な関係を築いておくべきだったと思います。おそらく今までは、自分の家系を恨みながら全てを放り出して、何もせず暮らしてきたのでしょう。
ヴィリーを悪く言ってるように聞こえるとは思いますが、実は考察するにつれて親近感が増してきました。彼はとても人間臭かったんです。そして、ヴィリーが無能だとは決して思いません。ただ、先代たちと同様に何もしなかった、というだけだと思います。可哀そうなことに、時代がそれを許してくれませんでしたが。
(24巻98話)
中途で恐縮ですが、タイバーの務め[後編] に続きます。後半はヴィリー大活躍のはず・・です。
本日もご覧いただき、ありがとうございました。
written: 18th Apr 2018
updated: 27th Sep 2018
016 物語の考察 始まりの時
みなさんこんにちは。
!妄想注意!
最初にお断りしておかなくてはなりませんが、これは妄想です。
今回はいつもとは少し趣を変えて、事実からの考察ではなく、妄想に妄想を重ねてみたいと思います。というのも、ある一つの疑問があり、物語のラストあたりまで答えが出ないであろうと思われる事柄なのですが、そこに妄想が湧いてしまったためです。
それは物語の初期に何度か出てきた、年号らしきもの、に関することです。
年号と聞いてご興味が湧かなければ、ご覧いただかないほうが良いと思います。最初にお断りしました通り、あくまで私の妄想です。しかも長いです。
それでもお付き合いいただける方はどうぞ、お進みください。また、この妄想がまさかの的中を果たした場合に、重大なネタバレになる可能性にもご留意の程、お願いいたします。
この記事は最新話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
[始まりの時]
(3巻 特別編 リヴァイ兵士長)
私は以前、巨人大戦の真相とは と 壁の王 にて、レイス家と壁内人類はエルディア人とマーレ人の混血ではないかという妄想を垂れ流しました。
できればまず、そちらをお読みいただけると助かります。それを踏まえた妄想になっています。妄想に妄想を重ねるとはそういう意味です。
では・・
進撃の巨人では物語の初期に、数字が描かれたコマが4回、出現しています。
845(1巻1話)
850(1巻2話)
844(2巻5話)
847(4巻15話)
これらは、物語の時系列と合致することから、おそらく年号であろうと推測されています。また、アニメを根拠として良いのであれば、アルミンの声で”845年”などという風にナレーションされているので、まさに年号であると思われます。
ただし、絶対に忘れてはならない事実として、このアルミンのナレーションを除けば、作品中の人物は誰一人として、年号を語ったり思ったりしたことはありません。また、新聞等には何らかの年号があるはずでしょうが、それが物語上で明記されたことはないのです。既に100話を超え、壁内のみならずマーレや世界が描かれている現在においても、全ては”何年前”や”何日前”といった形でしか、出てきていないのです。
それはつまり、この年号は誰が使っているものなのか分からない、ということです。
さらにこの年号を不可解なものにしているのが、その年数の中途半端さです。現在判明している大昔の重要な出来事は、ユミル・フリッツが巨人の力を手に入れたことくらいなのですが、それはおよそ1800年前ということは複数の人物が語っており、確からしいと言えます。それを現実の西暦風に言えば、およそ紀元前1000年前後ということになります。その後エルディア帝国が支配した歴史が1700年続き、巨人大戦があった後、約100年後が現在とされています。現在の約850年前に何か大きなことがあったらしいとは、今のところその断片すら見いだせません。しかし、何かがあったはずなのです。
では、そもそも年号とはいったい何なのか、ということから考えてみましょう。
現在私たちが使用している年号は、西暦という紀年法に基づいています。そして、西暦というのはイエス・キリストの誕生を基準にして作られたものであることは、誰もが知っていることです。それは同時に、イエス・キリストが産まれた当時、西暦1年頃の人々は、何か別の年号を使って暮らしていたことを意味しています。つまりこの年号というもの、基本的に後年になってから、ある基準になる年や日を決めたものだということが分かります。(西暦が作られたのは6世紀頃、実際に広く使われるようになったのは15世紀頃のことらしいです)
日本にも皇紀という、神武天皇が即位したとされる年を基準にした独自の紀年法があります(今年は皇紀2678年だそうです)。これは明治時代に制定されました。現在は世界の標準に合わせて西暦を使用していますが、イスラム圏など、西暦以外の紀年法を使っている国々は今でも存在しています。
なぜ西暦が世界標準になっているのかを簡単に言えば、キリスト教の国々が世界の覇権を握り、その流れが続いたまま現在の世界があるからと言えます。つまり、紀年法も歴史と同様に”勝者”によってその基準を決められる性質があるということです。日本が”勝者”になっていたら、皇紀が世界標準になっていた可能性すらあります。
進撃世界に話を戻します。
上記の紀年法の性質を考えれば、エルディア人の年号では無さそうに見えます。私がエルディア人なら、ユミル・フリッツの誕生、あるいは巨人の力を手に入れた年、またはエルディア帝国の建国を基準にすると思います。そうすると現在はおよそ1800年+αくらいになるはずです。
ではマーレなのかと言うと、これもちょっと違うように思えますね。マーレ国は現在の覇権国と言っても良いでしょうが、その覇権をとったのは巨人大戦ですから約100年前です。マーレ国自体はエルディア帝国より歴史が古いはずなので、建国で言えば1800年よりもっと前のはずです。つまり、現在は100年くらいになるか、1800年より大きい年号になる可能性が高いと思います。
ということは、ヒィズルとかあるいは別の国なのでしょうか。実のところ、この可能性は否定できません。はっきり年号としているのがアルミンのナレーションだけなので、これは未来のアルミンが回顧している、と捉えることができるからです。その場合、ヒィズルあるいは別の国が近い将来に覇権国となり、アルミンはそこからの視点で語っている、ということになりそうです。
普通に考えれば、今ある情報から推測できることはここまでです。
なのですが、ここから妄想の出番となります。
一部、以前書いたこととかぶりますが、ご容赦ください。
約850年前といえば、エルディア帝国が君臨していた時代です。現在よりも軍事技術が進んでいなかったでしょうから、巨人の力はより圧倒的だったことでしょう。そしてそこには、民族浄化真っただ中という歴史が付いてきます。もちろんこれは、現在の覇権国であるマーレが、以前の覇権国を貶めるため、そしてエルディア人へ贖罪意識を植え付けるために語られている”勝者”による歴史ですから、その真偽の程は定かではありません。クルーガーが言っていた通り、マーレ人がちゃんと現存しており、さらにはオグウェノ大使やオニャンコポンらの黒人や、東洋、中東の人々がいることからも、少なくとも誇張はされているでしょう。ただし、人々はほっといても混じり合っていくと考えていますので、ある程度の混血があったことは間違いないと思います。
そんな中、エルディア帝国の時代に、エルディア人がマーレ人より優遇されるのは必然です。仮にエルディア帝国が度を越した善政だったとしても、このことは覆らないと思います。そうしないとエルディア人の民衆が不満を持つからです。さらに、そこに混血の人々を加えて考えると、彼らの立場もエルディア人には及ばず、微妙な立ち位置になる可能性があります。
しかも、です。進撃の世界ではエルディア人と他人種の混血は、巨人化できてしまいます。
仮に無垢巨人が1体必要になったとして、エルディア人と混血エルディア人がそこにいたら、どちらが選ばれると思いますか?
ここで話がいったん飛びます。
進撃の巨人の物語は、このページから始まりました(1巻1話)
-その日 人類は思い出した
-ヤツらに支配されていた恐怖を…
-鳥籠の中に囚われていた屈辱を……
これは大事なことなので、1話の終わりにもこの言葉が繰り返されています。
このナレーションは、現状ではこう解釈されています。
100年の安息の時代を経て、平和ボケしていた壁内の人類は、超大型の出現によって思い出しました。それは巨人に生殺与奪を支配されている現実と、巨人がいるため壁の外に出られない籠の中の鳥のようなものだということです。さらに、後から分かったことですが、王政によって壁の中で飼われていたという比喩にも受け取れます。
ここで、屁理屈マンの登場です。
どうもこのナレーションはダブルミーニングの疑いがあります。それはなぜかというと、「支配されていた」「囚われていた」と過去形になっているからです。次の文章をご覧ください。
-その日 人類は思い出した
-ヤツらに支配されている恐怖を…
-鳥籠の中に囚われている屈辱を……
日本語とは面白いもので、「ている」に変えたこちらの文章も、前者と全く同じ意味に受け取れます。ただし、こちらの場合は上記の解釈だけに限定されます。つまり、彼ら人類の現状を意味することになり、「思い出した」というのは「思い知った」という感じの意味になります。
この「ている」の例を一度見てから、元の文章を読むと、もう一つの意味に気付きませんでしょうか?
そうです。「ていた」と過去形になっていることで、「ている」と同様に継続している現状の他に、「以前、支配されていたことがある、囚われていたことがある」とも受け取れるのです。その場合、「思い出した」というのはまさに「思い出した」という意味になります。
実際のところ、壁内の人類がレイス王によって記憶を改竄されてから100年間、まともに巨人と戦ったり、襲われたことなんてありません。外に出た調査兵団が勝手に死んでいるだけのことです。彼らには思い出すことのできる恐怖の記憶なんてないはずなのです。な、なんだってー⁉
まあ、偽の記憶を植え付けられていた、とすればそこは否定できるんですけどもね。壁内人類がかつて「支配されていた」「囚われていた」民だと仮定するといろいろ繋がるんです。
まず、エレンは超大型を”ヤツ”呼ばわりしています。さらに巨人たちの総称として”ヤツら”と言っています。壁内の人類は超大型を初めて見たはずです。であるにも関わらず、超大型もひっくるめた”ヤツら”に支配されているという表現は、少し違和感があるのです。でも、かつて知性巨人を擁するエルディア帝国で支配されていた、と考えるとしっくりくるかもしれません。
王政の幹部はザックレーに対し、「お前のその血は奴隷用の血だ」と言い放ちました。ザックレーも含めて壁内の人類は一つの血統に属する集団ですから、彼ら全体が奴隷であった可能性があるということです。
(16巻63話)
でも、壁内人類はエルディア人なのになぜエルディア帝国で奴隷になるのか、という疑問が湧いてきます。そこで前述の混血理論のお出ましとなるのです。
混血理論に従って、レイス王率いる壁内人類を”A”「マーレの血が入ったエルディア人」、レベリオなど壁外にいるエルディア人を”B”「A以外のエルディア人」と仮定してみます。
先に民族浄化のくだりで述べた通り、Aはエルディア帝国においてどちらかと言えば虐げられる存在になる可能性が高いです。すなわち知性巨人や無垢巨人を操るBのエルディア帝国によって、支配されていた民族になります。
そう考えると、壁の王の行動が見えてきます。Bは、かつてエルディア帝国でAを奴隷として扱っていた敵のようなものですので、滅ぼしてもかまいません。ただ、かつて自分たちと同じように支配されており、自分たちもその血を引いているマーレ人のために、生かして奴隷にします。なぜならマーレはエルディアの支配から解放されたとはいえ、なんの力も持っていません。世界に対抗する術がないので、ほっといたらまた別の国に蹂躙されるのが関の山でしょう。ヴィリー・タイバーが言っていた、「マーレへの贖罪として自由と力を与えた」ということと合致します。また、このBに対する対処は、グリシャの父が語っていたマーレの思想教育の一部とも一致します。
(21巻86話)
-本来なら…我々はマーレによって根絶やしにされてもおかしくない立場だ
(中略)
-寛大なマーレは我々を殺さずに、生きる土地を与えて下さったのだ
壁の王が壁外のエルディア人を敵だと思っているなら、グリシャが来た時のフリーダの対応にも納得がいきます。
さらに、ジークはシガンシナ戦の際、こう独白していました。
(20巻81話)
-哀れだ… 歴史の過ちを学んでいないとは…
-レイス王によって「世界の記憶」を奪われたのは悲劇だ
-だから何度も過ちを繰り返す
-しまいには壁の中の奴ら全員、年寄から子供まで特攻させるんだろうな…
これは全く手掛かりがありませんが、おそらく過去にそうした事案があったということは推測できます。そしてこれは、Bであるジークから、Aの人々を見て言っています。そのような戦闘員以外の特攻までするという、一揆のような決死の攻撃をするというのは、Aが支配され、搾取されていた人々であるということを想像させます。
こうして考えた時、エルディア帝国の時代と現在とを見比べると、AとBの立場は完全に逆転しています。おそらくクルーガーが言っていた、「同じ歴史、同じ過ちを繰り返す」とはまさにこのことではないでしょうか。だから憎しみの連鎖を断つために、愛が必要だと説いているわけです。
(22巻89話)
そして、ジークが苛立っていたのも、ただAを倒すだけでは、結局その連鎖を繰り返していくだけだからではないでしょうか。だからこそ彼は「俺達で終わりにしたい」と願い、多少の犠牲を払ってでもその道を模索しているんだと思います。
(19巻77話)
それはおそらくA側にも同様の想いがあり、ウーリは「滅ぼし合うしかなかった我々」が友になることを夢想していました。それが壁の王の罪の意識の一部でもあるかもしれません。でも、どうすることもできない無力感さえ感じさせました。そして、せめてもと愛や平和を人々に説いていたようにも見えます。
(17巻69話)
現在のマーレ国では、エルディア人との間に子供を作ることを厳禁とし、マーレ人も厳罰に処せられます。それは新たな”連鎖”の種を作らないため、ではないでしょうか。
もしこの推論が正しいとしたら、現状の争いの原点はだいぶ過去にさかのぼることになります。そしてそれは、AとBが別の民族に分かれたスタート地点だと言えるかもしれません。AとBを隔てるものとは、血です。AもBも元はユミル・フリッツの血を受け継ぐ一つの民族だということは間違いありません。しかし、その系統樹の中で現在のAの一族に繋がる、エルディアとマーレ双方の血を受け継いだ最初の子供が産まれた時があるはずです。Aの”始祖”とも言えるその子が産まれた時、おそらくそれが約850年前なのではないでしょうか。
ちょうど民族浄化の真っただ中です。いや、民族浄化自体は疑わしいので、おそらくそれは、ほんとうに他愛もない、歴史には残らないような、あるエルディア人とマーレ人の男女の、民族を超えた愛情だったんじゃないかと思います。その方が、物語として美しいし、残酷ですから・・
-最後に-
一つ、考察サイトとしての体裁を保つために蛇足を申し上げるならば、あの年号はAの立場からのもの、ということになります。そしてそれを未来のアルミンが語っている可能性が高いわけです。イコールAの勝利、とは断定できませんが、何らかの決着がついた後に、そもそもの原点に想いを馳せているのかもしれません。ちなみに、エレンはBである可能性の方が高いと思います。
繰り返しになりますが、これは私の妄想です。
本日もご覧いただき、ありがとうございました。
written: 14th Apr 2018
updated: none
015 最新話からの考察 104話② パラディ島がこの先生きのこるには
みなさんこんにちは。
今回は最新話である104話からパラディ島の作戦を振り返り、今後を占っていきたいと思います。
この記事は最新話である104話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
[パラディ島がこの先生きのこるには]
以前、004 最新話からの考察 102話④ 調査兵団の目的 - 進撃の巨人を読み解く にて、作戦目的は真実の記憶をレベリオ民に取り返すことではないかと推測しました。実際には現場での座標の発動はせず、既に撤退戦に移行しています。
様々な伏線を見るに、帰還直後かは分かりませんがいずれ行われると今でも思っていますが、それでは兵団の今作戦の主旨は何だったのか、という疑問について、作戦全体から確認してみたいと思います。
確定していないジーク及びアニ父などの回収についてはいったん脇に置いておきます。また、撤退戦が無事完了したと想定しての話になっています。
104話にて、アルミンはこう言っています。
こうなってしまった以上は…もう
皆と…エレンを回収できなければ
僕らに未来はありません
アルミンとハンジは現場で起こってる細々としたことは知り得ませんから、光の道の存在により作戦が遂行されていることを確認するわけです。細かく言えば、アルミンはおそらく現場から伝わってくる音や光、振動をもとに軍港破壊を決行、さらに光の道の設置を確認してレベリオへの侵入を続ける、といった感じと推測できます。
そのアルミンが「こうなってしまった」というのは、ヴィリー・タイバーの宣戦布告に対応したエレンの開戦判断により作戦が決行されたことを意味しており、その結果として世界にパラディ島の脅威を喧伝することになる、という意味にとらえるのが自然だと思います。そして、それは作戦を行う上で予期されていたこと、ということでしょう。
その上で必要不可欠なこととして、みんなを連れて撤退を完了することだと言っているわけですから、ジャンやコニーの様子を見ても、既に現場での作戦段階は完了している、と考えて良いと思います。
エレンやジャンの言動から、兵団がやり終えた目的を推測するならば・・
-マーレの宣戦布告に対しての攻撃開始、ヴィリー・タイバーと戦鎚の無力化
-マーレ軍中枢人物の殲滅、軍港破壊と海軍への打撃
-抵抗する知性巨人の無力化
といった感じでしょうか。そして作戦の結果こうなることが分かっていた、ということを合わせて言えば、
-パラディ島の脅威を世界へ喧伝すること
こちらも”目的”に入れてしまっても差し支えないかもしれません。
これらを俯瞰してみると、マーレに対して大打撃を与えていることは確かですが、これ自体は一時しのぎにしかならないことは明白だと思います。戦鎚を含めた知性巨人の捕食・奪取も最初から狙っておらず、あくまで一時的な無力化を目的としていたことも明らかに読み取れます。
知性巨人は数日もあれば回復するでしょうし、軍の指揮系統を破壊しても、早急に建て直しをされることは間違いありません。ピークが解説していた、パラディ側の数的不利と体力不足は依然として変わることはないのです。ということは、何らかの次なる作戦があり、それにはエレンや兵団員の無事帰還が必要条件である、ということになります。
では、仮にエレンや兵団員が帰還できなかったとしたら、どうなるんでしょうか。
まず、マーレ軍に大打撃を与えた事実は変わりません。しかしながら、その打撃を与えた”地ならしの脅威”である始祖のエレンと、”空を飛ぶ悪魔”である兵団員たちを失ったならば、戦力の低下と見なされるでしょう。第三者的に見てパラディも大打撃をこうむり、”地ならしの脅威”という切り札を失ったならば、良くて痛み分け、もしくはパラディの負けと見なされてもおかしくはありません。
すなわち第三者から見て”勝者”であることが必要なのではないかと考えられます。
(15巻59話)
作中でも語られている通り、事実とは勝者に左右されるものです。これは現実世界でも変わらないこの世の中の残酷な真理です。タイバー家、あるいはマーレが喧伝していることが正しい歴史として世界中に信じられていたのは、彼らが巨人大戦の勝者だったからに他なりません。
この、勝者の歴史ということを踏まえて考えると、一連の作戦結果は、非常に強いアドバンテージになり得ます。
パラディ島は歴史を書き直す権利を得た、ということです。
おそらく帰還後まもなく、全世界に向けて声明を発表するのではないでしょうか。それをヒストリア女王がやるのかは定かではありませんが、事の経緯とパラディの大義を表明し、世界に問うこととなるでしょう。各国の収容所にいるエルディア人の解放も求めるかもしれません。
その後ろ盾となるのが、超大国マーレに大打撃を与えた事実であり、軍事的な脅威でもあります。だからこそ彼らは、皆やエレンを無事に回収しなくてはならないと考えられます。
そして、存在することは確からしい協力国がさらに後ろ盾となったり、パラディの声明に賛同する姿勢を見せれば、他にも賛同する国が出てくる可能性は大いにあります。どこの国も自国を守ることが根本にありますから、今まで誰も勝てなかったマーレを凌駕する国があれば、そちら側につくか、我関せずで傍観を決め込むわけです。
それは世界の国々を脅す行為であるとも捉えられますし、その通りでもあるのですが、大義名分に関してはパラディは嘘をつく必要がありません。
それはマーレには皮肉なことではありますが、ヴィリー・タイバーの演説による後押しがあるからです。
ヴィリーは世界に向けて、はっきりとこう表明しました。
マーレは、今までは世界の脅威を排除するためにパラディ島を攻撃していると言っていました。しかし、真実は少し異なり、パラディ島は脅威では無かったどころか、その王により世界の平和が保たれていました。現在のパラディ島はその王位を簒奪したため、脅威となりました。ので、世界一丸となってこの脅威を排除しましょう。
この演説には大きなツッコミどころがあるのはご存知の通りです。
今までマーレがパラディを脅威だとして攻めてたのは何だったのか?
(25巻99話)
そのことは私たち読者のみならず、作中でも疑問に思われています。ただし、ヴィリーはそれを間髪入れない泣き落とし演出にてうやむやにしてしまいます。そのままマーレが”勝者”になっていれば、当然それが事実であり、正しい歴史となっていたことでしょう。しかし、パラディ島が”勝者”となった今、それを覆すことが可能です。
パラディ島は巨人大戦後の100年間、他国を攻撃したこともなければ、その準備をしたことさえありません。そもそも外の世界の存在すら知りませんでした。それを攻撃してきたのはマーレであり、王が打倒され現在の体制に変わったのもマーレの攻撃が原因です。そしてその事実を隠して世界を巻き込んだマーレの宣戦布告に応じただけです。
話が完全に通っている上に、”勝者”となっていることで脅しも効きます。
(3巻10話)
まさにこんな感じです。マーレが敗北した今、それでも戦いたいと思う国は、そうそう無いでしょう。
おそらくこのことに向けて、マーレの仕掛けた罠(?)にあえて乗っかって奇襲作戦を仕掛けた、というのがパラディ側の目的の最たるものではないでしょうか。これは賭けでしたが、”勝者”となった以上かつての兵団の大義と同様に、今度は世界の国々に真実の記憶を取り返すことにもなるのです。
(22巻90話)
この考察をしていて改めて思いました。いろいろ問題はあったとはいえ、壁の王が壁内に作り上げた理想郷は、確かに平和を実現していたと言えるかもしれないなあと・・
(23巻94話)
本日もご覧いただき、ありがとうございました。
written: 11th Apr 2018
updated: none
014 最新話からの考察 104話① 要点チェック
みなさんこんにちは。
めまぐるしい展開の104話が公開されました。回想(謎解き)パートまであと少し・・だといいんですが。まずは気になる点をピックアップしていきます。
この記事は最新話である104話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
[104話 勝者]
・超大型
だいぶ姿が変わっています。鼻が無いのは想定通りでしたが、耳も無くなっていました。逆に左目はちゃんとあり、顔も対称になっています。ベルトル版にはなかった唇もあるようです。爆発でやせ細っているからかもしれませんが、首の骨まで露出しています。足首はやはり、つまった感じになっているので、こちらは超大型の形質ということでしょう。
アルミンはずいぶんとベルトルさんに対するシンパシーのようなものを感じているようです。幼い自分が見た景色の反対側を、ついに見る立場となったこと、あるいは、一瞬にして多くの人と建物を破壊し、更地を作り出してしまう超大型巨人の恐ろしい力への実感から、の言葉とも言えるかもしれません。
・ジャンと車力
ジャンが雷槍を発射する瞬間の、目の表現が非常に気になります。本人も自分がはずしたのかと訝しんでいます。もちろん、車力の力が同時に働いていることは確かでしょうが、それだけなんでしょうか。ジャンは過去にも殺す、殺さないという葛藤がありました。
ピークの排出で蒸気を上げたのは、ファルコを守るために車力がやった、と見てよさそうです。ただ、こちらの一コマを見ても、ピークにはまだ何かがありそうですね。
・ファルコ
ファルコはとても優しく思慮深く描かれています。先月はつい「クルーガーさん」と言ってから言い直してたりもしています。ライナーを戦いから解放してあげたいと思っていましたが、この瞬間、友人の死を初めて知り、ガビに導かれるようにライナーを呼び起こします。おそらくエレンに言われた「前に進んだものにしかわからない地獄の先にあるもの」が綺麗事ではなく実感に変わっていくきっかけでしょうか。エレンがなぜここまでやるのか、ということをファルコが理解する第一歩にも感じます。
・光の道
照明の設置は一つの道を照らすものでした。この道路はガビが病院との往復でも使った道のはずで、戦士隊のレベリオ帰還時の入口と同じようにも見えるのですが、いまいち方向関係がはっきりしていません。門外にマーレの増援部隊等も描かれていないので、別の入口なんでしょうか??
(23巻94話)
・飛行船とオニャンコポン
この飛行船は中東戦争でマーレ軍が使っていたのと同じ型のようです(23巻92話)
ニャホニャホタマクロー オニャンコポンが着ているのはマーレの軍服ですので、マーレ軍のを拝借したということでしょう。ということはオニャンコはフクロウ的な立場の人間だと考えられます。そして、マーレ軍内の外国人部隊の存在の示唆でもありますね。それどころか、海軍の水兵たちもそうだったのですが、マーレ軍というのは外国人の割合が多いかもしれません。マガトが以前指摘していた国民性を考えれば、当然なのかもしれませんが。
(103話)顔つきが外国人っぽい、カタカナの「オーイ」もそんな雰囲気です。
しかし協力国のヒィズル(とは限らないですが)はなかなか尻尾を出しませんね。
オニャンコのようなアフリカ系の黒人が描かれたのは、パーティでの大使に続いて2度目です。それ以外はマーレでもパラディでも出てきていません。そんな人物が兵団に協力的だということは、世界が一枚岩では無いことを如実に示していると言えるかもしれません。東洋人のことを合わせても、エルディア帝国時代が他民族にとって、それほど”悪”ではなかった可能性がありそうです(マーレは別として)。オニャンコにユミルの民の血が入っているかどうか、非常に気になるところでもあります。もし入っていなければ、世界の少なくとも一部は、エルディア帝国うんぬんよりも、マーレの支配への反発が強いということも考えられます。
ところで、もうご存知かとは思いますが、オニャンコポンってのはガーナの天空神だそうです。
・兵団の作戦を顧みる
アルミンの言葉からは、「エレンがタイバーの思惑に乗っかって世界を敵にまわしかねない道を選択した」以上、後はみんなを連れて撤退することが必要不可欠だ、ということが分かります。つまり、兵団のこの時点での作戦目標は既に完了している、ということになります。
兵団とエレンが既にしたことは・・
-マーレ軍中枢の破壊
-戦鎚、および抵抗する巨人の破壊
-海軍の一部殲滅
-宣戦布告したマーレへの報復、あるいは戦勝を、世界へ発信すること
といった感じでしょうか。
マーレ軍は一時的に機能不全に陥るでしょうが、長い平和が約束されるわけではありません。つまり、撤退後の次なる目標があるということを考えると、上記の他に何かプラスアルファがありそうに思います。
まず、アニ水晶を持ってくるという私の予想は見事にはずれましたが、アニ父の伏線いろいろを回収するのであれば、これも+αになりそうです。そしてやはりジークですよね。この二人は連れて帰る可能性がありそうです。現状のままならジークは死亡と処理されるでしょうから祖父母の心配はいったん無くなりますし、リヴァイが全然出てきてないのもそれっぽいです。フロックもあれ以降登場してないようなので、なんらかの別動隊が動いてる可能性は高いですね。アルミンの言う「みんな」にはジークたちも含まれているかもしれません。
余談ですが、ジークは爆発の直前に連れ出した、というのが有力になったかもしれませんね・・
・戦鎚、顎
ミカサのこのセリフは意味深です。巨人のノウハウがあるマーレの英才教育の賜物、というのはもちろんあると思いますが、それ以上のものがあるような気もします。
回を追うごとに、だんだん美人になっていた感のあるヴィリー妹さん。久々のエグい惨殺シーンでした。ゾフィアもエグかったけど、ここまで衝撃的なのはいつ以来なんでしょうか。また、たなぼた的ではありますが、エレンは3つ目の知性巨人を有することになりました。さらに戦鎚の記憶が入ることで、元のエレンからはかけ離れていくんでしょうね。それにしてもエレンの安定感と成長っぷりは凄いですね。
・ミカサ
これは昔、エレンに言われた言葉ですね。ミカサにとってはとても大事な記憶の一部ですが、彼女の根底に一貫して流れているのは、「あの頃に戻りたい」という気持ちのようです。そして前述のように、それとは反対の方向へ突き進んで行ってしまうエレン、といった感じでしょうか。まあエレンの見据えてる先の先は、ミカサと同じところなのかもしれませんけど。
(18巻72話)
・ライナー
叩き起こされてしまった、可哀そうなライナー。顔が本人のままの不完全な巨人化は斬新です。
これは、エレンの体力もそうでしょうが、おそらくライナーの生きることへの意思が関わっているように思います。
とても切ない、エレンの表情です。
今のところ、エレン vs タイバーあるいは兵団 vs マーレという意味では、パラディ側が「勝者」である展開なわけですが。どうも104話の主役はライナーにしか見えないんですね。
ここから妄想全開の超解釈です。
エレンは”待っていた”ようにも見えます。ガビたちの声はエレンにも聞こえたはずですし、顎を喰うなら一瞬で終わるはずでしょう。体力が残っていないとはいえ、変にあきらめが良すぎるようにも感じます。
ミカサの表情がなんとも言えません。驚くでも喜ぶでも悲しむでもなく。エレンがやっていることを「ただ見てる」感じにも、若干あきれているようにも受け取れます。
最後のエレンは、「また苦しませるようですまんが、生きてまた会おう」ということでしょうか・・
本日もご覧いただき、ありがとうございました。
written: 9th Apr 2018
updated: none
013 物語の考察 メガネ
みなさんこんにちは。
今回はとある一つの可能性についてのお話なんですが・・
!!閲覧注意!!
今回の考察は、ある程度の確信めいた要素があり、また事実であれば今後の物語において一つの大きな鍵になってくる可能性を孕んでいます。これをお読みになることで、物語で明かされた時にあなたが感じる驚きなどを損なう恐れがあります。それを踏まえた上で、見る、見ないは自己責任にて、ご選択くださいますようお願いいたします。
上記の注意をご了解いただけた方のみ、どうぞお進みください。
この記事は最新話までのネタバレを含んでおります。さらに登場人物や現象についての言及などなど、あなたの読みたくないものが含まれている可能性があります。また、単なる個人による考察であり、これを読む読まないはあなた自身に委ねられています。その点を踏まえて、自己責任にて悔いのないご選択をしていただけますよう切にお願い申し上げます。あなたの選択とその結果に対して、当方は一切の責を負うものではありません。
※画像は全て 「進撃の巨人(諌山創著 講談社刊)」 より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
[メガネ]
(13巻51話)
ある人物に関して、一つの伏線と思われるものを発見しました。その伏線により、その人物の今後についてある推測ができます。
この考察は、以前の 010 巨人化学① 知性巨人の器 - 進撃の巨人を読み解く にて述べたことが下敷きになっていますので、事前にそちらをお読みになってからご覧ください。
どうぞ、今一度ネタバレの可能性をご考慮の上、よろしければお進みください。
では、始めます。
うざい意志確認を繰り返しましたこと、大変失礼しました。
知性巨人の器 を読んでいただいたみなさまは、エレンとアルミンが知性巨人の継承前から、夢などを通じて他者の記憶を見たことがある、ということは確からしいとお分かり頂けたかと思います。私はそのことから「ユミルの民は全員が記憶を見られる可能性がある」というところまで発展させて推測を行っていますが、この推測は関係ありません。その根拠にしている、上記の二人の事柄に関しては、作中に書かれている”事実”といってほぼ間違いない、ということだけ念頭に置いてください。
エレンとアルミンは、それらをはっきりとした知識として持っていたわけではありませんが、記憶の奥底に保持しており、彼らの思考や発想に影響を与えていました。
それと同様のケースが、もう一人、見つかりました。
タイトルでピンときたとは思いますが、これは、ハンジ・ゾエに関するお話です。
エルヴィンの跡を継いで第14代調査兵団団長となったハンジは、分隊長時代から頭脳派として活躍をしてきました。その分析力は作中でもピカイチで、物語の数々の謎は彼女の言葉で答えを与えられてきたわけです。
しかしながら、どうも当時のハンジの知っていることを考慮しても突飛な発想をしたケースが2つあります。
まず一つ目は、レイス領礼拝堂の地下の件です(16巻64話、65話)
こちらがその地下空洞です。これは、16巻64話にてロッド・レイスにより、ある巨人の力によって創造されたものだとヒストリアに説明されていますが、ハンジ達がそれを知るのは後のことです。
当時ハンジは、レイス領で起こった盗賊による襲撃事件の報告から、事件に巨人が関わっている可能性を察していました。そこから、巨人が入れるであろう大きな空間があるだろうと想像することは可能でしょう。
ところで、巨人が入れる空間といったら、どんな風景が思い浮かびますか?
私は普通にだだっ広い空間を思い浮かべてしまうのですが、あの地下空洞には多くの支柱がありました。しかし彼らの作戦行動を見るに、それさえ予期してたかのようです。アルミンも「ハンジさんが予想した通りだ」と言っています(16巻64話)
ちなみに、ここと似た空間がマーレにもあることはポルコが教えてくれています。(23巻93話)
二つ目は、「始祖の巨人」という呼称です(17巻67話)
これは、ロッド・レイスが無垢化した後、エレンらと合流したハンジが、ヒストリアの話を聞いて”仮に”名付けた呼称です。それ以前のロッド・レイスの話には”始祖”という単語は出てきていません。そしてハンジが仮に名付けたはずのその呼称は、現在では当たり前にマーレの人々すら使っているのはご存知の通りです。これは、エルディア帝国の時代からそう呼ばれていたということでしょう。
これら2つの事柄は、ハンジが何やら知りすぎていることを匂わせますが、それだけでは根拠としては薄弱でした。
ここでいったん話が飛びます。
以前、予想(というか妄想)として、ハンジとピークが遠い親戚関係にあるのではないかと書いたことがあります。これは単に顔が少し似ていることから、ただ予想しただけのものでした。
改めて説明します。
目の形と眉が異なりますが、額から鼻にかけてのTゾーン、唇、瞳、アゴからエラの部分が似ているように見えます。
進撃では血の繋がりが重要な要素であり、血縁関係にある人は顔の一部を意図的に似せて描かれているであろうことは、お気付きのことと思います。
さらにこれを後押ししていたのは、ハンジもピークも頭脳派なキャラとして描かれていることでした。また、9つの巨人保有者という重要な立場であるにも関わらず、ピークの苗字だけ伏せられているというのは、そこに出せない理由があるからだということも推察されます。ピーク・ゾエとなっていたら、誰もが気付いてしまうわけですからね。(ただし、これはキルシュタインでもスプリンガーでも良いわけで、ハンジと特定できる根拠にはなりません)
さて、今回の記事は、このハンジとピークの繋がりを思わせるシーンが見つかった、ということです。それは、先述したエレンやアルミンのケースと同様で、ハンジは知らず知らずのうちにピークの記憶を夢で見て、その発想力のベースにしていたのではないかと思われるものです。
25巻100話にて、落とし穴に落とされたピークは、ポルコにこう説明しています。
戦士を拘束する仕掛けだろうね
マーレはいくつか用意してあるんだ、こういうのを…
古典的だけど、この狭さじゃ巨大化できないね…
実際に見たことがあったのか、人から聞いたり本で読んだりしたのかはわかりませんが、ピークはこのことを以前から知っており、それが巨人の拘束に役立つことが分かっていました。
この穴をよく見てみると、円筒状になっており、その上から建物が建てられていることがわかります。石造りであることも合わせると、おそらくこれは古井戸ではないかと推測されます(25巻100話、101話)
ここで物語を6巻25話までさかのぼります。
当時、エレンを手に入れた調査兵団は、その巨人化能力を調べるため、実験を行いました。あの懐かしのティースプーンのシーンです。
この時、当初拘束用の仕掛けとして使ったのが、涸れ井戸でした。そしてこれはハンジの発案によります。
つまり、ハンジはピークの記憶から巨人を拘束する発想を得ていた可能性がある、ということです。
もちろん、ピーク以外にもこの仕掛けを知っている人は多くいるでしょうから、そちらからの記憶でも良いのですが、そこに顔とキャラの性格付けが似ていることが加勢してきます。
そもそも、ピークは知恵者として描かれているわけですから、拘束の仕掛けのことを知っている必要はありませんでした。その場で、これは巨人化したらマズイと気付いても不自然ではありません。むしろポルコも知らないわけですし、ただでさえ情報を制限されているマーレのエルディア人は、知らないほうが自然なはずでした。このことをピークが知っていたのは、ピークの先祖、あるいは以前の車力の記憶が関わっている可能性もあります。
これらのことは、エレンとアルミンのケースと非常によく似ています。つまりそこから導き出されるのは、今後ハンジが知性巨人化する可能性が非常に高くなった、ということです。そしてそれは車力である可能性も高いと言えるかもしれません。
ただし、ヒストリアという例外のケースも現状では残っていますので、巨人化はしないが記憶を見てた、という方向に流れる可能性もないわけではありません。
いずれにせよ、これだけの伏線を散りばめている以上、ハンジは物語において、より重要な人物になってくるのは確実といってよいでしょう。どういう流れでハンジが継承をするのかは現時点では想像できませんが、今後の展開が楽しみになってきました。
-おまけ-
ハンジは井戸と何やら縁があるのか分かりませんが、シガンシナ戦でモブリットに命を救われた時、超大型の爆発から身を守ったのは井戸でした(21巻84話)
これに何か意味があるのかは、わかりません。もしかしたら作者からの、ヒントなのかもしれませんね・・
-おまけおわり-
本日もご覧いただき、ありがとうございました。
written: 3rd Apr 2018
updated: none